吸血姫美夕 Integral

テレビ放映は平成9年10月6日〜平成10年3月30日、全25話
Integral版は全26話
各30分

概要

人の世に現れるあやかしのもの、神魔。
神魔が人の世にはぐれ出た時、それを闇に帰す宿命を帯びた「監視者」の少女、美夕が現れる。
永き時を生きる吸血鬼の少女。神魔を追うその瞳には、人にとっては戦慄の悪夢が映る…。

解説

かつてのOVA版から約10年、ついにテレビアニメ化を果たした人気ホラー。 が、かなり不幸な扱いを受けることになってしまった。

当時、現実に残酷な殺人事件が発生してしまったあおりを受け、過激な表現がことごとく規制を受けた。 更に放映の都合上、全26話でありながら1話削る羽目になり、第2話がなくなってしまった。 確かに残酷な描写などもある話ではあるが、今後のレギュラーメンバー紹介を行なう重要な話であり、かつ作画監督にキャラクターデザインの門之園恵美を迎えての気合の入ったエピソードである。 これを削るということはかなりやる気もそがれてしまい、製作者側から言えば大きな不満となった。 そういった不満を解消すべく、テレビ版とは異なる完璧版の形でビデオリリースされたものが、この「吸血姫美夕 Integral」なのである。

全26話が揃った上に、修正された部分も本来の意図通りの形で復活を遂げた。 これが、「吸血姫美夕」テレビ版の本来の姿である。

内容の方はどうか。シリーズものということで、いわばパイロット版とも言うべき第1話を除いては舞台は同じ時輪女子学園。 そこの中等部に通い友達なんかもできている美夕が神魔の引き起こす事件と出会い、それを解決していく、というものになっている。 もっともあまり人間に関心を持たない美夕のことだから、友達と言っても美夕の方から積極的につきあうというわけではないのだが。

さてその事件の方だが、ここで美夕のスタンスが重要となる。 OVA版と同様、美夕の目的ははぐれ神魔を闇に返すことであって、人間を救うことではない。 これが何を意味するのかというと、つまりこういうことなのだ。

大抵の場合、事件を見つけると美夕はただ成り行きを見守る。神魔が尻尾を出すのを待つのだ。 しかし神魔が尻尾を出す時というのは、神魔の目的が達成された時。 すなわち事件に関わった人間が破滅の時を迎えた時なのだ。 それは最悪の場合は死を意味していたりするが、美夕はそんなことを気にはしない。 美夕は人間の行く末には関与しないのだ。それは彼女の領分ではないから。

ということで、事件はほとんどの場合最悪の結末を迎えてから解決される。 …って、全然解決になってないけど。 これが、本作のジャンルを妖怪退治バトルものではなく、ホラーものとしている要因である。

とか言いつつ、かつては人として生きていた美夕のこと。人間に対して無関心ではいられない時もある。 そういった彼女の心の揺れ動きもまた本作のひとつの魅力。 特に千里との友達づきあいについては、彼女らの日常を毎回描くというシリーズものならではの描写によって、二人の友情が確固たるものになっていくのを見取ることができる。 またそんな流れがあるからこそ、ラストの展開が生きてくる。 シリーズ中に何気なく描かれていた要素が、ラストで伏線として生きてくるので要注意。

なお最後に余談。本作の第20話にて、監督・平野俊貴の元、脚本・小中千昭、作画監督・西岡忍、ゲストヒロイン・岩男潤子という顔ぶれが集まる。 この顔ぶれは、くしくも後に「デビルマンレディー」で再結集することになるのだ。

登場人物

OPのナレーションは岸田今日子。雰囲気出すぎてて恐いくらい。
美夕(長沢美樹)
はぐれ神魔を闇に帰す宿命を帯びた「監視者」である吸血鬼の少女。監視者の能力である炎を使ってはぐれ神魔を封印する。 彼女に吸血されると、悩みも苦しみもない永遠の夢の世界に旅立つことができる。簡単に言えば、精神病院に送られるような状態になる。 また食事の好みは特に美男子に限るというわけではなく、作中でも結構色々な人の血を吸っている。
いつもは各地を転々と旅しているが、第2話以降は腰を落ち着け、時輪女子学園の中等部に通っている。 その際の名前は「山野美夕」。そして賽川霊園を根城としているが、学校にもその住所で届け出ているらしい。結構大胆。
性格は非常に物静かで落ち着いている。OVA版の小悪魔っぽさは見られない。 なお、彼女の服装は学校の制服か戦闘時の着物か、どちらかである。 また、戦いで登場する際には笛を吹くが、これはどっから見ても某人造人間(あれとかこれとか)のパクリである。
ラヴァ(三木眞一郎)
美夕に付き従う西洋神魔。かつて美夕と文字通り血で血を洗う死闘を繰り広げた末、美夕の従者となった。 鋭い爪や大鎌が武器で、何でも切り裂いてしまう。戦いにおいて格闘系のアクションは彼の担当。 いつも仮面をかぶっているが、実は自由に外すことができてその下には美形の顔が隠れている。 OVA版とは異なり、普通に話すことができる。
死無(かないみか)
「しーな」と読む。うさぎみたいな神魔で、美夕のマスコット的存在。人間にあまり好意を持っていないようだ。 ほとんど戦いには参加しないが、その垂れた右耳の下に隠された血走った巨眼は、妖のものの正体を見破る能力を持つ。 ちなみに彼女(メス…だよな、多分)のモデルは、平野監督宅にあるうさぎのぬいぐるみだそうである。
井上千里(白倉麻子)
第2話から登場。転校生の美夕がひとりぼっちなのを見て強引に友達になってしまった明るい少女。 美夕と友達づきあいが出来るというだけで、相当に社交性が高いということが分かる。(笑) 時々神魔の事件に巻き込まれるが、美夕がその事件の核心にいるとは全く知らない。
鹿島由加里(手塚ちはる)
第2話から登場。千里の友達。長身でボーイッシュな感じの子。
青木久恵(進藤こころ)
第2話から登場。千里の友達。読書好きのおとなしい子。
冷羽(緒方恵美)
「れいは」と読む。第4話から登場。美夕より更に幼い外見の神魔の少女。雪女であり、あらゆるものを凍りつかせる。 監視者気取りではぐれ神魔を狩り続けるが、実は美夕との間には因縁があり、美夕を憎んでいる。 その情け容赦ないやり口から、美夕との対立はどんどん深まっていくこととなる。 話し方は非常に丁寧だが、常に持っている人形の松風(緒方恵美)は非常に粗暴な口調で美夕をののしる。

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