FRAMEMEISTERを買ったらRGB切り替え器を作ることになった話

 これまで平日の朝はX1turboZIIIのタイマー機能によるテレビONを目覚ましにして起きていました。地デジ時代になったものの地元のケーブルテレビがデジアナ変換してくれるのでとりあえず不自由なく使えてはいたのですが、デジアナ変換にも期限はあるし、さすがに20年選手のディスプレイテレビ(CZ-614D)ともなればブラウン管はぼやけてくるもので、あと1〜2年内に世代交代させる必要を感じていました。SD画質にダウンコンバートされてても15インチの画面ならアラなんてわからないぜーなんて言ってられません。

 そんな時、リビングで使っていた地デジ対応液晶テレビ(東芝REGZA・19A8000)が勝手に音量が変化するという音声系のトラブルを発生させ、修理するより適当な店頭展示品を買った方が安いという事態となり、自室に引き取ることにしました。最初はデスクトップPCのサブモニタに…と考えたものの、置くには大きすぎるし、何より音声系以外は元気というのがもったいなく、ついにテレビの置き換えに踏み切ることにしたのです。

 そうなると今度はサポート機材の調達が大変…幸いにして3台のビデオデッキなど録画・再生機器は更新されてHDMI対応になっていましたがテレビのHDMI入力が2つしかなく、HDMI切り替え器を導入。音声系のトラブルに対しては、実はこの時点でなぜか頻発しなくなってはいたのですが念のため、内部のスピーカーの配線を外した上で光音声出力からD/Aコンバータを介して外部スピーカによる音声とすることでトラブル時の影響をカット。
 そしてX1turbo等の画面をテレビに表示させるため、FRAMEMEISTERというアップスキャンコンバータを導入することにしました。目覚ましタイマー用にテレビコントロールをリモコン信号やHDMI-CECという規格を利用して変換しないといけないかと長いこと悩んでいたのですが、テレビ自体にタイマー機能があったので今回は見送りました。

 テレビとアンプ、それにFRAMEMEISTER。この際色調が合ってないのは我慢しましょう。DACとHDMI切り替え器はテレビの後ろに隠れています。  FRAMEMEISTERで映し出したX1turboの画面。

 ただFRAMEMEISTERを含むXRGBシリーズのRGB入力は、そもそも家庭用ゲーム機なんかの接続を目的としてマルチRGB端子(21ピン)仕様(miniはその8ピン縮小版)だったりします。これはRGB自体はoldPCのアナログRGBと同じですが、同期信号がoldPCでは一般的な分離同期信号(H-Sync, V-Sync)ではなく複合同期信号(C-Sync)となっていて、そのまま接続できる機種が限定されてしまいます。当然MZやX1ではC-Syncなどないのがほとんどなので同期信号を混合させる必要があり、ネットを探せばそのための工作についていくつか記事を発見することができます。
 しかしこれだけのために回路を作ったり電源を確保したりということにスマートさを感じなかったため、何とか電源レス・ケーブル1本での接続が可能になる方法を探しだして簡単な工作で済ませていたのですが…。

 作成したRGBケーブル。C-Sync生成回路はコネクタの中に収めてあります。カールコードだったリライトアングルコネクタだったりするのは手持ちのジャンク品を利用したため。FRAMEMEISTERのRGBコネクタが奥まっていたため、ケースを少し削る必要に迫られてしまいました…。

 映像信号が同期信号に漏洩しているのか、特に白い文字や絵が多くなると同期が狂います。さらに、モニタを共有するための切り替え器を介するとさらに若干状況が悪くなる傾向があることも分かってきました。理由までは分かっていませんが、古いものですし接点の劣化によるインピーダンス増大とか、そんなこともあるのではないかと考えています。

 MZ-5500用日本語ワープロの画面。ワープロ系は基本的に白い文字でメニューとか表示しますのでこのシステムではどうしても同期に影響を与えてしまうのです。それどころかFRAMEMEISTERが同期に苦しみ、使用のたびに微調整しないと全く表示されなかったりします。ケーブル作った直後はもう少しマシに表示されてたのですが…。

 やはり受動的なC-Sync生成回路では信号品質が良くなさそう。機械式の切り替え器も問題になるのなら、いっそ電子式の切り替え器を作って、そこにC-Sync生成回路を組み込んでしまうのが最もスマートではなかろうか。というわけで検討を始めたのです。


リサイクル

 実のところ電子式の切り替え器はかつて何度も計画しては放棄を繰り返してきました。部屋のスペースの関係でそんなに多数のモニタを置けないことから、どうしても複数台のパソコンでモニタを共有する必要があったのですが、5台以上を切り替えられる市販品など見つからず、またデジタル(8色)からアナログRGBモニタへの変換など余計な部品がいろいろぶら下がったものをまとめたいとかいう思いから、ケーブルやコネクタやスイッチやICやケースや基板など集めては色々考えたりしたのです。何となく今挙げただけで目的のものが完成しそうに思えるかもしれませんが気にしないで下さい。

 今回もどうしようか思案していた所、大昔に自作した機械式の切り替え器があることを思い出し、これを流用することにしました。

 自作切り替え器。スイッチが2つあるのは4つ切り替えたいのに8回路3接点のものしか入手できなかったためカスケードしてあるからです。  オスメスがチャンポンなのはシャープ純正アナログRGB変換ケーブルをこちら側に接続したかったから。そもそもパソコン本体側に付けるものなのでメスコネクタだったんですよね。その際パソコンとは丸DIN-丸DINの延長ケーブルのようなもので接続しました。
 中身はこんな感じ。ステレオ音声も含めてラッピング線で接続しています。ツマミの形状が良くないのでケースとの間に隙間があるのが不満でした。

 昔から作りたいと思っていたのは8台切替だったのでこれを流用すると4台しか対応できないのですが、まぁ気にしない。

 さらに、秋月の赤外線リモコンキットを使って遠隔操作可能にしてみます。これらの制御は共立のCPLD基板を使って、複雑な回路もお手軽に組んじゃいます。しかしリモコンキットって絶版なんですね。買ったのはかなり昔で、改めて調べてみると基板やリモコンがその後改版されていたようですが…。CPLD基板は店頭にはまだあるんですかね?

 押すとON/OFF切替・押した時だけON・押すと順番に切り替わりがそれぞれのボタンに割り当てられている赤外線リモコンキット。信号の解析とON/OFF動作はPICマイコンが全て処理します。  ザイリンクスのCPLD・XC9500シリーズを手軽に使うことのできるボード。これは44ピンタイプパッケージ用(XC9536・XC0572が対象)ですが、実際に使用したのは84ピンタイプ(XC9572・XC95108が対象)です。

 使用するCPLDはMZ用LANボードプロジェクトで初期の試作に使用していたものの流用ですが、この時CPLDライタみたいな使い方をするためにボードを購入しました。なんでだったかな、自作ボードの配線数を減らしたくて、JTAGポートを省略したような…。

 新たに購入した部品はいろいろありますが、目立つ部品はどれも流用とか作りかけで放置したものの再利用とか使わずに残っていたものの活用などなど、まさにリサイクル。長年電子工作趣味をやってるとジャンク箱には黒歴史にしたくなるものも含めて色々溜まってきますよね。費用の節約にもなるし、ジャンク箱の中身の整理にもなるし、いいことずくめだと思いませんか?


そして完成

 機能ブロックをつなぎ合わせていくだけのようなものだったので特に回路図も描かず、とは言え途中実験で動作を確かめたりもしながら…ですがその辺りは割愛して、こんな感じにできあがりました。

 正面。ボタンで選択できる他、リモコンでも選択操作が可能です。  背面。コネクタは全てメスに統一しました。

 スイッチボタンはOMRONB3Jシリーズを使用。これも8台切り替え器構想時代に買っていたもので、手始めにとこれを8つ細い基板に並べてみたところ、特に中央のボタンを押すと基板がたわんでしまうことが分かり、さてどうしたものか…とそのままお蔵入りしていたのを流用しました。4つに減らせばたわみ量も小さくなりますし、スイッチ間にあった隙間にプラスチック片を挿入したり、スズメッキ線配線のはんだ付けを経て操作上問題ない強度にすることができました。

 正面右の穴はリモコン受光器の開口部なんですが、ロータリースイッチ固定用の穴を利用するにはいびつなので、プラスチック板を目隠しに貼り付けたのですが…なんかイマイチな感じ。

 D-Sub15ピンアナログRGBコネクタ仕様ではステレオ音声の端子も定義されており、X1turboZIIIやX68000などではここをちゃんとFM音源などの出力として使用していますので、映像信号と同時に切り替えるようにしています。その辺りは機械式時代と変わりませんね。

 中は前述の通り市販キット基板を二つ組み合わせ。単純に並べると収まらないので、高さの違うビスを使って変則二階建てにしています。ケース固定のコネクタやスイッチ、また基板間の接続は原則的にコネクタ+ハーネスで構成してデバッグやメンテナンス時に基板だけ取り出せるようにしているつもりなのですが…JSTXHシリーズコネクタは結構固く、つけちゃったらもう外したくない気分…。

 大きい基板のうち、左はCPLD基板で、ザイリンクスのXC95108を使用しています。フリースペースには音声を切り替える回路を搭載しています。CPLDはボタン操作とリモコン受信に伴う信号変化を捉え、選ぶチャンネルを決定します。そしてリモコン基板も含めて現在選択しているチャンネルの信号を有効にする他、同期信号についても選択し、そのまま出力(H-Sync, V-Sync)と合成した出力(C-Sync)を行います。
 またLED点灯も管理しています。現在選択しているチャンネルに対応する赤LEDを点灯させ、現在入力が検出されているチャンネルに対応する緑LEDを点灯させます。

 もうひとつの基板であるリモコン基板は、キットの機能としてのリモコン受信・選択された信号受信の機能の他にRGBの選択も行います。当初モーメンタリ出力(押してる時だけON)を行うチャンネルを使おうと思ったのですが3つしか出力がないため、トグル出力(ON/OFFを交互に切り替え)の4つを用いてその動きに対応したCPLD回路になるよう設計しています。ボタンでもリモコンでも選択できるという使い方故、RGB選択をリモコンの選択出力でまかなうことができず(リモコンの操作とは無関係に選択が変更されるため)、改めてCPLD基板から選択信号をもらっています。

 さらに便利機能として、どの入力からも信号を検出できない場合は全てのLEDを消灯する他、新たに入力を検出したチャンネルを自動的に選択する機能もあります。入力の検出はH-Syncがそれなりに変化していることを手がかりにしているのですが、これがパソコンの電源OFF時に相当暴れるらしく、ものによってはどうしても新規入力として誤検出してしまいます。CPLDの回路規模がもっと大きければもう少し工夫できるのですが、今回は簡単に作ろうとしたのでしかたないですね…。

 RGBはアナログ、音声もアナログということでアナログスイッチICを使用していますが、部品選定時に勘違いして、音声信号が0V中心で振れるのにもかかわらず、正電源しか使えない74HC4066を調達してしまいました。かといってオリジナルの4066を使用し±5Vとかの電源で回路を組むと、TTLまたはCMOS規格のLレベルの選択信号(こちらはデジタル)を-5Vに変換する必要が生ずることにも気づいて、結局あちこち調べ回って簡易なバイアス回路で信号を加工する方策に落ち着きました。アナログ回路やりつけてないとこんなもんです…ていうかバイアスってこういう風に使うんだ(ぉぃ)…。
 出力カップリングコンデンサの選択もよくわからないので、手持ちの0.1uFセラミックコンデンサで実験してみましたが、私の耳の鍛錬のレベルでは特に劣化しているとも感じられず、まぁ特段Hi-Fiを目指す必要もないからいいか…てな感じでそのままになっています。

 またD-Sub15ピンに音声用の端子があるといってもデジタルRGBをアナログに変換したものからはもちろん無入力になるため、別途オーディオケーブルを接続して同時に切り替えできるようにするためのアダプタケーブルも作成しました。

 左がパソコン側、右が切り替え器側。ミニジャックに音声ケーブルを接続することで、テレビに音声を出すことができるようになります。MZ-1500やMZ-5500/6500、X1/turboなどの音声出力端子付マシン用です。

 ということで我が家のシステムに組み込んでみました。

 白文字ばっかりのMZ-5500用日本語ワープロがこんなにキレイに表示されてます。もちろん微調整しないと映らないなんてことはありません。  X1turboZIIIにて、付属グラフィックツール(Z's Staff)のデモ用画像データをBASICのユーティリティにて表示させたところ。ちゃんとアナログRGB画面で、若き日の荻野目洋子が映し出されております。
 X1Gデモ画面。15.6kHz(200ライン)でもこのとおり。
 開発中のテスト風景、MZ-1500にて某31周年アプリを実行中。

 実はケースの板厚が薄いのでコネクタの挿入圧力に負けそうとか問題点もないわけではないのですが、概ねいい感じに使えているのでヨシとしましょう。前の受動C-Sync生成回路ではFRAMEMEISTERのメニューの「同期LEVEL」を大きくいじらないと映らなかったのですが、今回の(一応)ちゃんとした回路なら工場出荷時設定に戻してもさすがに問題ありません。


おまけ話

 最初に製作したC-Sync生成回路つきケーブルを単なる接続ケーブルに改造した際、一部間違いを発見しました…GNDだと思ってた端子が空き端子だったのです…ここ間違えてなかったらあんなに同期が乱れることはなかったんかな…。

 装置としてはリモコンで切り替えられるようにはしましたが、冷静に考えてそんなに使わない機能だったりもして…つまり複数台を同時に使用する状況というのはデータ交換とかかなり限定されたものでしょうし、そうでなくてもキーボードのケーブルの長さの制限でモニタや本体から離れて座ることは少なく、切り替え器からも近いのでリモコンを使わず直接ボタン操作で切り替える方が手っ取り早いのですよね。

 C-Syncの出力端子は一応PC-98などNEC系のパソコンのコネクタに合わせてあります。つまりはH-Sync・V-Syncはそのまま出ており、FRAMEMEISTER相手でなくても分離同期式のモニターへのセレクタとしても使えるようにしてあります。

 ところで、いろんな表示が安定したということでFRAMEMEISTERの実力を確認すべくMZ-3500を接続してみたところ…。

 …あの超シンプルな起動画面が表示されているじゃないですか…FRAMEMEISTER、恐ろしい子!
 ちょっと解説すると、MZ-3500は1982年当時にカラー400ライン表示を実現したパソコンであり、標準とされる仕様がなかったか、もしくはよく調べなかったかの理由により、水平同期周波数が20.9kHzという仕様になっています(後に標準となったのは24.8kHz)。これを表示できるのは現役機種であった当時でも純正モニタしかありませんでした。後にテラドライブのCRTモニターでも使用可能であることがわかりましたが、それでも入手性難あり・いずれ寿命が来る…など問題があることには違いありません。FRAMEMEISTERで映せるならこんなにありがたいことはないと言えるでしょう。

 と言いつつ、そんなFRAMEMEISTERにも弱点はあるわけで。最後に言っても仕方がない苦言など。
 とにかく便利に切り替えられて使い勝手が格段にアップした我が家の環境なんですが、同期信号と画面の位置関係が機種ごとにバラバラのようで、これを書いている時点でよく動かしているX1turboZIIIとMZ-5500では縦に8ラインほどずれてしまいます。FRAMEMEISTERの機能で微調整はできますが、ややメニューの深いところにあるのでちょっと操作が面倒…。メニュー非表示時はカーソルボタンで調整できるようになりませんかねぇ?
 また動作中に走査周波数が変わっていくのはX1シリーズ的にはよくあることですが、FRAMEMEISTERは追従できないらしく、表示されなくなってしまいます。外部入力選択などを操作すればまた同期してくれますが、自動で追従してくれると便利なんですがね…。

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