求む想い〜side tashigi すぐ近くにいるのにひどく不安で。 触れている肌のぬくもりが、不意に消えてしまいそうで。 身を固くしてしまう。 「たしぎ?」 問いかける彼の声は怪訝そうで。 不安がらせたいわけじゃないのに。 一緒にいると安心する。そばにいたいと思うから。 ――好きなのだと実感するから。 その気持ちを口に乗せようとした時。 「…離さねェよ」 思わず、目を見開いた。 彼の顔を仰ぎ見る。 ロロノアは、じっと私を見つめていた。 そして、もう一度、繰り返す。 「離しやしねェ。絶対に」 「…どうして…?」 呟く私に、彼は笑ってみせる。 「俺は欲張りなんだ。全部手に入れなけりゃ気がすまねェ」 「全部って…」 答える前に、彼は私の背に回していた右手で頬に触れ、口づける。 「今だけじゃねェ、これからずっと、俺の物だ」 ――それが、誰への宣言なのかはわからない。 私への?それとも、自分自身への? …おそらくは、両方への、宣戦布告。 揺るぎない自信と強さで、虜にする。 「未来なんて解りませんよ」 誰より頼もしいその態度に、何故か反対の言葉を口に出す。 ――けれど。 彼は片方の眉を上げると、今度は私の頬に口づけを落とした。 彼の触れた頬が熱い。刻印を施されたように。 「離さねェっつっただろ」 ――知っていたの、本当は。 大きな腕に抱きしめられ、彼の言葉を耳にして。 笑みを返すうち、いつしか私は自分の抱いていた不安が消え去っていることに気が付いた。 |
──fin
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<あとがき> ……短いですね(笑)。 不安を抱くたしぎへ、潜在的に彼女の求めている言葉で応えるゾロを書いてみたかったんです。言葉だけでは状況は変わらないかもしれない、けれどもその言葉を耳にすることによって、安心できる場合もあるのではないか、と…。 互いの求めるものを感じ取り、共有する事の出来る関係。ある意味、これが私の理想とする二人の姿なのではないかと思います。 この話はもともとゾロ視点とたしぎ視点の二つで対をなす話として考えていました。 先にできあがったのはゾロ視点。で、その後この話を書いてみたんですが…。 なんだか、その…寝物語みたいだなぁ、と…(爆)。(いや、単に私がそう思っただけなんですが(笑)) ゾロ視点で書いてるから、こちらは細かな周囲の状況に触れなくてもいいわ、なんて思って書き上げて、改めて読み返してみるとそんなふうに見えたので、こちらをリストの上にしてみました(笑)。 読んで下さった皆様は、どう感じられたでしょうか? |