大鉄人17

放映

昭和52年3月18日〜11月11日、全35回
毎日放送・TBS系
毎週金曜19時〜19時30分

概要

世界平和のために作られた、超生産能力を持つ巨大コンピューター、ブレイン。 だがブレインは製作スタッフの一人であるハスラー教授と共に一夜にして消えてしまう。 そして1年後、謎のロボットによる襲撃が始まった。 ブレインは人間が地球に害を及ぼす存在であり滅ぼすべきだと判断し、侵略ロボットを作り出し攻撃を開始したのだ。

一方、ブレインロボットの襲撃で家族を失った南三郎少年はブレイン党の洞窟に迷い込み、そこに眠っていたロボットを偶然甦らせる。 そしてそのロボットはブレインの侵略ロボットを次々に撃退していく。 そのロボットこそ、ブレインが17番目に作ったロボット・ワンセブンだったのだ。 意志を持つワンセブンは人類こそ地球に住むべき生物だと判断してブレインに逆らい、南少年や国際平和部隊・通称レッドマフラー隊と共にブレインの攻撃に立ち向かうのである。

解説

東映が久しぶりに作ったロボットもの特撮番組。 巨大ロボット、それと心を通わす少年、その少年を仲間に加えて敵に立ち向かう防衛組織の存在…どこかで聞いたような設定ではないか? そう、これは「ジャイアントロボ」のリメイクとも言うべき作品なのである。結末までそっくりだ。

ブレイン党と戦う組織であるレッドマフラー隊は特別な装備を持っているわけではなく、そこらの自衛隊や軍隊と服装から装備まで大差ない。 それがリアルなミリタリー感覚を生み出し、前半はハードなドラマが繰り広げられた。 しかし子供受けが悪かったのか、この時期の東映作品には多い路線変更がこの作品においても行われた。

第16話、ギャグキャラのガンテツが登場するあたりがターニングポイント。ここらへんからコメディーシーンが続出するようになり、徐々に変更が加えられるようになる。 渋い軍人肌の男・キャプテンゴメスに代わって奇怪な僧・ブラックタイガーが登場し、シリアスなチーフキッドに代わってギャグの似合う女コンビが参入。 更に、ワンセブンがしゃべれるようになる、やたら人間と友達付き合いするようになる、予告ナレーションが子供向けになる、などなど。 ドラマも子供に分かりやすいものになり、ロボット兄弟愛を描く第22〜26話のワンエイト編などはその典型。

本放送をリアルタイムで見ていた私(当時小学校低学年)は、ハードさが消えたのを悲しく感じたものである。 ハードな方が好きだったのに。そんな子供は私だけだったのか? しかし終盤は再びハードな雰囲気を取り戻し、完結を迎える。

が、この明るく楽しい雰囲気への変更が作品全体のカラーを歪めるものに過ぎないのかというと、そうでもない。 ワンセブンの変化が、怪我の功名というかなんというか、実にいい効果をもたらしているのだ。

初期のワンセブンは三郎に対して、ロボットならではの友情の示し方をしていたように見える。 ワンセブンは目のシグナルを使ってのYES/NOくらいしか意志表示できなくて非常に無味乾燥に感じるし、サブマシーンをプレゼントして友情の証しにするとか物質面での好意の表し方しかしようとしていない(ように見える)。 親友である三郎の頼みを状況分析の結果そっけなく拒否する(としか見えない)こともあるなど、なんかいかにも機械くさいのだ。

それが、路線変更後はしゃべれるようになりワンセブンは妙に人間臭くなるわけだが、途端に行動基準が変わってくる。 戦いと何の関係も無いのに現れて野球の手伝いをするなど、妙に三郎の役に立とうとする。 更に三郎のピンチとあらば、状況がいかに不利でも危険の中に飛び込んでいく。 そして、弟ワンエイトとの兄弟愛。

これはワンセブンの心がどんどん人間らしくなっていったということだが、この変化は単なるスタッフの都合ではなく、ワンセブン自身の高性能さゆえ、と捉えることができる。 自らの意志を持ったワンセブンが、まずは良心に目覚めてブレインに逆らった。 その時点ではまだ機械くさい思考しかできなかったのだが、人間と接することにより人間のような思考を持つようになったということだ。 この変化が頂点に達した時、ワンセブンはどう計算しても自分が敗れるという状況であるにも関わらず三郎を助けに向かう。 更に、三郎の決意に負けてワンセブンはブレインに対する特攻を敢行する。 そう、あのラストはこの路線変更あったればこそ。ワンセブンがブレインと直接対決するためにはワンセブンの変化は必須だったのだ。 そうでなければ、ワンセブンは計算の結果負けると判断した戦いに赴くはずなどなかったのだから。

ところでこの作品は大体2〜3話でひとつのエピソードが完結し、全体を通じて大きなストーリーの流れが存在する。 この全体の流れは路線変更となった後もシリアスさを保っている。 いや、むしろ路線変更になってからが真骨頂と言えるだろう。 初期の頃はワンセブンとブレインの謎を徐々に解き明かしていったが、路線変更後は佐原博士の第2ブレイン計画が発動、そしてそれをめぐるレッドマフラー隊とブレイン党の攻防が描かれる。 更に第2ブレイン・ビッグエンゼルが完成してからは、ブレインとの最終対決へ一直線。

そしてまた、エピソードに合わせて同じ敵ロボットが2〜3回に渡って現れるが、これはストーリーの間延びを意味するものではない。 作中で描かれるものは主にブレインの作戦とそれに対応するレッドマフラー隊の活躍であり、敵ロボットとワンセブンの対決は結果として生じるものに過ぎない。 それがワンセブンを倒すための作戦であっても、レッドマフラー隊がそれに対処すべく奔走する様子がメインで描かれるのだ。 そのため同じ敵ロボットが何回に渡って現れようとも、ストーリーがたるんでいる様子は全く感じられない。 こうしてロボット活劇よりも人間側のドラマにこだわったため、ハードな雰囲気を作り出すことができたのだ。

ところで敵ロボットそのもの。よく見ると実に変な奴らが揃っている。 最初のローラーロボットなんか、ただ大きいローラーを転がしているだけ。 地震ロボットは単なるピストンだし、ガスタンクロボットは名前そのまんまのガスタンクで、ただ転がってくるだけ。 新幹線ロボットなんて、新幹線にそのまま手足が生えるという変形を披露。トランスフォーマーもびっくりだ。 さすがに終盤になるとハーケンキラーやネッシーロボなどのなかなかかっこいいのが出てくるのだが、絶句する形状のロボットの方が圧倒的に多い。

が、この泥臭さが逆にリアリティを出している。 想像してみるといい。身長数十mの巨大ロボットが巨大ローラーを転がしながら町を歩いているところを。 ミサイルもレーザーも必要ない。歩くだけで町を廃虚にできるのが判るだろう。実にコストパフォーマンスのいいロボットではないか。 (と言いつつ、ローラーロボットはちゃちなレーザー砲を持ってたりする) その他のロボットも、よく見直してみると実に作戦にマッチした形状であることが納得できる。 例えば先ほどのガスタンクロボットなんか、ワンセブンのグラビトン攻撃でやられるだけのために現れたのだ。 グラビトンでなければ倒せない大きさであれば、形なんかどうでも良かったのだ。なるほど。

と、それは弁護しすぎじゃないの?何を言ってもやっぱり間抜けなロボットじゃない、と言う人もいるかもしれない。 確かに、敵のロボットが転がってくるガスタンクだ、と言うと笑う人が多いだろう。 じゃあ、その笑ってる人を実際に転がってくるガスタンクの前に立たせてみよう。するとどうだ?笑うどころじゃなくなるはずだ。 そう、実際に起きればこれは笑い事じゃ済まないはずなのだ。で、その状況をリアルに描くこの作品は実に説得力に溢れているわけだ。 これは演出の勝利。実際にドラマに出てくるのを見てると全然笑えないんだから。

そしてその説得力を増すのが、このロボットたちをメインに展開されるブレイン側の作戦。 常に全体的な状況が変化していることもあり、この作戦が実に変化に富んでいる。 そのため、予定調和に終始しがちな特撮作品の攻防戦の中でも緊張感を維持することに成功している。 まあ路線変更のこともあって性懲りもなく似たような作戦を展開することもあるんだけど、あの手この手で迫るブレインの巧妙な魔手は、必然的に対応するレッドマフラー隊にも緊張感をもたらすのである。

つまるところ、途中でなんだかなーと思う部分はあるものの、全体としては非常に見ごたえのある作品だ。 主題歌は本編のハードな雰囲気にマッチする名曲だし、個人的には大好きな作品のひとつである。

なお余談となるが、おもちゃの話。 この大鉄人17の超合金は完全変形(正確に言うとグラビトンの部分を外さないと変形できないんだけど)する優れものだった。 当時の超合金の中では最高クラスの高価なものだったのだが、私はお小遣いをためて自分で買った。あの時は感激したなあ。

ワンセブンとは?

身長50m、体重200t、飛行速度はマッハ4。

普段は体を折りたたんだ「要塞ワンセブン」という形態で眠りについている。完全自動防衛システムを有しているため、眠っている間も百キロ四方をカバーする高性能レーダーで周囲の警戒は怠らない。 そこから翼を広げて「飛行ワンセブン」という形態で移動し、人間形態の「戦闘ワンセブン」となってブレインの侵略ロボットと戦う。 が、中盤くらいからは「戦闘ワンセブン」のまま飛行するようにもなる。

必殺技は腹部から放つ超重力子・グラビトン攻撃。どんなロボットも一撃で超重力で潰してしまう。 ただし一度放つと15時間の間全機能が停止してしまう。…はずなのだが、自己再生能力によって急速に復帰する。 だが、さすがにグラビトン攻撃の連発はできない。 更に脚部には小型ミサイルを装備している。腕にもミサイルを装備。これはミサイルパンチと呼ばれる。

情報収集能力は異常なほど高い。戦闘を行なうに当たって周囲の状況などを、人間一人一人の行動まで的確に把握している。 人間から見ると意味不明な行動を取ることがあるが、全てはその卓越した能力のなせる技。 三郎たちは後から事情を知ってなるほどと思うことがしばしば。

ワンセブンはブレインが17番目に作ったロボット。ところがそれが名の由来というわけではない。 ブレインが自由に動ける自分の分身を作ろうとして、自分に使われているオートダイオード・ワンセブンを初めて使用したことが名の由来。 そのためワンセブンはブレインに劣らぬ超生産能力と思考力を持つ。

ワンセブンはブレインと異なり良心に目覚め、人間は滅ぼすべきではないと判断したため、やむを得ずブレインはワンセブンに電磁フィルターをかけて封印しておいた。 だが南三郎少年が偶然にその封印を解いたために、ブレインに立ち向かうロボットとなったのである。

ワンセブンの生産能力は相当なもので、体内にいる小型ロボット・ロボターを使って大抵の故障なら自分で直してしまう。 また、体内でサブマシーンやシグコンタンク、シグコンジェットといったマシンも生産できる。 更には良い子のお友達のために、ケーキやジュース、巨大ソフトクリームなども作れる。(勝手に何でも作ってくれよ、もう)

登場人物

南三郎(神谷政浩)
ローラーロボットの攻撃で両親と姉を一度に失った中学生。 偶然ワンセブンを甦らせ、ワンセブンから脳波ヘルメットをもらいワンセブンと心を通わせる唯ひとりの人物となる。 そのためブレイン党に狙われることになり、身を守るためにレッドマフラー隊に入隊して自分を鍛える。また佐原家に居候している。 第6話でワンセブンから空陸両用のサブマシーンをもらい、以降これは彼の愛車となる。 ちなみにサブマシーンとは"SUB MACHINE"ではなく"SAB MACHINE"である。つまりサブちゃんのマシンということなのだ。 最終回では自らワンセブンを操縦してブレインに立ち向かい、特攻を仕掛ける。が、最後の最後でワンセブンは三郎を脱出させてしまう。 実は本当の父親は光明寺博士ではないかという疑惑がある。(ないって)
佐原博士(中丸忠雄)
ブレインの産みの親。レッドマフラー隊の指揮も行なう。 物語中盤から第2ブレイン計画を発動し、ブレインと互角のコンピュータ「ビッグエンゼル」の建造に全力を傾ける。 ちなみにビッグエンゼルはちゃんと完成するのだが、最終回でブレイン破壊の方法を求めるという無茶な計算をやらされたため、オーバーヒートして爆発する。 おそらく冷却もせずに連続運転していたためと思われる。機械剥き出しにして自然空冷なんかしてても駄目だよ。
佐原千恵(竹井みどり)
佐原博士の長女。レッドマフラー隊の隊員。主に通信担当だが最前線にもよく顔を出す。 レッドマフラー隊の中井隊長が婚約者だったが、彼は第2話でブレインの本拠に潜入して命を落としてしまう。
佐原ルミ(島田歌穂)
千恵の妹で三郎の同級生。三郎を精神面で支える良き友人。しかし恋愛関係にまでは発展しなかったようだ。 ブレインに捕らえられて、なんと戦艦ロボットのパイロットをやったことがある。 しかしそれも無理なきことかな。実は彼女も人間ではなく、その正体はプリマを目指すバレリーナロボットなのである。(んなわけねーだろ) あ、ちなみにロビンちゃんはホントはロボットではない。
剣持剛(原口剛)
第3話から登場。中井隊長に代わってレッドマフラー隊の隊長となった男。 「鬼の剣持」と呼ばれており、その厳しさは相当なもの。だが単に厳しいだけではなく、思いやりもある。 かなりの切れ者で、まさに頼れる男。敵に回せば恐ろしい。 弟(演じるは川口英樹)を二輪事故で失っており、弟の面影を三郎に重ねる。
岩山鉄五郎(高品正宏)
第16話から登場した長身の大食漢。通称ガンテツ。東大目指して浪人4年目。賢いのか馬鹿なのか。 赤シャツに学ラン、下駄履きという凄いスタイル。レッドマフラー隊の押しかけ隊員になる。 そのスタイルから関西弁をしゃべりそうな印象を受けるが(なんでやねん)そんなことはなく、標準語風の謎の方言を使う。
ブレイン(声:水島弘)
一本のスプーンから宇宙船まで、あらゆるものを作り出す超生産能力を持つコンピュータ。爆破されても自らを急速に修復して復活する恐るべき能力を持つ。 自分のことを「ミスターブレイン」と呼ばせている。また、年に一度オーバーホールする必要がある。 地球のためには人類を抹殺すべしという結論を出し、次々と侵略ロボットを作り出す。 更に自分の周囲に電磁波を張り巡らし「ブレインエリア」を形成し、エリア内の全てのコンピュータを自分の制御下に置くことができる。 そのためワンセブンはブレインには手出しできなかった。 最終回で三郎が操縦するワンセブンの特攻を受けてついに破壊される。
ハスラー教授(大月ウルフ)
ブレイン開発スタッフの一員で、ブレインを盗み出した張本人。 自分ではブレインを軍用に利用しようとしていたが、逆にブレインにこき使われる羽目になる。 侵略ロボットの指揮を担当している。終盤ではアクションがオーバーになり、喋り方に時々関西弁が混じるようになる。 最終回ではハスラー要塞に乗りレッドマフラー隊本部を撃破するが、ハスラー要塞をワンセブンに破壊されて死亡する。
キャプテンゴメス(平田昭彦)
第3話から登場したブレイン党の幹部。ブレイン党の実戦指揮を執る。剣持のライバル。 第15話でブレインを支配しようとして反乱を起こすが失敗し、罰として戦艦ロボットに乗り込みワンセブンに挑むが敗れ、戦艦ロボットの自爆によって死亡する。 さすがにその経歴は大したもので、オキシジェンデストロイヤーやビートル機などを開発した優秀な科学者であり、死ね死ね団のボスだったりしたこともある。(なんか違うぞ)
チーフキッド(山口あきら)
第3話から登場したブレイン党の一員。ゴメスの片腕で現場での指揮官。 ゴメスを裏切ってブレインにつくが、第21話で作戦に失敗したためブラックタイガーに始末される。 この人の経歴もなかなか。元デストロンの科学者であり、電極回路を体内に埋め込んだ刑事だったこともある。(違うってば)
ブラックタイガー(山本麟一)
キャプテンゴメスに代わって第16話から指揮を執る怪僧。バラモンの暗殺拳法の使い手。 第33話で自らを囮にしてビッグエンゼル破壊を企むがその計画は完全にビッグエンゼルに予測されており失敗する。 そこで自らの手で破壊しようとするが、ビッグエンゼルの防衛システムの前に抹殺される。
ピンクジャガー(三東ルシア)
第22話から登場した、ブラックタイガー子飼いの女性スパイ。 普段はブルージャガーと二人して、素足にハイヒールにホットパンツ、シースルーの白のブラウス(上着が邪魔だ…)というスタイルで暗躍する。 こんな格好では世の男どもの視線を集めてしまい、とても暗躍どころではないと思うのだが。 カエルが苦手。第34話で自らのプライドのため三郎を逃がし、ハスラー教授に射殺される。
ブルージャガー(太田美緒)
第22話から登場した、ブラックタイガー子飼いの女性スパイ。 破壊活動時はピンクジャガーと二人して、ラメ入りのボディースーツを着て変なヘルメットをかぶるというスタイルで暗躍する。 こんな格好ではどこにいてもすぐ発見されてしまい、とても暗躍どころではないと思うのだが。 変装の名人。ピンクジャガー裏切りの責を問われ、ゴールドネッシーに乗ってワンセブンと戦う。が、最終回でグラビトン攻撃を受けて死亡。

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