ガメラ対深海怪獣ジグラ

1971年7月17日公開
カラー,ワイド
本編88分

解説

昭和のガメラシリーズの最終作。とは言っても、大映が倒産したためにシリーズが続かなかっただけであり、最終作としての色合いはない。 主役は例によって子供コンビなのだが今回は変則パターンで、日本人の男の子と外国人の女の子、チョイ役でそのお姉さん、という配置。 このコンビは幼稚園通いで、ガメラ史上最年少の主役コンビ。 ということで、幼稚園児のくせに妙に物事に詳しく、キンキン声で棒読み台詞の子供が大人を差し置いて大活躍するという素晴らしい話が展開される。 ああ、やかましいぞ、このガキ。 あ、いや、仮にも主演だ。ないがしろにすべからず。 ああ、少々お騒がしいようでございますね、お坊ちゃま方。 しかし幼稚園児がストーリーを引っ張るのも無理がありすぎ。そこで、彼らの父親が彼らの手足となってストーリーを引っ張っていく。

低予算をカバーするためか、鴨川シーワールドに全面協力依頼している。 そのため冒頭でオルカの芸をアピールするというシーンが登場したりする。 だがストーリーに無関係なフィーチャーを白々しくちりばめるのが得意なガメラ映画では何の違和感もない。さすがだ。

そしてなんとジグラ対策本部まで鴨川シーワールドの中に設置されている。すごいぞ。 で、そのジグラ対策本部において、ひょっとして敵がここまで侵入しているかもしれんぞと博士が言った時、そんなことは絶対にありえない!と防衛隊のおっちゃんは強調していた。 へ?特に閉鎖しているわけでもない鴨川シーワールドに、なんで敵が入れないの? 実際ジグラ星人の手先は、派手なビキニ姿で正面から堂々と入り込んでいたぞ。 うむ、これこそガメラ映画だ、素晴らしい。

とまあ、ガメラらしさも相変わらず全開。 敵につかまっていて、これから東京に史上空前の大地震が起きるという緊迫した場面で、子供にマグニチュードの解説をし始めるお父さん。 何の権利があるのか、独断で全人類の降伏を認める防衛隊の司令官。 幼稚園児と低レベルな追っかけっこをして、完全に翻弄されるジグラ星人の手先。

その手先の女性は実は操られていた日本人なんだけど、後に正気になる。 で、この人、バチスカーフがジグラに拿捕されて人質となり絶体絶命という時、バチスカーフのクルーをけしかけて光に弱いジグラにライトを浴びせさせる。 そこで怒ったジグラは光線を放ってバチスカーフのクルーは絶命(?)する。 最後の賭けに破れた…と落胆する彼女。

と、ちょい待て。そんなことしたらジグラが怒るのは目に見えてるだろーが。 最後の賭けって、まさかジグラが尻尾まいて逃げ出すとでも思ったか? その確率は誰がどう見ても限りなくゼロに近いと思うぞ。 あんたまだ正気に戻ってないんじゃないの?

こういうわけの分からん人物がいるからガメラ映画からは目が離せない。 で、この人の大失態の顛末なんだけど、実はジグラが浴びせた光線は細胞活動停止光線で、クルーは仮死状態になってただけ。 結果的には、長時間海底にいたことによる酸欠状態を防ぐことになり、彼女は感謝されていた。 おお、素晴らしい。これがガメラ映画の展開なのだ。

こんな具合に、昭和ガメラシリーズの最後の作品も相変わらず大映テイストに満ちている。 昭和ガメラのファンならちゃんと見ておこう。

登場怪獣

ジグラ

身長80m、体重75t。

高度な文明を持ち、陸上動物を食用にしていたジグラ星の海底動物。 海水が汚染されたため、新たなる居住地を求めて地球にやってきた。

地球では水圧の差で巨大化してしまう。妙な生き物だ。 深海に住むため光を嫌う。細胞活動停止光線を放ち、動物の代謝機能を止めてしまう。

ストーリー

日本の月面基地が謎の宇宙船の襲撃を受けた。その宇宙船は地球にやってきて、日本の海溝に降りる。 海洋動物研究家のトムと洋介は、ボートにもぐりこんでいた子供たちと共に宇宙船の降りた場所に向かってみる。 そこへなぜかガメラが飛んでくる子供の声援に応えるガメラ。 だがボートは宇宙船が放った謎の光線を浴び、突如消えてしまう。

ボートは宇宙船の中に転送されていた。そこにはジグラ星人と名乗る女性がいた。 彼女はジグラ星の科学力を見せつけるため、彼らを地球人の代表として宇宙船に連れ込んだのだという。 そこで彼女は、これから東京にマグニチュード13の大地震を起こすという恐ろしい話をする。 ふと、健一少年は父親に問う。
「お父さん、マグニチュードってなーに?
「うん、地震の大きさを現す数字でね、わかりやすく言うと、震源地から…」
解説を始める優しいお父さんの洋介。

そんなことをしている間に東京は壊滅する。そして彼女は地球に降伏を勧告する。 ジグラ星人は地球を侵略するためにやってきたのだ。 抗議しようとしたトムと洋介は彼女に眠らされてしまう。 だがいち早くそれを催眠術と気付いた健一とヘレンは、彼女を出し抜き脱出に成功する。

ジグラ星人のボスは、女性に宇宙船の秘密を知った二人の子供を殺すよう命じる。 ボートが動かせず宇宙船にやられそうになる子供たち。だがそこへガメラが現れ、子供たちを救う。 そして無事に4人は助け出されるが、トムと洋介は医者が手を尽くしても目を覚まさない。

一方、地球防衛軍はジグラ星人への攻撃を開始するが、全く歯が立たない。 そんな中、ジグラ星人の女性は子供たちを追って鴨川シーワールドに侵入する。 だがそれに気付いた子供たちは逃げ出し、追っかけっこが始まる。 そして彼女はまたしても子供たちに出し抜かれ、逃がしてしまう。

その頃ガメラは海底の宇宙船に向かっていた。そして海底で火炎放射を浴びせ、宇宙船を粉砕する。 ついにジグラが巨大化して地上にその姿を現す。立ち向かうガメラだが、怪光線を浴びて動きが止まり、海に沈む。 宇宙船を失ったジグラは、復讐のため人間撲滅を宣言する。

一方、イルカの飼育員の言葉をヒントにして、水中動物であるジグラは超音波で人間の頭脳をイルカ並みにして脳波をコントロールしていることが分かる。 これがトムや洋介にかかった術の正体だった。博士は彼らの脳波をトランシーバーの電波で撹乱し、正気に戻すことに成功する。 片や、子供たちはついにジグラ星人の女性に捕まってしまっていたが、洋介がトランシーバーを使って女性を正気に戻す。 女性の正体は、月面基地の職員である菅原ちか子だった。だが、彼女はジグラについて何も覚えていなかった。

万策尽きたかに見えたが、子供たちの発案でガメラに望みを託すことになる。 ガメラの生死を確かめるべく、バチスカーフで海底に向かうトムと洋介。しかしまたしても健一とヘレンが黙って乗り込んでいた。 彼らはガメラを調査する。だがそこへジグラが襲撃してくる。 深海へ連れ込まれるバチスカーフ。そこで偶然、ジグラが光に弱いことが分かる。

ジグラはバチスカーフの人達を人質に、降伏を勧告する。そして防衛隊の司令官は独断で降伏する。 しかし、ちか子は降伏しても人類は食べられるだけだと言い、洋介にジグラの動物的本能を思い出すようにと言う。 洋介はその真意にすぐに気付き、ライトを最高出力にして点灯する。だが怒ったジグラは怪光線を放ち、バチスカーフからの連絡は途絶える。

その晩、海底のガメラに落雷が落ちる。そしてガメラは目覚め、ジグラの元へ向かう。 いびきをかいて寝ているジグラに気付かれないように、こっそりとバチスカーフを持ち去るガメラ。 ガメラはバチスカーフを地上に届け、再び海底へと向かう。 4人は死んだようになって助け出されるが、窒息死しているわけでは無かった。ジグラの細胞活動停止光線によって、仮死状態になっているだけだったのだ。

一方、ジグラと戦い始めていたガメラはその鋭いヒレに苦戦する。だが、うまくジグラを地上に引きずり出す。 これではジグラもなすすべが無くなる。ガメラはジグラの背びれでガメラマーチを奏でて、ジグラを火炎放射で焼き殺す。

こうして、再び平和が戻って来たのだった。

スタッフ

製作...永田秀雄
企画...斉藤米二郎
脚本...高橋二三
監督...湯浅憲明
音楽...菊池俊輔

キャスト

石川健一...坂上也寸志
ヘレン・ウォレス...グロリア・ゾーナ
菅原ちか子...八並映子
トム・ウォレス...藤山浩二
石川洋介...佐伯勇
マージ・ウォレス...アーリン・ゾーナ
石川弘子...坪内ミキ子
石川れい子...笠原玲子
沢本博士...夏木章

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