宇宙猿人ゴリ
宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン
スペクトルマン

放映

昭和46年1月2日〜昭和47年3月25日、全65回(再放送2話含む)
フジテレビ系
毎週土曜19時〜19時30分

概要

天才科学者の宇宙猿人ゴリは、その卓越した頭脳が元で惑星Eにおいてクーデターを決行するが失敗、捕らわれの身となる。 だが部下である軍人ラーのおかげで脱走し、惑星Eを離れて宇宙をさまよっていたところで地球を発見する。 ゴリはその美しさに感動したが、それが故に地球を公害で汚す人間たちを許すことができず、公害を元にして怪獣を作成して人間を滅ぼそうとする。

一方、宇宙連合に属し未開発遊星の保護と警備を行なう遊星ネヴュラ71はゴリの地球侵略を発見する。 そして地球に他の惑星からの干渉があるのは許されないとして、ネヴュラ71は地球に宇宙サイボーグ・スペクトルマンを派遣する。 スペクトルマンは蒲生譲二と名乗って公害Gメン(公害調査局第8分室)に加入し、ゴリが作り出す公害怪獣と戦うのだった。

解説

いわゆる第2次怪獣ブームのトップバッター。制作は「マグマ大使」と同じピープロ。 基本的に2話でひとつのエピソードが完結する。いつもいいところで終わって次回を待たなければならない。 というと聞こえはいいが、単に間延びしているだけというエピソードも無きにしもあらず。 同時期の「帰ってきたウルトラマン」と比べると、特撮や怪獣の造型などがいまひとつスマートでないせいかイマイチという印象がある。 戦いが終わった時、颯爽と空に消えていくウルトラマンと地面にバッタリ倒れ込むスペクトルマン。これだけを見ても、ねえ。 しかしその内容は実に深い。

なんとタイトルはヒーローの名前ではなく、敵の名前である「宇宙猿人ゴリ」だというのが驚き。 そのゴリの設定は、地球を汚す人間たちを人間が生み出した公害で滅ぼそうという痛烈な文明批判を込めたものになっている。 敵を単なる悪役で終わらせず、緻密な設定を行ない番組タイトルにまでしてしまう気合の入れ方が凄い。 そのかいあって、ゴリとラーと言えばヒーロー物の敵の知名度ではトップクラス。 スペクトルマンの必殺技がスペクトルフラッシュだということはほとんどの人が知らないだろうが、ゴリとラーがたった二人で地球を征服しようとしたのは知ってる人が多いだろう。 ヒーロー側より人数が少ない敵なんてそうお目にかかれるもんじゃない。

しかし敵の名前をタイトルにするのはあまりにも大胆すぎた。 その結果、タイトルは第21話から「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」に、第40話からは「スペクトルマン」にと変わっていく。

また、公害を敵とするのもスポンサーからの風当たりが強かった。 蒲生譲二が籍を置く公害Gメンは第36話から怪獣Gメンへと名前を変え、単なる怪獣やっつけ隊になってしまう。

こういったことからも分かる通り、当初は深いテーマ性を含んでいた本作品は徐々に単純なヒーロー対怪獣の図式に変わっていく。 しかしピープロの作品はそれだけでは終わらない。

この作品の見所は、まず初期はネヴュラ71とスペクトルマンの対立。 ネヴュラ71は地球をマクロな視点で捉えて、地球全体のためには人間の一人や二人はどうでもいいと考えるのに対して、スペクトルマンはまさに人間として一人一人の命を大切にしようと考える。 非情で無茶な指令を出すネヴュラとそれに逆らうスペクトルマンは見ていて面白い。しかしネヴュラはその後、単なる変身アイテムと化してしまうのが残念。

また、公害をテーマにしたエピソードの数々はもちろんのこと、救いのないストーリーの数々も必見。

第23、24話ではひき逃げされた少年の怨念が生み出した怪獣クルマニクラスが登場。 ひき逃げ犯人は蒲生譲二の説得で自首する決意を固めるのだが、怪獣の襲撃で死んでしまう。あんまりだ。

第48、49話は屈指の名作。とは言っても「アルジャーノンに花束を」に怪獣が出てくるだけの話なんだけど。 馬鹿の三吉は知能増幅手術を受けて大天才になるが、その手術を行なった博士には既にゴリの手が伸びており、三吉は怪獣ノーマンになってしまう。 彼はその頭脳で人類を絶滅させる爆弾を作り上げてしまうが、わずかに残った理性でスペクトルマンに自分を殺すように頼む。 そしてスペクトルマンは他に手段も無く、やむを得ずノーマンを殺してしまう

第61、62話もちょっとしたもの。この回では蒲生譲二の正体すら看破する超能力少年が登場。 怪獣ドクロンの攻撃にピンチになったスペクトルマンを救うため、彼は超能力を全開にする。 そのために少年は死んでしまう。ひぇーっ!

とにかくウルトラマンなどとは一味違うエピソードの数々。 「風雲ライオン丸」「鉄人タイガーセブン」で頂点に達するピープロらしさをこの作品でも見ることができる。

登場人物

蒲生譲二(成川哲夫)
ネヴュラ71の宇宙サイボーグ・スペクトルマンの普段の姿。 ネヴュラからの指令を受けてスペクトルマンに変身する。ネヴュラが見えないと変身できない。 他人に正体を知られるとネビュラに破壊されるとのことだが、結構正体は知られてしまっていた。 もっとも最終回を除き、正体を知った者は皆死んでしまったが。 公害Gメンに無理矢理入り込んでゴリの動きを探る。 最終回で深手を負ったまま変身し、ゴリが死んで任務が終了したためネヴュラに帰る。
倉田室長(大平透)
公害Gメン/怪獣Gメンのボス。別にゴアとは関係ない。
有藤(尾崎孝二)
公害Gメン/怪獣Gメンのメンバー。
太田(新井一夫)
公害Gメン/怪獣Gメンのメンバー。
加賀(渡辺高光)
公害Gメン/怪獣Gメンのメンバー。
遠藤理恵(小西まち子)
公害Gメンの紅一点。ラーのお気に入りだったが、いつの間にか消え去った。
ゴリ(遠矢孝信、声:小林清志/西山連)
惑星Eから追放された(って自分で逃げ出したんだけど)天才科学者。IQ300だそうだが本郷猛より低いぞ。 万能椅子に座って様々な開発を行なう。話す時にジェスチャーを交えるのが特徴。 前期のEDは彼のテーマソング。名曲なのでぜひ聴くべし。 最終回で怪獣Gメンに基地を破壊された上にスペクトルマンにラーを倒されたので全ての望みを失い、スペクトルマンが差し伸べた救いの手を振り切って自殺する。
ラー(声:上西弘次)
ゴリの忠実な部下。軍人で気が荒く、はっきり言ってバカ。しばしばヘマをしてゴリに叱られている。 でもゴリのたった一人の部下なので、その絆は強い。 最終回でスペクトルマンと最後の決戦を行ない、スペクトルマンと共に自爆しようとするがダブルスペクトルフラッシュの前に倒される。

全話リスト

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