仮面ライダークウガ

放映

平成12年1月30日〜平成13年1月21日、全49回
テレビ朝日系
毎週日曜8時〜8時30分

概要

西暦2000年。日本アルプスの九郎ヶ岳において、未知の文明の古代遺跡が発掘された。 だがその古代遺跡から突如奇怪な怪人が出現。調査隊は全滅し、怪人は姿を消してしまう。

1999の技を持つと自称する冒険男・五代雄介。 彼は、古代遺跡から発見されたベルトを見たとき不思議なイメージを受け取っていた。 そして長野にクモの怪人が現れる。 怪人には銃弾も通じず、人々が次々に殺されていく。

その時、五代はベルトから受けたイメージに従いベルトを身に着けた。 すると、なんとベルトは彼の体内に吸い込まれ、彼はイメージ通りに変身を遂げる。

こうして彼は、未知なる怪人種族・グロンギに唯一対抗できる力を手に入れ、グロンギ達と戦っていくことになる。 その力こそ、古代にリントと呼ばれた種族が残した戦士の力。 五代雄介に受け継がれた戦士の名、それがクウガである。

解説

「仮面ライダーBLACK RX」以来、久々のテレビシリーズとなった仮面ライダー。 こういう場合は通常原点回帰がなされるものだが、本作はそんな観点を遥かに超えて、全く新しい仮面ライダー像を作り上げてしまった。

近年、特撮ものはリアル指向の話作りがなされる傾向があった。 ゴジラの復活に始まり、ガメラ、ウルトラマンなどが次々と復活、そして子供だましのちゃちなストーリーではなく、大人が見ても見ごたえがあるようにという緻密なストーリー作りがなされてきた。 これは、かつてこれらの旧シリーズを見て育った年代のスタッフが思い入れを込めて自分達の見たいものを作ろうとしたことや、また旧世代からのファンが既に大人になっており、よりハイクォリティなドラマを見せる作品を求めていたなどの理由による。 そんな中、20世紀の終わりに待望の仮面ライダーが復活した。

この時期になると、特撮もののメインターゲットである子供達の親がリアルタイムに仮面ライダーに親しんでいたということになる。 そんな状況でスタッフが選んだ方針は当然のように、親子二世代で楽しめる作品、であった。 そして作られた作品は、従来の特撮ものの範疇を超えるものとなった。 リアルなドラマを見せる特撮もの、と言うよりは、普通のドラマに特撮ヒーローの要素が入っている、と言った方がしっくりくるようなものなのだ。

従来の仮面ライダーではほとんど無視に近かった警察がメインの存在となり怪人に対処するという設定は、作りがリアル、という言葉で語れる側面だ。 が、特撮のお約束まで最小限にとどめられていると、これは本当に特撮ものなのかと疑問が浮かぶ。

人間のフォルムを全く崩すことの無いグロンギ怪人。 従来のライダー怪人は変化をつけるために頭が大きかったり体に派手な飾りが付いてたりしたものだが、そういうものは無し。 必要最小限の装飾を除いて、どいつもこいつも人間と同じような体型、同じような顔の形をしている。 これは怪人の個性が希薄になるという、ヒーローものにおいては致命的ともなりかねない事実を意味するが、そんなことはおかまいなし。 なぜなら設定上、人間体型を崩す必要が全くないからだ。 しかし撮影上の都合を考えると、アクションしやすいのでクウガとの立ち回りが白熱するという良い効果も得られる。

一方のクウガは、さすがにヒーローだけあって、バイクに乗る、変身ポーズをつける、必殺技はキック、などのお約束は守ってくれている。 やっぱり仮面ライダーはこうでなくちゃ!(あれ?アマゾンの必殺技はキックじゃなかったのでは…)  しかーし!

誰にでもポンポン正体を明かす五代雄介、ついには警察まで彼の正体を知り尽くしてしまうという、変身ヒーローのお約束を完全に無視した状況。 フォームチェンジする時「超変身!」と言おうと自らお約束を定めておきながら、あんまり守ってくれないという事実。 何より、作中に「仮面ライダー」という言葉が一度も登場しないのだ!

が、こういったことは、「その方が自然だから」という判断のなせる技。 すなわちヒーローもののお約束に従っているかどうかより、自然な展開であるかどうかということの方が優先されているのだ。 こういった細かい部分での判断基準の違いは作品カラー全体に影響を与えており、ヒーローの出てくる普通のドラマ、という雰囲気を出しているのだ。

さてこうした普通のドラマ仕立ての中、描かれるストーリーはどんなものか?

ストーリーは基本的に2話完結。従ってドラマもじっくりと描かれる。 2話構成ばかりだと、普通の特撮ものなら戦いが冗長になるとかいう懸念があるが、本作についてはそういう心配はなし。 なぜなら、クウガの戦いは単なるオマケだからである。…っておい。

展開の方はこんな感じ。警察が「未確認生命体」と呼称する怪人達が、謎の連続殺人事件を起こしていく。 銃弾すら通用しない彼らに立ち向かえるのは五代雄介が変身するクウガのみ。 彼の正体を知る一条刑事は、否応無しに彼を戦いに巻き込むことになる。

不気味な言語でしゃべり、人間体になることもできるグロンギ。彼らは一体何者なのか、その目的は何なのか、全てが謎のまま話が進んでいく。 だが徐々にそれらの謎が解き明かされていき、彼らの行動原理が明らかになる。

さあそこで、特撮ヒーローの不文律、「敵が巨大組織でもなぜか怪人は1体ずつしか攻めてこない」がこの作品においても守られている理由が明らかになる。 なぜならそれが、彼らのゲームのルールだからなのだ。

ゲーム、彼らが人を殺す理由は単にそれだけである。 従来のライダーの悪の組織だったら、どんなに間違っていてもそこには彼らなりの崇高な理想・信念があった。 その理想の社会を作るべく、彼らは必要に応じて殺人なども行なっていたのである。 だがグロンギにはそれがない。厳粛なルールが定められているが、単なる娯楽として彼らは人を殺すのである。

こういう設定は、世相を反映しているとも言える。 ゲーム感覚で人を殺すような事件が当たり前のように発生する昨今、そういった事件にグロンギの姿を重ねることができるだろう。 とすれば、そのグロンギを倒すクウガはそういった事件に対してスタッフが放つメッセージである。

雄介は「他人の笑顔のため」にクウガとなってグロンギと戦う。だが相手がグロンギでも、殴れば殴った拳の方も痛いのだ。 相手を殴った時の嫌な感覚を、雄介は絶対に忘れられない。 我々も、人を傷つけたら自分も傷つくのだということを忘れてはならないのだ。

という具合にメッセージ性の濃い本作品。 戦いを通じて暴力を否定するという、テーマと設定が絶妙にマッチした屈指のドラマとなったのだ。

だが最後に改めて考えてみると…これ、仮面ライダーなのか?という疑問も残る。 仮面ライダーと言えば、陽の部分をとらえれぱ胸のすく爽快なアクションが売り物だし、陰の部分をとらえれば改造人間の悲哀と苦悩を描くのがポイントだ。

しかしこのクウガという作品、確かにいいアクションもあるにはあるが、シリーズとしてそれを支えるまでには至っていない。 実に分かりやすいのがラストの展開で、ここではテンションを上げることをことごとく拒否したまま最後の戦いを始めるかのような様子が見られる。 テーマの結実こそが目的で話を展開するので、そこにヒーローらしさが邪魔ものであるならば、全ては排除されるからだ。

こういった雰囲気は玩具の商品化にも影響を与えている。 装着変身シリーズのアルティメットフォームは作中にその姿が全く現れない内から早々とデビューし、いずれ見せるその究極の力を逆に期待させる効果を生み出したが、実際の映像では何が究極だかさっぱり分からないままに短時間で登場を終えた。 付属品のゴ・ガドル・バのフィギュアは、これで作中の戦いを再現可能という触れ込みだったが、実際にはガドルとアルティメットフォームが戦うことなどなかった。 なんというか肩透かしなのだ。

もっと顕著なのが、DXビートゴウラムに付属するゴウラム・エンシェントバージョン。 ライジングパワーに対応したゴウラムなのだが、その出番はわずか一度きりで、ゴウラム単体での登場はわずかに1カット。しかも全身は見えず。 一応メインのビートチェイサーの方は作中で活躍するのでまあいいのだが、こんな調子で話が展開すると、スポンサーのバンダイの方も困ってしまったのではなかろうか。 仮面ライダーらしい、というよりヒーローらしい爽快感がかなり欠けているこの作品、ホントに仮面ライダーと呼んでいいのか?

では仮面ライダーの陰の部分はどうか。 元より改造人間ではない五代雄介。そこにはライダーらしい苦悩を感じることはできない…いや、できる。

従来の仮面ライダーは改造されたらそれまでだった。そこから先は何も変わらない。だから、その事実を受け入れてしまえば気持ちの切り替えもできる。 だがクウガは違う。どんどんとパワーアップを繰り返す内、ベルトの霊石アマダムがもたらす影響は全身を変化させていってしまう。 作中何度も語られた、「戦うためだけの生物兵器」になるかのごとく。 自分の体を心配してくれる人達に対して、雄介はいつも笑って大丈夫だと言っていた。 だが本当に心から笑っていたのか?  本当は恐ろしいはずだ。悩んでいたはずだ。自分の体が、戦う度に人ではないものへと変わっていくかもしれない。 もしそんな状況になったら、あなたはそれでも戦うことができるか? 戦いをやめれば確実にまだ人のままでいられるのに。 クウガになることは単なる改造人間になるより恐ろしい。それ以上の苦悩が待ちうけているではないか。

そして作中で、クウガの能力の源はグロンギのそれと同質のものであると判明する。 結局は雄介も、グロンギと同様な存在になっていたということなのだ。 かつての仮面ライダーも所詮は改造人間、敵の怪人と同質の存在だ。 この作品では最初からそれが顕著に現されており、クウガはグロンギと同様の未確認生命体として扱われ、当初はグロンギ共々射殺の対象となっていた。 それでもやっぱり雄介は笑ってはいたけれど、本当に心から笑っていたのか?  自分は普通の人ではなくなったということを実感させられて。敵の同類だと思われて。

敵と同じテクノロジーによって、改造人間よりも恐ろしい存在になってしまった男。 こうしてみると、クウガという作品の本質は仮面ライダーの源流に非常にマッチしたものであると言えないだろうか?  私は本作品は、まぎれもなく仮面ライダーであると思う。 そしてその苦悩をほとんど表に出すことなく、視聴者も含めた他の人物全てに笑顔でいてもらおうとする五代雄介。 全く仮面ライダーらしくなく振舞う、本質は仮面ライダーである主人公。 彼の存在によって、本作品は新たなる仮面ライダー像を作り上げたのである。 ライダーファンもそうでない人も必見の作品だ。

クウガとは?

古代種族リントが、霊石アマダムを用いて作り上げたベルト・アークル。 それを身に着けると、アマダムはアークルごと体内に取りこまれ、肉体を強靭なものに変えてしまう。 更に、戦士クウガに変身する力を与えるのだ。

クウガは状況に応じていくつかの形態を使い分ける。しかし以下の名称は作中では全く使用されていない。

グローイングフォーム
一番最初に変身した白い形態。クウガ本来の姿ではなく、力はマイティフォームの半分しかない。 エネルギーを使い果たしてしまった時などにもこの形態になってしまう。警察からは未確認生命体第2号と呼称される。
マイティフォーム
第2話で初登場。基本となる赤い形態。バランスの取れた能力を持ち、必殺技はマイティキック。警察からは未確認生命体第4号と呼称される。
ドラゴンフォーム
第5話で初登場した青い形態。非常に俊敏になるがパワーがなくなり、肉弾戦には不向き。 長いものを手にするとドラゴンロッドに変形させることができ、必殺技スプラッシュドラゴンで敵を倒す。
ペガサスフォーム
第7話で初登場した緑の形態。非常に五感が鋭敏になるが、わずか50秒しかこの形態ではいられない。 銃のようなものを手にするとペガサスボウガンに変形させることができ、どんなに距離の離れた敵をも射抜く一撃必殺のブラストペガサスが唯一の武器。
タイタンフォーム
第10話で初登場した紫の形態。非常にパワーと防御力が上がるが、重装甲のため動きは非常に鈍くなる。 金属の棒のようなものを手にするとタイタンソードに変形させることができ、必殺技カラミティタイタンで敵を粉砕する。
ライジングフォーム
グローイングフォームを除く4形態それぞれにライジング形態が存在する。 治療のため雄介に加えられた電気ショックがアマダムに変化を及ぼし、発動した新たな力。 アークルが金色に輝き、わずか1分間ながら従来の力を大きく超えた力を使うことができる。
第24話でライジングタイタンフォームが登場。更に強靭となったライジングタイタンソードで敵を裂く。
第26話でライジングペガサスフォームが登場。複数弾の発射が可能となったライジングペガサスボウガンで敵を射抜く。
第28話でライジングドラゴンフォームが登場。従来の欠点だったパワー不足が解消され、ライジングドラゴンロッドで敵を打ち砕く。
第30話でライジングマイティフォームが登場。ライジングマイティキックは半径3キロに及ぶ大爆発を起こす、とてつもない力。
なお、第46話で新たに電気ショックを加えられた結果、ずっとライジングフォームのままで戦うことができるようになった。 またその状態から更に強化されたマイティフォームが、黒い体となったアメイジングマイティフォームである。 従来のライジングパワーを超えた力を放つことができる。
アルティメットフォーム
「究極の闇をもたらす者」と等しいとされる最後の力。全身が黒く、まがまがしい模様に彩られている。 清らかな心を捨て怒りと憎しみに満ちた時に得ることができる力とされているが…。

またクウガの相棒として、クワガタの形をしたゴウラムがある。 中核はアマダムと同じ石で作られており、クウガの意志に感応して空を飛んでやって来る。 最初は腐ってボロボロだったが、周囲の金属を吸収して本来の形を取り戻した。

クウガがぶら下がって空を飛ぶこともできるが、主な役割は「馬の鎧」。 現代においてはその対象はクウガのバイクで、トライチェイサーと合体してトライゴウラムに、ビートチェイサーと合体してビートゴウラムになる。 そしてその状態で敵に体当たりする、トライゴウラムアタック/ビートゴウラムアタックが必殺技。 更にビートゴウラムに乗ったままクウガがライジング形態になると、ゴウラムもライジング化する。 そして体当たりする技が、「金のゴウラム合体ビートチェイサー、ボディアタック」である…じゃなくて、ライジングビートゴウラムアタックである。 でも雄介が自分でそう言ってるんだから、そっちが正式名称じゃなかろうか。(笑)

トライチェイサー2000は第4話で一条刑事から譲り受けた高機能白バイの試作品である。 だが、度重なる戦い、特にゴウラムとの合体で生じる金属疲労によって消耗してしまい、ついに壊れてしまう。 そして第33話で、当初からゴウラムとの合体まで想定して作られた、ビートチェイサーを与えられたのである。

敵の組織

グロンギ族は人とほぼ同じ血液構造を持つ、人類に極めて近い種族。 だがその性格は残虐で、闘争本能旺盛。 腹部にアマダムと同質の物体が埋め込まれており、これによって動植物の力を持った怪人形態になる力を得た。 すなわち基本的にクウガとグロンギは同じ力に基づいており、高度な力を持つグロンギであればクウガと同様の戦闘形態の変更や、武器の自在な変形なども行なうことができる。

知能は非常に高く、適応力も凄い。 わずかな期間で我々人類の文化になじみ、言語や車の運転技術なども習得してしまう。 彼らの人間体には、体のどこかに自分の能力の源である生物をかたどったタトゥーがある。 また彼らには敬意という概念がないらしく、どんなに格上の相手に対してもタメ口で話す。

彼らは何のためらいもなく殺人を行なうが、一度に一名しか行動せず、他の者は人間に襲われても抵抗もせず逃げてしまう。 それが彼らのゲゲルのルールだからである。

ゲゲル、それは我々の言葉でいうところのゲームである。 グロンギはリントを定められた期間内に定められた人数を殺すことができるかどうか、というゲームを行なっているのだ。 彼らはグループに分かれており、各人は課せられたゲゲルに成功すれば上位グループに進むことができる。 そしてより困難な条件でのゲゲルに挑戦することとなるのだ。 かくしてゲゲルは過激なものとなっていき、準最終戦のゲリザギバスゲゲル、そして最終戦のザギバスゲゲルへと進んでいくのだ。

彼らのグループは、下位の「ズ」、その上位の「メ」、更に最上位の「ゴ」などに分かれている。 ゲリザギバスゲゲルに参加できるのは「ゴ」だけであり、「ゴ」は全員がその能力に合わせた武器を持つ。 そしてゲリザギバスゲゲルを勝ちぬいた者だけがザギバスゲゲルに進むことができるのだ。

またそれ以外にも直接ゲゲルには参加しないが、ゲゲルのサポートを行なう「ヌ」やゲゲルの管理を行なう「ラ」などのグループがある。 特に「ラ」はその役割の性質上、最上位の「ゴ」に勝るとも劣らぬ実力を持っている。

彼らの名前は、「グループ名・個体名・種族名」という構成になっている。 種族名は以下のように分類できる。

虫全般。昆虫を始めとして節足動物全て。
鳥類全般。虫以外の空飛ぶものは全てここ。
獣全般。陸上哺乳類は全てここ。
爬虫類・両生類など全般。ただし水中にしか住まないものは含まない。
魚類等、水中に住む生物全般。
植物全般。

別に生物学的分類に基づいているわけではないので、例えばコウモリは「グ」だしクジラは「ギ」である。 ということで、「ズ」のコウモリ種怪人であるゴオマはズ・ゴオマ・グという名前なのである。

ゲゲルとは?

仲間が死んでも平然としており、殺人を楽しむグロンギ。 残虐無情な彼らは弱肉強食の徹底した上下関係で縛られており、ゆえに彼らはより支配力の高い上位グループに上がろうとするのである。 …かと思いきや、そんなことは全然ない。それどころか、彼らは妙に公平なのである。

ゲゲルは、「ズ」「メ」「ゴ」の順に、つまり下位グループから権利を与えられ行なわれる。 更に同グループの中でも、どうも弱い者から順に権利を与えられているようである。(順番はバルバが独断で決めているようだが…) これはどういうことか。

例えば「ズ」でゲゲルをクリアして「メ」に昇格すると、次に「メ」に順番が回ってきた時にまたゲゲルを行なう権利を手にする。 しかもそれは、「ズ」から上がったばかりの奴がまさかいきなり「メ」で最強と認定されるはずはないだろうから、「メ」で最強の奴よりも先なのである。 ということは、これを繰り返してゲゲルをクリアしさえすれば、最初は「ズ」だった奴でも「ゴ」の最強の奴より先にザギバスゲゲルに進むことができるということなのである。

人間側から見れば敵がどんどん強くなっていく(すなわち製作者側から見るとドラマを盛り上げていくことができる)ということだが、グロンギ側から見るとあらまあ。 どんな奴にでも一発逆転のチャンスがある、なんとも絶妙な仕組みである。 全てはゲゲルを面白くするためであろう。

つまりこういうことからも分かる通り、彼らにとってこれは本当に娯楽でしかないのだ。 もしこれが権力の獲得に関わることなら、下の者はなかなか上に上がれないようなルール設定がなされるはずだ。 ルールを決めるのは上の連中なのだから。

作中において、各集団間に上下関係のようなものが感じられないのもそのためだ。 ランキングで上か下かというだけで、偉い偉くないということではないのだから。

さて、そんなゲゲルのルールをもう少し詳細に見てみよう。

  1. 定められた期間で定められた数のリントを殺す
    全ての基本。が、その期間と殺す人数はかなりバラバラである。というのも、グロンギ怪人は自分の特殊能力を使って殺人を行なう。 それは一人殺すのに妙に時間がかかる方法だったり、逆に短時間での大量殺戮がたやすい方法だったりと色々なので、それに合わせてバルバがノルマを調節しているのであろう。 なお期間や数を自己申告する者も多いが、バルバはそれを全て認めていた。妥当な申告を行なうフェアなプレイヤーばかりだということだ。
    また余談だが、彼らは我々をリントと見なしてゲゲルの対象としている。彼らにとっては無理もないことだが、実のところ我々がリントの子孫であるかどうかは判明していない。 もし我々がリントの子孫ではなく、また彼らのゲゲルがリント殺し以外を認めないのであれば、全員のゲゲルがルール違反ということになるのだが…。(笑)
  2. 特殊ルールで殺す
    「ゴ」の行なうゲリザギバスゲゲルに特有のもの。これが「ゴ」のゲゲルを困難にしている原因。「メ」で最強のメ・ガリマ・バも、その真似をしていた。 特定の条件を満たすリントだけを殺す。条件から外れる者はカウントされない。 条件の複雑さに応じてもノルマ人数が調整されているようだ。
  3. 殺したリントを数える
    「ズ」や「メ」のプレイヤーは腕輪をしている。グロンギはなぜか9進法を使っており、ひとつの腕輪に8個の飾りがついていて、これで人数を数えるのだ。 もちろん必要な桁数だけの腕輪をはめている。ちなみに数えるのはもちろん自分自身である。完全自己申告制だが、誰もズルをしようとはしない。実にフェアな連中だ。 そして「ゴ」のゲリザギバスゲゲルでは、ドルドがバグンダダ(大きなそろばんのようなカウンター)で数える。 「ゴ」は一度に大量殺戮することが多いため、桁上がりなどがあっても簡単に数えられるそろばんタイプが便利ということだろう。
    なお奇妙なルールだが、腕輪をなくしたりバグンダダが壊れたりすると、人数がノーカウントになってしまう。 いくら人数を正確に覚えていても、新しい腕輪/バグンダダを用意してまたゼロからやり直しになるのだ。
  4. ゲゲルを行なう者以外はリントを殺すべからず
    プレイヤー以外は殺人が認められていない。多分、無秩序に殺されるとわけ分かんなくなるからだろう。 実は第5話のバヅーが最初のプレイヤーで、つまりそれまでに現れた奴は掟破りの殺人をしていた。その中で唯一生き残ってしまったゴオマは、ゲゲルに参加させてもらえない悲惨な日々を送ることになる。 このように彼らにとってはペナルティーのきついルールだが、逆に言えば直接殺さなければ何やってもいいらしく、一条なんかはよくボコボコにされていた。

またゲゲルにおけるクウガの存在は何だろうか。…はっきり言えば、単なるゲームのお邪魔キャラである。 プレイヤーをことごとく倒されても、いやそれだからこそ、彼らはクウガの出現を楽しんでいる。 他愛もなく殺せるリントの中で、唯一歯ごたえのある存在。それは、Aボタン連打で倒せるザコ敵の中でボスキャラと出会うような感覚なのだろう。 だからこそ彼らはクウガと出会うと、貴重な時間を浪費してでもクウガと戦う。 だってクウガと戦う方が面白いじゃない。 それは彼らの余裕の現れでもあり、クウガを倒すことが彼らのステータスにもなるのだろう。 とか言いつつ、彼らは全てクウガに倒されてしまったわけだが。

登場人物

五大雄介(オダギリジョー)
クウガに変身する。変身のかけ声は「へんしん!」。 古代のベルト・アークルを腰に装着することで、変身する能力を得た。サムズアップがトレードマーク。「みんなの笑顔を守るため」にグロンギと戦う。
これまで様々な冒険を重ねてきた24歳。誕生日は3月18日で、作中で25歳の誕生日を迎えた。 城南大学出身で、1999の技を持つ男。クウガに変身することが2000個目の技である。 初対面の人にはいくつ技を持っているか印刷された名刺を渡すが、いくつの技を持っているかこまめに手書きで書きなおしてある。 そしてどれが何番目の技なのか全て覚えているだけでなく、誰にいくつの数を持っているという名刺を渡したかまで全て覚えている凄い男。 この記憶力も技のひとつだろう。ちなみに、1番目の技は「笑顔」である。
その通り、実に暖かい笑顔を見せる。端から見ていると非常に軽い性格で、いつもニコニコ笑っている。 自分が血で血を洗う戦いに身を投じるという事実、アークルによって自分が生物兵器のごとく変化していくという事実などなど、はたから見ていると深刻どころではない事態ではあるが、本人が逆にニッコリ笑ってシリアスになっている周りの人を元気付けようとする。 それは皆に笑顔でいてほしいという思いからくる、他人に弱みを見せない強さの現れ。
仮面ライダーらしくなく自分の正体をポンポンと誰にでも明かしてしまうところはいただけないが、変身するときポーズをとったり、フォームチェンジの時に気合を入れるために「超変身!」と言うことにするなど、変身ヒーローのロマンを理解してくれている男である。 なおクウガは一般には、警察の認定名称に基づき単に「4号」と呼ばれている。
洋食屋「ポレポレ」に下宿しており、店を手伝っている。
一条薫(葛山信吾)
警視庁の優秀な刑事。25歳。当初は長野県警にいて九郎ヶ岳の事件を担当していたが、そのまま本庁に出向となり、未確認生命体対策合同捜査本部の一員となった。 桜子に次いでクウガの正体を知った人物。
最初は民間人である雄介が事件に首を突っ込んでくるのに批判的だったが、雄介が自分と同じく無理してでも徹底的にやりぬくタイプの人間だと悟り、彼を認めてその良きサポーターとなる。 雄介にトライチェイサーを与えたのを始めとし、ビートチェイサーを渡すために尽力を注ぐなど、雄介に対する協力は全く惜しまない。 なお、なぜか雄介のことをフルネームで呼ぶことが多い。
射撃の腕は超一流で、頭も切れる。自分に厳しい真面目な男で、女性との付き合いも全然なし。しかし雄介の性格に感化されたか、だんだんなんとなく性格が柔らかくなっていく。 また外見に似合わずなんだか妙にタフな男で、グロンギに何度もぶっ飛ばされているのにしばらくするとケロリとして動き回る。
沢渡桜子(村田和美)
城南大学の大学院生。23歳。雄介の友人。古代遺跡の碑文解読を担当したことから事件に関わっていく。 雄介の最初の変身を目撃した、クウガの正体を最初から知る人物。 最初は雄介のムチャぶりを見て事件から遠ざかろうとしていたが、碑文解読によって彼をサポートしていくようになる。
ただの修士過程の学生の身でありながら、未確認生命体対策の鍵を握る碑文解読を警察からも一任されているという凄い人。 多分凄く優秀な研究者なんだろうが、外から見るとごくごく普通の女性である。しかし研究室にいて、気がついたら朝だったなんてことも頻発。 栄養ドリンクを愛用してがんばっているようだが、睡眠不足は美容の大敵だから気をつけてね。 また修士論文の追い込みの時期に最終決戦になるという大変なことになったが、彼女のことだからちゃんと提出できただろう。
五代みのり(葵若菜)
第3話から登場した雄介の妹。22歳。雄介とは別居しており、わかば保育園で働いている。 なんだか天然ボケ気味のほんわかした雰囲気で、雄介がクウガになったことを知っても全く動じない。 だがそれは、兄に絶大の信頼を置いていることの現れ。さすがに一時期は兄が戦い続けることに不安を感じていたが、それもすぐに解消。 実に固い絆で結ばれた兄妹である。なお、おやっさんからは「みのりっち」と呼ばれている。
椿秀一(大塚よしたか)
関東医大病院の検死専門の医者。一条の高校時代の同級生で、その関係で五代の体を調べる役を担う。一条とは気心の知れた仲。 なんだか人体マニアのような不気味な一面も見せるが、一応普通の人。実のところは雄介の変化を我が事のように心配する優しい男である。
女好きでよくデートしているが、肝心な時に一条から呼び出しの電話がかかったりするのでちょっと彼を恨んでいる(?)。 一時期桜子にアタックしようとしていたが、運悪くまともにアタックすらできず。
榎田ひかり(水島かおり)
科警研(科学警察研究所)で未確認生命体対策を担当する科学者。バツイチで一児の母。息子の名は冴(さゆる)。 なんだか凄い武器などを次々と開発していき、最後にはグロンギ必殺兵器まで作り出した凄い人。さすが城南大学出身だ。 未確認対策でろくに子供の相手ができないのが気がかりとなっている。
おやっさん(きたろう)
第5話から登場した、雄介が下宿している洋食屋「ポレポレ」のマスター。39歳。 雄介と同様に様々な技を持つ冒険家だが、カレーが得意だが辛いものが苦手であるなど、特技の数だけ弱点を持つ人でもある。 雄介の父親とは親しかったようだ。最後までクウガの正体を知らなかった、数少ない(笑)人物の一人。 最後にようやく判明した本名は飾玉三郎。
朝日奈奈々(水原詩生)
女優目指して京都から上京してきた、おやっさんの姪。コテコテの関西弁をしゃべる。 昼間はポレポレで働き、夜は演技の勉強をしている。雄介に一目ぼれして、五代雄介ファンクラブ会員第1号を自称する。 未確認生命体に大好きだった先生を殺されたりして落ち込むこともあったが、いつもは元気なポレポレの看板娘(?)。 おやっさんと同じく、最後までクウガの正体を知らなかった。
ジャン・ミッシェル・ソレル(セルジュ・ヴァシロフ)
桜子と同じ研究室にいる留学生。古代の遺物が研究対象のようだ。ゴウラムの研究などで活躍する。 梅干を始め、和食が好き。なんだか榎田といい雰囲気になる。
夏目実加(竹島由夏)
九郎ヶ岳の遺跡発掘を担当していた夏目教授の娘。父が死んで辛い思いをしたが、雄介達のおかげで立ち直る。 ちなみに、彼女の涙が雄介にグロンギと戦う決意を固めさせた。
神崎昭二(井上高志)
第11話で初登場した小学校の教師。雄介の恩師で、雄介にサムズアップを教えた張本人。雄介が2000の技を持とうとするきっかけになった人物でもある。 その場限りのゲストかと思いきや、その後も何度も登場する。
亀山鶴丸(酉手勝秋)
長野県警で一条の部下だった巡査で、一条を非常に慕っている。なんだかドジっぽくて頼りなさそうだが、仕事熱心な男。 なお余談だが、雄介役のオダギリジョーが最初この役を熱心にやりたがっていたのは有名な話。
杉田守道(松山鷹志)
第3話から登場したシブい刑事。妻子持ち。第4話でクウガに助けられたことから、クウガを味方と認識するようになる。
桜井剛(米山信之)
第3話から登場した刑事。一条に対しても敬語を欠かさない真面目な人。 使命感に燃える、融通の利かなそうな堅物タイプではあるが、クウガが何色で戦ったか手帳にカラーシールを貼って記録しておくという、なんだか可愛らしい一面もある。
笹山望見(田中恵理)
第7話から登場した婦警。当初はミーハーな感じで一条のファンだったが、一条の事情を知ってからは真剣な雰囲気に染まっていき、真面目になった。 合同捜査本部で主に連絡係を担当。高校時代は電磁戦隊に所属していた。(違う!)
松倉貞雄(石山雄大)
未確認生命体対策合同捜査本部の本部長。第4号の扱いに関してはかなり寛容に一条に任せていた。
バラのタトゥの女(七森美江)
第3話から登場。グロンギの怪人達に圧倒的な支配力を誇る謎の美女。実はグロンギ達のゲゲルの管理者。 感情表現が控えめな落ち着いた雰囲気で、かなり風格がある。そして服装はなんともファッショナブル。最後まで怪人体を見せることはなかった。
初登場が一条との出会いだったのを始め、何かにつけて一条と相対する、いわば宿命のライバル(?)。最後の登場も一条との対峙であった。
最終回のクレジットでようやく判明したフルネームは、ラ・バルバ・デ。バラ種怪人…のはずだ。 その役割、そして彼女に逆らうグロンギがいないことから見ても、おそらくダグバに次ぐ最強の実力者だろう。
ズ・ゴオマ・グ(蔵王みつる)
コウモリ種怪人。勝手に殺人を行なったためにゲゲルへの参加を許されず、ほとんど下働きと化してしまった。そして他のグロンギ達からボコボコにされまくる悲惨な日々を送る。 最後に一矢報いようとするが…。
ヌ・ザジオ・レ(高月忠)
サンショウウオ種怪人。バグンダダや「ゴ」の武器などを作る職人である。 人間体はただのおっさんで、暗い場所を好む。怪人体になることなくダグバにバラバラにされてしまった。
ラ・ドルド・グ(婆沙羅天明)
コンドル種怪人。常にバグンダダを持ち歩き、ゲリザギバスゲゲルにおいて「ゴ」が殺した人数を数える役を果たすゲゲルの看視者。 その実力は「ゴ」で最強のガドルと五分に渡り合えるほどである。 しかし空を飛んだりバイクに乗ったりして派手に移動するプレイヤーに常についていき人数を数えることの方が、強さより凄いかもしれない。
白い服の男(浦井健治)
第40話から登場した謎の少年。実は最初に現れた未確認生命体第0号の人間体で、グロンギの頂点に立つ「究極の闇をもたらす者」。最強のグロンギである。 クワガタ種怪人で、フルネームは、ン・ダグバ・ゼバ。

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