流れる虹 




 ミリアムの放ったサンライトアローがモンスターの身体を貫いた。
 思わぬダメージに敵が怯んだその隙を逃さず、グレイが鋭い一撃を叩き込む。
 間髪入れず、ジャミルのレイピアが急所を突いた。
 流れるような攻撃を一身に受け、モンスターはその場に崩れ落ちる。
 モンスターが徘徊する場所で緊張を解くわけにはいかないが、それでも戦闘を終えた安堵感が一同を包み込んだ。
「すごいね、ミリアムの術法って」
「まぁね」
 ここで謙遜しないのがミリアムらしい所である。
 もっとも、これだけの威力を備えているのだ。賛辞を受ける方がむしろ自然とも言えた。
 ミリアムはアイシャにウインクしてみせる。
「術を使わせればちょっとしたものって言ったでしょ?光術を覚えたのは最近だけどね」
 リガウ島を後にする際、火術だけでは心許ないと言っていた彼女が新たに覚えたのが、光術だった。
 火術を得意とするミリアムは、水術での回復が望めない。
 そこで新たな系統に光術を選択することとなったのだ。
 回復に少々コストはかかるものの、強力なサンライトアローで攻撃の幅も広がり、彼女にとって一石二鳥だったというわけである。
「私も術が使えたらなぁ」
 ぽつりとアイシャが呟いた。
 彼女も出会った当初に比べれば徐々に力をつけているのだが、武器が馴染むまでは時間も掛かる。今の状態では戦力足り得ない事を気にしているのだろう。
 そんなアイシャに、ミリアムは一つの提案をした。
「じゃ、癒しの水から始めてみる?アイシャは素早いから、使いこなせれば戦力アップ間違いないよ」
「本当!?」
「ね、グレイ」
 ミリアムが彼を見やった。アイシャも期待に満ちた眼差しを向けている。
「そうだな、回復魔法は覚えておくに越したことはないだろう」
 むしろ、町で気づくべきだった。
 一応グレイも癒しの水を覚えているが、いざ戦闘になると攻撃主体になるので実際に使う機会が少ないのだ。どうしても回復もミリアムに任せる形になってしまう。
「じゃ、町に着いたら術法屋に行こう」
「うん!」
 アイシャの弾んだ声を聞きながら、グレイはもう一人の仲間に視線を向けた。
「この際だ、お前も覚えておけ」
「術なんて面倒臭ぇけどなァ」
 ジャミルはといえば、やる気なさげに頭の後ろで両手を組んでいる。
「回復手段の一つも覚えておかねば、いざという時不利になるぞ」
 何より、こういった術の使い手は分散させるに限るのだ。一人に任せきりでは、当人が危機に陥った場合、全滅の可能性が高まる。
 この点は少し考えれば誰でも思い至る事だ。案の定、ジャミルはすぐに納得した。
「ま、確かにそうだよな。オレとしちゃあ回復は女のコにお願いしたいトコだけどよ」
 彼らしい物言いに、グレイが小さく笑う。
 方針が決まれば後は実行に移すだけである。
「だったら善は急げってね。早いとこ次の町に向かいましょ」
 ミリアムの声を合図に、グレイ達は再び前へと進み始めた。

──fin


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<あとがき>
 お題用に書いた短文ですが…実はお題のタイトルを勘違いしておりまして。
 ロマサガで一番好きな二人中心ですし、削除するのも寂しいのでこちらに移してみました(苦笑)。

 虹=ミリアムの光術、ということで。グレイ視点の一行話です。
 グレイが背中を預けられる戦士になるのは大変だと思いますが、術士のミリアムの場合は自然と彼と補い合えると思うんですよ。
 グレイ自身、彼女に一目置いてますしね。
 グレイが振り向かずに前へと進めるのは、後に続くミリアムの存在を確信しているから。
 うちの二人はこんな感じです。
 アイシャはミリアムに懐いていて、ジャミルはこいつら面白そう、とくっついてます(笑)。
 (050724up)