昼下がりのとある街。 のんびりした空気が漂う中で、ミリィの声が響く。 「牧師さぁーん!どこですかぁ?」 ぱたぱたと駆けながら、ミリィはウルフウッドを捜していた。 朝は一緒だったのだが、朝食が済むと彼はふらりと外へ出てしまい、昼になっても戻ってこなかったのだ。 ヴァッシュとメリルに断って彼を捜しに出たものの、ミリィにもあてがあるわけではない。 ただ、街の中を出ることはないはずなので、街中を捜せば見つかるだろうと呑気に構えているのが彼女らしいと言えるだろうか。 道行く人が彼女を振り返るが、ミリィは特にそれらを気にする様子はない。 「どこにいっちゃったのかなぁ…」 しかし一通り街の中を捜して見つからなければ、少しばかり心配の度合いも増してくる。 ミリィは立ち止まって周囲を見回した。 それで見つかるはずもないのだが…。 「あ!」 ……本来は。 「もう〜、こんなところに…」 見つけた相手に駆け寄りながら声をかけようとした時、不意にミリィの足が止まった。 一見しただけではわからない、家の蔭になった場所で。ウルフウッドは眠っていたのだ。 暖かい昼下がり、ほどよく風を感じるこの場所なら、ついうとうと眠ってしまうのも頷ける。 ミリィは足音を立てないように静かに彼のもとに歩み寄ると、そっとその隣に腰かけた。そうして、ウルフウッドの顔を覗き込む。 「お腹へってませんか?ダーリン」 小声の問い掛けに応えたのは、静かな寝息だった。一体何の夢を見ているのだろう。 「…?」 眠っているウルフウッドの表情から、何故かぴりっとしたものが伝わってきた。 ──怖い夢を見てるのかな…? 傍らの寝顔を見つめながら、ミリィは少し眉根を寄せた。 ミリィにはいつも笑顔を見せてくれるウルフウッドだが、彼女に見えない所ではどんな表情を浮かべているのだろうか。 側にいないのだから、見たことはない。だが。 「…怖いのは、嫌ですよね。牧師さん…」 ミリィは小さな声で、懐かしい歌を口ずさみ始めた。 小さな頃は、いつも眠る前に母親に、姉達に歌ってもらった子守歌。 悲しいことがあった時、怖いことがあった時。そのたびに、ミリィは母親に子守歌をねだっていた。 とても優しいその曲は、心を落ち着けてくれるから。 暖かく、包み込んでくれるから。 ミリィは遠く離れた地平線を見上げた。大きな雲が浮かんでいる。 爽やかな青空の下、ミリィの口ずさむ優しく懐かしいメロディが静かに流れていった。 |