─2004 SUMMER TOUR─
ブラック・フラッグ・ブルース(再演)



 キャラメルボックスサマーツアーは7年ぶりの再演もの。
 ヴィーナスチームとマーズチームのダブルキャスト、特にヴィーナスは以前ビデオで見た初演と同じキャストが5人いるということで、こちらに期待大でした。
 が。蓋を開けてみると、マーズチームの方がストーリーに没頭して感情移入ができたんです。
 ここで注意。今回結構辛口です。特にヴィーナスチームへは批判的な内容になっていますので、お気をつけ下さい。

 ヴィーナスではレイ個人に感情移入しました。神林は面白かったし、ジョージは西川さんらしさ全開で、ダイゴとアラシはこれまでにビデオで観た二人で。
 大内さん演じる良介は上手く大阪弁を活かした役だったと思います。アリツネはレイといい感じで張り合い協力していたし、光龍は可愛いし、モトコも良かったです。(大木さんはこういう少し個性的な役が似合う気がしました)
 ただ、マリナと砂記と星が、弱いな、と感じたんです。
 マリナを演じた小川さんはブレインの時は大人びた雰囲気なんですが、砂記とのシーンでは「母」というより「姉」のような印象が強くて。砂記役の實川さんは母親に反発する部分が強すぎたせいか、攻撃的な所が目に付きました。星はがむしゃらで一生懸命だったと思います。ただ、砂記と星、双方の「本当は互いを好きあっている」という気持ちは伝わらなくて…。

 マーズは、冒頭からマリナの母性が伝わってきました。砂記はテンション高めだけど、本当は星を心配している、母を慕っている、その気持ちは抑えられていたと思います。星も砂記と通じ合う物がちゃんとあったように感じましたし、テスト生三人組はいい味を出していたと(笑)。神林の筒井さんは彼らしく頑張っていて、時々演技が篠田さんに似てると思いました(これは「ヒトミ」の小川さんにも感じました。時々、初演の坂口さんを彷彿とさせる部分があったんです)。
 レイはクールで格好良く、アリツネはやんちゃな部分が畑中さんらしくて良かったですね。ダイゴとアラシもそれぞれ初演の役者さんとは違った雰囲気で新しい役作りをしていたと思います。モトコは個性的な良さがあり、光龍は可愛くて一生懸命頑張ってるな、と感じました。そして鳥取弁の良介はピンクでした(笑)。渋くていい男です。
 大阪弁の大内さんもそうでしたが、方言を取り入れることで一見ちゃらんぽらんに見える良介の渋さが、わかりやすくダイレクトに伝わってきたと思います。方言のニュアンス、その中に含まれる暖かさを改めて知った気がしますね。

 先にヴィーナス、後からマーズを観たんですが、特にマーズを観て感じたのが、「役者のバランスが取れていた」ということだったんです。
 特に顕著なのがクライマックス、レイがマリナ、良介、砂記と対峙する場面。
 ヴィーナスでは、坂口さん演じるレイのインパクトが強烈で、まっすぐ彼女に引き込まれたんです。
 でも、マーズでは。母の身体である船を守りたいという砂記の気持ち、砂記を助けたいというマリナの想い、船を、テスト生を守ろうとした良介の行動が観ている側にも伝わって来て、そしてレイの告白と行動理由に納得して…役者全員の感情が、それぞれに受け止められたんです。
 ヴィーナスでは、レイを止めようとした砂記の言葉に重みが感じられなかった。信じていた義理の弟に裏切られ、夫を喪い、復讐を果たせないレイの人生に意味があるのかと思えた程に。
 でも、マーズでは違いました。砂記だけでなく、良介やマリナを見るだけの余裕があったせいか、レイへの感情移入も強くはなくて。その分、砂記の言葉の中に、伝わるものがあったように思います。

 もしヴィーナスのマリナがさつきさんなら、あれほどレイに感情移入はしなかったのではないかと思えたんですよね。初演でマリナを演じた大森さんならなおのこと。初演のメンバーが含まれるキャストだったからこそ、小川さんのマリナが弱かったのではないかと感じられました。
 初演メンバーが含まれていなければ、ここまでバランスが崩れることはなかったのかもしれません。ただ、マーズとヴィーナスのマリナを入れ替えると、それはそれでまた微妙にバランスが変わりますから、クライマックスの感動が伝わったかは難しいと思いますし…。
 このマリナという役は、娘役を支えつつ、自身の存在感も大きい、本当の意味で大役だったんだろうな、と、改めて思えました。

 ちょっとここで話の流れを変えまして。
 今回は小ネタが多くて楽しかったです。これだけ笑ったのは久しぶりかも(笑)。
 地元ネタを多用していたのはヴィーナスですね。大阪弁の良介が好きな言葉は「やっぱすっきゃねん」、ジョージの「以上JR大阪駅でした」、モトコとレイがすれ違いざまの「心斎橋はどこですか?」「長堀をまっすぐ行って…」などなど。大阪人として非常に嬉しかったです(笑)。
 レイのラスカルは坂口さんだからこそ笑ってしまったし、あと、三浦さんの「合併反対!」は同意見多数と見ました。私も同じく。

 前説はどちらも弾けていて面白かったですが、マーズ側、つまりヴィーナステスト生組の方が好きですねー。坂口さんのツッコミが冴えていました(笑)。

 実は今回、ヴィーナス・マーズ共に千秋楽のチケットが取れまして、両方の一言挨拶を聞くことができました。これまでダブルキャストの早い方の千秋楽では一言挨拶が無かったと思うんですけど、今回のヴィーナスは大千秋楽のおまけだったんでしょうか?ともあれ嬉しかったです。
 印象的だったのが岡田達也さん。ヴィーナス本編ではピンクらしさをほとんど感じなかったのに、カーテンコールではピンクだったんですよね〜。
 マーズ千秋楽では大学の恩師が来てらしたそうで、「ピンクと呼ばれているけれど、(先生の言って下さった)白い役者を目指したい」とおっしゃっていました(笑)。

 あと、忘れてはならないのが大千秋楽のおまけ。
 何と出ましたよ「探知機ロボ」!!
 ボディーチェックをしようとするアリツネに待ったをかけ、舞台袖へ走るジョージ!何事かと驚く星へ、「君は知らないだろうけれど、7年ぶりの大千秋楽をお客さんは待ち望んでいたんだ!」と説明する神林に拍手喝采(笑)。そして響く音楽、スポットライトと共に登場する探知機ロボ!!
 仕事を終えた探知機ロボが退場した後、神林の「そういえばモトコさんは?」の前に「そういえばジョージさんは?」という台詞が入りまして、直後に舞台を袖から袖へ一直線に走り抜けるジョージの姿がありました(笑)。
 「賢治島探検記」の子ダヌキ役で西川さんが探知機ロボとして登場していましたが、あの時はまさかこの目で実物が見られるとは思いませんでした。嬉しかった〜!

 結構辛口批判の入った感想でしたが、今回の舞台も面白かったです。
 次は新作ですね。11月が待ち遠しいです。



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