「人造人間キカイダー」に登場した名悪役、ハカイダーを主役としているが、キカイダーとは無関係な作品。 戦闘ロボットとして作られ封印されていたハカイダーが目覚め、偽りの平和都市・ジーザスタウンに乗り込む。 キカイダーが出ないのが残念だが、ちゃっかりキカイダーもどきは登場するところがニクい。
ハカイダーと言えば、特撮史上屈指の悪役キャラクターだ。 キカイダーを倒すことだけを生きがい(?)としており常に正面から正々堂々とキカイダーに挑み、しかも他のことには全く興味がない。 そのあまりにシンプル過ぎる存在目的と潔さ、更にその圧倒的な強さが我々を魅了したものだった。 ではこの作品のハカイダーはどうなのか?
何と言っても、ハカイダーを主役にすえるという時点で既にこうなることは明白だったのだが、残念ながらその魅力である無敵の強さは備わっていない。 そりゃまあ途中まではとんでもなく強いんだけど、最後の戦いではピンチに陥ってしまう。 主役である以上はピンチにならなきゃストーリーが面白くないし、しようがないのではあるが。
そしてハカイダーの行動目的も、なんだかなあといった感じ。 最初は、特に積極的な理由もないままジーザスタウンに赴き、敵と見なされ攻撃されたために応戦した、といった雰囲気がただよっている。 そして後半は、ヒロイン・カオルの敵討ちという典型的なパターン。 これまたしようがないんだけど、これってやっぱりヒーローのやることだよね。
ということは、ハカイダー本来の魅力であるところの超絶的強さやシンプルで確固たる意志といったものは全然描かれていないということだ。 これをハカイダーと呼んでいいのか?
が、私はハカイダーと呼びたい。 確かに、こだわるなら多少問題はあるが、ラストに至るまでに見せてくれる破壊力はあまりにも圧倒的で、充分に強さの魅力を感じさせてくれる。 そして、変な小細工抜きで真正面から戦いを挑むストレートさ。 ハカイダーの魅力は充分に表現できているのではなかろうか?
ハカイダーが好きなら、とりあえず一度くらいは見て頂きたい。まあだまされたと思って。
と、その時、その人間が顔を上げた。
撃ちまくる盗掘者たち。その時彼らは、その男が人間でないことを知った。
異形の姿に変身した男。そしてその姿が、盗掘者たちがこの世で最後に見たものとなった。
…辺りが静かになった時、その異形のものはつぶやいた。
「俺は…誰だ?」
バイクに乗ってジーザスタウンにやってきたその男、リョウ。 リョウは再び変身し、防衛システムをことごとく突破して内部に侵入してしまう。
ジーザスタウン…そこは科学者のグルジェフが作り出した、永遠の平和が保たれる奇跡の国だった。 グルジェフは侵入者の存在を知り、保安ロボットのミカエルに討伐を命じる。
…カオルはまたあの夢を見た。謎の黒い騎士が捕らわれの自分を救い出してくれる夢を。 が、すぐに彼女は現実に戻される。 ジーザスタウンの反政府軍ゲリラの一員として、政府の物資を奪うため戦う現実に。
一方、ミカエルの命令で重武装兵が進入者を追跡していた。
だが彼らでは進入者を食い止めることはできなかった。
そして逃げていたカオル達は、その重武装兵と遭遇する。
隠れるカオルたち。そこに現れたあの変身した男。
男は重武装兵達と戦いを開始する。
その映像を見たグルジェフは驚いて言った。
「あれは…ハカイダー!?」
武装車まで繰り出し、攻めて来る武装兵たち。 だがハカイダーは、彼らを全滅させてしまう。 そしてカオルたちはそのどさくさにまぎれて逃げることに成功する。
カオルはハカイダー・リョウを自分達のアジトに連れてきた。 グルジェフは人々を洗脳して偽りの平和を作り上げているのだ。 カオルはグルジェフの独裁ぶりをリョウに説き、共に戦うように説得する。
ハカイダー…それはグルジェフがジーザスタウンを守るためにミカエルの前に作ったロボットだった。 だがグルジェフはどうしてもハカイダーを制御することができなかったのだ。
カオルたちのアジトに突如銃声が鳴り響く。重武装兵が襲撃してきたのだ。 ゲリラたちは次々にやられてしまう。 だが重武装兵の目的はハカイダーだった。 絶え間無くハカイダーに銃撃を加える重武装兵たち。 そしてハカイダーは爆風の中に消える。
重傷を負って町をさまようカオル。そのカオルを抱きとめたのはリョウだった。 そしてカオルは、清らかな川のほとりでリョウにもたれて息を引き取る。 リョウの脳裏に、カオルの助けを求める声が響き渡る。 リョウは立ち上がった。
ハカイダーは元老院にやってきた。そしてその一発の銃撃で、元老院の機能をほとんど麻痺させてしまう。
更に進むハカイダー。重武装兵を蹴散らし、中心部へと向かう。
そしてミカエルがハカイダーを迎え撃つ。ジーザスタウンの秩序を守るため、正義の名の下に。
だがハカイダーは言い放つ。
「貴様が正義なら、俺は…悪だ!」
ハカイダーとミカエルの激闘が始まった。 二人の力はほぼ五分だったが、次第にハカイダーは劣勢になる。 そして倒れるハカイダー。銃をつかもうとする手もミカエルに阻まれ、銃の弾丸が抜かれて虚しく地に転がり落ちる。
勝利を確信してとどめをさそうとするミカエル。 が、弾丸をつかんだハカイダーは自らの腕に隠された銃にその弾丸を込め、ミカエルに撃った!
それが勝負を決めた。 ミカエルはなす術もなくハカイダーに敗れさり、首をもがれてしまう。 だがそれを見ても冷静なグルジェフ。 その時、もがれたミカエルの首を頭部に収めた巨大ロボットがハカイダーに襲いかかってきた!
その凄まじい破壊力の前に、腕を破壊されてボロボロにされるハカイダー。 だが、あわや最期という時、ハカイダーはもがれた自分の腕をつかんでいた。 そこから発射される弾丸! 大爆発がミカエルを粉砕する!
うろたえるグルジェフ。ゆっくりと近づくハカイダー。
「私を殺す気か!無抵抗の生身の人間を!」
「貴様には…殺す価値など、無い」
去ろうとするハカイダー。
だがグルジェフは、側にミカエルの銃があるのに気付いてそれを構える。
その時、ハカイダーの拳がグルジェフに突き刺さった!
ジーザスタウンを去るリョウ。 そしてハカイダーは果てしない道を走り続けるのだった。
原作 | ... | 石ノ森章太郎 |
脚本 | ... | 井上敏樹 |
音楽 | ... | 太田浩一、木下伸司、渡辺宙明 |
監督 | ... | 雨宮慶太 |
製作 | ... | 東映、東映ビデオ、東北新社、セガ・エンタープライゼス |
リョウ | ... | 岸本祐二 |
カオル | ... | 宝生舞 |
ハカイダー | ... | 岡本次郎 |
ミカエル | ... | 菊池寿幸 |
ハカイダーの声 | ... | 松本大 |
ミカエルの声 | ... | 井上和彦 |
市民? | ... | 蛍雪次朗 |
グルジェフ | ... | 本田恭章 |