─2002 CHRISTMAS TOUR ─
裏切り御免!



 2002年のトリを飾るのは、新作時代劇「裏切り御免!」。
 キャラメルの舞台を観に行くようになって、初めて生で観る時代劇。
(ミスタームーンライトの直前に「風を継ぐ者2001」が上演されましたが、その時は全然興味がなくて。あああ、もったいないことをした…菅野さんの沖田総司が観られたのに〜〜!)
 ビデオでしか観たことのない時代劇に期待を膨らませ、いざ観劇。
 ……面白かったです!!


 切腹を拒否した竜馬の「天命」という考え方、無駄に命を落とすことを嫌う所を見て、桂小五郎を連想しました。とはいえそんなに詳しくはないんですけど、逃げの小五郎と侮蔑を含んだあだ名をつけられても刀を抜かなかった彼に、どこか通じるものがあるような気がして。
 迅助の足が引き寄せた出会いは「風を継ぐ者」を彷彿させますね。
 迅助のパフォーマンスが楽しい(笑)。オーバーアクションが、彼の一生懸命な部分を表しているようで、見ていて好感が持てます。多分、彼に会う人間は大なり小なりそんな感情を抱いたのではないかと思います。

 進八、幹兵衛、藤太の先走りを知った衝撃は、竜馬よりも大治郎の方が強かったのではないでしょうか。
 ただ、三人が先走りしたのもわからないではない気がするんですよね。自分が国のために何事かを成そうとしている実感が得られない、無為に時を過ごす焦りを感じていたが故の行動ですし。三人に竜馬のような大局を見るだけの目がなかったといえばそれまでなんですけれど、でも、身近な目標がないままに無為に時を過ごすのが耐えられないという思いは……ある意味仕方ないかもしれないという気がするんです。
 信じていた友に裏切られた竜馬の悔しさと無念な気持ち、身近にいたにも関わらず三人の先走りに気づかなかった大治郎の衝撃も大きかったと思います。でも、私自身が口下手なせいか、この部分はむしろ進八たちに感情移入してしまいました。
 そして、先走ったばかりに竜馬と共に戦う機会を失った進八たちが、その後どうなったのか気になります…。

 密偵として大治郎たちを探っていた迅助、大治郎に黙って佐幕派の人間を殺していた進八たち、そして進八たちを叩きのめした竜馬。でも、一番深い裏切りは……進八たち三人だったのではないかと思います。クライマックスで彼らの行動を知った竜馬の悔しそうな顔、そしてそこから刀を抜いて…の一連。「裏切り御免!」の台詞が竜馬らしい気がします。
 しかし。(おそらく)主役なのにどこか影が薄く感じられる立川迅助、クライマックスのこれで完璧に竜馬に食われましたね(苦笑)。序盤はそうでもなかったと思うんですが、個性派揃いの登場人物の中では「まっすぐでいい人」という好印象を受けるものの、主役というにはすこーし疑問があったような……。

 迅助の「代わりに何か手伝いをさせて下さい」という申し出は普通だと思ったんですが、浪人たちは世話してもらって当然という感じなんでしょうか。いえ、ありがたいとは思っているようですが、その代償に何かをするという感覚がないみたいで、少し意外だったんです。でもこれが武士ということになるのでしょうか。本当に自分の家と思ってくつろいでいるのかなぁ。
 こうしてみると迅助の行動のひとつひとつが清々しく感じますね。お茶を飲んで「おいしい!」とか。
 「日本を何とかしたい」という気概はわからなくもないんですが、話し合って飲んだくれてるだけじゃゆきのさんが嫌悪するのもわかるような気がします。
 そして、ひたむきな迅助につられて、皆が会話をしているうちに自分の本音を正直に話してしまうのがいいですね〜。彼の正直でまっすぐなところは、他の人間にとっては、ある意味に憧れに近いのかもしれません。その姿勢が伝わってきて、本音で話してしまう所があると思いますし。

 竜馬はとにかく格好良かったですね〜!迅助と話すところとか、敢えて彼の正体を黙って話を持っていく様子とか、幹兵衛をあっさり一刀の元に倒してしまうところとか。でもやはりクライマックス!最後の殺陣も圧巻で迫力がありましたが、「左側が見えちょらん。じゃからミカンを落としたんじゃろ」この台詞もまた格好いいんですよ!まさに竜馬の独壇場。……食われてますね、迅助さん(苦笑)。

 ラストはやはりクリスマス。キャラメルらしい素敵な締めでした。登場シーンからゆきのさんが好きだったんですけど、このシーンはとっても可愛いかったです。


 今回個人的に嬉しかったのが菅野さん!今回は結構クールな役所だったんですよね。
 菅野さんってお人好しや気の弱い人、みんなにいじめられる人、という役が多かった気がするんですが、冷徹な悪役も似合うんじゃないかなぁと思っていたんです。
(「クローズ・ユア・アイズ」の理系の天使役が一番それに近い感じでしたが)
 今回演じるのは家族や仲間思いだけど戦況を冷静に判断できる、腕の立つ切れ者・笠原進八。そして彼はおそらくこの芝居の中では「悪役」に位置する人間だと思います。
 西川さん扮する山崎烝を追いつめる腕、迅助に山崎を斬れと命じる所、そしてクライマックスに槍を持ち出すシーン。
 それ以前の妹を思いやる優しい所や、友を気遣って突き放した所で、この進八の性格が見られるので、武士としての冷静さが余計に際立つんですよね。これがまたいい感じで、かなりツボでした…。

 そして竜馬演じる岡田達也さん。「また会おうと竜馬は言った」の名台詞を聞いた時は嬉しくなりました♪最も、岡田さんの竜馬を観るのは初めてなんですけど(笑)。初演と再演のビデオを観ているので、それまではむしろ竜馬=初演の川原和久さんのイメージが強かったです。「竜馬」は初演・再演どちらも面白いんですよね〜。初演はインパクトがありましたし、再演はタルを割って船にする等の小道具がキャラメルらしいなぁと思いましたし(笑)。
 それにしても格好良かったです、竜馬。粋でいなせな男ですよねぇ。幕末というと新撰組が好きだったので、勤王派について書かれた小説を読んだことがなかったんですが、俄然興味がわいてきました。で、現在「竜馬がゆく」を読んでいます。


 あと、個人的に見所&印象的だった部分。
 最初の殺陣、幹兵衛VS迅助in華屋にて、後ろで見ていた山崎が刀の動きにあわせて頭を振っていたり、顔を隠してこそこそ話しかける様子が妙に可愛いです。袖で顔を隠す仕種は女の子みたいですし…(笑)。

 迅助の「あの夏の日の思い出のように痛い!」……これ「ワンピース」ネタですよね?(笑)初めて聞いたときは二重の意味で大爆笑。ボン・クレーのおかま拳法がしっかり頭をよぎりました。

 14日のハプニング。竜馬と迅助再会シーンで斬りかかった畑中さんの刀を流した後、竜馬の刀が半分しか鞘に収まらず、そのまま退場。……すいませんシリアスシーンなのについ笑ってしまいました。会場内も若干ざわめいてましたけど(苦笑)。

 千秋楽では団子屋の前で進八たちにしらばっくれる山崎が板東英二の口まねを!これがまた似合うんですよ!!(爆笑)。舞妓姿も是非見たかったです〜。


 役者さんの方言について。
 まず西川さんの大阪弁がなめらかでびっくりしました。大阪に住んでいたのでは、と思ったほど。
 岡田さつきさんも大阪の女将という感じでした。旦那役の佐藤さんは「風を〜」で上方の武士役で大阪弁を話していましたが、その時よりもさらに自然で、商売人の旦那そのまま。筒井さんは大阪の方ですよね?安心して聞けました。
 そして京都弁。はんなりという表現がぴったりの大森さん。普段はのんびりおおらかなだけど、言うべき時は鋭く一喝、まさに京女。お店の娘さん役の前田さん、岡内さん、實川さんも京都の娘らしい言葉だったと思います。
 ただ、何故か坂口さんの京言葉は大阪弁に聞こえましたが(苦笑)。
 土佐弁は馴染みがないのでわかりませんが、奇妙なイントネーションはなかったように感じました。

 余談ですが、大阪の人間が大阪弁に厳しいのは、テレビや映画で言葉だけをあわせた滅茶苦茶なイントネーションの大阪弁ばかり聞かされているからではないかと思います。確かに大阪弁は難しいと思いますけど、中途半端なものを聞くと妙に腹立たしくなってしまうんですよね(苦笑)。(特に映画やドラマではガラの悪い人が大阪弁を使う事が多かった気がします。啖呵を切ると威勢がいいのは事実ですけど、それはそれでちょっと悲しい…)
 でも、だからこそ、方言を使いこなせる役者さんはすごいなと思います。


 2002年最後のお芝居は大満足の時代劇でした。面白かったです!!



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