MZ manual PDF project
MZを21世紀へ持って行くために
MZやX1などのいわゆる「レトロPC」と呼ばれるマシンは、よく懐古趣味の範疇で捉えられがちなのですが、現在の情報化社会やIT革命、将来の様々な出来事の礎を築いたという点で文化財と同等の扱いをすべきだと常々考えています。まぁ確かに今は文化財ではありませんが、どんな文化財も生まれた直後は文化財ではないわけですし、いつか文化財と認められた時に何も残ってないということがないように、今の経済や社会を研究する人達のためにレトロPCを残すのはレトロPCで育った我々の義務ではないでしょうかね。
その残し方ですが、いくつか考えられます。一番よくあるのが、私のようにレトロPCそのものを保存すること。設計図だけでは細部がわかりにくかったり、部品などの質感なんかは伝わりません。ただ形があるだけでなく、動かせる状態、つまり「動態保存」をすることで現役当時の実行速度を完全に再現することもできます。さらなるひとつが、エミュレータ。形あるものはいつか崩れますが、せめてソフトだけはエミュレータさえ用意されていれば現役マシンで再現することができます。どちらかといえばハードよりソフトのほうがたくさんのアイデアが表現されているわけで、それを確認するだけでも相当の価値があると思われます。
いまひとつは、紙レベルの資料の電子化。マニュアルやパンフレット、雑誌記事、メーカーなどの広報誌は当時のメーカーの力の入れ具合や宣伝方法などがよくわかる資料です。これらは今のところかなり見過ごされている分野ではないかと思われます。ここでは、このうちマニュアルに絞った話をします。
事の起こりは毎回行われているコミケ前後のMZメーリングリストのOFF会。メンバーでありOFF会に参加する内田さんがMZ-1200を所有していることから、事前に打ち合わせてマニュアルを借りることにしていたのです。ただ借りてコピーするだけじゃなくて、どうせならPDFにしたいなぁ…あ、Acrobatってスキャナをサポートして取り込んだ画像をいきなりPDFにできるのか。てなことをOFF会で発言したら古籏さんがかなり乗り気。彼は「Future BASIC-IIでGO!」という本を書いた時に昔のBASICプログラムが移植しやすいようあらゆるメーカーのBASICのマニュアルをいろんな方面から借りてコピーをとったそうなんですが、その時にやはりPDF化を考えたのだとか。実行まではされませんでしたが、今回はやってみようかという話になったわけです。
「21世紀へ持って行くもの」。その中にMZも入れましょうよ。
…と、高らかに宣言したものの、作業は全然進捗してませんね…。マニュアルも増えているというのに…。
マニュアル一覧
古籏さんのほうにも一覧はありますが、個人的な進捗が表示しにくいのでこちらにも作ります。この表にないものは「所有してない」と判断してください。私が所有してなくて処理が終わったものは古籏さんの一覧に記載されるはずです。
マニュアル名 | サイズ | ページ数 | PDF化 | OCR | しおり | ||
MZ-80K | |||||||
BASIC解説 | A4 | 148 | |||||
MZ-80C | |||||||
取扱説明書 | B5 | 27 | |||||
BASIC解説 | A4 | 140 | ○ | ||||
MZ-1200 | |||||||
OWNER'S MANUAL | A4 | 35 | |||||
BASIC MANUAL | A4 | 185 | |||||
MZ-80シリーズ | |||||||
DISK BASIC | A4 | 192 | ○ | ||||
Double Precision SP-6110 DISK BASIC | A4 | 41 | |||||
INTERPRETER PASCAL | A4 | 164 | ○ | ||||
MACHINE LANGUAGE | A4 | 64 | ○ | ||||
SYSTEM PROGRAM | A4 | 138 | |||||
Z80 PROGRAMMING MANUAL | A4 | 164 | |||||
SYSTEM PROGRAM BACK UP | A4 | 72 | ○ | ||||
FDOS | A4 | 5 | |||||
System Command | A4 | 57 | |||||
Text Editor | A4 | 19 | |||||
Z-80 Assembler | A4 | 16 | |||||
Symbolic Debbuger | A4 | 21 | |||||
Relocatable Loader | A4 | 11 | |||||
Programming Utility | A4 | 39 | |||||
Library/Package | A4 | 34 | |||||
Appendix | A4 | 37 | |||||
BASIC Compiler | A4 | 32 | |||||
スタートレック | B5 | 28 | |||||
バイオリズム&星占い | B5 | 20 | |||||
コンピュータ家計簿 | B5 | 18 | |||||
陣取りゲーム | B5 | 7 | |||||
MZ-700 | |||||||
OWNER'S MANUAL | A4 | 262 | |||||
DISK BASIC MANUAL | A4 | 113 | ● | ||||
MZ-1500 | |||||||
OWNER'S MANUAL | A5 | 99 | |||||
BASIC LANGUAGE MANUAL | A5 | 284 | |||||
UTILITIES/APPLICATION MANUAL | A5 | 70 | |||||
初めてお使いになる人のために | A4 | 32 | |||||
MZ-700シリーズ | |||||||
SYSTEM PROGRAM MANUAL | A4 | 111 | |||||
MACHINE LANGUAGE MANUAL | A4 | 91 | |||||
MZ-80B | |||||||
OWNER'S MANUAL | A4 | ||||||
BASIC MANUAL | A4 | ||||||
MONITOR MANUAL | A4 | ||||||
IPLプログラム・アセンブリ・リスト | A4 | 15 | |||||
DISK BASIC MANUAL | A4 | 86 | |||||
DISK BASIC MANUAL | A4 | 36 | |||||
ADPP SYSTEM | A4 | 26 | |||||
MZ-2000 | |||||||
OWNER'S MANUAL | A4 | 152 | |||||
BASIC/MONITOR MANUAL | A4 | 206 | |||||
BASIC解説 | A4 | 140 | |||||
MZ-2000シリーズ | |||||||
COLOR BASIC MANUAL | A4 | 32 | |||||
DISK BASIC MANUAL | A4 | 122 | |||||
DOUBLE PRECISION TAPE BASIC MANUAL | A4 | 68 | |||||
PASCAL MANUAL | A4 | 208 | |||||
16-BIT BOARD KIT OWNER'S MANUAL | A4 | 179 | |||||
[QD] BASIC LANGUAGE MANUAL | A4 | 132 | |||||
FLOPPY DOS MANUAL | A4 | 4 | |||||
System Command | A4 | 71 | |||||
Text Editor | A4 | 20 | |||||
Z-80 Assembler | A4 | 17 | |||||
Symbolic Debugger | A4 | 21 | |||||
Linker | A4 | 13 | |||||
Programming Utility | A4 | 39 | |||||
Library/Package | A4 | 34 | |||||
BASIC Compiler | A4 | 44 | |||||
Appendix | A4 | 102 | |||||
Z80 PROGRAMMING MANUAL | A4 | 164 | |||||
MZ-2500 | |||||||
オーナーズマニュアル | B5 | 225 | |||||
BASIC-M25 マニュアル | B5 | ||||||
BASIC-S25 マニュアル | B5 | ||||||
テレホンソフトマニュアル | B5 | ||||||
初めてお使いになる人のために | B5変形 | 55 | |||||
MZ-2500V2 | |||||||
オーナーズマニュアル | B5 | 254 | |||||
BASIC-M25 マニュアル | B5 | 480 | |||||
BASIC-S25 マニュアル | B5 | 332 | |||||
テレホンソフトマニュアル | B5 | 151 | |||||
MZ-2500シリーズ | |||||||
パソコンファクス25 | A4 | 83 | |||||
MZ-2800 | |||||||
オーナーズマニュアル | B5 | 169 | ● | ||||
MS-DOS V3.1 マニュアル | B5 | 301 | |||||
BASIC-M28 マニュアル | B5 | 540 | |||||
日本語ワードプロセッサマニュアル(入門編) | B5 | 67 | |||||
日本語ワードプロセッサマニュアル(解説編) | B5 | 348 | |||||
MZ-3500 | |||||||
OWNER'S MANUAL | A4 | 60 | |||||
BASIC LANGUAGE MANUAL | A4 | 349 | |||||
BASIC LANGUAGE MANUAL [付録] | A4 | 49 | |||||
MZ-6500 | |||||||
OWNER'S MANUAL | A5 | 139 | |||||
[漢字]CP/M-86 MANUAL | A5 | 184 | |||||
MS-DOS USERS GUIDE MANUAL | A4 | 215 | |||||
BASIC-3 LANGUAGE MANUAL | A5 | 359 | |||||
BASIC-3 REFERENCE MANUAL | A5変形 | 43 | |||||
MZ-6500C | |||||||
[漢字]CP/M-86 MANUAL | A5 | 210 | |||||
MS-DOS USERS GUIDE MANUAL | A4 | 245 | |||||
MZ-6500シリーズ | |||||||
日本語ワードプロセッサ マニュアル | A5 | 179 | |||||
MZ-80DU | |||||||
COLOR CONTROL | A4 | 116 | |||||
MZ-80I/O | A4 | 5 | ○ | ||||
MZ-80SFD | B5 | 15 | |||||
MZ-80SD1 | B5 | 4 | |||||
MZ-8BIO3 | A4 | 62 | |||||
MZ-8BIO4 | A4 | 97 | |||||
MZ-1C26 | B5 | 1 | |||||
MZ-1E08 | B5 | 16 | |||||
MZ-1E18 | A5 | 8 | |||||
MZ-1E26 | B5 | 25 | |||||
MZ-1E36 | A5 | 12 | |||||
MZ-1F07 | A6横 | 17 | |||||
MZ-1F10 | A5 | 11 | |||||
MZ-1M08 | A5 | 16 | |||||
MZ-1M11 | B5 | 50 | |||||
MZ-1M12 | A6 | 4 | |||||
MZ-1P07 | |||||||
取扱説明書 | B5 | 34 | |||||
取扱説明書[付録] | B5 | 30 | |||||
MZ-1P17 | B5 | 235 | |||||
MZ-1R13 | A5 | 14 | |||||
MZ-1U03 | B6 | 17 | |||||
MZ-1U08 | A5 | 7 | |||||
○…完了、△…処理中、●…他人による完了、▲…他人による処理中 |
表中、取扱説明書しかないものは書名を省略して機種のみ記述しています。ページ数は表紙や目次などを含まず、そのマニュアルの最終ページの番号を意味します。ですので実際にはもう少し処理する必要があります。「PDF化」というのはただスキャナで取り込んでPDF形式で保存し、複数ページをまとめただけのものです。「OCR」とはイメージレベルの各ページをOCRソフトで処理して文字列化し、キーワードで検索可能にしたものです。「しおり」とは目次に従ってページの頭にしおりを入れた状態です。しおりは単語に対して指定するもののようなので、OCRを通したあとでないと付けられないようです。
PDF化の手順とコツ
何冊か処理してみて、そしていろいろ情報をもらって手順を確立しコツをつかみました。それを簡単に説明します。
1.スキャナによる取り込み
表紙はカラーが多いのでフルカラーで、本文はモノクロ256階調で取り込みます。もちろんカラーページはフルカラーにします。TWAINの操作パネルで取り込み範囲に注意してください。ある程度注意してまっすぐ取り込めるようしないといけませんが、取りこぼしていない限りは後で修正可能です。なお、解像度は300dpiにしています。
2.方向修正
まっすぐになるように注意してもどうしても傾いて取り込まれるものです。昔の印刷技術はそんなに高くないですから、元々印刷が斜めになっていることも多々あります。そこで横線やバナーになってるタイトルなどを基準に画像を回転します。文章に対して図が斜めになってることもありますので、全てを水平にするなどときばらず、どこかを基準にしたらそれだけを水平に修正することだけ考えるのがいいでしょう。
3.水平・垂直方向の修正
内容は全て取り込んでいても左右や上下にずれていることがあります。カット&ペーストでずらしましょう。これも元々各ページの高さなどきっちり統一されているわけでもないですから、厳密になる必要はありません。
4.裏写り等の消去
紙は薄いですしそれなりに強い光を当てて取り込みますので、いくらかは裏写りがあります。「ある濃さより薄いものは白とする」ような操作で全体を修正します。この機能はフィルタかもしれないですしヒストグラム機能かもしれないです。真っ白を薄い灰色にペイントする方法もありますが、字の中で囲まれた部分などペイントしても影響が及ばない箇所が残るのでお薦めできません。
カラーの場合は同様の方法である程度ノイズを取ったあと、ペイントするほうがいいかもしれません。単純な濃さで処理できないので、元々白ならば白でペイントする方が効果的です。カラーページはコストの点からもあまり多くないはずなので、これくらいは丁寧にやりましょう。
なお、裏写りは黒い紙をはさんで取り込むと軽減されます。普通の文章だけのページならそのままでも裏写りを消せますが、網掛け(スクリーントーンのような感じ)がされている部分は裏写りによって濃淡ができてしまい、この濃淡を消すことはほとんど不可能です。スキャン時の裏写り対策はぜひとも講じるべきです。
5.四隅・四辺の消去
綴じ部分や少しだけはみ出たところ、角が丸くなっているなど端にはゴミがよく出ますので、四角く囲んで消す/背景色で塗ることで修正します。ページ番号をうっかり消さないように注意しましょう。
6.その他の部分の修正
細かいゴミが点々と残っている場合もありますので、目立つやつだけ消しましょう。拡大してみるとけっこうたくさん残っているものなのですがいちいち消しているといくら時間があっても足らなくなります。綴じ目の影が本文にかかっている場合もいろいろツールを駆使して消しましょう。
7.PDF文書として保存
画像ツールがPDFをサポートしている場合はそのままPDF形式で保存します。ない場合はPostScriptやBMPなど圧縮しないタイプの一般的な形式を選んで保存してください。この状態では1ファイル1ページなのですがあとでまとめますので気にしないように。
8.一冊分をまとめる
Adobe Acrobatなどで表紙に追加する形で全てのページをまとめます。まとめたものは一冊を1ファイルとして保存しましょう。
9.OCRにかける
このままでは確かに原本と遜色ないPDFマニュアルができあがりますが、いかんせん全面イメージなのでファイルサイズが大きすぎます。また、人間がただ読む分には問題ないですがマニュアル内を検索したい場合には役に立ちません。そこで、OCRソフトにて文章を認識させ、ページ内のイメージ部分を最小限に抑えると共に検索可能にする要求が生まれてきます。
最近のOCRソフトには、例えばA.I.ソフトの「読んで!ココ Ver.6 with 名刺OCR」のようにスキャナ取り込み→文字認識→レイアウトを維持したままPDFとして保存、というところまでサポートしたものが現れています。本プロジェクトのマニュアルとしてはすでにイメージ化されてしまっているので、まとめてあるPDFファイルを1ページ単位で抜き出し、それを認識させるという操作が必要になるでしょう。
10.しおりをつける
Acrobat Readerには文書の左に目次を表示させてそこからダイレクトに文書を表示させることができます。さらに、文書中にハイパーリンクを埋め込むことができます。せっかくほとんどのマニュアルにある目次にハイパーリンクがないのはもったいないですよね。そこで、少なくとも目次にある分だけはしおりをつけて、もちろん目次にはハイパーリンクを埋め込んで、文書として見やすくします。ここまでやれば完成ですかね。
なお9.と10.はまだ実行に至ってませんので、「希望」というか「課題」というかそういう位置付けのものです。まずはイメージレベルでもいいからPDFにしてしまおう、というのが当面の目標ですね。
問題点いろいろ
MZに関してはかなりの資料を持っていると自負する私ではありますが、いくらなんでも全てのマニュアルを揃えるのには無理があります。何人かの協力は得られていますが、それでもまだまだ穴があります。とりあえず、私や古籏さんが持ってないマニュアルで譲渡可能なものは古籏さんのところへ送っていただくということで話はついています。もちろん、手放さないで自分で処理していただくというのも当然アリです。その時にはそのマニュアルがまだPDF化されてないこと、誰も作業中でないことを確認するようにしてください。無駄な作業は空しいですから…。
世界的に見ても、過去のマシンのマニュアルをPDFに変換する作業をしているところは多くないようです(ゼロでもないらしい)。海外にも輸出されたMZのことですから、当然現地語で作成されたマニュアルが存在します。我々のこの取り組みを紹介して、まだマニュアルが残っているうちにPDFへ変換してもらう作業を始めてもらわねばいけません。もちろんMZだけでなくて、あらゆるマシンのあらゆるマニュアルをPDFなどの電子媒体に変換する必要があります。
これだけの作業をして、具体的に何がしたいの?てな疑問はあるでしょう。やはり、第一の目的は「自由な配布」ということになるでしょうか。マニュアルといえども立派な書籍、著作権が存在します。それを無視する形で配布するのはよくないことです。時間はかかるでしょうが、ひとつひとつ許可をとっていくしかないんでしょう。電子化をメーカーに任せていたら永遠に完成しませんからね(メーカー内に保管されてないこともよくあります)。
ということで、ご協力お願いいたしますm(__)m。