CIRQUE DU FREAK
─奇怪なサーカス─


 実はこの話で一番印象に残っているのが、ダレンが2度目にクレプスリーに会いに行ったシーンなんです。
 ハーフバンパイアとなってしまった事を自覚して、もう引き返せないと悟ったダレンが自ら足を向けた先で、彼の来訪を待つクレプスリー。前のシーンとは打って変わって静かなクレプスリーの態度が印象的でした。
 ここの邦訳がまた秀逸だと思うんです。バンパイアの世界に身を置くクレプスリーの心境と(こちらはなんとなく伝わるのみですが)、全てを受け入れる覚悟を決めたダレンの決意が何とも言えなくて。
(それにしてもこの巻のダレン少年、無鉄砲ですね〜。マダム・オクタを盗んでしまう所とか。)
 スティーブが刺された後、彼を救う方法を求めてサーカス跡地を訪れたダレンと彼を待ちかまえていたクレプスリーのやりとりも好きです。…というか、クレプスリーのあしらいがかなりツボでして(笑)。邦訳を読み終わった後、原書を見かけたのでその辺りを斜め読みしたんですが……原書だと更に格好いいんですよ、クレさんが!!
 この辺りからラストにかけて、クレプスリーとダレンのやりとりは全部お気に入り。
 スティーブに血清を与えた後、咄嗟に逃げてしまうダレンの言動は至極最もだと思います。ここでクレプスリーが怒るのも当然でしょうし。(この時の罵声も高笑いも好きだわ…(笑))
 ここで少しドリーム入ってしまうんですけど。
 ダレンを半バンパイアにしたものの、クレプスリー自身、その残酷さに気づくまでに時間がかかってしまったんじゃないかと思うんです。バンパイアの孤独は誰より己自身が知っている、しかも相手はまだ幼い子供なのだと。クレプスリーの台詞の端々に見える孤独に対する感情は、本音だと感じられますし……。だからこそ、全てを悟って戻ってきたダレンに対しては、皮肉屋の彼にしては責める様子が見られなかったんじゃないかと思います。(そしてこのシーンで見事にハマりました(笑))
 家族との別れのシーンはもう涙。特に最後のお父さんの号泣は胸を衝かれるものがありました。
 で。肝心のスティーブ。バンパイアになりたいと望んでいたのに、自分は選ばれず、親友だったダレンに抜け駆けされた。ダレンが何故バンパイアになったのか、その選択をする羽目になったのか、全く解っていないわけではないでしょう。でも、モンスターであるクレプスリーに悪魔と罵られ、バンパイアの素質がないと断言された自分と、求めていたものを手に入れた親友と。彼の受けた屈辱、悔しさ、そして羨望、全てがかつての親友・ダレンに向けられてしまったのもやるせないです。果たして彼は、本当にバンパイアハンターとなってダレンの前に姿を現すのか…。
 後に再会する予定という噂ですが、仮にそれが10年後だとしたら。スティーブは21歳になりますが、ダレンは13歳なんですよね。かつてと変わらぬ姿の親友と対峙した彼が胸の内に何を抱くのか…今後の展開が気になります。


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