デビルマンレディー 第10話 「炎」

脚本 古怒田健志  絵コンテ・演出 大庭秀昭  作画監督 丸英男
千葉県の団地で大火災が発生し、その跡から一人の少女が奇跡的に救出された。 表皮の70%を火傷していたその少女は、なんと翌日意識を回復した。 そしてその少女・レミは、自衛隊生化学研究所に移送された。その指示を出したのはアスカだった。

もちろんアスカは彼女がビーストではないかと疑っているのだ。 話を聞いたジュンは、痛々しく全身が包帯に包まれた少女の姿と彼女のかつての写真を見て、不安が募るのだった。

医者が各種の心理テストをレミに試みる。と、ふとレミの視線がマジックミラーを通してアスカ達の方を見た。 レミが見たのは、前田がつけたライターの炎だった。 再びレミに炎を見せるアスカ。そこでレミからDBP反応が検知された!

いたたまれなくなって出て行くジュン。 アスカはジュンに、もう全身回復不能な火傷に覆われ話すこともできなくなったレミがこのまま生きていくのが幸せなのかどうかと問う。
「それは…あの子が決めることじゃないの?」
「人間でなくても、世の中に居場所がなくても、私は生きていたいって…思った」
だが生化学研究所では、レミを生かしておき研究対象として扱いたいという意向を示す。 危険視するアスカ。ジュンは沈んだ気持ちで家に帰る。

火事の火元はレミの部屋付近だと判明した。前田は言う。
「炎から身を守る、それだけのために因子が覚醒したということはないんでしょうか?」

生化学研究所で隔離されているレミ。 その脳裏に、かつて見たたき火の炎の美しさが甦る。起き上がり、自分の掌を見つめるレミ。 焦げ始める手の包帯。

と、火災警報のベルが鳴る。レミの部屋から凄まじい炎が巻き上がる。 その炎はまたたく間に研究所を覆い尽くしていった。 火元はレミ自身だったのだ。

研究所に着いたジュンとアスカ。火勢が収まるのを待って、ジュンは内部に入っていく。 と、炎の薬瓶がジュンを襲う。そして辺りに響く子供の笑い声。 ジュンはレミを説得しようとするが、レミには何も聞こえないようだ。 炎に包まれてしまったジュンは変身する。

凄まじい炎がレディーを襲う。それでもレディーはレミを説得しようと試みる。 やがて目の前に笑いながらレミが現れる。全身が炭のように真っ黒な姿で。 そしてレミは炎に包まれたビースト、フレイムに変貌する。

フレイムはレディーを炎で包み込む。 その時レミの脳裏には、自分の力が初めて現れた時のことが浮かんでいた。 炎に囲まれた自分を救おうと手を差し伸べた母親。その母親に手を伸ばした途端、母親が炎に包まれてしまったこと。

「ママ…」
レミの声が響く。レディーに歩み寄るフレイム。その声を聞いたレディーはフレイムに手を差し伸べる。
「おいで…」
レミの体を抱きしめるレディー。 次第に炎が小さくなり、フレイムはレミに戻っていく。
「ママ…ママ…」
悲しげに何度も繰り返される声。そしてレディーが抱きしめるレミの体は、次第にボロボロと崩れていく。
「ママ…ママ…ママ…」
その声だけを残し、レミの体はバラバラに崩れ去った。 泣き崩れるレディー。

そして、また雨が降ってくる…。


火焔ビースト・フレイム

体長 2.5m、体重 300キロ

ロンダルキア周辺に出現し、炎を吐くモンスター。仲間も呼ぶぞ。 …って、それはドラクエに出てくるフレイムやがな! …つっても今や知らない人が多いか。そっくりなんだけどな、実際。 ん、まあそれはともかく。

子供であるが故に自分の力を制御できず暴走してしまったビースト。(アスカ談) おそらくレミ本人は意識してやっていることではなかろうが、炎を辺りに撒き散らす。 なおレミの体は完全に炭化してしまっている。

ちなみにレミ役の声優はホントの子役である。 最後の「ママ…」というセリフが好評で、急遽リフレインすることに決まったそうな。


最近じわじわと、変身後のジュンの変化が描かれてきた。 最初の頃は咆えるだけだったのに、第8話ではまだ攻撃的口調ながら結構ベラペラしゃべっていたし、第9話では半分変身が解けていたとは言えほとんどジュンの喋り方。 そして今回、変身してもジュンの口調のままという形になった。 ようやく意識のコントロールができてきたといったところか。 以降、レディーは姿は違えどジュンそのもの、ということになるのである。

今回、人間が人間を超えた力を持つという設定の作品で一度は欲しい、「子供なので力が暴走してしまう」話。 そしてそれはこの手の作品では悲劇に終わることは約束されたようなもの。 こういう話だからこそ、レディーの変化が明確になるのもうなずけるというものだ。

そして今回、ある可能性が示唆されている。 前田は、レミが自らの身を守るためにビースト化したのではないかと言う。 これが事実なら今回の戦いは実に苦々しくなるところだが、実際はレミ自身が火元だったという皮肉な真相が待ち受けていた。 ということで、こういう苦々しさは描かれることなく終わっており、逆にビースト因子の恐ろしさが浮き彫りになっている。

が、この可能性は形を変え、シリーズ後半に姿を見せることになるのだ。 なりたくもない獣になった者達が、人に狩られるという形で。 まあそれは、その時にまた語るとしよう。

ということで今回、ジュンはレミに共感してしまいレミを擁護する立場を取り、またHAの中では前田一人だけがジュン寄りの考え方を見せるといった、ある意味では後半への伏線とも取れる明確な立場の違いが描かれている。 アスカがそんなジュンに理解を示しているような態度が変と言えば変なのだが、話の流れ上はまあこんなものか。


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