デビルマンレディー 第18話 「躯」

脚本 小中千昭  絵コンテ・演出 まついひとゆき  作画監督 小林利充
HAに拘禁されたジュン。前田は抗議するが、全く受け入れられない。 またその頃、アスカはCIAのお偉方と密かに会うなど、不穏な動きをしていた。 その一方、和美はあちこちを転々としていた。和美に安住の場所は既に無かった。

HAの研究対象にされていたジュン。ふと、知っている匂いを感じて部屋を抜け出す。 暗い地下道を進むジュン。その果てには、変身したまま鎖につながれたベイツの姿があった。 そしてそのベイツを弄んでいる一人の女。やがて去って行ったその女は、アスカだった。

ベイツに近寄るジュン。元気の無いベイツは、デビルマンはもう用済みだと言う。 人の心を持っていようと、獣に姿を変えたものは存在してはならないのだ、と。 しかしアスカは、ジュンだけ特別だと考えているらしい。 ベイツは、ジュンにその場を去るように言う。 だが、怒りを覚えたジュンは鎖を引き千切り、ベイツを助けて逃げ出す。

その頃、行き場の無い和美はクラブ・シャンバラで一人座っていた。 が、ライトを浴びて踊る人々の様子がおかしい。変わっていくシルエット。 彼らは獣になったのだ。

脅える和美。そしてそこにHAが突入して来る。催涙弾。銃撃。次々と倒れていくビースト達。 どうしていいか分からなくなる和美。 と、そこにどこからか自分を呼ぶ声がする。 なんと床下から一人の女の子が手招きしていた。 和美はその子と共に地下に降りる。

地下道を進んでいたジュンとベイツは少し休むことにする。 互いに異端者であることを確かめ合う二人。そしてベイツはジュンを抱きしめる。
「私は…あなたが欲しい」

和美は女の子・千佳に連れられ、彼女たちの隠れ家にたどり着く。 どうしてこんなところに…といぶかる和美に前に現れる、千佳の仲間たち3人。 そして帽子を脱いだ千佳。いずれも…人間ではなかった。 脅える和美は逃げ出してしまう。

ベイツに押し倒されたジュン。ベイツはギガイフェクトを欲しているのだ。
「もっとも強い体が欲しいんだ」
「そして、君と私は結ばれる。新しい最初の人類を生むんだ」
ベイツの勝手な言い分に、ジュンの瞳が輝き出す。それは…獣の目。ジュンは変身を遂げる。 その頃、アスカはその様子をモニタで監視していた。

ベイツと戦い始めるレディー。レディーの強さにベイツは歓喜する。レディーを抱き寄せるベイツ。
「私の血だ。なめてくれよ。互いの血を混じらせよう」
怒りが頂点に達したレディーはギガイフェクトを発現させる。 その律動がベイツをも捉える。
「It's coming!」

地上に現れたレディー。そしてその前に、同じくギガイフェクトを発現させたベイツが現れる。 対峙する両者。ベイツは自らの体に歓喜する。だがレディーはそれを冷ややかに眺める。
『何がうれしい、そんな姿になって…』
『自然な姿ではない、その体…。あなたの心は、もはや獣でしかない』
ベイツはレディーに襲いかかる。

HAの攻撃を止めもせず傍観するアスカの様子に苛立つ前田。
「あなたは何をしようとしているんです! 何を期待しているんだ!」
「真の人類を継ぐもの…」

咆哮を上げ、レディーを襲うベイツ。
『もうジェイソン・ベイツはいない…消えてしまった』
レディーは自分の首を掴んだベイツの腕を切断し、電撃でベイツを倒す。
『人の心を持ち続けることなどできないの? 獣は獣になるしかないの? ジェイソン…』
HAはレディーへの攻撃を開始する。前田はアスカに抗議する。
「不動さんは、まだ人の心を持っています!」
「そう、ジュン自身が思ってるかしら?」
「どういう意味です…」
レディーは舞い上がり、空へと消えていく…。


最初に断っておくと、サブタイトルは実は漢字が違う。旧字体であり、正確には「身區」である。 MZ-2500のマニュアルでは同じ漢字コードがちゃんと旧字体になっているんだがなあ。(いつの時代の話や) でもそのMZ-2500でも、実際に表示される漢字は新字体だったりする。 …って、関係無い話。

今回、ついにジュンはHAとも敵対することになってしまう。 もはや用済みとされたデビルマン。自分の存在は一体なんなのか。 かくしてジュンはこれから、自分の居場所を見つけることができずさまようことになる。

ということで、今回からEDの曲が変更。 私は前のEDの曲の方が好きだけど、自分の居場所をなくしたジュンには今回からの曲の方が似合ってる。

今回、ベイツとの決着編。…いや、決着とか言いつつ、戦うのは初めてだったりして。 いきなり戦ってしまう二人だけど、今までの話もあるので、流れそのものは無理がない。 そもそも、勝手な信念に凝り固まったベイツが強引過ぎるせいなんだよな。 強引過ぎる男は嫌われるぜ、フッ。

結局のところ、ベイツはほとんど自滅したに等しい。 単純に力を求め、より強くなることこそが真の進化だと信じていたベイツ。 より強い存在となることこそ正しい…そんな考えはビーストと大差ないことに全く気付いていなかった。 力だけを求め、ギガイフェクトまで手にした彼を待っていたものは、極大化した力のせいで精神制御ができなくなり獣となり果てた姿だった。 これではレディーに勝てるはずもない。

ジュンは、レディーは特別な存在だ。これから何度も語られるこの言葉。 その意味の片鱗を今回見ることができる。 ギガイフェクトまで自在にこなしながら、なおかつ自らの意志を強靭に持ち続ける強さ。 ただその強さは自身を忌まわしく思う心から生まれるものでもあったけれども、それが幸いしてベイツのように肉体の変化に心を委ねてしまうことはない。 常に自分の心を持ち続け、獣でありながら人であろうとする。 だからジュンは強いのだ。特別なのだ。 そのジュンにアスカは何を求めているのか…それが分かるのはまだ先のことである。

一方、アスカはベイツにも求めていた。 なんとも趣味が悪いんだけど、変身したベイツをなぐさみ者にしていたという…。 この二人、最初はもっとまともな関係だったんだろうと思うんだけど、どうしてこうなるのやら。 アスカってば、変。

ところで今回アスカが謎の注射をしているが、実は最後に至るまでそれに関わる説明の類は一切ない。 でもその注射の正体は一応分かってるんで、語るべき時に語りたいと思う。 今はまだその時ではないが。

そんで、今度は和美の話。 ジュンのマンションに行ったりもするけど、相変わらず流浪の旅。 それでクラブ・シャンバラで休んでいた…というか、ひょっとして一晩そこで過ごす気だったのかもしんないけど、そこでビースト化事件発生。 これを見て目ざとい人はすぐ気付いただろうけど、このシーンは原作デビルマンのあのサバトをイメージしている。 さすが、やってくれますなあ。 …え? 何のことかって? だから原作デビルマンは名作だから読めっての!

そしていよいよアンダーグラウンドガールズ登場。 なお、こんな呼び名は設定上だけの話である。本編中には一切現れない。 今回、まともにセリフがあるのは千佳だけ。しばらくは千佳がアングラガールズの主役ね。 自分が(半)ビーストであるということを別に気にしている様子もなく、和美が自分達を恐がるのを見てもあっさりしたもの。 しかし心の奥では色々と複雑な思いがよぎっている。そういう描写も後ほど見られることになるのだ。


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