そこに降り立つ一人の少女。 美夕という名のその吸血鬼は、人の世にはぐれ出た神魔を封じる宿命を帯びた少女。 そして、そんな彼女の存在を知った霊媒師・瀬一三子は彼女を追う内に、戦慄の体験を味わうことになるのだ。
要は主人公の妖怪が人の世に仇なす妖怪を退治するという、よくあるパターンのものなのだが、主人公の美夕が人間側に立っていないというところが一味違う。 美夕は別に人間を守ろうとしているわけではなくて、はぐれ神魔を狩るという責務を果たしているだけである。 そんな彼女にとって人間は自分とは何の関係もない存在であるか、もしくは単なる食事の対象か、ただそれだけなのだ。 正義感などどこにもない。
そんな彼女を追うのが霊媒師の瀬一三子。偶然美夕が吸血鬼であることを知ってしまった彼女は、彼女に関わる事件を追い続けて人間側からストーリーを引っ張っていく。 化物である美夕を放置してはおけない…人間的に言うところの正義感によって動いているのは一三子の方であるが、しかし大した力も持っていない彼女は美夕に翻弄され続ける。 そしてラスト、彼女の正義感の源も静かに崩壊する。
全体的には独特の幻想的な雰囲気が漂っており、そこが気に入れば本作にハマることだろう。 ただ、わずか全4話にして各話がバラエティに富んだ内容となっているため、それぞれの話にやや深みが足りないように感じるかもしれない。 そういったところに不満を感じる方は、2クールもののシリーズとなったテレビ版(インテグラル版)をご覧になってはいかがだろうか。 人によって好みは分かれるところだろうが、私はどちらも好きである。
なお本作のもうひとつの難点を言わせてもらうと…関西人でないと分からないかもしれないが、あの怪しい京都弁、なんとかしてほしいんやけどなぁ。
タイトル | 登場神魔 | |
第一話 | 「妖の都」 | 羅魘 |
京都に、女性ばかり狙われる吸血鬼事件が発生した。 その頃、昏睡状態にある少女を目覚めさせるべくやって来た霊媒師の一三子は、少女と吸血鬼事件が関係あるらしいことを察する。 だが、やがて一三子は知る。まばゆい陽光の中で十字架にも動じない、吸血鬼の少女が存在することを。 そしてその少女・美夕が、吸血鬼事件を追っていることを。 |
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第二話 | 「操の宴」 | 爛佳 |
少女の失踪事件を追って学校にやって来た一三子は、そこで美夕と再会する。 美夕はその学校で、女子に大人気の先輩男子を次なる獲物として狙っていたのだった。 だが、彼を狙っていたのは美夕だけではなかった。そこには神魔の影が隠れていたのだった。 |
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第三話 | 「脆き鎧」 | レムレス |
なんと美夕が一三子に、ラヴァを助けてと頭を下げてきた。一三子は美夕や神魔について教えることを条件に、その申し出を引き受けた。 そして封印されたラヴァの周りに現れる鎧の化け物について調べる一三子の前に、謎の男が現れる。 |
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第四話 | 「凍る刻」 | --- |
少女時代に住んでいた鎌倉に行ってみた一三子。かつての不思議な思い出を追いかけてみたのだが、その記憶にあった家が突如目の前に出現した。 中に入ると、そこには美夕がいた。そこは美夕が昔住んでいた家だったのだ。 そして美夕は語り始める。かつて人として暮らしていた自分が、なぜ神魔を狩ることになったのかを…。 |