地球防衛軍

1957年12月28日公開
カラー、東宝スコープ
1時間28分

解説

昭和32年に東宝が制作した唯一の特撮映画。 そして東宝史上初の東宝スコープ(要するにシネスコ)の特撮映画。 これだけを見ても、非常に気合が入っていることが分かると思う。

まだSFという言葉が市民権を得ていなかった頃に作られた、本格的空想科学特撮映画。 その魅力はなんといっても登場するメカの数々。

だからと言って、ロボットのモゲラなんぞ目ではない。 やはりここは元祖東宝パラボラ、マーカライト・ファープ! あの大きなパラボラからバババババッとビームが出るんだよ。 しかもズズズズズッと自走するんだよ、パラボラなのに。

凄いだろ!燃えるだろ! やっぱりパラボラは東宝特撮のロマンなのだ!

…まあそれはさておき、内容の方はどうなのか。 古典的な宇宙人侵略劇になっているのは、古典的作品なんだからいいだろう。 なぜ宇宙人が攻めてくるかというのも、東宝お家芸の核実験を原因とするもの。

ただやっぱり、ドラマの展開が少々安易と言えば安易。 例えば侵略者であるミステリアンの要求に対して、単純に徹底抗戦を唱えるのはどうか。 彼らとの平和共存を訴える人達も登場させて、異星人とのコンタクトにおける葛藤を描くなどしてはどうだろう。 …って、そんな作品を作る時代じゃなかったからなあ。

しかし、人類を裏切った白石亮一が説明らしい説明もなくあっさり改心してしまうのは、いくらなんでも単純すぎる。 ミステリアン側のドラマが希薄なのが惜しいところだ。 …まあ、敵側のドラマを掘り下げるなんて時代じゃなかったからなあ。

でもでも、その分マーカライト・ファープの出番が増えていると思えば良し! やっぱり地球を侵略する悪党宇宙人に対して、地球人が科学力を結集して立ち向かい、超兵器を駆使して勝利を収めるというのは単純に燃えるぞ。

なんだかんだ言っても、結局まさに古典的宇宙人侵略映画の典型的作品。 ややこしいドラマに飽きた人にはむしろ新鮮に映るかも。

少なくとも、東宝特撮作品を語る上で外せない一本だ。 マーカライト・ファープの名前しか知らない人は絶対に見るべし。

登場怪獣…じゃなくてロボット

モゲラ (MOGERA)

体長50m、体重5万t。

ミステリアンが作った土木作業用ロボット。 両眼から破壊光線を放ち、また地中を時速150キロで掘り進む。 画面を見る限りはとてもそんな高速には見えないのだが…。

1号と2号の2機が登場した。 作品中では名前も用途も何も語られないが、恐らく地下要塞建設のために使用したと思われる。 そしてついでに地球を襲うために使用するという乱暴な使われ方をしていた。 そのせいで2機とも情けない最期を遂げる。

いや、両方とも非常にあっけなくやられるのは、冗談抜きでこれが土木作業用ロボットであるため。 その設定のリアリティを出すためだそうだ。

でも、1号は橋の下に落ちて壊れるし、2号機は地面を掘りぬいて現れた途端にマーカライト・ファープの下敷きになって壊れるし、というあまりにもギャグみたいなやられ方だ。 特に2号なんか、ちょっとよそ見しているといつ現れていつやられたのか分からなくなるほど影が薄い。 う〜む、リアルというのか、これって?

ストーリー

富士山麓で謎の山火事が発生し、また突如村がひとつ陥没した。そしてその現場には放射能反応が残っていた。 が、翌日調査団が着いた時には、なぜか反応は全く見られなかった。

ところが突如、山を崩して巨大なロボットが現れた。 ロボットは怪光線を放ち周りを焼き尽くしつつ、進撃していく。

そこで防衛隊が応戦する。ロボットが橋を渡ろうとした時に橋を爆破し、ついにロボットの動きは止まる。

ロボットは未知の金属で作られていることが分かった。 そして天文台の安達博士は、弟子の白石亮一の報告書が正しいことを確信する。 宇宙人が地球に訪れているというのだ。が、白石は村の陥没で既に死亡していた。

白石報告書を裏付けるべく調査に赴く調査団。 その彼らの前に、地中から謎のドームが現れた。 そしてそのドームからの要求によって、安達博士を始めとする5人がドームに入る。

彼らは核戦争によって母星ミステロイドを失ったミステリアンだった。 彼らは半径3キロの土地と、地球人の女性との結婚の自由を要求してきた。 そして結婚相手として、既に拉致した女性達の他に白石の妹の江津子と岩本広子を要求する。 それを聞き、白石の友人である渥美は憤慨する。

防衛隊はミステリアンと戦うことを決定する。 そして攻撃準備が進む中、渥美達が見ていたテレビで死んだはずの白石が通信してくる。 白石はミステリアンの側についていたのだ。笑って渥美に攻撃中止を勧める白石。

ついに防衛隊の攻撃が始まった。空から、陸から、激しい攻撃が繰り広げられる。 だが、ドームには傷ひとつつけられない。 そして円盤の攻撃とドームからの怪光線のために、防衛隊はほぼ全滅してしまう。

自分達の要求がわずかなものであることをアピールするミステリアン。 だがミステリアンは、ひそかに関東を制圧すべく地下大要塞を建設しつつあったのだ。

一方、世界中の国々が一丸となって、地球防衛軍が設立された。 そして空中艦α号とβ号が完成し、攻撃が開始された。が、攻撃は全く効かず、β号は撃墜されてしまう。

ミステリアンは半径100キロの土地を占拠することを宣言した。 しかし地球防衛軍でも新兵器が開発されつつあった。 だが一方で、広子と江津子がミステリアンに誘拐されてしまう。

次の攻撃の準備を進める防衛軍。広子と江津子のことを心配する渥美。

そして攻撃は始まった。 怪光線を跳ね返すよう改造されたα号、そして怪光線を反射して敵に撃ち返すマーカライト・ファープが投入される。 これにはさすがのミステリアンも旗色が悪い。一方、その混乱にまぎれて渥美は地下要塞に潜入していた。

ミステリアンは湖を氾濫させて逆襲する。が、渥美が基地内部を破壊したため基地は混乱する。 ミステリアンに捕まって銃を突きつけられる渥美。だがそのミステリアンは白石だった。 白石はミステリアンにだまされていたことを語り、女性達と一緒に渥美を逃がして自分は基地に戻る。

そして電子砲を装備した第二β号が発進する。電子砲がドームを揺るがす。 基地内部では白石が基地を破壊して回っていた。内外からの攻撃によってドームと基地ははついに大爆発する。

宇宙に逃げていく円盤の群れ。宇宙ステーションに逃げ帰った彼らは、遥か宇宙へと去って行く。 地球人の叡智が勝利を収めたのだ。

スタッフ

製作...田中友幸
原作...丘見丈二郎
潤色...香山滋
脚本...木村武
音楽...伊福部昭
特技監督...円谷英二
監督...本多猪四郎

キャスト

渥美譲治...佐原健二
白石江津子...白川由美
岩本広子...河内桃子
白石亮一...平田昭彦
安達博士...志村喬
森田司令...藤田進
川波博士...村上冬樹
ミステリアン統領...土屋嘉男
幸田博士...中村哲

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