いつかの遊園地の守衛室。
警備員が、ジュンが載っているKiKiを食い入るように見つめ、そしてその写真の眼を切り取り始めた。
「見つけたぞ、最高の眼を」
彼のノートには、無数の写真の眼が貼り付けられていた。
遊園地から恋人に送ってもらった女性。 一人での帰り道、不気味な視線を感じて立ち止まる。 すると、周りの壁に無数の眼が浮かび上がり、彼女を見つめ始める。 彼女の悲鳴が響き渡る。
市ヶ谷で医師の診断を受けていたジュン。医者はアスカに心因性の視線恐怖症と言う。
自分の肉体の変貌を知った日から、それまでむしろ快感であった他人の視線が恐怖に変わってしまい、ついにはありもしない視線を感じるようになったのだと。
アスカはそんな疲れた様子のジュンをモニタを通して見つめる。
「弱い、弱すぎるわ、ジュン」
ベイツは自分の体に誇りを持っている。自分を認めて強くなりなさい、と。
和美は家への帰り道、父の会社の者と名乗る男に呼び止められ、家が襲われた時のことを根掘り葉掘り尋ねられる。
そこで和美は男が会社の人間ではないことに気付く。男は改めてルポライター・坂沢史郎と名乗った。
男は不気味なことを言って立ち去る。
「不動ジュンには、気をつけた方がいいかもしれないよ」
その頃HAは、眼球をくり抜かれた女性の死体を発見していた。もうこんな事件がその周辺で8件。 アスカは、その近くに遊園地があるのに気付く。
シャワーを浴びていたジュンは和美に覗かれて、和美を厳しく問い詰める。
和美は坂沢の言葉が気になっただけだが、今のジュンは感情が高ぶっている。
「もうこそこそ覗くのはやめて! いやなのよ見られるのは!」
と、その時、ジュンは呆然と立ちすくむ。 和美の背後、窓の外で、無数の眼がジュンを見つめていた。眼には翼が生えていて飛び去っていく。 ジュンは怒りの形相で変身し、眼球を追う。眼球は前に仕事で来た遊園地に入っていく。
遊園地に降り立つレディー。その周りを無数の眼球が取り囲む。レディーを嘲笑う声が聞こえてくる。
「なんだぁその体は」
「醜いぞぉ。そんな体にその眼はふさわしくないぞぉ」
「なんて体だ」
その無数の視線に耐え切れず、レディーは自分の体を抱えてしゃがみこむ。既に変身は解けつつあった。
「見ないでぇぇぇ!」
その時、背後からの火炎放射が眼を焼き払う。HAだ。 そして警備員がビースト・アルゴスへと変貌する。 が、アルゴスはHAとアスカににらまれて逃げ出す。 彼は人に見られることが嫌で人を見る側に回った男だった。 だが逃げ込んだ先がミラーハウスだった。 男は自分の視線に囲まれ、半狂乱になって自分の眼を潰しつつミラーハウスから飛び出す。 そこへHAの火炎放射が浴びせられ、アルゴスは絶命する。
その様子を見つめるジュンに、アスカの厳しい視線が注がれる。
「強くなるんじゃなかったの」
その後のある日。 ふと視線を感じたジュンは振り返るが、やはり何も無かった…。
眼球ビースト・アルゴス
体長 2.5m、体重 300キロ
全身が目玉の塊のビースト。 超根暗変態覗き魔ストーカー男が変身した。(何もそこまで言わんでも)
気に入った目玉をえぐって自分のものにしてしまうようだ。 ひとつひとつの目玉に翼が生えて飛んでいき、覗きをやらかす。
しかし思い切り弱い。ジュンは全く何もせず、HAの力だけであっさり勝ってしまった。 いや、ジュンは全く手が出せなかった、と見れば、ある意味最強と言えるかも。
デザイン原案は脚本打ち合わせの時にその場で描かれたもの(という時点で既に弱そう…)で、周りの人が皆、弱そ〜と言ったとか。 不幸なビーストだ。
ジュンが変身しても何もしなかった異色編。(笑)
一応前回の続きになっており、自分とは全く価値観の異なるベイツの登場でジュンの心は揺れ動いている。 ちなみにベイツはどうしたかと言うと、さっさとアメリカに帰ったようだ。忙しい男だな。
なんだかんだ言いつつ、結局まだ自分がデビルマンであるという事実を受け入れ切れていないジュン。 確かに、そう簡単に割り切れるもんじゃないだろう。 ベイツが登場した直後だからこそ、ベイツとは対照的なジュンの心情が浮き彫りになる。
これがジュンの弱さであることはもちろんだが、またこれがジュンの強さの源でもあるのではないかと思われる。 それは後の第18話の結末などに表れている…ような気がする。
また坂沢、今度は和美に接近する。 クレジットでは「史郎」になってるんだが、名刺には「史朗」と書いてある。 どっちがホントなんだよ。まあとりあえずクレジットを信用しておこう。