樹木医と木登り
樹木医 安田邦男
私が樹木医になったのが平成5年。
腐朽部治療や土壌改良など多くの治療方法を試みてきましたが
樹上調査の大切さからツリークライミング®を始めました。
ジョンさんと川尻さんに連れて行ってもらったアメリカで
安全に大木の枝先を切り取る技術を目の当たりにしました。
日本は台風が多く襲来しますので多くの巨木が強風により倒壊や枝折れ
によりその生命や形状がなくなってしまうケースを診断することが多々ありました。
そんな折、ドイツのクラウス・マテック博士の講演会で「太い枝の先を切ることにより、樹全体を
小さくすることが本当の樹木医としてしなければならないことだ。太い枝を幹に近い部分で
切るのは、安物の樹木医だ!」と言われました。
大木の枝先剪定はとても難しく、たどり着くことすらできません。
なんとかしなければと心に決め、木登り技術の研究をしました。
仕事の合間の研究なのでなかなかはかどりませんでした。
アイデアは出るときには一気に出るのですが出なくなるとどうにもなりません。
そんな時アメリカで入手したビデオをなにげなく見ていました。
突然、ひらめいたことがありました。
「トレーニング、練習」です。
高く登って難しい枝先にたどりつくなんてとても無理!
それでは「高く登って」をなくして、低く安全な場所で難しい枝先に移動するのなら可能かも。
このアイデアが湧いたときから一気に変わりました。
低い枝なら繰り返し練習できる→いつも同じ枝では練習にならない→色んな低い枝が欲しい
→自由に変えれる枝が欲しい→枝を作ろう
と考えがまとまり「安全マックス」ができました。
この技術を生かして巨木を台風の害から守れたらいいのですが。