大怪獣バラン

1958年10月14日公開
モノクロ、東宝スコープ
1時間27分

解説

東宝お得意の特撮怪獣映画。 が、この作品、ちょっと他の怪獣映画と毛色が異なっている。 例えば「ゴジラ」では怪獣を核の象徴として捉え、その破壊力や生命力を脅威的なものとして描いていた。 また「空の大怪獣ラドン」では、ラドンは地味な存在ではあったけれども、それによって滅ぼされねばならないものの哀しさを描いていた。 しかし本作は、そういった怪獣を通じたメッセージというものが希薄なのだ。

ストーリーは単純明快。古代から甦った怪獣バランがやがて東京にやってきて暴れる。片や人間はその英知を振るってバランと立ち向かう。 そしてそこには、バランを何かの象徴と見たててことさら脅威として描くこともなければ、人間に倒されるバランの哀しさを描くこともない。 そもそもバランには、東宝のお家芸とも言える「核によって突然変異した生物」という設定がないのだ。 バランは単なる恐竜の生き残りであり、ごく普通の生物だ。最後も生物としての習性を元に倒される。 そんなバランから読み取れるメッセージは、まだまだ自然には神秘が残されている、といったもので、それ以上のものではない。

まあ簡単に言ってしまえば、本作は東宝特撮怪獣映画としては異色で、どちらかというとモンスターパニック映画と呼んだ方がしっくり来る。 悪く言えば深みがないということになるのだが、別に深みが無ければ悪いということでもあるまい。 単純娯楽映画としてとらえれば、深いテーマ性など元々必要ない作品なのだ。

ただゴジラやラドンのパワーを見せつけられた後では、バランは娯楽作品の主演怪獣としてはなんだか地味な気もするのが、残念といえば残念である。

登場怪獣

バラン (VARAN)

体長50m、体重1万5千t。

古代の恐竜、バラノポーダーの生き残り。 手足の膜を広げてマッハ1.5で空を飛ぶ。

ストーリー

シベリアにしか存在しない蝶が日本で発見された。発見地は北上川上流、日本のチベットと呼ばれる秘境だった。 そしてその調査に向かった杉本生物学研究室の研究員2名が、ジープごと潰されて死んでしまった。

地元の人が「婆羅陀巍様の怒り」と恐れるものは何か?  杉本教授の助手である魚崎は、死んだ研究員の妹で新聞記者の由利子と共にその謎を探るべく現地に飛ぶ。

里の人々は婆羅陀巍様を恐れ、山奥に入り込んだ子供を捜そうともしない。 業を煮やした魚崎達は制止を振り切り禁断の奥地に入りこむ。 しかし、何も起きる様子はない。由利子とはぐれた魚崎達は里の人々を勇気づけ、人々と共に奥地へと入る。

無事に由利子たちと再会した魚崎達。里の人々も喜ぶがその時、湖の中から大怪獣が現れる。 婆羅陀巍様の怒りだ! 人々は逃げ惑う。 魚崎は、その怪獣が中生代に栄えたバラノポーダー・バランであることを見抜く。 そしてバランは村を瓦礫へと変えていく。

事態を重視した防衛庁は杉本博士に協力を仰ぎ、現地へと向かう。 再び湖に戻ったバランに対して、攻撃準備を整える自衛隊。 そして攻撃は開始された。

やがてバランが姿を現した。そこへ自衛隊の猛攻が加えられる。 だが砲撃の嵐の中、バランは悠然と進む。戦車やバズーカなどでは、バランを止めることはできないのだ。 皆は退避する。しかし、由利子が木の下敷きになって逃げ遅れた。 魚崎は一人、彼女を救いに向かう。

なんとか由利子を救った魚崎だが、バランに追い詰められてしまう。 そこで杉本博士の発案で、自衛隊は照明弾を打ち上げてバランの注意をそらす。 かくして二人は無事に助けられたが、バランは膜を広げて飛び去ってしまった。

バランを発見すべく全力を注ぐ自衛隊。やがて洋上でバランが姿を現した。 ただちに航空自衛隊が出撃し、バランに対してロケット弾攻撃が開始される。 が、それでもバランは滅ぶことなく、再び海中に姿を消した。

神出鬼没のバランに容赦なく攻撃を加える自衛隊。だがバランはその攻撃をものともせず、進路を東京に向けて進んでいた。 そしてバランは東京湾に侵入する。 もはや後はない。自衛隊は爆雷による一斉攻撃を開始する。 そして大爆発の後、海は静かになった。…が、やがてバランが姿を現した。

バランの東京上陸は時間の問題だ。都民の退避が大急ぎで行なわれる中、バラン対策が再検討されるが、手段がない。 唯一、藤村博士の特殊火薬が期待されるが、バランの表面から使用したのではその半分も威力が出ない、と藤村博士は顔をしかめる。

そしてバランは、自衛隊の猛攻を平然と受けとめながら、ついに羽田空港に上陸する。 そこへ特殊火薬が到着する。魚崎は逃げ出した運転手の代わりにバランの近くまで火薬を運ぶ。 そして火薬は点火され、その爆発力の前にバランはついに崩れ落ちた。

…だが、バランは再び起き上がった。どんな攻撃もバランを止めることはできないのか。 自衛隊の攻撃も虚しく、バランによる破壊が続けられる。

が、そこで杉本博士が最後の案を思いついた。 バランには照明弾を飲みこむという変な習性があった。 これを利用しようというのだ。 自衛隊がバランを足止めしている間に、照明弾に時限装置付きの特殊火薬がセットされる。 そしてその照明弾がヘリから投下された。

その照明弾を飲みこむバラン。そして火薬は爆発を開始した。 もだえ苦しみ、海へ逃げようとするバラン。 が、海の中にその姿を消した時、最後の大爆発がバランを海の藻屑に変えたのだった。

スタッフ

製作...田中友幸
原作...黒沼健
脚本...関沢新一
音楽...伊福部昭
特技監督...円谷英二
監督...本多猪四郎

キャスト

魚崎健二...野村浩三
新庄由利子...園田あゆみ
杉本博士...千田是也
藤村博士...平田昭彦
馬島博士...村上冬樹
勝本三佐...土屋嘉男
館長...田島義文

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