デビルマンレディー 第11話 「箱」

脚本 長谷川圭一  絵コンテ・演出 まついひとゆき  作画監督 丸山泰英
あるデパート。女子店員達は不倫疑惑の身代わりに仕立て上げられ辞めさせられた立花部長の話をしていた。 と、ある女子店員がエレベータに乗ると、中には血まみれの腕時計が落ちていた。 そしてその店員は悲鳴と共に忽然と消え去った…。

クリスマスイブの、どこかの映画館。怪物と化した男が恋人のヒロインを襲う映画が上映されている。 が、まともに映画を見ていない女性が二人。ジュンとアスカだ。アスカはデパートの一件をジュンに話す。 今夜はジュンは都合が悪いのだが、アスカはお構いなし。 そして映画が途中なのに、アスカは外に出て行ってしまう。
「怪物になった恋人をヒロインが殺して、ジ・エンド。ラストシーンはどれも一緒よ」

家に帰ったジュン。和美が、今夜の二人でのディナーを楽しみにしている。 そこにジュンはディナーが駄目になったことを告げる。しかし和美は半ば覚悟していた。 そして、いつまでたっても自分に心を開いて本当のことを話してくれないジュンに和美は苛立つ。
「こんな中途半端な家族ごっこ、私もう限界だよ!」
和美は家を飛び出す。

夕方、ジュンはデパートに向かう。和美にプレゼントするブローチを買うために。 が、そこでジュンは獣の匂いを感じ取る。しかしそこに向かおうとしたジュンを、突如現れたアスカが止める。 こんな人込みの中で狩りをするのはうかつだと。そしてアスカは和美をジュンのペット扱いする。 ジュンはそんなアスカに怒りの眼を向ける。

家に帰ったジュン。だが和美は帰っていない。 そして和美の居場所もつかめぬまま、前田が迎えに来る。

デパートに入ったジュンとアスカ。ジュンは獣の匂いを感じ取り、二人はその現場に向かう。 そこには、キャンドルのともったテーブルを囲んだ4人の死体…。 そして、見えないビーストが暗闇を駆け抜ける。保護色で姿を隠すビースト!?

「何してるの、早く本当の自分になって、反撃するのよ!」
「今だって…本当の私!」
「またつまらない感情を持ち出す気? 獣になるのよ。そしてとっとと獲物を仕留めなさい!」
アスカはジュンに本気で銃を向ける。
「戦うのよ」
「もし人間にこだわりたいなら、ムチで打たれる前に自分から戦いなさい! 自分の意志で」
ジュンは変身する。レディーの顔に歓喜の表情が浮かぶ。

敵は眼に見えず、しかも流れる音楽で聴覚も役に立たない。だがレディーは、その超感覚で敵を捉えていた。 壁に叩きつけられ、逃げ出すビースト・キルナー。

屋上に逃げたキルナー。レディーが追うが、キルナーはそこに静かに座り込んでいた。 キルナーは自分のことを語り始める。彼の名は立花。 平凡な生活を送っていたが、身に覚えのないことで突如デパートを解雇されて週刊誌に追い回され、平凡な幸せの全てを失ってしまったのだ。

既にレディーの変身は解けていた。ジュンはキルナーに、元に戻ろうと言う。まだきっと戻れる、と。 その時、アスカの銃が火を噴いた。
「アスカ! やめて、この人は!!」
「もう人じゃない」
なおもキルナーを撃つアスカ。

理性を失ったキルナーはギガイフェクトを発現させる。 殺せとジュンに命令するアスカ。だがジュンは、まだ戻れるはずだ、と戦う様子を見せない。

そして午前0時。クリスマスの花火が上がる。その時、現れたHAの武装ヘリがキルナーを撃ちまくる。 キルナーは絶命する。最期に、彼の脳裏に家族の姿が浮かぶ。

戦わなかったジュンを非難するアスカ。
「一度ビースト因子に支配された者は、二度と元には戻れない」
「いくらイブの夜でも、そんな奇跡は起きやしない」
ジュンはアスカの横を通り過ぎ、去って行く。
「あの映画のラストシーンね…」
「あなたが出ていった後、ヒロインの恋人、元の人間に戻ったわ」

ジュンが部屋に帰ると、ケーキを前にしてプレゼントのブローチを握り締めたまま和美が眠りこけていた。
「壊したくない…私を、人でいさせてくれる、かけがえのないもの」


カメレオンビースト・キルナー

体長 3m〜10m、体重 300キロ〜7トン

不倫スキャンダルの身代わりに仕立て上げられ、全てを失ってしまった中年男がビースト化。 カメレオンなので、保護色で身を隠す。 が、保護色というよりは、透明になっているとしか思えない。 しかし古来よりカメレオンの怪獣怪人と言えば大抵そうである。 由緒正しいカメレオン怪物の能力であり、歓迎すべきであろう。


映画館。ジュンとアスカの打ち合わせ。 なぜわざわざ映画館で打ち合わせをやるのか理解に苦しむが、アスカの気まぐれかな。 そこで話をしている二人を、うるさそうに前の席の兄ちゃんが時々見る。 そうだよねえ。映画の上映中にぺちゃくちゃ喋るなよな。何考えてんだ、このアホども。 この兄ちゃん、この手の映画のマニアで真剣に見てたんじゃないかな。うーん、気持ちが分かる。

しかしジュン、人間が怪物化して人を襲うなんていう、今のジュンにしてみればトラウマ直撃映画をよく最後まで見たもんだ。 元々ジュンの趣味だったとも思えないし。 しかし画面の様子から察するに、どうもアスカが出て行く時点でクライマックスだったと思われる。 すると根が真面目なジュンのこと。せっかく見てるんだから最後まで見よう、といったところかな。 うーん、なんだか想像できてしまう。

まあそれはともかく、さて今回から、向かいのマンションからジュンの部屋を望遠鏡で覗く…あ、いや監視する兄ちゃんが登場。 とは言っても、大した役割のキャラではない。まだ坂沢の方がよっぽど重要なキャラである。 ちなみにその坂沢は今回、前田の車を尾行しようとしてトラックに行く手を阻まれ車が横転。 次回はお休みして、その次で痛々しい姿で登場する。

なお、今回の前田。迎えに行った時、1分30秒遅れたとジュンに謝罪している。 途中で信号に引っかかったのかな。だから秒単位でスケジューリングするなって言ってるのに。

さて話自体は、前回に引き続いてジュンのビーストに対する共感が明確に描かれている。 そして前回は相手が子供だったせいもあってか全然対立しなかったジュンとアスカだが、今回は思い切り火花を散らす。 ジュンがいつものように飼い犬扱いされていることに対してだけではなく、ビーストに対する考え方の違いから。

そもそもジュンはビーストを嫌っているわけではないし、むしろ考えようによっては彼女の同類。 今まで死闘を繰り広げてきたビーストが相手であっても、彼女が温情をかけようとするのも無理はないのだ。 しかしそんなデビルマンならではの感情など、人間達には無視されてしまう。 更にビーストからも裏切り者扱いされ続ける。ジュンは悲しい存在なのだ。

しかしジュンってば、やっぱ普通の人ではない。 戦いの最後の時、変身が解けたジュン。 当然全裸なのだが、そこに雪が降っている! しかもジュンは平然としている! さ、さすがデビルマン。恐るべき存在だ。


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