とうさまへ。 とうさま、こんにちは。 おてがみをかくのははじめてだから、どきどきしてるの。 ちょこは元気。 とうさまといっしょにいられないけど、 みんながいっしょだから、元気なの。 アークはね、いつもがんばってるの。 いっしょうけんめいで、とっても強いんだよ。 それから、やさしいの。 ときどき頭をなでてくれて、笑ってくれるの。 ちょこ、アークのえがおが大好き。 でもね、このまえのアークは、ちょっとさびしそうだったの。 笑ってたけど、泣いてるみたいだったの。 かなしいの?ってきいたら、アークは少しだけ首をよこにふって、 ちょこの頭をなでてくれたの。 だけど、いつもみたいにうれしくなくて、 なんだかちょっぴりさみしかったの。 アーク、はやく元気になるといいな。 ポコはね、いつもにこにこしてるの。 楽器をひくのがうまくて、いろいろきかせてくれるんだよ。 ちょこ、ポコのおんがくが大好き。 それから、おりょうりがとくいなの。 ちょこの大好きなハンバーグも作ってくれるのー。 とうさまのハンバーグとちょっとちがうけど、 とってもおいしいんの。 トッシュはね、いつもお酒をのんでるの。 お酒が大好きなんだって。 ちょこがハンバーグ大好きなのとおんなじかな? でもとっても強いんだよ。 あのね、このまえちょこに「うぃすきーぼんぼん」をくれたの。 ちょっとにがかったけど、とってもおいしかったよ。 でも、あとでみんながびっくりしてトッシュをおこってたの。 なんでかな? イーガはね、いつもしゅぎょうしてるの。 むつかしいかおをしてるけど、こわくないの。 このまえおはなししたけど、よくわからなくて、ちょこ困っちゃったの。 そしたらちょっと笑って、ちょこはいい子だねって。 よくわからないけど、うれしかったの。 でもね、ちょこのキックを見たとき、とってもびっくりしてたよ。 ゴーゲンはたくさんたくさん知ってるの。 みんなも、わからないときはゴーゲンにきいてるみたいなの。 それからね、くねくねプリンのこと知ってたの。 ちょこがくねくねプリンになるのー、って言ったら、 楽しみじゃな、って笑ってたの。 ちょこ、くねくねプリンになったら、ゴーゲンをびっくりさせたいの。 チョンガラはね、シルバーノアのせんちょうなの。 このまえまでみんなの絵をかいてたけど、 今はシルバーノアをうんてんするからいそがしいんだって。 チョンガラのちょこの絵ってこけしみたいなの。 ちょこってこけしとにてるかな? ククルはね、いろんなおはなしをしてくれるの。 しんでんに行くと、いろんなおはなしをきかせてくれるんだよ。 でも、ちょっとさびしそうなの。 いまはいっしょにおでかけできないけど、 またシルバーノアにいっしょにのりたいな。 エルクはね、いっつも元気なの。 ちょっとあわてんぼうだけど、いっしょうけんめいがんばってるの。 でも、すごいねっていうと、あかくなってそっぽをむくの。 どうしてかな? たまにアパートのちゃたろうを見にいってるんだって。 ときどきいっしょにあそんでくれるの。 リーザはね、とってもやさしいの。 ちょこといっしょにあそんでくれるんだよ。 このまえはひざまくらしてもらったの。 とってもあたたかかったよ。 それにね、リーザはパンディットがいつもいっしょなの。 パンディットはいつもちょこがねるときそばにいてくれるの。 ふわふわしてて、きもちいいの。 シュウはね、おしゃべりしないの。 いつもまっくろで、大きなにもつをせおってるの。 なにが入ってるのかないしょだって。 おもくないのかな? でもとっても足がはやいの。 こんどちょことかけっこしてほしいな。 シャンテはね、おうたがとってもうまいの。 きれいなこえでおうたをうたうの。 ちょこもおうた大好き。 おりょうりがすきなんだって。 にんじんもお花のかたちに切ってくれるの。 それから、とっても強いの。 このまえもくつをぬいでなぐってたのー。 サニアはね、いつもおこってるの。 でも、みんなはおこってないの。 うらないがとくいなんだって。 ちょこもうらないとくいなの。 くつをなげるとあしたのお天気がわかるんだよ。 グルガはね、とっても強くて大きいの。 ちょこ、グルガとおはなししてたら首がいたくなっちゃった。 このあいだね、かたぐるましてくれたの。 とってもたかくてとおくまでみえたの。おもしろかったよ。 くらいところがにがてなんだって。 ヂークは、ヂークベックっていうロボットなの。 強いって言ってるけど、ほんとかな? でも、頭から小さなヂークが出てきたり、 けむりをふいたりして、とってもおもしろいの。 みんなといっしょだから、楽しいの。 だから、しんぱいしないでね。 ちょこ、元気だよ。 ちょこより |
ちょこが書き上がった手紙を折っていると、扉をノックする音が聞こえてきた。 「は〜い」 ちょこの返事に扉が開き、リーザが顔を覗かせた。 「ちょこ。お手紙、書けた?」 「書けたのー」 ちょこは椅子から降りると、折った手紙を両手で高く掲げて見せた。 リーザが微笑む。 「じゃあ出かけましょ。エルクも一緒に行ってくれるって」 「わーいのー!」 ちょこが嬉しそうにその場で跳ねる。 リーザは机の上の封筒を手にすると、ちょこに渡した。 「お手紙は封筒に入れなくちゃ。きちんと封をしてから、届けに行きましょうね」 「はーい」 ちょこが手紙を封筒に納めるのを見つめながら、リーザはふと思う。 ──ラルゴさんは、きっとちょこのことがとっても大切だったんだろうな…。 ちょこと一緒にトココ村を訪れるたびに、いつもラルゴが歓迎してくれた。 娘を見つめるまなざしは愛おしげで、リーザは彼に会うたびに祖父を思いだしていた。 そのたびに、羨ましそうだな、とエルクに何度かからかわれたものだ。 だが、エルクがラルゴとちょこを見るその瞳も、とても優しかったとリーザは思う。 だからこそ、あの出来事に、誰もが衝撃を受けたのだ。 言葉にすることのできない、悲しみ、苦しさ。 村の真実の過去の姿と、そこに住まう人々の業。 そして……人を、家族を想う心……。 トココ村は、もう存在しない。 紡がれていた夢は消え去り、後に残るのは様々な記憶と本来の時間に存在する村の跡だ。 二度と訪れることはないと思っていたけれど…。 「できたのー」 ちょこの言葉に、リーザが我に返る。 封筒を手に、ちょこがにっこりと笑っていた。 つられるように、リーザも笑みを返す。 「じゃあ、行きましょ」 「うん!」 リーザが手を差し出すと、ちょこはその手をしっかりと握りしめた。 ちょこの想いの込められた大切な手紙。 読んでくれる人はもういないけれど。 ──きっと、伝わるから。 手紙を思い出の場所に届けるため、リーザはちょこと共に部屋を出た。 |
──Fin
<あとがき> 今回は雰囲気を変えて、ちょこの手紙をメインに話を持ってきました。 ちょこの覚醒イベントは、回を経るごとに奥深い話になっていきます。中でも一番衝撃的だったのは、やはりトココ村の真の姿がわかるイベントですね。 村人の選択が実際に有り得ることであるが故に、やるせない気持ちと悲しさが感じられて。この村が再現された経緯が語られたとき、無性に切なかったです。 そして、ちょこの夢の中でのラルゴさんとちょこの会話。ラルゴさんのちょこへのやさしくも切ない愛情が伝わってきて…このお別れシーンは見ながら半泣き状態でした。 夢の中で、ラルゴさんがちょこへたくさんの言葉を遺していきます。だけど、ちょこもラルゴさんに伝えたいことがたくさんあったんじゃないかな、と思いまして、今回「手紙」という形でちょこが気持ちを伝える話を書いてみたんですが、いかがだったでしょうか。 ちょこの口調って難しくて、ちゃんと彼女の手紙にみえるのか少し心配なんですけど…(汗)。 あ、それから。上ではチョンガラの似顔絵を見せてもらった、とありますが、実は1のモンスター図鑑にちょこのイラストはありません(爆)。でも、チョンガラはフィールド移動画面でもケラックたちの絵を描いていたようですので、図鑑とは別に描いていたのだと思います〜。 |