仮面ライダーアギト

放映

平成13年1月28日〜平成14年1月27日、全51回
テレビ朝日系
毎週日曜8時〜8時30分

概要

新たに未確認生命体のような脅威が現れた場合に備え、警視庁では氷川誠が装着するG3システムが開発されていた。 そして、謎の巨大なオーパーツが発見されて分析され始めた頃、異変は始まった。 一般市民が、まさに不可能犯罪と言うべき奇怪な死因で殺される事件が発生し始めたのだ。それは謎の怪人の仕業だった。 警察から仮にアンノウンと呼ばれることになったその怪人たちの目的は何か。

そしてアンノウンに対抗するG3の前に、アンノウンと戦う謎の存在が現れる。 アンノウンがアギトと呼ぶその者の正体は津上翔一。記憶喪失の青年だ。 なぜ自分はアギトになるのか、自分は何者なのか、彼は何も覚えていない。 だが彼は、その力でアンノウンと戦う決意を固める。

また一方、城北大学の水泳選手だった葦原涼は、水泳も大学もやめてさまよい歩く。 それは全て、自らの肉体に突如備わった、異形の怪物に変身する能力が故であった。 ギルスという名のその怪物は一体何なのか。どうしてそんなことになってしまったのか。 変身する度に激痛に襲われながら、涼は答えを見出せず苦悩する。

アギトが、G3が、ギルスが、あるときは激突し、ある時はすれ違い、やがて徐々に全ての謎が明らかになっていく…。

解説

仮面ライダー30周年記念作品。 そして、特撮界に新たな地平を切り開き大ヒットした前作「仮面ライダークウガ」に続いて現れた仮面ライダーでもある。 こうなるともう期待は高まる一方だ。さあ、その内容の方はどうだ?

路線は前作の良い部分を継承しつつ、かつ発展したものとなっている。 前作クウガはそのリアルな作風が好評であったが、作品のテーマが良くも悪くも作用し、展開にヒーロー番組らしいカタルシスが欠けていた面があるという難点もあった。 これは本来のメイン視聴者である子供にとっては重大な問題である。 が、本作ではそれは解消されている。なんと3人の仮面ライダーが登場し、それぞれが独自のカラーを持って戦いを繰り広げるのだ。

伝統的仮面ライダーらしいアギト、メカニカルで銃撃戦メインなG3、ワイルドな肉弾戦を得意とするギルス。 なんともバラエティに富んでおり、アクションの方も磨きがかかっている。

そしてストーリーの方だが、設定としてはクウガの続編という形になっており、未確認生命体が全滅して2年後の話ということになっている。 が、実はこの作品は2001年の話だということが作中で判明する。前作は2000年の話なので、つじつまが合わない。 これは、前作クウガはそれで完結しているという思いから故意にねじ曲げられた設定である。 スタッフとしては、クウガの世界のその後を描きたくはなかったということなのだ。

ということで、本作はクウガに対してパラレルワールドというか、なんとも不思議な関係にある作品となっている。 そして実際のところ、続編という設定はほとんど有効に機能していないし、アギトという作品全体を見るとむしろ余計な設定となっている。 個人的には、完全に独立した作品として描いて欲しかったところだ。 まあ、クウガがヒットしたから次のライダーが生まれることになったわけだし、ライダーは伝統的に作品間の世界が繋がっていることだし、作るなら続編だという商業的戦略も分からないではないのだが。

さて話の展開だが、戦いの方は大体2話完結で繰り広げられる。 が、ストーリー展開そのものは連続ドラマの様相を呈しており、まさしく1話たりとも見逃せない構成となっている。 とにかく、謎が謎を呼ぶ展開とはまさしく本作のためにある言葉だ。 アンノウンが特定の人物だけを襲う理由は何か、なぜ翔一はアギトに変身できるのか、翔一の正体は何者か、翔一の周りに見え隠れする謎の人々の正体は何か、「あかつき号事件」の真相は一体何だったのか。などなど。 次から次へと現れる謎がまた新たな謎へと繋がり、話の大きな流れが生み出されていく。 その中で、最初は互いに見知らぬ存在だったアギト津上翔一、G3氷川誠、ギルス葦原涼が一点に集結していくのだ。

ただ、謎解きが話の主軸であるにもかかわらず、全体を通して見ると「あれ?」と少し首をかしげたくなるようなこともないわけではない。 いまひとつ全体としての整合性に欠ける部分があるのだ。まあ最初から全ての謎の答を用意した上で話を作っていったわけではないから、無理もないこととも言えるのだが。

また、ライダーが3人いるという設定についてだが、これはうまく生かされている。 ライダーとしての能力だけでなく、彼ら自身も非常に対照的な位置付けになっているのだ。

スタンダードな仮面ライダーであるアギト、翔一。 彼は皆の居場所を守るためにアンノウンと戦う正統派ヒーローだ。 真魚に正体を知られても、真魚はそれを受け入れてくれた。彼には自分の居場所と守るべきものがあるのだ。

片やG3の氷川。強化スーツをまとうだけの彼は、等身大の人間でしかない。 特に最初の頃はアンノウン相手に劣勢を強いられるだけの彼は、それでもひたすら戦おうとする。 仮面ライダーの名にふさわしいスピリットを持って。

そしてギルスである涼。 彼はギルスになってしまったことによって、親のようなコーチ、恋人、全てを失ってしまう。 更にその後も彼は、ギルスであるが故にひたすら不幸な目に合い続ける。 それが「人でなくなった者」の宿命であるかのごとく。

仮面ライダーである者、仮面ライダーになろうとする者、仮面ライダーになってしまった者、三者三様の生き様が対照的に描かれていく。 仮面ライダーの力を得るとはどういうことなのか、それを異なる角度から光の面も闇の面も描き出していくのだ。 これはまさしく改造人間の勇姿と悲哀を描くという、仮面ライダーの原点そのままだ。

新たなる原点回帰を果たした仮面ライダー。 30周年記念作品にふさわしいものだと思うが、どうだろうか。

アギトとは?

津上翔一が変身する姿。なぜ変身できるようになったかは最初の内は謎であった。 バイクに乗ったまま変身すると、バイクはマシントルネイダーへと変化する。 マシントルネイダーは更に、第14話でスライダーモードに変形する機能も備わった。

アギトは状況に応じていくつかの形態を使い分ける。

グランドフォーム
基本となる金色の形態。必殺技はライダーキック。マシントルネイダーのスライダーモードから放つライダーブレイクは更に強力なキックである。
ストームフォーム
第2話で初登場した、スピードに優れた青い形態。巨大な槍・ストームハルバードをベルトから出して戦い、ハルバードスピンが必殺技。
フレイムフォーム
第8話で初登場した、パワーに優れた赤い形態。鋭い剣・フレイムセイバーをベルトから出して戦い、セイバースラッシュが必殺技。
トリニティフォーム
第26,27話でのみ登場した、グランドフォーム・ストームフォーム・フレイムフォームの合体形態。 ストームハルバードとフレイムセイバーを同時に使い繰り出すファイヤーストーム・アタックと、両足で放つ超キックのライダーシュートが必殺技。
バーニングフォーム
第34話で初登場した、灼熱の炎をまとった赤い形態。パンチ力に優れ、炎と共に放つバーニングライダーパンチが必殺技。 また武器はシャイニングカリバーで、折りたたんだエマージュモードと伸ばしたシングルモードとを使い分ける。 シングルモードで敵を斬る必殺技・バーニングボンバーも強力。
シャイニングフォーム
第37話で初登場した、銀色に光り輝く究極形態。バーニングフォームから太陽の光を浴びて変身する。武器は同じくシャイニングカリバー。 グランドフォームの1.5倍の威力を持つシャイニングライダーキックと、シャイニングカリバーを2本に分離させたツインモードで放つシャイニングクラッシュが必殺技。

G3とは?

新たな未確認生命体の出現に備え、警視庁が開発した強化スーツ。 普段はGトレーラーに格納されており、白バイのガードチェイサーで出動する。 基本武装は自動小銃GM-01。グレネードユニットでGG-02というグレネードランチャーに変わる。 またGS-03は腕に装着する高周波ソード。

第22話からは、G3のデータを元に作られた強化タイプのG3Xを使用するようになる。 AIシステムを搭載し、機動力が大幅にアップしている。 新たに、敵を拘束するワイヤー弾GA-04、凄まじい威力のガトリングガンGX-05、コンバットナイフGK-06といった武器を使う。

ギルスとは?

葦原涼が変身する姿。 触手状のムチ、ギルスフィーラーと、腕のギルスクロウなどが主な武器で、必殺技はかかとのギルスヒールクロウ。 変身するとバイクはギルスレイダーに変形する。 額の第3の眼、ワイズマンオーブは敵の弱点を瞬時に見抜く…らしい。

第39話でエクシードギルスになる力を得た。ほとんど怪物のような外見で、伸縮自在の触手ギルススティンガーを使う。 必殺技は強化されたエクシードヒールクロウ。

登場人物

津上翔一(賀集利樹)
アギトに変身する。変身のかけ声は「へんしん!」。
記憶喪失で海岸に漂着していたところを発見され、美杉教授の家に居候することになった。 美杉家で、炊事洗濯など家事全般をこなしている。庭で家庭菜園を作り、そこで育てた無農薬野菜で料理を作る。
かなり能天気なお調子者で、きれいな女性を見るとすぐニヤケる、なんというか普通の男。 それなりに悩んではいるが、深刻そうな様子はあまり他人には見せない。ある意味、それが彼の強さ。 変身を真魚に見られて家を出ようとするが、真魚が自分を受け入れてくれたため明るさを失うことなく戦いつづける。
必殺技は、周囲を瞬時に凍りつかせる恐怖の親父ギャグと、食欲を消失させる恐るべき料理センス。 料理は上手なのだが、野菜をひたすら使いまくる傾向があり、ケーキにキャベツを入れたりする壮絶なセンスにはなかなかついて行けない。
彼の名前は、救助された時に持っていた封筒の宛名だが、実は彼の本名ではない。彼の本名は…。
氷川誠(要潤)
G3を装着する警視庁の刑事。あいにく変身のかけ声はない。第22話からはより強化されたG3Xを装着するようになる。
雲一つ無い晴天の日に暴風雨に巻き込まれていたフェリー「あかつき号」を発見し、たった一人で全ての乗客を救い出した英雄。 それが元でG3の装着員に抜擢された。
真面目で仕事熱心な刑事で、敵にボコボコにやられても立ち向かっていく勇気あふれる人物。だが実直過ぎるのと不器用なのが弱点と言えば弱点。 翔一と会うと彼のペースに巻きこまれてコントが始まってしまう。もちろん翔一がアギトであることは知らない。
葦原涼(友井雄亮)
ギルスに変身する。変身のかけ声は「へんしん!」。
城北大学で水泳の選手だった大学生。だが交通事故にあって以来体に変調をきたし、オーパーツの解読に呼応してギルスに変身する力が芽生えてしまった。 それ以来、恩師からも恋人からも拒絶され、苦悩の日々を送る。 やがて失踪していた父の死を知り、父が残したメモを頼りにその死の真相に迫るうち、父が失踪直前に乗っていた「あかつき号」に何か秘密があることを知る。
ギルスであることが原因で、何かにつけて悲惨な目にあう。
風谷真魚(秋山莉奈)
美杉家に居候している女子高生。美杉教授の姪にあたる。父親は2年前に何者かに殺されている。 実は超能力の持ち主で、見えないはずのものが見えたり、人や物に触れてその過去を探ったりすることができる。 翔一がアギトであることを知っている数少ない人物の一人で、翔一のことを「翔一くん」と呼ぶ。
美杉義彦(升毅)
城北大学の心理学専攻の教授。超能力と言われるものは全てトリックだとする現実的な人。
美杉太一(田辺季正)
美杉教授の息子。小学4年生。かなり生意気で、翔一を呼び捨てにする。
小沢澄子(藤田瞳子)
G3システムの産みの親で、自らGトレーラーに乗りG3の指揮を執る。 小さい頃からその天才ぶりを発揮しており、12歳でMITに入学し、15歳で博士号を取ってしまった凄い人。 思ったことをそのまま断定的に言うはっきりした性格で、結構な毒舌家ではあるがなんとも憎めない。
尾室隆弘(柴田明良)
Gトレーラーのオペレータ。普段から影が薄い。
北條透(山崎潤)
刑事。プライドが高く、G3ユニットの面々にライバル意識を燃やして何かとつっかかる。 氷川に代わってG3の装着員になろうとしたり、G3Xに対抗してV1システムなんてものを導入しようとしたり、アギト捕獲作戦を展開したり、と色々と策を弄する男。 だが、思ったような成果に結びついたことはあまりない。
河野浩司(田口主将)
北條の同僚の中年刑事。とぼけた感じのおじさんで、アギトやG3の名前も覚えられないが、刑事としての実力は堅実なもののようだ。
木野薫(菊池隆則)
「あかつき号」のメンバーの間で何かと名前だけは出ていた、「あかつき号」メンバーのリーダー格の男。 しばらく音信不通となっていたが第35話にてついにその姿を見せる。 全身黒ずくめの、医師免許を持たない天才外科医。…って、どっかで聞いたような設定だ。 音信不通となっていたのはアギトになる力を手に入れていたため。彼の変身後の姿は「アナザーアギト」という。(作中では呼ばれないけど)
青年(羽緒レイ)
オーパーツから解読された遺伝子情報が生み出した赤ん坊が急速成長した姿。 その正体は全くの謎で、アギトを助けたかと思ったらアンノウンを操ったり、などと行動自体も謎に包まれている。 殺人罪で警察に捕まったが病院送りとなり、その力をもってすればいつでも逃げ出せるのだがそのまま病院に居ついてしまっている。
沢木哲也(小川敦史)
「青年」の正体を知り、接近してきた謎の男。 やがて人の隠された超能力を開花させる力を与えられ、様々な人の超能力を目覚めさせていく。 最後にはその正体である暗黒騎士ガウザーに変身してアギトと戦う。…などということはない。

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