強殖装甲ガイバー

昭和61年発売、OVA
60分

概要

平凡な高校生、深町晶はふとした偶然から「強殖装甲ユニット・ガイバー」を手に入れてしまう。 それは「殖装」することにより人間にとてつもない力をもたらす、古代の生体兵器だったのだ。

そしてガイバーを狙う組織クロノスは、人間に遺伝子レベルで変異を生じさせ強力な戦闘形態へと変身させた生体兵器・獣化兵(ゾアノイド)を駆使して晶を襲う。

もはや逃げられないと知った晶は、ガイバーの力を使ってクロノスに立ち向かうことを決意する。 そしてガイバーの驚異的パワーは、獣化兵たちを蹴散らしていく。 だが、そんな晶の前に現れた一つの影。それは…ガイバー!?

解説

最初に断っておくと、これは全6巻で発売された新しい方ではなくて、古い方。 実は私はこの古いやつの方が好きなのだ。

原作は言わずと知れた高屋良樹。 いわば「リアル変身ヒーロー」とも言うべきそのシリアスなドラマは、変身ヒーローの新しい可能性を示唆しているとも言えよう。 原作においてクロノスは容赦無く晶を追いつめ、彼が高校生活を満喫していられたのはごく初期の頃だけでしかない。 更に逃亡生活などを重ねた挙げ句、もたもたしている間にクロノスは世界を制圧してしまう。 ヒーローであるべき晶は、もはや体制に対する反逆者でしかなくなっている。

また、一介の高校生に過ぎず戦闘経験など無い晶は、戦いにおいても遅れを取ってしまう。 簡単に勝てたのは、ガイバーの威力のみに頼って勝利を収められた最初の方だけ。 特に精神の弱さから来るツメの甘さは、ことある毎に晶をピンチに追いやる。 通常の獣化兵より遥かに強力な超獣化兵(ハイパーゾアノイド)を、実は晶は倒したことがない(って知ってた?)という事実もそれを物語っているのかもしれない。 非情さと野心を秘め、見事な戦い振りを見せるガイバーIII・巻島とは実に対照的だ。

…といった、非常に説得力溢れるリアルな描写が原作の持ち味なわけだけど、このOVA版はそんな味がぜーんぜん無い! 話としては原作の第1話〜第3話がメインになってるんだけど、なんだか雰囲気だけに酔いしれたような、よく分からん展開が待ち受けている。

熱血主人公と化してしまった深町晶。 か弱いいたいけな美少女と化し、晶との仲も実質ラブラブになってる瀬川瑞紀。 その瑞紀はクロノスに拉致されてしまう。 おお、スーパーヒーローものとしておあつらえ向きの設定だ。 そして戦いになるとノリノリの熱いBGMが流れて来る。ううっ、燃えるぜ!

更に、瀬川哲郎は出てこないし巻島顎人も出てこない。 そういうムサいキャラは出てこないのだ。 そのせいで、ガイバーIIIが意味不明のキャラになってしまっているにも関わらず。 意味不明と言えば、重要なキーワードである「降臨者」「規格外品」も原作そのままに登場。 が、解説が全くないので意味不明の単語になっている。

そして最強の敵ガイバーIIは、ムサい中年親父のリスカー監察官ではない。 代わりに見目麗しい若い女性のバルキュリア監察官が登場する。 いつもレオタード着てトレーニングしてるし、シャワーは浴びるし、おまけにその捕殖シーンはその筋では有名だ。 いやー、ここまでウケ狙いに徹しられると、もう何も言えない。

やはり、ヒーローものとしてはいささか異色なガイバーの話をそのままビデオ化できるほどには、まだOVA市場というものが成熟していなかったということか。 でも、ここまで露骨にやられるとむしろ完全別物と感じられて、逆に好感が持てる。 こういうガイバーもいいじゃん。

ちなみに獣化兵は、原作でおなじみのグレゴールとヴァモアが登場。 原作とほぼ同じようにガイバーにやられる。 更に、最後に出て来る有象無象の中の一匹がラモチスだったりする。 まあ原作でも有象無象な奴だけどさ。

なお余談だが、この作品で私が一番好きなシーン。 対ヴァモア戦で、生体レーザーに対抗すべくガイバーが胸部装甲をベリベリッと開いた時。ヴァモアいわく、
「コゾウ…ナニヲ スル!ゆにっとガ コワレテ…!」
いや確かにそうとしか見えんわな。そのユニットへの気遣い、思わず笑ってしまう。

ストーリー

雨が降りしきる晩。トラックの運転手が、大事そうに荷物を抱えた貧相な男を乗せた。 そしてその運転手は、死体となって発見された…。

高校生・深町晶は、幼なじみの瀬川瑞紀と共にいつもと変わらぬ家路についていた。 だが近くの河原では、異様な光景が展開されていた。

複数の男達に囲まれた、あの貧相な男。 「モルモット野郎」と呼ばれたその男の肉体が突如変異し、奇怪な化け物に変わったのだ。 が、それを囲む男達は冷静で、その中の一人もまた肉体が変異し、緑色の巨大な怪物に変じた。 そして「モルモット野郎」はその緑色の怪物にひねり潰されてしまう。 しかし男は持っていた荷物に小型爆弾を隠し持っていた。 その荷物の中に、彼らが捜し求める三つの「ユニット」が入っていたのだ。

晶と瑞紀は、近くで爆発が起きたのに気付く。そして晶の前に、妙な物体が落ちて来た。 これこそが「ユニット」だった。何か大発見かもしれないと喜ぶ晶。 が、そのユニットの隙間に何かがうごめいているのに晶は気付く。 あわてて晶はユニットを放り投げる。 が、ユニットは突如はじけ、晶は中から飛び出した不気味な物体に全身を包み込まれてしまう。 苦しむ晶。そして晶は川の中へと落ちていく。

駆け寄ろうとする瑞紀。が、その前にさっきの男達が現れた。そして緑色の怪物が瑞紀に迫る。 しかしその時、川の中から何かが飛び出して来た。 人間? いや、不気味なその外見は人と呼ぶには程遠い。

緑色の怪物は、そいつを敵と見なして攻撃を始める。その巨体が、小柄なそいつを粉砕しようとする。 が、そいつはその小さな体で怪物と互角以上のパワーを発揮し、怪物を粉砕する。 あわてて逃げようとする残りの男達。だがそいつは男達を逃がしはしなかった。

そいつはふと、人の意識を取り戻した。そいつは晶だったのだ。 彼は側に瑞紀が倒れているのを見て近付こうとする。 が、すぐに自分がいつもの自分ではないことに気付く。 なんだこの姿は!?
「いやだぁーっ!」
途端に、まるで鎧を脱ぎ捨てるかのようにそいつは晶の体から離れ、川の中へと消えていく。

翌日、学校に行った晶の前で、友人が、警官が、次々と死んでいった。 晶が現場にいたことを知り、ユニットのありかを吐かせようと揺さ振りをかけた「クロノス」の仕業だった。 彼らこそ、昨日の怪物・獣化兵グレゴールを作り出した組織なのだ。

警察署に赴いた晶。 だが署長は晶に、あの物体・ガイバーユニットのありかを問う。 署長は瑞紀が捕らわれているところを見せ、晶を脅迫する。 そして更に署長は、自らの姿を変貌させる。彼も獣化兵だったのだ。その異形の姿が晶に迫る。

晶は夢中で「ガイバー」を呼んだ。 すると、突如何もない空間から昨日のヤツが現れ、晶の体に「殖装」された。これがガイバー!

敵は生体レーザーを内蔵した獣化兵だった。その破壊力が晶を威嚇する。 が、晶は半ば無意識に自らの胸部装甲を引き剥がした。そこから放たれる胸部粒子砲・メガスマッシャー! その凄まじい威力は、獣化兵もろとも部屋全体を吹き飛ばしてしまう。

一方クロノス日本支部には、回収されたもうひとつのユニットが到着していた。 それを見ようとするバルキュリア監察官。 が、ユニットは既に発動しており、バルキュリアはユニットに捕殖されてしまう。

かくしてクロノスはようやくユニットの正体を知った。 そしてバルキュリアは日本支部長・巻島に、自らがガイバーIを捕らえると宣言する。 一方の晶は執拗な追跡から逃げ続けてあちこちさまよっていたが、瑞紀を助けるために戦う決意を固める。

瑞紀が捕らわれている造船所にやってきたガイバー・晶。 無数の獣化兵や砲撃がガイバーを襲う。が、そんなものはガイバーの敵ではない。 敵を蹴散らし、突き進むガイバー。 だがその前にひとつの影が現れる。 あれは…ガイバー!?

ついにバルキュリアのガイバーIIが現れたのだ。 バルキュリアは晶に共に本部へ来るように誘うが、晶の戦いの決意は揺るがない。 そして二人の死闘が始まった。

二人の戦いは基地内部にその舞台を移し、二人の壮絶な戦いで基地は徐々に崩壊していく。 二人の死闘は続いていくが、本格的な戦闘訓練を積んだバルキュリアの前に、晶は徐々に消耗していく。

ついにダウンしてしまった晶。それでもまだ屈服しない晶に、バルキュリアはとどめをさそうとする。 が、その時、ガイバーIIの体に変調が生じた。 額の制御装置(コントロールメタル)にひびが入っており、異常が発生していたのだ。

その機を逃さず、晶はガイバーIIに攻撃を加え、額にパンチを見舞う。 そしてガイバーIIの制御装置が外れ、地面に転がり落ちる。 するとガイバーIIの体が異常な変化を見せた。 ガイバーの強殖細胞が暴走し、増殖を開始したのだ。 制御装置を失った殖装者はガイバーに食われてしまう…!

そのおぞましい光景に耐えられず晶が放ったメガスマッシャーが、かつてバルキュリアという名の人間だった「それ」を跡形もなく消し飛ばした。

基地はもはや爆発寸前だった。瑞紀の元に急ぐ晶。が、そこには巻島支部長が待ち構えていた。 日本支部崩壊と共に全てを失ったため、瑞紀と晶を道連れにしようとしていたのだ。 焦る晶。 しかし、巻島は突如崩れ落ちる。 その背後から現れた者。 それは第3のガイバーだった!

ガイバーIIIから重力制御装置の使い方を聞いたガイバーIは、瑞紀を連れて基地を脱出する。 そしてガイバーIは、気付いた瑞紀の晶を呼ぶ声を後にして去って行く。

瑞紀にはいつもの日常が戻って来た。 しかしその後、深町晶の姿を見た者はいない…。

スタッフ

企画...株式会社バンダイ
原作...高屋良樹
脚本...伊武紋太
監督...渡辺浩
音楽...難波正司
プロデューサー...芦田豊雄・加藤長輝・浅賀孝郎
キャラクターデザイン...いんどり小屋
制作...アニメイトフィルム・ネットワーク・スタジオライブ

キャスト

深町晶...水島裕
瀬川瑞紀...富沢美智江
バルキュリア...戸田恵子
巻島支部長...筈見純
石渡長官...若本紀昭
アキツ警部...藤城裕士
運転手...田中康郎
...さとうあい
モルモット...小林通孝
級友A...佐々木望
生徒...小椋悠
隊員B...立木文彦
ガイバーIII...小杉十郎太

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