デビルマンレディー 第1話 「獣」

脚本 小中千昭  絵コンテ・演出 平野俊貴  作画監督 小林利充
ファッションモデルの不動ジュンは、時々不気味な気配を感じ取っていて脅えていた。 が、いざ仕事となると生き生きと輝いた目を見せるのだった。

そしてその仕事からの帰り道、ジュンは今度は不気味な視線を感じる。しかしその視線の主を見つけることはできなかった。 ジュンは知り合いの滝浦和美と出会い一緒に帰るが、その途中で不思議な雰囲気の金髪女性を見かける。

そしてマンションに帰った後、今度は窓の外に不気味な存在を感じとる。一体何が起きているのか!? その時、玄関のチャイムが鳴った。ドアの外にいたのは、あの金髪女性だった。
「私はアスカ蘭。これから一緒に来てちょうだい」
その反論を許さぬ雰囲気に押され、ジュンはアスカの車の助手席に座っていた。

アスカの車は港の倉庫に着いた。アスカは倉庫のドアを開き、ジュンに中に入るようにと促す。
「教えて下さい。あなたは誰で、どうして私をこんなところに連れて来るの?」
だがアスカはジュンに歩み寄り、不気味なことをささやく。
「獣は獣を、その流す血で呼ぶもの。嗜虐のために、あるいは己の血を絶やさず、後に継ぐために…」

促されるままに、フラフラと倉庫に入ってしまうジュン。途端に倉庫のドアが閉まって開かなくなる。 狼狽するジュンに向けて無数のフラッシュが浴びせられる。アスカの声が響く。
「その目よ。その目があなたの中に隠された獣を垣間見せるの」
「獣って…?」

その時、奥の柱にライトが当てられた。一人の男が鎖で縛られている。 と、その男はうなり声を上げ始めた。そして男の体が不気味に律動しはじめる。 鎖が引き千切られ、男の体が変貌する。凄まじい咆哮が響き渡る。男は怪物になった。

ジュンに迫る怪物。開けてと泣き叫ぶジュン。だがドアは開かず、怪物の爪がジュンを引き裂く。 血まみれになり脅えるジュンを、怪物はまたしてもうれしそうに引き裂く。
「その匂いをかいで、まだあなたはあなたでいようとするの? 不動ジュン」

その時、ジュンの目が見開かれた。瞳が不気味な輝きを見せる。口元が笑みを浮かべる。そしてジュンの体が変貌を始める。

いきなりジュンが怪物の喉を掴んだ。苦悶の表情を見せる怪物。 怪物はジュンを振りほどき距離を取る。と、ジュンは先ほどのジュンでは無かった。 それは歓喜の表情を浮かべた異形の者。

怪物はジュンに襲いかかる。だがジュンは怪物の口に手を突っ込み動きを止め、無造作に怪物の腕を引き千切ってしまった。 崩れ落ちる怪物。怪物の返り血を浴び、満足そうな笑みを浮かべるジュン。戦いは終わった。

ライトが点き、ジュンは我に返る。今起きたことに恐れ震えるジュン。自分は一体どうなってしまったのか? 突如現れた男達が怪物の死体を片づけ、アスカが側にやってくる。
「獣の体、悪魔の力を持つ者。しかし心は人のまま…」
「弱々しい人の心を情けなく持ち続けている。それがあなたよ。デビルマン」
「デビル…マン?」
アスカはジュンに、これから「ビースト」を狩り続けてもらうと言い放つ。

そして突如アスカの携帯電話が鳴る。電話に出たアスカがうろたえる。さっきのビーストが!? その時、倉庫のシャッターが驚くべき力でこじ開けられた。 ビーストが甦り、人間と融合して巨大化したのだ。ジュンの方を見るビースト・ウルヴァー。
「お前は、進化した仲間を裏切った」
ジュンを叩き潰すウルヴァー。かろうじて逃れたアスカは自衛隊員達に助け出される。

だがその時、倉庫が崩壊して粉塵が辺りを包む。 その中から立ち上がる影。一つはウルヴァー。だがもう一つ? ウルヴァーと互角の大きさの、悪魔のごとき巨大な影。アスカがつぶやく。
「ジュン…なのね?」
そしてウルヴァーとジュンの咆哮が辺りに響き渡る。


狼ビースト・ウルヴァー

体長 2m〜15m、体重 300キロ〜10トン

やっぱり獣人といえば狼男だよね。(なに?獣人と言えば雪男? そりゃ東宝映画でんがな〜) 第1号は定番に限る。 噛ませ犬として登場しておきながら、ビースト初のギガイフェクトを発現させる。 でもジュンに対してはやっぱり噛ませ犬でしかなかった哀れな奴。 …って、まだ決着ついてないってば。

なお全てのビーストにはこのように異名が設定されており、それだけでなく足形まで設定されている。 ウルトラ怪獣か、こいつらは。


いっけねー! いくらなんでもストーリー長すぎだあー! 既にあらすじじゃなくなってるぞ。 でもねでもね、大好きなのよ、この第1話の溢れる緊張感。思わず事細かに描写しちまったい。 まあいいや。この調子で最後まで突っ走るぜ!

とにかく第1話。ジュンの性格も手伝って、常に暗い雰囲気が全体を包み込む。 和美の明るさも、ジュンが抱える得体の知れない不安感の前では完全に浮いている。

それで衝撃的なのは、ジュンがズタズタに引き裂かれて血まみれになること。 ファッションモデルのヒロインにこんなことさせるか、普通。 この作品はそういう作品なんだ、ということをインパクトを持って語っている。

そして最後のギガイフェクト。 平野監督が、1話のラストで巨大化するのは必須事項だと言ったらしくて、それでウルヴァーとの決着が次回まで持ち越されている次第。 しかしこのラストがまたいいんだ。 煙の中に浮かぶ二つの影。 そしてビル群をバックに姿があらわになり、その側をヘリが飛ぶ。このコントラストが生み出す巨大感。 いや〜、さすが平野監督、魅せてくれます。

なお、ずっとこの作品を見ていて改めてこの第1話を見ると、少々違和感を感じる。 というのはアスカ。 この話を見ると、常にクールというイメージにしては妙に表情が豊かなのだ。 そりゃあ、ジュンの覚醒は予定通りだからともかく、ウルヴァーのギガイフェクト、せっかく見つけたジュンが潰される、ところがどっこいジュンのギガイフェクト、という予期せぬ事態の連発。 うろたえたり驚いたり唖然としたり、というのは当然なのだが、全然彼女らしくない。 普段見せない表情を一生分ここで出し切ったのではなかろーか?

ちなみに、ジュンが部屋で見る仮面のような白い顔。これは第3話のハーピーなのだそうだ。 つまり、覚醒前からジュンはサトルにも目を付けられてたということになる。 まあそうでなければ、第3話という早い段階でサトルが現れるのはおかしいんだけど。

ところで、どうしてジュンがデビルマンだと分かったかという説明は、今回も今後も一切無い。 ビースト因子保有者だと分かるところまではなんとなく納得できるのだが。 まあ、アスカという神秘的キャラクターの存在がそれを納得させてしまうといったところか。


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