ALLIES OF THE NIGHT
─真夜中の同志─



 …今回は。色んな意味でやられました。ええ。
 そして色んな意味で最もインパクトがあったシーン、というか台詞は
 "I've noting to lose. I'm with you"
 同じ台詞でも、捉え方によって見事に意味が変わります。
 この後の"to the death"も、同じ言葉でありながら発言者二人の抱いていた感情は正反対なんですよね…。

 今回は読みながらの感想なので、とりとめなく長くなっております。


 スティーブが登場して、タイトルの「同志」は彼のことだろう、と思ったあとでも、やはり一抹の不安がありまして…。この時、エバンナの予言を思い出したんです。
 ダレンが見た、ひとつの未来。彼が魔王になるかもしれないという可能性。
 これを実現させるなら、彼を絶望させればいいんじゃないかな、と。彼の親しい人物、これまで関わった人々を皆殺しにしてしまえば、成就できるのかもしれないと思えたんです。……想像して嫌になりましたが……。

 今回クレスプリーが読み書きできなかったというのはかなり意外でした。しかもバンパイアのほとんどがそうだったとは…こうしてみると、ダレンってかなり貴重な人材なのかもしれませんね。
 しかし、書かない分、全てを記憶するしかないんですから、バンパイアの記憶力はかなりのものなのではないでしょうか。

 ダレンの学校に対する恐怖心を和らげようとしたハーキャットの言葉が良いんですよ〜。それに、クレさんの力強い励ましが頼もしくて、このシーンはちょっと感動したんですが、ちゃんとオチがある辺り、やっぱりクレさんというか二人らしいというか(笑)。

 そしてデビーとの再会!このシーンはお気に入りです。"How time flies"と、悪戯っぽい笑みを浮かべてキスするダレンが小悪魔っぽく見えたのは私だけではないと思うんですが…(笑)。
 デビーにとってダレンは思い出の人。ダレンにとっては想い続けていた女性。先生と生徒と言う立場が枷になっている部分はあるけれど、ダレンとデビーの越えられない壁、というものがやはり切ないです。デビーにしてみれば「生徒」としてしか見られない、けれどもダレンは彼女を想っている、そのすれ違いが何とも……。
 とはいえ、一番重要なことを隠したままでは本当の信頼関係を築くことは出来ないのでは、とも思えます。ましてやデビーとダレンでは年齢差は開いて行くばかり、その事実を乗り越えるだけの絆を得ることができるのか……。
 もちろん、ダレンの想いが成就するといいなと思うんですけど、3巻を思い出すとまた切なくて。

 パリス元帥の死は、やはりという気持ちが強かったです。「元帥が一人欠席しなければならない」という暗黙の了解で葬儀に参列できないダレンが寂しそうで。仕方ないこととはいえ、でも実際他の元帥に譲ってほしいと言われれば断ることはできないし。参列を望んだハーキャットが結局一緒に残ってくれたことは救いになっただろうなと。
 にしてもクレさん過保護すぎじゃないですか?(笑)状況が状況だけに警戒するのは当然ですし、半バンパイアのダレンは肉体的に力が及ばないという部分があると思いますけど……基本的にクレさんはダレンに甘い気がします。

 そしてスティーブ登場!!予告通り8巻再登場ですね。
 何とバンパニーズ専門のハンターになっていたとは。やたら怒りっぽかった子供の頃とは打って変わって沈着冷静。ある意味冷酷…?と思えたほど。でもこれが無性に格好良く見えるんですよ〜。
 この後、ダレンがデビーに正体を明かすんですが、この時のスティーブの拍手といい病院送り発言といい、いちいち皮肉っぽい所がまた魅力的で(笑)。
 実はこのシーン、購入当初ぱらぱらめくっていた時に斜め読みしてしまったんです。スティーブの名前も見えたので、ダレンへの悪意を持ったままの彼がデビーにばらしたとばかり思いこんでいたので、再会したスティーブの態度には驚きました。
 スティーブが友好的なのは嬉しいんですが、これは果たして本心なんでしょうか。1巻ラストを見る限りではいきなり信じろと言う方が無理な気もします。ダレンはあっさり信じてますけど、クレプスリーの「悪魔の血」発言がやはり引っかかって…。
 でも、読み進むうちに、タイトルの「同志」は彼のことだろうと思い至り、いつの間にか疑問も片隅に追いやってしまいました。

 スティーブを観察するハーキャット。この時の彼の発言は用心深くて頼りになるんです。デビーの時もさることながら、この後もハーキャットの洞察力と論理立てた物事の考え方に感心しました。特にダレンが冷静でいられないときはなおのこと頼りになりますね。
 ハーキャットとダレンの間柄も好きです。"Don't lie to me,Harkat"これはダレンとハーキャットの関係を示す、もっともわかりやすい台詞ではないかと思います。

 そして久しぶりにバンチャ帰還!ダレン&ハーキャットをあっさりうち負かす所がまた格好いいです♪ハーキャット殴ってるし(笑)。
 クレさんもお帰りなさい〜。しかしあなたどうしていつも屋根側ばかり…(笑)。
 しかし、今のスティーブを見ても悪魔の血発言を撤回しないクレスプリー。
 信じられないならばバンチャが試せばはっきりする、という発言に対して。
「問題はそこじゃない、おまえさんが言うならそうなんだろう。俺はこいつを知らないがダレンとハーキャットは知っている。俺はスティーブの血よりも二人の判断に重きを置くな」……これが良かった、というか嬉しかったというか。もちろん、バンチャ自身、過去に悪魔の血と判断した者の中で、真っ当に生きた人間を知っているからこその発言だと思いますが。
 で。その話が一段落したところで、バンチャがデビーにちょっかいかけまして。それを見るダレンのやきもきする様が可愛いんですよ〜。
 でも、このバンチャの行動は半分ダレンへの当てつけに見えるんですよね。ダレンへのからかいもさることながら、7巻ラストのトラスカとのキスを根に持っているのかも(笑)。
 「女ってのは、気のある男には冷たいもんさ」
 ……バンチャ元帥……再登場&信じる発言で株が急上昇していたんですが……ひょっとしてただの女好きですか?(笑)

 囮作戦でのスティーブの割り切った思考がちと怖い…と言うか。普通はデビーみたいに嫌がると思うんですが、ハンターになるとそう考えてしまうんでしょうか。
デビーの「けだもの!」発言にも眉ひとつ動かしませんでしたし。

 「inferno net cafe」に大爆笑。クレさん素敵(笑)。これ、どう訳すのかしら。

 Hookyを追いつめてバンパニーズの居所を見つけたものの、罠を張られて窮地に立たされたダレン達。ここで名誉に訴えるバンチャが格好いいんです!Bargen始め、バンパニーズも誇り高く名誉を重んじるから受け入れるんですよね。4巻〜6巻を経ているため、改めて彼らの生き様を見せられます。
 そして、Hookyの正体がR.V.だったとは!!
 正直、今作で一番驚きました。まさかこの男まで出てくるとは……!道理で犯人の腕が義手だったわけだわ。
 だけど、コンタクトとペイントでバンパニーズになろうとしていたって…やっぱりまだ勘違いしているとしか思えないんですが(汗)。パンパニーズは吸血の際に人を殺す、その意味を良いように解釈しているだけという感じがするんですよね。
 半バンパニーズとはいえ、この男の犯行であれば、バンチャやクレさんがバンパイアやバンパニーズのしきたりに当てはまらないと首を傾げていたのも道理です。

 どうやらバンパニーズも大王の言葉に盲目に従っているというわけではない模様ですね。なんだかこう、バンパニーズ大王って本当にバンパニーズを夜の支配者にするつもりがあるのか疑問を抱いてしまいます。仲間は選ぶべきだと思うんですが。

 そして、裏で糸を引いていたのは誰か、というバンチャの詰問。
 (この時の"Who's the clever boy?"という台詞にも惹かれます)
 味方を背に、敵であるバンパニーズやバンペットたちを正面に見据えての詰問に背後からの声。──あああ、やっぱりスティーブ!!
 しかも彼も半バンパニーズだったとは……道理で手袋外さなかった訳だ……。
 首謀者がスティーブであることを知ったクレプスリーの言葉、
"Take off your gloves,"
"Take them off and show us your hand"
 緊張した様子もさることながら、この言い回しが好きです。
 19章のこの一連、特に167P〜168Pはこの本の中で一番どきどきしながら読みました。
 6巻を読んだときも思ったんですけど、原書の表現ってやはり格好いいですね。

 結局、スティーブは誤解したまま、蜘蛛をけしかけたことすら全て計画だったと思いこんでいたわけで。復讐のため彼自身もバンパニーズになるその執念が怖いです。それこそ地の果てまでダレンを追いかけてくるのではないでしょうか…?
 一番心配なのが、スティーブの裏切りによるダレンへの影響なんですが、今はデビーの安否の方が気になっている模様ですね。でもデビーの件も含めてこの一件が片づいたら……真に和解出来ない限り、ダレンの心の傷は血を流し続けることになるのではないかと思えるんですけれど……。

 そして激しい怒りを秘めつつ言葉を向けるクレスプリー。
 "Blood does not change. I should have killed him years ago"には鳥肌が…(汗)。
 しかもこれ、ダレンを騙したことに対する怒りが多分に含まれている気がします。ダレンは友達を大切にする子だから、スティーブを今も親友と思っていた事を知っていただろうし、心から親友を信じていた事も知っていますし。
 無論、このような輩が夜の眷属になった事への嫌悪もあると思いますが。

 それにしてもスティーブ。クレプスリーと再会したあのシーンは後から読み返すといい根性しているというか……。あからさまに敵対する立場にあるのに、「悪魔の血じゃない!」と断言してますよね。ただ、ここは本音のように思えます。このシーンだけ昔の癇癪が出ている印象がありますし。
 クレプスリーこそ信じていませんでしたが、スティーブの他者を欺く手腕といい、人質にする事を計算した上でデビーを同行させた計算高さといい……それら全てが復讐の為というのが怖いです。
 最初にも書きましたが"I've noting to lose. I'm with you"も"to the death"も。「運命を共にする」ではなく「この手で息の根を止めてやる」だったんですよね……。あああ、痛い…(泣)。
 ここでちょっと疑問。クレさんはスティーブの血ではバンパイアにはなれないと断言していましたが、バンパニーズになることはできたんですよね。バンパニーズの血はバンパイアには毒だという話ですけど……バンパニーズが同族を迎え入れる基準って一体どういうものなんでしょう。

 ダレンに向けられたガネンの死の手のポーズ。これは広義での同族に対するもの、なんでしょうか。敵に送るものではないような気がするんですけど……。圧倒的に不利な立場にあったわけですが、単に皮肉だったのか、それとも本心だったのか。

 デビーを人質にR.V.逃走。
 双方に甚大な被害が出るからと逃走の猶予を与えたガネン。これはひょっとして前回彼を見逃した借りを返した、ということなんでしょうか。(しかしそうするとさっきの死の手のポーズは…?)
 でも、彼の発言は不思議とカーダを思い起こさせます。
 結局、ガネンの提案を受け入れ、人質交換の意味も含めてスティーブを捕らえ、バンペットも一人捕まえたまま逃げる一行。15分のタイムリミットが過ぎたことを知らせるように、背後から足音が近づいてくる…。

 って、ここで終わりですか!?ここからという所で!!
 これは、原書に流れる人が増えそうですね〜。
 でも、9巻…あの予言もありますし、続きは気になるけれど読むのが少し怖いです。



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