空の大怪獣ラドン

1956年12月26日公開
カラー
1時間22分

解説

東宝初の総天然色怪獣映画。あ、総天然色って要するにカラー映画のことね。 なんと当時で総製作費2億円をかけたという超大作。今とは気合の入れようがちがう。

制作費の2/3を費やしたという特撮シーンは感動もの。 ラドンと航空機との空中戦、また崩壊していく福岡市もさることながら、特にラドンの衝撃波で崩れ落ちる西海橋のシーンはワンポイントの芸術品。 今見てもこれらの特撮シーンは色あせていない。

この映画は「ゴジラ」と同じく、核実験で古代生物が甦るというプロット。 だがこれは「ゴジラ」の二番煎じの映画ではない。 核実験というのは単なる理由付け。この映画の本質は全く別物となっている。

巨大であるがため、ただそれだけのために滅ぼされる悲しい生物。それがラドンである。 実際、この映画で描かれるラドンはゴジラのように無敵ではなく、航空機の攻撃にもやられる弱い存在。 無敵の怪物であったゴジラとは対照的に、一個の生物としてその生涯が描かれている。 ラドンが死を迎えるラストシーンは非常に哀れで、そこには怪獣をやっつけたという爽快感はなく、なぜ彼らは死ななければならなかったのかという疑問が尾を引く。 このラストは屈指の名シーンである。

なお、このラストシーンの裏話をひとつ。 ラストシーンの撮影中、ピアノ線で吊っていたラドンが打ち合わせを無視して突然地上に落ちた。 「タイミングが違うぞ!」と驚くスタッフを尻目に、そのラドンは必死で飛び立とうともがき続け、やがて力尽きるという名演技を見せた。 そして無事にカット!となり、厳しい円谷英二監督もその演技を絶賛したが、そこで操演の人が謝りながら撮影陣の前にやってきた。

なんと、ラドンを飛ばす位置が低すぎたために片方のピアノ線が熱で切れてしまい、やむをえず一旦地上に降ろして持ち上げ直そうとしたが、結局もう片方のピアノ線も切れてしまったということ。 あの名シーンは、アドリブどころかハプニングのたまものだったのだ。 うーむ、映画の撮影って何が起きるか分かりませんねえ。

登場怪獣

ラドン (RODAN)

体長50m、体重1万5千t。

古代翼竜、プテラノドンが核実験による地殻変動で巨大化して甦ったもの。翼長は270フィート。 マッハ1.5で空を飛び、衝撃波を引き起こす。 肉食であり、メガヌロンや牛などを食べる。

なお体重1万5千tとあるが、作中で柏木博士はラドンの体重は100tを越えると言っていた。設定とずいぶん桁が違うぞ。

メガヌロン

体長8m、体重1t。

古代トンボの幼虫で、鋭い爪で生き物を引き裂く。

ストーリー

九州・阿蘇山の炭坑で突然の増水事故が発生。行方不明となった男二人のうち、一人が無惨な死体となって見つかった。 人々はもう一人の男、五郎の仕業ではないかと噂する。心を痛める妹のキヨ。 そこで捜索隊が炭坑へと入っていったが、彼らもまた何者かに襲われ、全身ズタズタにされて全滅する。

そしてその晩、巨大な怪物が現れ人々を襲う。だが怪物は警官や炭坑夫たちに追い立てられ、坑内へと消えていく。 そして襲われた人々の傷口から、その怪物が今までの事件の犯人だと分かる。

やがて警官隊の応援が駆けつけ、彼らと共にキヨの恋人の河村繁は五郎を助けるため坑内に入る。 が、怪物に発砲した際に坑内に落盤が発生し、繁は一人坑内に生き埋めになる。

柏木博士は、怪物が古代トンボ・メガヌロンの幼虫であると断定する。地殻変動が彼らを甦らせたのだと言う。 その時地震が発生する。しかしその震源地は地表付近だった。調査に向かう博士たち。 現場では大きな陥没が発生していたが、そこで彼らは記憶喪失となった河村を発見する。 河村の記憶はどうやっても戻らない。

その頃、九州上空に超音速で飛ぶ国籍不明機が発見された。しかし調査に向かった機は撃墜されてしまう。 それを皮切りに、世界各地でその飛行物体が目撃される。 そしてまた、阿蘇で若いカップルが謎の死を遂げる。彼らのカメラのフィルムには、生物の翼のようなものが写っていた。

一方、キヨと共に療養していた繁は、恐ろしい記憶を取り戻す。 炭坑地下の空洞、そこにうごめく無数のメガヌロン、そして孵化する巨大な卵。 そこから現れた怪鳥はメガヌロンをついばむのだった。

記憶を取り戻した繁のおかげで、それがプテラノドン・通称ラドンであることが判明する。 しかもその卵の殻から、その大きさは翼長270フィートを越えるということが分かる。 そして調査隊がその住処を突き止めるべく調査に向かうが、その目の前で巨大化したラドンが巣から飛び立った。

航空隊がラドンを追う。その攻撃の前にラドンは旗色が悪くなり、福岡へと逃げる。 そしてラドンは福岡市内に不時着する。そこへ戦車隊が攻撃を仕掛ける。 戦車隊の猛攻の前に苦戦し、悲しげに鳴くラドン。

そこへまた別のラドンが飛来する。ラドンはもう一匹いたのだ。逃げ出す2匹のラドン。 後に残ったのは、ラドンの衝撃波で壊滅した福岡市だった。

逃げたラドンは完全に行方不明となった。 しかし柏木博士は、ラドンは帰巣本能によって阿蘇に戻っているはずだと主張。 そして調査によって、阿蘇火口にラドンの姿が確認される。 そこで、阿蘇でラドンを葬る作戦が展開される。

阿蘇火口は包囲され、そこに次々と撃ち込まれるロケット弾。 その攻撃に耐え切れず、飛び立つラドン。が、そこで阿蘇が噴火を起こす。 翼を焼かれたラドンは飛び去ることができない。そこへ助けに現れるもう一匹のラドン。 だがそのラドンも阿蘇の噴火に巻き込まれる。

溶岩の中に落ちる2匹のラドン。 もがき、弱々しく飛び立とうとするが、やがて2匹は炎の中に消えていくのだった。

スタッフ

製作...田中友幸
原作...黒沼健
脚本...村田武雄・木村武
音楽...伊福部昭
特技監督...円谷英二
監督...本多猪四郎

キャスト

河村繁...佐原健二
キヨ...白川由美
西村警部...小堀明夫
柏木博士...平田昭彦
南教授...村上冬樹
井関...田島義文

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