ガメラ対大悪獣ギロン

1969年3月21日公開
カラー,ワイド
本編82分

解説

例によって日本人と外国人の子供コンビが大活躍する。 またしてもボケ役の外国人と、妙に物分かりが良すぎる日本人の子供。 輸出先からクレームはつかないのか? まあ外国人の子のたどたどしい日本語はボケ役には適しているが。

今度は宇宙が舞台となり、セットとミニチュアだけでほとんどのシーンが済んでしまっている。 更に、これはファンサービスなんだろうが、またしても過去作品のバンクフィルムが登場。 相変わらずの低予算の中で、がんばろっていいものを作ろうというところか。

子供向け路線がますます明確になり、教育のためか宇宙に関するウンチクを白々しくおりまぜている。 明夫少年が太陽系の全惑星を列挙するシーンなんか特に白々しい。

また、例によってガメラも、理由不明なまま宇宙を飛んでいるし、宇宙船に乗る子供を見分ける鋭い目を持っている。 更に鉄棒で大車輪を決めて見事に着地。まあゴジラがシェーをするという前例があるからなんてことはないが。 しかし宇宙船を溶接するとは凄い知能の持ち主だ。単に壊れたからくっつければ治るという亀の浅知恵かもしれんけど。

敵怪獣のギロンはほとんど出刃包丁で、今見ると結構笑えるデザインなんだけど、そのシンプルで個性的なフォルムとストレートな力強さは特筆に価する。 私にとってはギャオスと並んでガメラシリーズで好きな怪獣のひとつだ。

今回の話ではメインキャストは少なく、地球人の子供二人と宇宙人の女性二人の攻防がメインになる。 いや、実ははっきり言って彼らの攻防もほとんどない。 すなわち、大人を出し抜いて大活躍する子供たちや子供に翻弄される敵といったところがガメラの味なのに、それが全然感じられない作品になってしまったのだ。 実に惜しい。これは平凡な子供向け怪獣映画だと言えるだろう。

でもまあ、少しだがいい味は出している。 例えば子供二人が閉じ込められた密封式の檻に、なぜか丁度いい位置にひとつだけ開いている小さな丸い穴。(空気穴か?) そこからおもちゃのピストルで解放ボタンを狙う、というストレート過ぎる御都合主義には思わず笑みがこぼれる。

全体として見れば普通の怪獣映画。 ギロンのデザインには笑ってもらうとしても、肝心のストーリーは普通にまとまっている。 あとは大村崑(近藤巡査だからコンちゃんと呼ばれる!)とイーデス・ハンソンくらいしか見るところはなさそうだ。

登場怪獣

ギロン

身長85m、体重110t。

第十惑星人に操られる怪獣。 見た目はほとんど包丁。巨大な刃が頭部にあり、更に側頭部には手裏剣が隠されている。 どんな進化を遂げたらこんな生き物が生まれるのやら。 この包丁頭は、ガメラの甲羅から血を噴き出させたほどの威力を持つ。 さすがのガメラもこいつには苦戦した。

宇宙ギャオス

第十惑星に生息する銀色のギャオス。色以外は地球産のものと同じ。

ストーリー

太陽系に近い宇宙からの怪電波が届いたことが、世界中の話題をさらう。 そんな折り、明夫とトムは望遠鏡で空飛ぶ円盤を目撃。二人は近くに降りた円盤を見つけて乗り込んでみるが、適当にボタンを押すとなんと円盤は勝手に飛びたってしまう。 宇宙に飛び出した円盤は隕石と激突しそうになるが、そこへ突如ガメラが現れ、隕石を破壊してくれる。 二人は安心してのんきにガメラと競走するが、円盤は突如速度を上げてガメラを振り切ってしまう。

やがて円盤は謎の惑星にたどり着く。二人が降りてみると、そこに宇宙ギャオスが襲来する。 二人はあわてるが、そこにもう一匹、頭部に巨大な刃を持つ怪獣が出現。宇宙ギャオスをバラバラにしてしまう。

二人は偶然瞬間移動の機械を見つけ、施設の内部に入る。 そこでバーベラとフローベラという二人の女性に出会う。ここは太陽をはさんで地球の裏側にある惑星テラ、太陽系十番目の惑星だという。 この星は自然を制御していた電子頭脳の狂いによって環境が激変、怪獣が大量発生してもう誰も生き残っていない。 かろうじて怪獣ギロンだけを操ることに成功したというのだ。

明夫とトムは帰れると思って安心するが、第十惑星人二人は、明夫とトムを食料にしようとする。 睡眠薬を仕込んだドーナツを、そうとは知らずに食べる子供たち。その頃、ガメラは二人を追って全速で飛んでいた。

眠った明夫を丸坊主にして、脳を取り出して食べようとする宇宙人。だがその時第十惑星にガメラが現れる。 ギロンを出撃させる宇宙人。ガメラはかろうじてギロンを撃退するが、自らも深く傷つき湖底に沈む。

あまりドーナツを食べなかったトムは早く目覚める。そして宇宙人の話を盗み聞きし、その企みを知ってしまう。 明夫を起こして二人は逃げようとするが、あっさり捕まる。二人を檻に閉じ込めておいて、ガメラのせいで壊れた宇宙船を修理する宇宙人。

トムはおもちゃのピストルで檻を開けるスイッチを押そうとするが、間違ってギロンの解放スイッチを押してしまう。 ギロンは宇宙人が修理している宇宙船を襲撃して、逃げようとして飛び立ったところを真っ二つにする。 その際に動けなくなったバーベラを、フローベラは情け容赦無く殺す。

更にギロンは基地を襲う。ピンチになる明夫とトム。 その時ギロンが暴れる衝撃で湖底のガメラが目覚め、ギロンに立ち向かう。 基地が壊されたおかげで檻から出られた二人は、その戦いを見守る。

だがガメラは苦戦する。ギロンの手裏剣が腕に刺さったガメラは、一旦湖底に退散してしまう。 そこで基地を襲おうとするギロン。二人はギロンを元いた格納庫に落とすことに成功するが、ギロンは穴を突き破って這い上がってくる。

そして湖底に向かい、ガメラを背後から切り裂くギロン。だがガメラはそのまま逃げようとするギロンを捕らえ、高空から落とす。 地面に突き刺さるギロン。そこで二人は、偶然見つけたミサイルを発射する。 発射されたミサイルはあさっての方向に飛んでいくが、その内の一機は偶然フローベラのいる場所を直撃し、フローベラは死亡する。 もう一機のミサイルはガメラが手で掴んだ。そのミサイルをギロンの頭部に叩き込み、火焔放射を浴びせるガメラ。 ギロンは大爆発を起こす。

ガメラは真っ二つになった宇宙船を炎で溶接して、二人を乗せて地球へと持ち帰る。 ガメラの接近を知り集まってきた人たちの前で二人は宇宙船から降り立つ。 すぐそばにガメラがいるのに平然と話をする人々。 やがて飛びたつガメラを、子供たちはいつまでも見送るのだった。

スタッフ

製作...永田秀雄
企画...仲野和正
脚本...高橋二三
監督...湯浅憲明
音楽...菊池俊輔

キャスト

明夫...加島信博
友子...秋山みゆき
トム...クリストファ・マーフィー
フローベラ...笠原玲子
バーベラ...甲斐弘子
近藤巡査...大村崑
エルガ...イーデス・ハンソン
志賀博士...船越英二

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