こんな状況で次にゴジラを登場させ、しかもシリーズとして今後も存続させるにはどうするか。 ゴジラの行動を正当化するしかない。なれば人類はゴジラの振る舞いを見過ごすことができるではないか。
そして現れたのがこの映画である。これはゴジラ映画の最初のターニングポイントと捉えることができる。 一般にはゴジラ善玉への転換作と思われているこの作品、実はそんな単純なものではないのは次作以降を見れば分かる話。 だがこの作品だけを見てみても、確かにそれまでのゴジラ映画とは違うよく分からない話になっている。
第一に、小美人がテレビ出演のため来日するという事実。 よりによって「モスラ対ゴジラ」の次にこんな話をやるかね。 この設定は非常に違和感たっぷりで、モスラを出すために強引にやったとしか言い様がない。 ちなみにザ・ピーナッツの小美人は本作品で見納めとなるので心して見るように。
それと、有名なモスラの説得&小美人の通訳はまあいいとしよう。 あの通訳の存在が凄くマヌケなんだけど、それよりもっと不可思議な現象が次に起きるから。
不可思議な現象とはこれ。ゴジラとラドンがどうしてキングギドラと戦うつもりになったのか? モスラとの交渉は決裂したのだが、なぜかこいつらはキングギドラに立ち向かって行く。 全く理由が分からない。
全体として話を都合よく進めており、肝心なところで説得力のない描写が続いていく。 こ、これってヒーローが乱立した昭和40年代後半〜50年代前半あたりの特撮番組なんかをほうふつとさせない? そう一言で言えば、子供だましの映画になってしまったのだ。
この作品のラストシーンも象徴的。 「ローマの休日」をパクったような人間側のドラマの終焉…は関係無くて怪獣側のドラマの方。 キングギドラを撃退した時点で話が終了しており、後に残されたゴジラとラドンについては何も語られない。 ラストで佇んでいるゴジラとラドンの姿は、もはや彼らが人類の脅威ではないとアピールしているかのようだ。 だが次回作以降も、スタッフはできるだけ違和感がないようにと結構がんばっている。 それについてはそれぞれの作品で解説したい。
しかしこの作品、よく分からないところは他にもある。 まずゴジラ。なぜかキングギドラとの戦いで全く放射能火炎を使わないという妙な戦いかたをしている。 よく見れば、いつもの光学合成の放射能は最初に客船を襲う時に使うだけで、ラドンとの戦いでは初代みたいな霧状の放射能(なんか弱々しい)を使っている。 放射能がなくなってガス欠だったのだろうか?
それとラドン。なぜか阿蘇山から飛び立つ時にゴジラの声で鳴いている。
まあそれはともかく、もっと分からないのがこれ。
1971年冬の東宝チャンピオンまつりでの本作の再映の際、この映画のタイトルは
「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 地球最大の決戦」
になっていた。そうか、元タイトルでの三大怪獣とはキングギドラ以外の3匹ではなくてこの3匹のことだったのか。
っておい、ラドンはどこにいったんじゃあ〜!
全身が金色に輝き、3本の首・2枚の翼・2本の尾を持つ宇宙怪獣。
狂暴な破壊者であり、5千年前に金星の文明を1日で滅ぼしてしまった実績を持つ。
しかし、昔々の確かファンロード誌だったと思うが、
「金星の1日は地球の243日。これではゴジラに負けるのも無理はない」
とかいった投稿があって大笑いした覚えがある。
翼で太陽熱や宇宙線を吸収してエネルギー源とする。 最初の出現時は隕石の中からエネルギー状の姿で現れ、それが実体化している。 この初登場シーンは非常にかっこいいので必見だ。 しかしこういったことから察するに、ただの生物ではなさそうだ。
3つの口からは引力光線を吐く。引力光線とは、反重力現象を発生させてあらゆる物質を引き裂くもの。 しかしゴジラに当たってもゴジラは痛そうにしてるだけだから、大した威力はないようだ。 なお、この引力光線はなんともかっこ良くイナズマ状に飛ぶが、これは実は特撮の都合。 キングギドラの首は操演で位置が安定しないので、口から一直線に飛ばすと地上での爆発と位置がずれたりするからだそうだ。
ついでに言うと、キングギドラを動かすには9人の操演スタッフが必要だったそうだ。
またその頃、金星人と名乗る謎の女性予言者が出現していた。 予言者は、阿蘇に異変が起こると言う。 だがその予言者は、爆破されたセルジナ公国の飛行機に乗っていたサルノ王女にそっくりだった。 王女を護衛するはずだった進藤刑事は彼女が王女でないかと思い、またその妹で記者の直子は取材のために彼女を追う。
金星人は直接阿蘇に現れ、人々に危険を訴える。 するとその予言の通り、阿蘇山にラドンが現れた。 そしてラドン騒ぎの中、王女暗殺のためにセルジナから暗殺者たちが訪れる。
一方、金星人は港にも現れ、出港しようとしている船の危険を訴える。 そこに居合わせた直子は彼女を保護する。 そしてその晩、ゴジラが現れ船を襲う。
暗殺者たちは王女を襲おうとするが、進藤刑事が駆けつけ、またそこに居合わせた小美人の機転で事無きを得る。 が、ゴジラが日本に上陸してきた。 また、そこにラドンが飛来して来る。
ゴジラとラドンは戦いながら富士山麓に移動する。 一方、治療のため箱根の塚本研究所に運ばれた金星人は、キングギドラが地球を滅ぼすと予言する。 そして黒部の隕石が異常発光を始める。 隕石は割れ、中から黄金色に輝く怪獣が現れた。キングギドラだ。 キングギドラは辺りを破壊しつつ飛び回る。
一方、そんなこととは無関係にゴジラとラドンの戦いは続く。 小美人は言う。モスラを呼んでゴジラとラドンを説得し、力を合わせてキングギドラと戦えば勝てるかもしれないと。 そしてモスラが日本に向かう。
王女の居場所を知った暗殺者たちは箱根に向かう。箱根では王女の治療が続けられていたが、そこにゴジラとラドンが近付いて来る。 ゴジラとラドンは激しい戦いを繰り広げていたが、そこにモスラが現れる。
モスラは二匹に説得を試みる。それを通訳する小美人。だがゴジラもラドンも
「俺達の知ったことか。勝手にしやがれ」
と言ってモスラを相手にしない。
結局説得は無駄に終わり、モスラはやむを得ず一匹でキングギドラに戦いを挑む。
キングギドラに全く歯が立たないモスラ。 が、それを見たゴジラとラドンがキングギドラに戦いを挑む。 だがキングギドラの強さの前に3匹は苦戦する。
そこで3匹の共同作戦が始まった。 ラドンの背にモスラが乗り、空中からキングギドラに糸を吐き掛ける。 そしてゴジラは尻尾を掴んでキングギドラの動きを封じる。 ついにキングギドラは音を上げ、空高く飛び去っていった。
キングギドラのために暗殺者も死に、サルノ王女も正気に戻ってセルジナに帰って行った。 世界に平和が戻ったのである。
製作 | ... | 田中友幸 |
脚本 | ... | 関沢新一 |
音楽 | ... | 伊福部昭 |
特技監督 | ... | 円谷英二 |
監督 | ... | 本多猪四郎 |
進藤刑事 | ... | 夏木陽介 |
進藤直子 | ... | 星由里子 |
村井助教授 | ... | 小泉博 |
塚本博士 | ... | 志村喬 |
小美人 | ... | ザ・ピーナッツ |
サルノ王女 | ... | 若林映子 |
悪党 | ... | 黒部進 |
沖田課長 | ... | 平田昭彦 |
金巻班長 | ... | 佐原健二 |
船長 | ... | 田島義文 |
老臣 | ... | 天本英世 |