侍ジャイアンツ

放映

昭和48年10月7日〜昭和49年9月29日、全46回
よみうりテレビ・日本テレビ系

概要

巨人軍がV9に向けて戦っている時、川上監督は新戦力を求めていた。 そこで万年2軍の八幡太郎平から、その後輩である番場蛮を紹介される。 誘いを受けた番場蛮は最初、でっかい奴はきらいだと言って拒否していたが、愛しの理香の勧めもあって巨人軍に入る。

最初は内部から巨人をひっかき回そうとしていた蛮だったが、世間にはもっとでっかいものがあるということを知り、やがて巨人優勝の主戦力になっていく。

解説

原作はスポ根アニメの代表作、「巨人の星」と同じく梶原一騎。そして井上コオ。 魔球を駆使して巨人軍を勝利に導く、という構図は「巨人の星」と同じである。 だが、つらい特訓が基調となっている「巨人の星」とは異なり、明るい青春ものといった雰囲気がなんともさわやかだ。

この作品の魅力はやはり番場蛮の魔球である。 「巨人の星」の星飛雄馬の大リーグボールは、相手の心理を読むとか土を巻き上げてボールに付着させるなどといったいかにも嘘臭いものだった。 しかし蛮の魔球は単に飛び上がればいい、単に高速回転すればいいといった単純なものだったので、いかにも自分にも投げられそうな印象を持ったものだった。(ホンマかいな) 子供の頃、大回転魔球の真似をして気分が悪くなったのは私だけではあるまい。(私だけだったりして…) これらの魔球に関しては後で総力特集を行なう。

昭和50年代、関西地方ではなぜか「巨人の星」は全く再放送しなかったのにこの作品は何度も再放送されていた。 そのために少なくとも関西育ちの人は、たとえ阪神ファンでもこの番組に結構思い入れがあるのではないだろうか。

登場人物

番場蛮(富山敬)
土佐の暴れん坊。漁師である父親はクジラに呑まれて死んだ。巨人に入団し、背番号4を付ける。 ハイジャンプ魔球、エビ投げハイジャンプ魔球、大回転魔球、分身魔球、といった魔球を編み出して巨人を優勝に導く。 ちなみに原作漫画では、無理がたたってマウンド上で死亡する
八幡太郎平(納谷六朗)
蛮の先輩。巨人の2軍選手だったが、蛮の魔球を受けられる唯一のキャッチャーであるため1軍入りする。 打撃はからっきしだったが、後に蛮による逆さ吊り打法という猛特訓でなかなかの強打者に成長する。
美波理香(武藤礼子)
蛮の愛しの君。蛮を見守っていたが最終回で海外に発つ。
眉月光(井上真樹夫)
確かヤクルトの選手。蛮のライバル。 大財閥の御曹司で、その財力を生かした贅沢な特訓で蛮の魔球を破ろうとする。
大砲万作(西尾徳)
確か中日の選手。蛮のライバル。 豪快なパワーの持ち主で、そのパワーで蛮の魔球を破ろうとする。
ウルフチーフ(桑原たけし)
阪神の助っ人外人。巨人のアメリカ遠征で蛮と対決したことがある。 今時こんな奴いねえよと言いたくなるほどのワイルドなネイティブアメリカン。 その体に眠る野性を駆使して蛮の魔球を破ろうとする。

魔球全解説

この作品の魅力である番場蛮の魔球の数々。 その全てについて、どのように編み出されたか、誰が破ったかについて解説しよう。 なお、資料が自分の記憶しかないので、間違いだらけなはず。どんどん間違いを指摘して下さいな。

★ ハイジャンプ魔球

工事現場で上から落ちてきたスパナが自動車のボンネットにめり込んだのを見たことから思い付いた魔球。 マウンドで空高くジャンプし、最高点でボールを投げ下ろす。

試合で最初に披露した時、これはボークではないかとクレームがついたが、審判団が延々と協議した結果ボークではないということになった。 でも実際のところはボークらしい。

・特徴

単なる直球なのだが、重力に逆らわずに飛んでくるので球威が凄まじい。 おそらくは終速の方が初速より速い球。(ブンかお前は…って知らねーよ、誰も) そしてとんでもない斜めの角度で飛んでくる。 こんな角度で飛んでくる球など打てるわけがない。

・破ったバッター

最初にバットに当てたのは眉月光。神社の石段の上から弓道の先生に矢を射ってもらい、それを石段の下でバットで真芯に捉えるという特訓を積んだ。 しかし世の中そんなに甘くなく、実際の試合では思うように当たらない。 そこで苦肉の策、バントによってようやくバットに当てた。 ピッチャーがジャンプしている関係上対応が遅れるので、この魔球はピッチャー前バントに弱いという弱点が明らかになった。

実際に安打にしたのは大砲万作。眉月との対決にヒントを得て、バントの体勢でバットに当ててそのまま振りぬくという打法で打ち崩した。 何度もファールにしていたが、振りぬいているのでスリーバント扱いにはならなかったようだ。

★ エビ投げハイジャンプ魔球

ハイジャンプ魔球のマイナーチェンジ。投げる時にエビ反るのが名の由来。 釣竿を思い切りしならせてキャストすると花瓶すら砕く威力が出るのを見て思い付いた。

・特徴

エビ反ることで更に球威が増した。 それに、投げる時に手がバッターの目から隠れるのでバッターの反応が遅れる。 この特徴が次の大回転魔球のヒントになったのかもしれない。

・破ったバッター

超パワーを誇る大砲すら、あまりの球威にバットが弾き飛ばされてしまった。 そこで無理して打とうとしてバットを手に縛り付けてみたが、なんと骨折してしまった。

この恐ろしい球を破ったのは来日したウルフチーフ。打球にグラブを突き破るほどの超回転を与えるスクリュー打法をひっさげて登場した。 蛮がジャンプすると同時にジャンプして蛮と同じ高さに位置することで、投げる時にいち早く球筋を見切った。 そして着地と同時に打ち、見事スタンドに叩き込んだ。

しかし、ウルフが着地するよりボールがミットに収まる方が早いと思うんだが…。(う、禁句かな?)

★ 大回転魔球

マウンドでモーションが見えないほど高速回転して、そのまま直球を投げる。 ちなみにこの魔球も本当はボークらしい。 この魔球は初登場時の、じらしにじらす演出がいい。

まずはエビ投げハイジャンプを破られて失踪した蛮を八幡がようやく見つける。なんと蛮は新魔球の特訓中だという。 だが蛮がするのは、モーターボートで引っ張り回してくれとか、樽に入って坂を転がり落ちたりとか妙な特訓ばかり。 訳が分からないままに協力する八幡。そしてある日、蛮は魔球が完成したと言う。

そこで魔球を受けてみることになる八幡。
「いいか先輩。これは恐ろしく取りにくい球なんだ」
と言う蛮だが、八幡は何がなんだか分からないのでニコニコしている。 そしてモーションに入る蛮。それからは八幡の顔のアップだけが続く。途端に八幡の目が驚愕に見開かれる。
「な、なんじゃあ。あんな、あんな投げ方があるのか…」
ボールが飛んでくる音。八幡は受けることができず、ボールはマスクにめり込む。魔球の完成を喜ぶ二人。 視聴者にはいまだに魔球の正体は不明。

巨人軍の練習場にやって来た二人。蛮は川上監督に、ON砲(当時の巨人を支えた王&長嶋の2大巨砲のこと)と勝負したいと言う。 なんとバットにかすりでもすれば自分の負けでいいと言うのだ。

監督は勝負を許可するが、魔球の正体が取材陣に知られるのを怖れてマウンドの周りをネットで囲む。 そしてまず打席に立つワンちゃん(王選手)。ハイジャンプ魔球の時に一度敗れているので闘志は充分。

蛮はモーションに入る。途端に蛮の姿は映らなくなる。ワンちゃんと、バックネット裏で見ている監督が驚く姿だけが映る。 ネットの中から出てくる球。何の変哲も無いストレート。だがワンちゃんはバットを振ろうともせず、ボールがミットに収まっても一本足のまま震えているだけだ。 やがてうなだれてバッターボックスを離れるワンちゃん。

それを見ていたチョーさん(長嶋選手)、ワンちゃんをたった一球で降参させるとは、と舌を巻く。 だが、バットにかすりでもすれば負けでいい、という蛮の思い上がりを叩くべく打席に立つ。 そこで蛮、チョーさんに第1球を投げるが、そこで初めて投げる様子が映し出される。

気合一閃と共に、マウンド上で回転を始める蛮。やがて、いつ投げたのか分からないままボールが飛び出してきてミットに収まる。 その速さに驚くチョーさん。そこで、蛮が回転を始めてからボールが飛び出してくるまでのタイミングを測って打とうとする。 しかし肝心のボールが見えていないのでかすりもしない。
「まいったー!」
さすがのON砲も全く手が出ない。凄い球だ。

・特徴

高速回転のため、凄まじい球威となる。 そして投げるモーションが見えないので、打つタイミングが測れない。 ボールが見えたと気付いた時にバットを振り始めても既に手遅れなのである。

ピッチャーがモーションを始めてからボールがミットに収まるまでを12コマに分割した場合、大回転魔球ではモーションが見えない分で4コマ分の時間が少ないんだそうだ。 そのためにバント以外で打つのは不可能だという。

・破ったバッター

意外にも3人のライバル全員がバットに当てている。

最初はウルフチーフ。エビ投げが破られてからの初対決の試合で大回転魔球の公式戦初披露。最初の打席から投げたため、何回も対決した。 ウルフは色々と試行錯誤して打とうとしたが、最後の打席では蛮と同じくバッターボックスで回転した。 蛮の方を向いている間だけ蛮の姿を捉えるので回転に惑わされることなく、しかも自らの回転で魔球の球威に負けない威力を出す、という試み。 しかし付け焼き刃ではかなうはずもなく、当てたはいいが自分はベンチまで吹っ飛ばされ、打球はピッチャーフライに終わった。

次は大砲。持ち前のパワーを生かした鋭いスイングの特訓をし、更にピッチングマシンの前に障子のようなついたてを置いて、突如飛び出してくるボールに対する反応力を高める特訓を積んだ。 実際の対決では、蛮の回転を全く見ずにボールが出てくる瞬間だけを見切り、鋭いスイングで見事に当てた。 しかしその衝撃でボールが真っ二つに割れ、ライトフライ&レフトフライという異例の結果に終わった。

打ち崩したのは眉月。当てるにはバントしかない、しかしバントですら球威に押されて前に飛ばせないと知り落胆したが、パンチングマシンを見て打つヒントを得た。 前後に揺れるパンチングマシンが、向こう側に動いている時に打つと力が殺されてしまうというのがヒント。 そこで、鉄球を打ち出す特製ピッチングマシンを用意し、つるつるの滑る床の上で更に滑りやすいように靴下を履いて、木製バットで鉄球を打ち返すという特訓を積んだ。

実際の打ち方は非常に特殊。まずスパイクのない裏がつるつるの靴でバッターボックスの一番前に立つ。 そして4コマ分の空白を埋めるため、あらかじめバットをホームベースの上に出しておく。 そしてバットをボールに当てたら、そのまま球威に任せてバッターボックスの一番後ろまで押される。 そうなると球威がかなり殺されているので、そのまま振りぬく。

こうして見事ホームランにした。しかし特訓で体がガタガタになっていたので、ホームベースを踏む直前で倒れてしまった。 その彼に手を差し伸べたのは蛮だった。うーん、さわやか。

★ 分身魔球

蛮の初の変化球。欠けた皿を投げると不規則な回転をすることから思い付いた魔球。 ボールを握り潰して投げ、不規則な変化を起こさせる。 まるでボールが分身しているように見えるので、この名が付いた。

この魔球を編み出す時は今までと違っている。 最初にネタが割れていて、いかにその魔球を実現するかが描かれている。

八幡に頼らず一人でやっていこうとする蛮、欠けた皿を投げて分身魔球のヒントをつかむ。 だが、ルール違反せずに同じ効果を及ぼすにはボールを握り潰すしかなく、そんなことはできないと落胆する。

一方の八幡は空手をやっている先輩と偶然出会って一緒に飲んでいたが、なんと彼は素手でボールを握り潰すことができると聞く。 そこで八幡は彼に、偶然をよそおって蛮と出会いその技を教えてやってくれと頼む。

そしてその先輩は蛮と出会い、その「じねんしゃくりきほう(字が分からん。自念釈力法?)」を蛮に教える。 蛮は彼が都合で帰った後も、嵐の中でその技を会得すべく努力していたが、なかなかうまくいかない。 しかし八幡が心配して見に来たことで全てが彼の差し金であることを知り、そのことに対する怒りからついに技を会得した。

が、せっかく魔球が完成しても、八幡にも球の実体が見えないので受けることができない。 八幡は羽ばたく蛾を素手で捕らえる特訓を積み、更に包丁を刺したボールを決死の覚悟で受ける(ひぇー!)ことで分身魔球を受けることができるようになった。

・特徴

変化方向が一定していないし、高速に変化して無数の残像が発生するので、どれが本物のボールか分からずバットに当てることすら出来ない。

・破ったバッター

もうペナントレース終盤だったので、対決した相手はウルフチーフのみ。 優勝争いの阪神戦で(おお!阪神が優勝争いしているとは素晴らしい)、復活したウルフに破られた。

ウルフは分身魔球の変化方向が横方向の一定軌道であることを見破り、バットを極端に短く持って打席に立った。 そしてウルフお得意の目でボールの変化を見切り、魔球の変化の軌道に向きを合わせてバットを振りつつ、手をゆるめてバットを握る位置を調節してジャストミートした。

★ 分身魔球(縦分身)

ウルフに分身魔球を打たれた試合で最後に披露した魔球。 ウルフの前の打者を打ち取れば優勝という場面で、ウルフの入れ知恵でその打者にヒットを打たれてしまい、一打逆転の大ピンチとなる。

そこで、怪我で自宅療養中だったチョーさんから電話が入る。
「バットは横にしか振れん。魔球はまだ生きている」
少し考えていた蛮、ようやくその意味を悟る。もっと単刀直入に言ってやればいいのに。

そして、アンダースロー(サイドスロー?)で分身魔球を投げることで、変化方向を縦に変えた。 これではウルフも打つことはできない。 最後に真上からバットを叩き付けてかろうじて当てたが、それだけ。

・特徴

ただでさえ当てにくい分身魔球が、落ちたりホップしたり、と縦方向に変化する。 なぜそんなことが可能なの?…って言っちゃいかんよな。 バットを水平に振っている以上、ミートするのはほぼ不可能。

・破ったバッター

リーグ優勝が決まり、日本シリーズに突入。 そこで縦分身に限らず分身魔球一般の弱点が明らかになった。 まず精神集中を欠くと握り潰すのが甘くなる。すると変化が小さくなって、途中で普通のストレートになったりする。 次に雨に弱い。指先でボールを握り潰すので、雨に濡れると手が滑ってしまうのが原因。 このために雨が続く日本シリーズでは苦しめられるが、ボールを指ではさまず掌全体で掴むことで滑るのを克服。 しかしそんな握りでまともにコントロールできるの?…って言っちゃいかんよな。

そして日本一が決まり、次いでアメリカ大リーグのアステレックスとワールドシリーズを開催することが決定。 そこで大リーグ1のスラッガー、ジャックスと対決。 最初の試合では何も知らないので分身魔球に驚き全く手が出なかったが、それから彼は研究を開始。

そして次の対決。左打席に立った彼は、左手を逆手に持ち変え、左手一本でバットを真下に振った。 そしてボールを捉えるとバットに右手を添え、そのまま振りぬいてスタンドに叩き込んだ。 なんとバットを縦に振ったのだ。凄い。

★ ミラクルボール

縦分身をも破られて手がなくなった蛮、失意の内にマウンドを去る。 だがライバルたちの励ましを受け、再びマウンドに立つ決意を固める。 そして最終戦、なんとかジャックスを抑えれば勝てるという場面で蛮はマウンドに立つ。

まずはハイジャンプ・エビ投げハイジャンプ・大回転魔球と今までの魔球のオンパレード。 だが全ての魔球を研究しているジャックスは、初めてなのに全てバットに当ててしまう。 もっともタイミングが合わず全部ファールになってしまったが。

違う魔球を連続して投げたため筋肉がガタガタになった蛮。 もう打つ手なしかと思われたが、最後にひとつだけ投げる球を思い付く。

分身魔球の構えに入り、ボールを握り潰す蛮。勝利を確信しニヤリと笑うジャックス。だがすぐに驚愕の表情を見せる。 なんと蛮、ハイジャンプ魔球のようにジャンプする。いや、それだけではなく、上昇中に、大回転魔球の回転を始める! そして空中で大回転する蛮が投げたボールは、縦横を問わず変化して何十球にも見える分身魔球だった。
「オオー、ミラクルボール!!」
ムチャクチャにバットを振り回すジャックス。だが当たるわけがない。 八幡も、この素晴らしいボールをミットで受けるのはあきらめ、手を広げて体全体で受け止める。

蛮の勝ちだ! 蛮はMVPに選ばれ、世界の頂点に立ったのである。

・特徴

全ての魔球を組み合わせた、とにかく凄い球。 …では話にならない。そういうアバウトな話はやめて、何が凄いのか考えてみよう。

単純に考えると、ハイジャンプ魔球と大回転魔球の球威を併せ持ったボール。 そして大回転のため、バッターが反応できない時間にボールはホームベースを通り過ぎる。 仮に反応できても、分身魔球で飛んでくるから見切るのは非常に困難。これは凄い。

が、画面を見た限りではどうもそういうボールではなさそうだ。 まず、分身の変化方向が全方向になっているのが変。なぜこうなるのか? それに、ボールが飛んでくる間、なんとバッターは何度もバットを振っていた。 ボールが飛んでくる時間が遅いのは演出としても、何度もバットを振れるというのはおかしい。 それに八幡は体でボールを受けていたが、ハイジャンプ+大回転の球威ならプロテクター越しとはいえアバラが折れても不思議ではない。 でも八幡は平気だった。

素直にこれらの特徴を考慮すると、次のような結論に至る。 すなわち、このボールは実は本当にバットを何回も振れるほどの超スローボールなのである。 なぜ超スローかと言うと、前方に移動しようとする分のエネルギーをほとんど分身のための移動に費やしているからだ。 だから何十球もあるように見える凄い変化をするし、受け止めてもあまり痛くない。

この変化をもたらすものは、分身魔球+エビ投げ。 そう、この魔球には一見エビ投げが取り入れられていないように見えるが、それではエビ投げがかわいそうだ。 だから大回転中にエビ投げの構えで投げていると考える方が自然ではないか? 高速回転しつつ、あんな姿勢からボールを投げるのである。 ひん曲がったボールに更にムチャクチャな回転が加わり、凄い変化を生み出すのではなかろうか。

そのため、実際ボールはほとんど前に飛ばずに縦横に変化してばかりいるのである。 ところがそれが強引に前に飛んでしまうのは、ハイジャンプ+大回転の殺人的球威のたまものである。 それにハイジャンプのおかげで球はほとんど下に落ちるだけでいいわけだし、無理して前に飛ばすためにエネルギーを浪費することはない。

ということでミラクルボールは、凄いスピードで縦横方向に変化しつつ、じわりじわりとバッターに向かって進んでくる恐ろしいボールだということになる。 前に進んでくる移動速度より縦横方向の移動速度の方が速いので、これを打とうとするのは例えば高空から落としたボールを地上で水平にバットを振って打とうとするようなものだ。 それにハイジャンプのために、変化方向の軸はバッターに対してかなり傾いている。

はっきり言って、ミラクルボールを打ち崩すのは不可能と言えるだろう。 もっとも投げた蛮も、一球投げただけで筋肉を酷使しすぎて倒れてしまったので、二度と投げられる球でもなかろうが。

しかし凄いぜ、番場蛮!


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