そして帰宅途中、いきなり紺野ひとみがジュンの前に現れ、手にひとつの包みを渡す。 和美は爆弾じゃないかなどと脅えるが、その中身は猫をあしらったロザリオだった。 ジュンはひとみにお礼の電話をし、そこで会いたいと言われて二つ返事で承知する。
ひとみと会うジュン。ひとみはジュンの熱烈なファンだった。ジュンに贈ったのと同じロザリオがひとみの胸元に光っている。 そしてひとみは、翌日の晩自分の家に来て欲しいと言う。ひとみの目が妖しく輝く。
帰り道、ジュンを呼ぶ声がする。アスカだ。そしてその目的は明らかだった。
「あの娘は…違う」
「どうしてそう言い切れるの?」
潜在的な因子保有者同士は、本能的に同胞を見つけ出し接触しているケースが多いと言う。だから気を付けろ、と。
だがまだアスカにも、彼女が因子保有者だという確証はないのだった。
翌日、前田は紺野ひとみをマークし始める。そこにアスカがやって来る。
「こうして見ていると…とてもあの少女がビーストとは…」
「初めてジュンを見た時も、そう言っていたわね」
ジュンは、珍しくピンクのセーターを着て出かけようとしていた。ひとみにもらったものだ。 そこに帰って来た和美は、ひとみがジュンを恨んでいるような噂を聞き込んできていた。 だが、和美の心配をよそにジュンは出かけて行く。
ひとみの部屋は全面ピンクで、猫の写真が多数飾ってあった。 そして、本棚には"JUN"と書かれたアルバムが。そこには、盗み撮りしたジュンの写真が数知れず貼られていた。
ジュンに紅茶を差し出し、無邪気に話をするひとみ。だが、紅茶を飲んだジュンのまぶたが重くなる。 テーブルに突っ伏すジュン。
「憎んで憎んで、憎しみ抜いたけど、私には…何もできなかった」
「あなたのことが好きだったから」
「だからね、ジュン。私に残された方法は…ひとつしかないの」
寝室にジュンを引っ張り込んだひとみは、ジュンの服を脱がせてベッドに縛り付ける。
自らも全裸となり、ひとみはジュンの上に覆い被さる。その時、ひとみのマンションを張っていた前田はDBP反応を検知していた。
変貌を開始するひとみ。その目が獣の目となり光り輝く。
そして鋭い爪が、ジュンの肌を紅く染める。その血をなめるひとみ。
「ジュンの血と、私の血を、混ぜようね」
「愛して…いるから」
そしてひとみはビースト・フェイレースへと変身を遂げる。
ようやく気付いたジュン。彼女もまた変身する。 フェイレースとレディーの激闘が始まった。闇の中に輝く両者の獣の瞳。 その鋭い爪と牙でレディーの体を紅く染め、そしてなめ回すフェイレース。
フェイレースは外へと逃げる。追うレディーに、フェイレースの牙が深く食い込み鮮血がほとばしる。 だがレディーは、そのままフェイレースを抱きかかえ背骨を砕いてしまう。
彼女は元のひとみの姿に戻った。その死に顔は不思議と安らかだった。
運ばれていくひとみを見送る前田とアスカ。
「彼女は、不動さんを愛していたんでしょうか」
「獣が、獲物を食うことを愛と呼ぶのならね」
マンションに戻ったジュン。ベッドに突っ伏し、「ごめんね」と泣くのだった。
猫ビースト・フェイレース
体長 2m、体重 300キロ
猫娘。…というとミもフタもないか。それに猫娘なんて可愛いもんじゃないし、あんまり猫に似てない。 目が、本来のもの2個に加えて猫の目が2個、計4個もある。 更にさすがに化け猫らしく、尻尾が3本もある。キングギドラより多いぞ。
前話と同様に、ジュンに屈折した愛情を抱く女性がビースト化する話。紺野ひとみの声は皆口裕子。 なんか似た話が続いてしまっているが、これはわざと連続させたのだという。
脚本上は、紺野ひとみのイメージは三輪ひとみを想定しているそうだ。 そう、ウルトラマンティガ第37話「花」のマノン星人役で有名な女優だ。 (おいおい、せめて「ねらわれた学園」とか「サイバー美少女テロメア」とかを挙げろってば)
ホイホイとひとみの誘いに乗るジュン。その脳裏には、あおいの想いに応えられなかった悲しみが渦巻いているのは間違い無い。 もう同じ過ちを犯してはならないのだと。 しかし前話同様、変身したジュンは本能の赴くままに何のためらいもなくひとみを殺してしまう。 またしてもジュンのトラウマが増えてしまった。 かくして今回の戦いも、前話での戦いとペアになって事あるごとにジュンを責めさいなむこととなるのだ。
そして今回、ビジュアル面ではシリーズ中3本指に入るアブナイ描写が見られる。 ちなみにあと2本選べと言われたら、1本は文句無しに第13話「縄」。 そしてあと1本は、私なら第25話「神」を選ぶけど、どう?
最後にラストシーンについて。 誰ひとり気付かないと思うけど、和美はジュンのベッド(下段)で眠っているのだ。 ものが二段ベッドだし、前回のラストで和美が上段で寝ていたことを覚えておかないと分からないよなあ。 しかし説明くさくすると興ざめだし、難しいところだ。