私には欲しい物が沢山ある。まずCDが欲しい。主に洋楽だとはいえ、一枚約2500円というのは決して安いものではない。一ヶ月に1枚買えたらいいほうだ。なのに新曲はどんどん発売され、昔のいい曲を見つけたりもしてしまう。欲しいCDはネズミ算 式に増える一方だ。自分専用のパソコンも欲しい。私は所謂ネットジャンキーという人種のようで、常連になっているHPもある。メル友だって、英語の勉強も兼ねて、海外 にも結構いるのだ。そんな時に、家族で使っているパソコンが壊れたり、仕事にどうしても必要な父に一週間ほど占領されてしまうと、かなりキツイ。自分の部屋で、自分のパソコンで思う存分ネットサーフィンできたら・・・と思ってしまう。そしてやっぱり彼氏が欲しい。好きな人、信頼し、尊敬できる人を見つけるだけでも大変なのに、相手にも私のことをそう考えてもらうのはとても難しいことだとは思う。しかし街に出ると、たくさんのカップル。こんな私でも歴とした17歳の乙女、夢を見てしまうのも致し方ない。そして、夢のまた夢ながら、今よりもう少し性能のいい頭脳が欲しい。せめてテスト直前にわからないところが多すぎて、半狂乱になることのないような。 この本を読んでから、いや、実際はこの漢を知ってから、"一番欲しいもの"が変わった。タイムマシーン、である。過去でも未来でも、自分の好きな時代に行けてしまう、あれだ。 漢の名前は、土方歳三という。辞書的に言えば、「幕末の剣客。1835(天保6)年5月5日、武州多摩郡日野村に生まれる。1863(文久3)年新選組を結成し、副長として京都市中の護衛に当たる。鳥羽伏見の戦いに敗れた後、東下して官軍に抗し、のち榎本武揚の軍に投じる。1869(明治2)年5月11日、箱館五稜郭で戦死」した漢だ。34歳の若さで戦場に散った、”賊軍”の武将、といったところだろうか。しかし、私にとっての彼は、そんな言葉で言い表すことはできない。彼は私の理想の漢なのだ。 取り締まっている尊攘派の志士達からだけではなく、新選組の隊士達からも鬼と恐れられている。しかしそれは、「守るべきものを守る為ならば、鬼と呼ばれるも本望」という強い信念を持っていたからだったのだ。烏合の衆であった新選組をまとめなければならない副長の職にあっては当然と言われるかもしれないが、なかなか出来ることではない。「副長が慕われていて、組が仕切れるか」とまで言い切っているのだ。同じ副長職にある山南敬助も、「私は自分可愛さについ良い顔をしたくなる」と感服している。かっこいい。 また、新選組で剣客として有名なのは、沖田総司らであるが、彼の剣の腕もかなりのものだった。門下である天然理心流では目録だったが、戦闘集団である新選組において、彼は常に先頭で指揮している。道場ではともかく、実戦においては免許皆伝に劣らぬ腕前だったのだ。そして戦う姿は”花のように美しい鬼”。かっこいい。 かといって、武骨一本槍だったわけでもない。豊玉という雅号で、発句を詠んでいるのだ。豊玉発句集なるものまでまとめている。半分以上が春の句で、ロマンティックなものもある。私と同じ17歳頃に詠んだものがほとんどだ。全部が秀作なわけではなく、私でも作れそうな句もたくさんある。しかし詠み人は、剣が強い漢なのである。武芸に秀でるばかりでなく、風流も解す。かっこいい。 さらに、である。女たらしのくせに照れ屋で、優しく、かわいいところもある。さり気なく気遣い、お礼を言えば耳まで赤く染める。故郷にいる病弱な姪の為に、京から小間物を送ってやる。京・大坂の芸妓達に自分が如何にもてるか、ということを記した手紙を故郷に送る。彼女達から貰った恋文まで、小包で“素晴らしく貴いもの”として送っているのだ。そんな漢なのである。かわいい。そしてかっこいい。 極めつけは、彼の写真である。洋装・断髪で写っている彼は、少しぼやけてはいるものの、かっこいい。現代でも十分いける。当時の人々も、「色白で、目がぱっちりとした役者のような」と評している。当時の役者といえば、今とは違い、美形ばかりである。鉄の意志を持ち、剣技に優れ、発句を嗜み、優しくて、照れ屋でかわいい。その上にみんなが認める美男子なのである。これは惚れてしまう。かっこよすぎる。 だから私はタイムマシーンが欲しい。まず、本物の彼はどんな人なのか、確かめなければならない。不幸にも、本には書かれていないような嫌なところが山ほどあるのかもしれないのだ。もし、私が思っている通りの漢だったら。残り私の欲しいものは後一つ。彼の愛!!・・・などとのたまっているうちに過ぎてしまった17の夏。 |