吸血姫美夕

昭和63年〜平成1年、OVA全4巻
各30分

概要

神であり魔であるもの、神魔。 闇を恐れた人間達は記憶からその存在を消し去ったが、彼らは目覚めの刻を迎えていた。

そこに降り立つ一人の少女。 美夕という名のその吸血鬼は、人の世にはぐれ出た神魔を封じる宿命を帯びた少女。 そして、そんな彼女の存在を知った霊媒師・瀬一三子は彼女を追う内に、戦慄の体験を味わうことになるのだ。

解説

監督・平野俊弘&キャラクターデザイン・垣野内成美の黄金コンビが送り出したホラーアニメ。 コミカライズを経て後にテレビアニメ化まで果たしたヒットシリーズの原点がここにある。

要は主人公の妖怪が人の世に仇なす妖怪を退治するという、よくあるパターンのものなのだが、主人公の美夕が人間側に立っていないというところが一味違う。 美夕は別に人間を守ろうとしているわけではなくて、はぐれ神魔を狩るという責務を果たしているだけである。 そんな彼女にとって人間は自分とは何の関係もない存在であるか、もしくは単なる食事の対象か、ただそれだけなのだ。 正義感などどこにもない。

そんな彼女を追うのが霊媒師の瀬一三子。偶然美夕が吸血鬼であることを知ってしまった彼女は、彼女に関わる事件を追い続けて人間側からストーリーを引っ張っていく。 化物である美夕を放置してはおけない…人間的に言うところの正義感によって動いているのは一三子の方であるが、しかし大した力も持っていない彼女は美夕に翻弄され続ける。 そしてラスト、彼女の正義感の源も静かに崩壊する。

全体的には独特の幻想的な雰囲気が漂っており、そこが気に入れば本作にハマることだろう。 ただ、わずか全4話にして各話がバラエティに富んだ内容となっているため、それぞれの話にやや深みが足りないように感じるかもしれない。 そういったところに不満を感じる方は、2クールもののシリーズとなったテレビ版(インテグラル版)をご覧になってはいかがだろうか。 人によって好みは分かれるところだろうが、私はどちらも好きである。

なお本作のもうひとつの難点を言わせてもらうと…関西人でないと分からないかもしれないが、あの怪しい京都弁、なんとかしてほしいんやけどなぁ。

登場人物

ナレーションは納谷悟朗。
美夕(渡辺菜生子)
はぐれ神魔を闇に返す使命を帯びた吸血鬼の少女。しかし日光や十字架など、いわゆる吸血鬼の弱点とされるものは一切通用しない。 元々は人間として暮らしていたがやがて吸血鬼としての本性に目覚めてしまい、ある事情からはぐれ神魔を追い続けることとなった。 神魔の本名を暴くことにより神魔を封じる。
美男子の血が好みらしい。グルメだ。また性格はかなり小悪魔風であり、一三子を何かと翻弄する。 ちなみに第一話では、彼女は名乗りもしないので名前不明のまま終わってしまう。
なお、美夕の役目の名称=「監視者」のはずであるが、本作ではどうもそうではなさそうである。 どの神魔も彼女を「ヴァンパイア」としか呼ばないし、第四話を見ると今の彼女は本来あるべき姿の監視者ではなく、「特別監視者」とでもいった方が適切なような気が。
ラヴァ(塩沢兼人)
西洋神魔。美夕を滅ぼすべく現れたが、彼女に血を吸われて逆にその本性を目覚めさせるきっかけとなってしまった。 それ以来彼は言葉を失い、仮面を被って美夕の従者として彼女に付き従うこととなった。
瀬一三子(小山茉美)
その筋では有名な霊媒師。京都での吸血鬼騒ぎで美夕と出会い、以降彼女なりの正義感から美夕を追いかけることになる。

全話リスト

物語の性質上、詳細に述べるのも興ざめなので、軽くあらすじのみ。
タイトル登場神魔
第一話「妖の都」羅魘
京都に、女性ばかり狙われる吸血鬼事件が発生した。 その頃、昏睡状態にある少女を目覚めさせるべくやって来た霊媒師の一三子は、少女と吸血鬼事件が関係あるらしいことを察する。 だが、やがて一三子は知る。まばゆい陽光の中で十字架にも動じない、吸血鬼の少女が存在することを。 そしてその少女・美夕が、吸血鬼事件を追っていることを。
第二話「操の宴」爛佳
少女の失踪事件を追って学校にやって来た一三子は、そこで美夕と再会する。 美夕はその学校で、女子に大人気の先輩男子を次なる獲物として狙っていたのだった。 だが、彼を狙っていたのは美夕だけではなかった。そこには神魔の影が隠れていたのだった。
第三話「脆き鎧」レムレス
なんと美夕が一三子に、ラヴァを助けてと頭を下げてきた。一三子は美夕や神魔について教えることを条件に、その申し出を引き受けた。 そして封印されたラヴァの周りに現れる鎧の化け物について調べる一三子の前に、謎の男が現れる。
第四話「凍る刻」---
少女時代に住んでいた鎌倉に行ってみた一三子。かつての不思議な思い出を追いかけてみたのだが、その記憶にあった家が突如目の前に出現した。 中に入ると、そこには美夕がいた。そこは美夕が昔住んでいた家だったのだ。 そして美夕は語り始める。かつて人として暮らしていた自分が、なぜ神魔を狩ることになったのかを…。

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