デビルマンレディー 第5話 「鮫」

脚本 小中千昭  絵コンテ・演出 大庭秀昭  作画監督 丸英男
ジュンの家で、我が家のようにくつろぐ和美。もうそこに住むと完全に決め込んでいるが、ジュンの態度はどこかよそよそしい。 そして、もう夜も遅いというのにジュンの携帯が鳴る。アスカだ。黒崎あおいという女のことで、明日前田が迎えに行くと。

ジュンのよそよそしさに閉口した和美は先に寝てしまう。 翌朝、ダブルベッドを買うという和美に、ジュンは買ってあげると言う。喜ぶ和美。

前田の迎えで車に乗るジュン。そこには既にアスカが乗っていた。アスカは冷ややかに笑う。
「おはよ。ペット飼う趣味あったんだ」
アスカは和美と一緒に住んでいるジュンにあきれていたのだ。

黒崎あおい…それはジュンの高校時代の同級生だった。そして彼女はビースト因子の保有者。 しかしまだプログレスの段階に至っているかどうか不明で、しかもジュンと関係ある人間であるからには彼女がデビルマンである可能性もあるため、アスカはまずジュンをあおいに会わせることにしたのだ。

あおいがいるというスポーツジムで様子を伺うジュン。背後から驚きの声が聞こえる。黒崎あおいだ。 二人は昔話に花を咲かせる。かつて腰を痛めたあおいは、水泳選手を断念してここでインストラクターをしているのだった。 ジュンはさりげなく探りを入れる。が、ジュンにはあおいがビーストがどうかなど分からない。

夜、オーディションから帰って来た和美。だがジュンの姿はない。そして部屋には二段ベッドが置いてある。
「なんなのよ…これ」

その頃、ジュンは再びスポーツジムに向かっていた。HAは既に待機している。 夜のプールで、あおいと会うジュン。

あおいは、ジュンの唯ひとりの親友だった。オリンピックに出場を期待されていた水泳選手だった。 が、あおいはジュンをただの友達として見ることができなかった。 高校時代、あおいはジュンに迫りキスした時に突き飛ばされ、それで腰を痛めたのだった。

ジュンはあおいに怨まれていると思っていた。だがあおいは、今でもジュンを愛しているのだった。 そしてその満たされない愛情が、彼女をビーストへと変化させる。プールから飛び出した巨大な鮫がジュンを押さえつける。
「そのまま私に食べられてくれない?」
「私の中で生きてよ、ジュン!」

だが巨大な口が迫ってきた時、ジュンは変身する。笑い出すあおい。
「ハハハ。あなたもそうだったんだ。私と同じなんだ」
「私と同じ…? 人の心を、失っていない?」
「…分からない…何を、してるのかも…」
あおいはジュンに襲いかかる。 激闘が続き、プールの底が抜けて二人は巨大な下水道に落ちる。そこには、あおいが噛み切った女たちの死体が浮かんでいた。

なおも襲い来るあおい。その目の前でギガイフェクトが発現する。巨大化し、咆えるデビルマンレディー。 駆けつけたアスカが叫ぶ。
「ギガイフェクトを起こしている! あの状態になったら、ジュンはもう制御できない!」
あおいもまたギガイフェクトを発現させる。巨大化するビースト・マーミガ。

激突するレディーとマーミガ。マーミガの巨大な口がレディーに迫る。 そしてHAが様子をうかがうためライトを照らした時、女性の悲鳴が聞こえてきた。

ライトに照らされ、佇むレディー。側には絶命したマーミガの屍。 そしてレディーの手には、安らかな顔をしたあおいの半身があった。

…ベッドで寝ていたが、ふと目覚めた和美。いつの間にかジュンが帰っており、珍しく酒を飲んでいる。 ジュンは和美を抱きしめる。
「ずっと前にね、こうしてあげられなかった人がいてね」
「私、その人の想いを知っていたのに、それに応えなかった…」
泣き出すジュン。和美はジュンを抱き返すのだった。


鮫ビースト・マーミガ

体長 5m〜18m、体重 800キロ〜12トン

マサキ・ケイゴが作ったロボットで、ウルトラマンティガの正体を探るために暴れた。 …って、違うってば! でもデザイン画を見ると、ホントそっくり。 鮫怪獣が好きな小中千昭、そのまんまゲオザークなデザインが上がってきたんで驚いたそうな。 さすが丸山浩。なお、ティガのあの話ももちろん脚本・小中千昭である。 しかしデザイン自体は原作版のイメージも踏襲しており、別にあえてゲオザークにしたわけではなさそう。 と、余談の方が先になっちまったい。

これは原作の二重人格のイメージだけを残し、ビースト化すると何が何だか分からなくなるけど女を食い殺せば正気に戻るというビースト。 ビーストになっても人間の姿に戻れる初のビーストである。 精神的にはデビルマンとビーストの中間といったところか。

なお、ギガイフェクトを発現させたビースト第2号でもある。


唯一の原作からのエピソード。 原作を読んで気に入った平野監督が、黒崎あおいを出してと言ったところ出来上がったエピソードである。 基本的な話の流れは原作そのまま。

とは言っても、ジュンの性格が全然正反対になっているのを受けて、二人の関係も少々アレンジされている。 原作版エピソードの持つエグい設定は完全に消え失せ(テレビであんな話できるか!)、あおいの屈折した愛情だけがクローズアップされている。 原作は壮絶だが、こちらは甘い淫靡な感じ。どっちにしても、あおいの満たされぬ想いは可哀相でもある。 ちなみに、黒崎あおいの声は緒方恵美。

また、和美とジュンの想いも交錯する。 和美はジュンに近付きたいのだが、それを遠ざけようとしつつ遠ざけたくない気持ちもあるジュン。 ベッドを買ってあげると言われてやっと同居が認められたと喜ぶ和美だが、ダブルベッドが欲しかったのになぜか二段ベッド。 ここら辺にジュンの複雑な心境が見て取れる。 で、不満ながらも和美はおとなしくそのベッドで寝ていたりする。 ここら辺に和美の複雑な心境が見て取れる。

今回の戦いは、次の第6話での戦いと共にジュンに多大な影響を残す。 まだ変身した時の自分を制御し切れないジュン。そんな彼女は、葛藤も無くあっさりかつての親友を殺してしまう。 その事実は、事あるごとにジュンの心を責めさいなむのだ。

なお最後に一言。 くぉら、アスカ! 吸い殻を道に捨てるんじゃねえ!


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