ロボットアニメを語る上で絶対に避けては通れない映画。 人によってはロボットアニメ最高峰だと言う。 何がそんなに凄いのかと言うと、それはマジンガーZからグレートマジンガーへの主役交代劇を鮮やかに描き切ったこと。 無敵のはずのマジンガーZが完膚なきまでにやられ、一方それを助けに現れたグレートマジンガーの圧倒的な強さ! そのストレートな描き方にカタルシスを感じない者がいるだろうか。本当にシビれるのである。
…と、それはそうなんだけど、実は私はこの映画をそれほど熱狂的には支持していない。 なぜかと言うと、私は「マジンガーZ」の最終回の方を先に見てしまったから。 確かに映画の出来はいい。しかし個人的には、この最終回「デスマッチ!甦えれ我等のマジンガーZ」の方が出来がいいと思うのだ。
それで比較してみると、まずは映画のマジンガーZと戦闘獣の戦い。 マジンガーZは結構善戦していて、戦闘獣を何体か倒している。 ここで、「戦闘獣ってZの力でも倒せるのね」という印象が与えられる。 一方のテレビ版(と以降呼ぶ)の方。戦闘獣グラトニオスとビラニアスの前に全くZは歯が立たない。 ボコボコにやられまくるのである。 そうなると、グレートが現れた時にどちらがカタルシスがあるかは一目瞭然。
それに、映画の方は戦闘獣が大軍で攻めてきているため、どちらかと言うと量でZに勝っているという印象を与える。 「タイマンならZでも余裕で勝てるんじゃないの?」という疑問が起こってくるのだ。 それに対してテレビ版はわずかに戦闘獣2体。それまでにも機械獣2体と同時に戦うなんてことはあったし、敵が多いという印象は全くない。 だからこそ戦闘獣の強さがアピールされる。
更にグレートの登場とその強さのアピール。 そりゃあ映画でも、サンダーブレークでアルギモンを一撃で倒すとか、バルマンのミサイルを手のひらでこともなげに跳ね返すとか、シビれることはシビれる。 しかし、テレビ版での直接的対比の方がシビれるんじゃないかと思うのだ。
何かと言うと、テレビではマジンガーZがグラトニオスにロケットパンチを放つ。 ところがグラトニオスは破壊光線でロケットパンチをあっさり破壊してしまう。 余談だがこの破壊光線はゲーム・スーパーロボット対戦でおなじみの、モビルスーツくらいなら一撃で破壊するあの凄い破壊力のやつだ。 と、それはさておき、片やグレートと対戦した時。 グレートのアトミックパンチに対してグラトニオスは同じように破壊光線を放つが、アトミックパンチは平然とそのまま飛んできてグラトニオスを貫く。 これこれ。このストレートに強さをアピールする演出があってこそ、グレートの強さが際立つのではないだろうか。
じゃあ映画の演出が駄目なのかというと、そんなことはない。 タイトルを見れば分かる通り、この映画の主役はあくまでもマジンガーZなのだ。 もはやZが活躍する必要のないテレビの最終回とはわけが違う。 そう考えると、Zが戦闘獣を倒すのも分かるし、グレートがZに獣魔将軍を譲るのも納得できるのだ。 剣鉄也が自分の獲物を譲るような奴じゃないと分かるのはグレートのテレビ放映が始まってからのことだし。 映画なんだから、敵は多い方が豪華になるしね。 でも映画のグレートには、ミサイルだけじゃなくて光線や溶解液なんかもよけずに平然と受け止めてほしかったな。
それともうひとつ、先にグレートのテレビを見てしまった者としていただけないことがある。 グレートに登場することになる新キャラの声が全員テレビ版と違うのである。 例えば剣鉄也の声が田中亮一。 じゃあテレビで鉄也の声をあてていた野田圭一はどうしてんのかと言うと、なんと戦闘獣ダンテの声をやっている! 敵の声をやってどーすんだよ。 でも、暗黒大将軍をやった小林清志は、テレビの緒形賢一より似合うような気がする。
まあ、グレートのプロモーションとして強さをアピールしつつ、マジンガーZにもおいしいところを持っていかせているという点では良く出来た映画だ。 映画としては最高に燃えるロボットアニメだということは間違いない。 映画館のスクリーンでぜひ見たい作品である。 上で述べてきたことは、最高のテレビ作品と最高の映画を比較してみただけのこと。 どちらも最高なので、あまり気にしないでいただきたい。
なお、この映画に登場する獣魔将軍・爬虫類型戦闘獣ジャラガ・悪霊型戦闘獣ダンテもゲームのスーパーロボット対戦でおなじみだ。 でもダンテは、映画ではリーダー格だったのにボスボロットにやられてしまう。 なんて不名誉なやられ方だ…。
東京ではマジンガーZが戦闘獣を迎え撃つが、多勢に無勢。東京は火の海になる。 しかも超合金Zをもやすやすと破壊する戦闘獣にマジンガーZは大苦戦。 そして、2体の戦闘獣が光子力研究所を襲う。その力の前にはボスボロットもダイアナンAも歯が立たず、研究所のバリヤも破られる。
崩れる研究所。所員は地下へ避難するが、甲児への誕生日プレゼントを取りに部屋に戻ったシローが重傷を負う。 それを聞いた甲児は、気力を振り絞って東京の戦闘獣軍団を倒し、研究所に戻る。
瓦礫の山となった研究所。甲児は戦闘で疲れているにもかかわらず、シローに輸血を行なう。 マジンガーZの修理を急ぐ博士たち。 そして再び預言者が現れ、敵の正体はミケーネの暗黒大将軍であることを告げる。
一方、ミケーネでは暗黒大将軍が獣魔将軍にマジンガーZ攻略を命じる。 そして日本に向かう戦闘獣軍団。甲児はボロボロのマジンガーZと輸血でフラフラの体で、死を覚悟して出撃する。 が、獣魔将軍率いる強力な大軍団の前に全く手が出ない。 ボスボロットの助っ人も虚しく、Zは破壊寸前に追いつめられる。
その時、謎の預言者が動き出す。その正体は甲児の父、兜剣造!? その命令でブレーンコンドルが飛び、発進するグレートマジンガー! マジンガーZにとどめがさされようとした時、颯爽と登場したグレートマジンガーは、その圧倒的な力で戦闘獣軍団を蹴散らす。 マジンガーZも、グレートから渡されたマジンガーブレードで戦闘獣アルソスを倒す。 また獣魔将軍も、自ら放った炎をグレートタイフーンで跳ね返され、マジンガーZのマジンガーブレードで胸を貫かれる。 そして、ブレストファイヤーとブレストバーンが獣魔将軍を焼き尽くす。
平和が戻った。向かい合うマジンガーZとグレートマジンガー。
「強い…君のロボットは何て言うんだ?」
「グレートマジンガー」
「グレートマジンガー!?」
「マジンガーZの兄弟さ」
そしてグレートマジンガーは去って行くのだった。
製作 | ... | 登石雋一 |
製作担当 | ... | 茂呂清一 |
企画 | ... | 有賀健・旗野義文 |
原作 | ... | 永井豪とダイナミックプロ |
脚本 | ... | 高久進 |
作画監督 | ... | 角田紘一 |
音楽 | ... | 渡辺宙明 |
演出 | ... | 西沢信孝 |
兜甲児 | ... | 石丸博也 |
剣鉄也 | ... | 田中亮一 |
弓さやか | ... | 江川菜子 |
兜シロー | ... | 沢田和子 |
弓教授 | ... | 八奈見乗児 |
兜剣造 | ... | 大塚周夫 |
ボス | ... | 大竹宏 |
ムチャ | ... | 田の中勇 |
ヌケ | ... | 富田耕生 |