猿の軍団

放映

昭和49年10月6日〜昭和50年3月30日、全26回
TBS系
毎週日曜19時30分〜20時

概要

突然の大地震のためにコールドスリープ装置に閉じ込められ、長い眠りにつくことになってしまった泉和子、ユリカ、榊次郎の3人。 彼らが目覚めた時、なんと周りには猿しかいなかった。

猿たちは言葉をしゃべり、自動車を駆り、文明を築いていた。 そして人間はどこにも見当たらなかったのだ。

3人は「裸の猿」と呼ばれ、猿の軍団に追われることになってしまう。 やがて3人はこの世界の生き残りの人間であるゴードと出合い、共に人類が滅びゆく理由を探し求めることとなる。

そんな中、妻子の仇としてゴードを追う警察署長のゲバー、裸の猿を保護すべきとするゴリラのビップ大臣、裸の猿絶滅を訴えるチンパンジーのルザー長官などの、様々な思惑が交錯する。 そして彼らの対立はやがて戦乱にまで発展するが、そんな中でゴードたち4人はついにこの世界の謎を突き止める。 その驚くべき謎とは…。

解説

宇宙飛行士たちがはるかな旅の果てに降り立った星。 そこは猿が人間を支配する惑星だった。 猿に追われ、懸命に逃げる主人公。そしてその逃亡の果てに彼が見出した驚くべき真実とは…。

今をサルこと30年前、おサルの映画が話題となった。 20世紀フォックスの「猿の惑星」である。上記がそのあらすじ。 これを読んだら、「猿の軍団」ってパクリじゃん、と思うでしょ。 うむ、この作品は「猿の惑星」のテレビ放映が高視聴率をマークしたため通った企画なので、残念ながら反論はできない。

そして敵もサル者。20世紀フォックスは、番組が始まってもいない内からクレームをつけてきた。 これは我が社の映画のサル真似ではないかと。 ところが製作は我らが円谷プロ。こっちも黙っちゃいない。 あらかじめサル弁護士に相談し、万全の体勢で待ち構えていた。

結局、放映作品を見たフォックス側は著作権侵害にはあたらずとして身をひいた。 さすがフォックス、分かってくだサルか。
(…我ながら情けなくなってくるから、このギャグやめよう)

とまあ、いきなりいわく付きなこの作品だけど、他にも何かとネタには事欠かない。 まず原作者。なんと小松左京、田中光二、豊田有恒の三人が担当。 凄い顔ぶれだ。この三人が緻密に設定を練り上げてこの作品が誕生している。 ちなみに当時、8時までこの番組をやって、8時からはこれまた小松左京の「日本沈没」をやっていた。 なんともSFアワー。

と、もうひとつ有名なネタなのが、これの裏番組。 なんと強敵「アルプスの少女ハイジ」と「宇宙戦艦ヤマト」が同じ枠でぶつかっていたのだ。 当時ヤマトは非常にマイナーだったわけだけど。 しかし結局のところハイジのパワーにはかなうわけもなく、この番組はヤマトと低レベルな視聴率争いを続けることになった。

で、ヤマトは後に大ブレイク。 結局「猿の軍団」は放映が終わったらもう消え去ってしまったのだった。 でも…詳しくは覚えていないが、確かにうちでは「猿の軍団」を見ていた。 珍しい家庭だったのかなあ…。

と、こんな風に書くと内容は大したことないと思われるかもしれないけど、だてに円谷プロや3大SF作家が手がけたわけじゃない。 本格SFドラマとしての、そのしっかりした設定とドラマ展開はなかなか見事なものだ。 ではここでようやく内容の紹介。

いきなりだけど、この猿の世界、なんだか変。 軍団中央本部がある都市部はかなり文明が進んでおり、レストランやホテルなんかがあるし、今の我々には及びもつかぬバリア機能なんかもあったりする。

が、少し地方に外れただけで様子は一変。 突如古典的な農村に早変わり。テレビくらいはあるけれど、自動車すら珍しがったり、預言者や古い因習が支配する世界に変わってしまう。 このアンバランスさは一体何なのか。

思うに、これは彼らが人間の文明を引き継いだ結果ではないか。 ある程度人間の文明遺産を使うことは出来たものの、それを世界全体に発展させられるほど使いこなすことは出来なかったと。 そういった、作中では細かく語られない設定がうかがえるように感じるのは勘ぐりすぎか?

他にも例えば、猿達は日本語をしゃべっており、変に丸っこい漢字を使っている。 これも御都合主義などと言うよりは、そこは日本なんだから日本語が受け継がれていて当たり前じゃないかとは思えないか? といった具合に、設定の底の深さが見え隠れする…と思うのは私だけかな。 とは言え、ま、はるか未来なのに現代の日本語がそのまま通じてしまうのは、ドラマなんだからしょうがないよね。

そしてドラマの内容。 物語のメインは、猿に追われつつ人間たちが、なぜ世界がこうなってしまったのかを探る謎解き。 回を重ねるごとにじわじわと、秘密の一端が解き明かされていくようになっている。 それに、猿側の権力抗争のドラマが重ねられる。

猿の権力抗争は、特に中盤以降でのゴリラとチンパンジーの争いがメインになる。 とは言っても露骨な種族差別と言うよりは、どちらかと言えば同じ種族で作られた派閥といった感じ。 種族差別の方は裸の猿相手で充分過ぎるくらいだし。

しかしまあ、どっちを見ても猿、猿、猿。猿顔の一般市民とはまさに彼らのことだ。 「猿の惑星」は映画だったから猿の社会をあまり事細かに描くことはなかったけど、この作品はテレビだからいつも猿づくし。 預言者猿、ギターを持ってさすらうフォーク猿、田舎の婆さん猿に学者猿に看護婦猿、猿!猿!猿! オープニングも猿ばかりだし、こりゃ悪夢だ、うっきぃ。

しかしこの猿達、声が凄い。 演じている人がそのまま声をあててることもあるんだけど、そうでないことがほとんど。 ナレーターの山田俊司が声をあててることもあるし、その他に神谷明や八奈見乗児…おお、ゲッターロボGのチームが組めるぞ。 うーむ、西尾徳や富田耕生が出ていないのが残念。あ、菊池紘子はいるのか。でも吉田理保子がいないぞ。 しかし柴田秀勝、緒方賢一、矢田耕司なんてポイントも押さえてある。

更に、市川治、沢りつお、辻村真人、池水通洋、八代駿など…って、おお、出たなショッカーの改造人間!
とどめに、最後に出て来る某声が納谷悟朗!
その声はショッカーの首領! ゲルショッカーの首領! デストロンの…以下略。

とにかくその他にも有名声優さんでしっかり占められている。 その筋の声優ファンも絶対に見ようぜ!

なお、この作品は元祖特撮チャイドル(と言っても差し支えあるまい)斉藤浩子の意外にも唯一の特撮系レギュラー番組だったりする。 彼女のファンも必見だ。

最後にもう一言。 この作品はラストでとんでもないオチがつくのだが、これには賛否両論あると思う。 ちなみに私は肯定派。 なぜなら、私はこの作品は第24話で語るべきことは全て語り終えたと思うから。 後は、一応ストーリーに決着をつけるための事態収拾編。 だからどんなラストにしたっていいじゃないか。そう思いません?

登場人物/猿

泉和子(徳永れい子)
低温生科学研究所の研究員。24歳。22歳という説もある。まあ女性の年齢なんて事細かに書くことじゃないしどっちでもいいじゃん。 皆からは泉先生と呼ばれている。 猿の世界に来てしまい、年長者としてユリカや次郎の前では気丈に振る舞うが、本当は自身も不安で泣きたいくらい。だが懸命に二人をリードする。 お約束の展開としてゴードと恋仲になりそうなものだが、そんなことはなかった。ラストでチラッとそれっぽくなっただけ。 ビップ大臣に保護されたことで、猿とは共存できるはずと考える。
ユリカ(斉藤浩子)
15歳。研究所に遊びに来たところで事故に巻き込まれてコールドスリープする。 名字は不明。泉先生や次郎はクレジットでもフルネームなのになぜ…。名前がカタカナというのも怪しい。これがこの作品最大の謎だったりして。
泉先生と共にビップ大臣に保護されて旅するうちに、猿とも心通じ合えることを発見する。 挿入歌の「何処かで愛が」を何度も歌ってくれる。
なお彼女は小さい頃から、ドルゲ魔人やらショッカーの怪人やらを始めとする様々な悪党に襲われてきたため、猿の世界に来たくらいのことはホントはなんでもないのではなかろーか。 …ってなんか違うぞ。
榊次郎(梶正昭)
研究所の所長、榊博士の甥っ子。12歳。ユリカと共に研究所に遊びに行って事故に巻き込まれる。 4人の中では最年少ながら、ユリカを励ますなどしてがんばっている。年齢が似通っているため、ペペと意気投合する。
ゴード(潮哲也)
猿の世界で生き延びてきた人間。25歳。第2話から登場。格闘技やナイフ投げの名人。運動神経抜群で、初めて自動車の運転をしてすぐに(?)マスターしてしまったほど。 小さい頃から猿に虐げられてきたため猿を憎んでいるが、泉先生たちと出会ったことで徐々に心は変わっていく。
なぜ彼が猿の世界で生き延びたかというと、危うくなると先祖伝来の忍法獅子変化や忍法ロケット変身を使って無敵の強さになるからである。(んなわけねーだろ)
ペペ(滝田一恵、声:菊池紘子)
緑山付近に住んでいたゴードと仲良しの子猿。第2話から登場。小さい頃に母が死んでバラドおばさんと暮らしていたが、成り行きでゴードと共に逃げ出す。 第25話で家に戻って母親と再会する。…っておい! 自分でお母さんは死んだと言うとったろーが! ウソつきはドロボーの始まりだぞ!
ハアハア。ま、まあそれはさておき、この子は4人の味方であり、他の猿に怪しまれず行動できるために何かと大活躍してくれる。 ちなみに名字は「保積」ではなさそうだ。
ゲバー(畠山麦)
警察署長のチンパンジー。妻子の仇としてゴードをひたすら追い続ける。 そのためビップ大臣に署長の座を追われるが、ルザー長官より特命を受けて再びゴード達を追う。
しかし彼も人間に生まれていれば、カレーを食べながら人類の平和を守ってくれたに違いない。(サル顔じゃ分からんかなあ。声が独特だから分かると思うんだけど)
ビップ大臣(大前均)
治安大臣を務めるゴリラ。第3話から登場。いかつい外見とその怪力とは裏腹に穏健な性格で、周囲からの信頼は厚い。 裸の猿を保護すべきとして、逃げ出したゴードたちを追う。 最初は人間達をただの絶滅寸前の動物としか見ていなかったが、泉先生達と行動を共にすることで次第に情を通わせるようになる。
サボ(団巌、声:渡辺猛)
ビップ大臣の副官ゴリラ。常に大臣の側にいる忠義の人…いや猿で、泉先生たちにも優しい。 だがその声を聴けば分かるように、彼の正体は悪の秘密結社ゴルゴムを率いる創世王なのである。(ぉぃぉぃ)
ルザー長官(高嶋洋、声:北川国彦/加藤修)
軍団の総指揮権を持ち、裸の猿を絶滅させようと企む隻眼のチンパンジー。第4話から登場。 ビップ大臣とは何かと対立し、後にはクーデターを企てる。
円盤
猿の国を四六時中飛び回っている空飛ぶ円盤(な、なんかレトロな響き)。 猿からは守り神と呼ばれているが、その正体は謎に包まれている。 人間が危機に陥ると、ここ一番という時に飛んできて助けてくれる。 ちなみに笑えるほど典型的なアダムスキー型円盤である。当時はブームだったのね。

全話リスト

作品の性質上、各話のストーリーを詳細に書くとネタばれになってしまう。 謎の解明こそがこの作品のツボなのでそれは避けたい。 ということで、ネタばれにならない程度に大体の流れだけを記載。

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