MZ-2000モニタ交換計画

 1998年の正月休みのこと。帰省して久々にMZ-2000で遊ぼうと思い電源を入れたら、通電してる雰囲気はあるのに動かないのです。カセットもFDDもアクセスしている様子はなく、画面にも何も現れません。内部の状態も特に変化はないんですが、いじっているうちに電源コードが抜け5Vのヒューズがとんでしまいました。
 やむなくヒューズを探したのですが小型のものはなく、結局秋葉原で調達してG.W.の帰省時に交換したのですが、それでも復活せず。これは論理回路部分のトラブルだろうとヤフオクを物色して、2000年の春にMZ-2200から取り出したとされるボードを入手して交換しました。

 …しかし。メインボード交換後画面に現れたものを見て、目を疑いました。そこには、ぐにゃぐにゃに曲がったIPLのメッセージが表示されていたのです。ぐにゃぐにゃのまま安定していて、暖まったから治るとかそういうものでもないようです。

 これ、POLAR STAR IIのデモ画面なんですけれど、それなりのものが表示されていることはわかってももはや見れた画面ではありません。どんなに広げても縦横ともこれ以上大きくならず、そして波打っているのを止めることもできません。

 外部に接続したカラーCRTにはきちんと表示されていることから、おかしいのは内蔵CRT部分だけらしいということはわかるのですが、どうすれば修理できるかわからない(ブラウン管駆動回路なんて知らないもん)。で、近所のTV修理業の人に見せたのですが「やっぱりTVでないと修理できない」とのこと。回路を追っかけていって直すのではなく、画面を見て逆にたどるように調べるからコンピュータの画面はわからないということらしいです。以来うちのMZ-2000はMZ-2200状態(モニタは外付けのみ、という意味)。

 それから3年。状況は変わりつつあります。


どこが悪いの?

 時々思い出してはMZ-2000本体やマニュアルを見て、可能性を探る日々。おそらくきっかけはヒューズがとんだことでしょうから、電源が不安定で画面が乱れているのではないかと考えました。といっても何が不安定なのかもよくわからない。マニュアルによればCRTには12Vしか電源は配線されてないようなので、ここなのかなぁと予想されます。
 ですがテスターでは特にふらついているとかの様子はありません。まぁ画面が曲がるようなふらつきってのは人間の目とかテスターの感度からするとずっと速いものでしょうからそんなことではわからないのでしょうけど。電源部を見てみてもコンデンサがふくらんでるとかありませんし、きれいなものです。念のため交換してみるかとも考えましたが、みんな接着されていてはがすのは大変そうです(交換が意味のないことだったら労力の無駄ですので…)。

 とすると注目する場所はCRT基板に移ります。ここには調整用のボリュームがいくつかあるのですが、それをどのようにいじっても元のきれいな画面には戻りません。ICとかコイルとか特殊部品もありますし部品総取替えなんてこともできません。どうしたらいいのやら…。


いっそ

 電源は(怪しいかもしれないけれど)安定しているみたいなので、引き続き使うことにしましょう。その代わり、CRTを入れ替えることを考えます。
 以前MZ-MLとかスラッシュドットなんかで紹介されたAtrandomというサイトでは中身まるごと入れ替えてMZ-2000をPC/AT互換機にしてしまった様子がレポートされているのですが(こよなくMZを愛する私としては動くマシンでそんなことやりたくない)、そこのディスプレイのページではサーバ用の9インチ白黒モニタを流用しています。でもどうせ交換するならカラーがいいよね…。

 実は昔からMZ-2000のCRTをカラーのものに交換したいと思っていたのです。工業用のカラーCRTを組み込んだら、大きさは元のままでカラーになるんじゃないか、というわけです。が、トラ技とかの広告で見てもなかなかいいものはありません。それならカラー液晶パネルならどうだ、と物色しましたがこれもめぼしいものはなし。だいいち、液晶パネルなんてノートPCメーカーしか需要がないような気がします。

 …と思っていたのはいつの日だったか。最近はパチンコ台から取り出された液晶モジュールで工作して遊ぶ人が増えて、秋月とか共立なんかでパーツを集めて小さなテレビを作るようなことも流行するようになりました。パチンコ台の中には10インチクラスの液晶を使用するものもあるらしく、それを使った試作をする人もいるようです。よくある5.5インチなんかでは枠が余りすぎますから大きいのがいいわけですが、いざ売ってそうなところを探しても見つからない。あきらめかけたその時、なんとCoCoNet液晶工房なるショップを発見。基本的に中古ですが、各種パネルのほかバックライト用インバータ、そしてなんとビデオ入力つき液晶自作キットまで揃えられています。
 MZ-2000なら走査周波数はもとより解像度としてもビデオ並み(横640ドットはちょっときついですけどね)、ならば

MZ-2000 ⇒ RGB→ビデオコンバータ ⇒ 液晶キット ⇒ 液晶パネル

という構成で液晶ディスプレイ化ができそうな気がします。
 心配の種は、情報によると液晶自作キットは小さいサイズの液晶に対応していないとのこと。少なくとも9インチのものはだめだということらしいです。MZ-2000は10インチモニタですから10インチクラスの液晶について情報が欲しいところですがそれについては手がかりなし。まぁなんとなれば直接問い合わせればいいのですけれど。
 RGB→ビデオコンバータ(昔で言うところのRFコンバータですな)はまだ秋月で取り扱っているようですし、まずはこれを買ってきてビデオ出力できることを確認し、キットごと液晶パネルを調達すれば完成という段取りでいけそうです。間にアナログが挟まるので画質がどうかなとか液晶パネルがスペースに収まるかなとか未解決の問題もあるにはありますがなんとかなりそうな予感はします。


そういえば、持ってた…

 とか言いつつ、「せっかく最初からデジタルなんだからなんとかしたいよなぁ」と考えて液晶の駆動回路とかどうなっているのか調べているうちに、使ってない液晶パネルを持っていることを思い出しました。そう、PHILOS46CPを入手したあとその前から持ってたPHILOS48CPの液晶パネルを46CPに移植したために余った46CPの8.4インチ液晶です。どんな液晶が使われているのか取り出してみたところ、シャープのLQ9D021というパネルが出てきました。この型番をもとに検索してみると、とある掲示板のログが見つかり、なんとこれをPC-8001に接続してみたとのこと。その結果は画面が上下に二分割された(まぁ400ライン以上のモニタに200ラインの絵を映してるんだからしかたありませんが)ものの、一応は表示されたみたいです。そーいえば、横は640ドット(VGAタイプですので)ありますし。

 これがその液晶パネル。右にあるのがバックライトを点灯させるインバータ基板です。液晶駆動回路は表示面左の金属カバーの裏側にあります。そこからフレキシブル基板を通して下の小さい基板に到達し、ノートPC内部へのコネクタへつながるケーブルに変換されます。このケーブルはノートPCのフタとなるヒンジを通ることから余裕のある長さとやわらかさを備えています。

 とりあえず外側からサイズあわせしてみると、表示エリアとブラウン管の開口部のうち横幅はぴったり、縦幅は液晶が少し余るくらいのようで、このぶんだと10インチクラスでは使えなさそうです(これで液晶工房の自作キットを用いる案はボツ)。駆動回路を収めている部分の幅がありますが、なんとかそれを隠して筐体内に収まりそうでもあります。ブラウン管の表示面が湾曲しているために開口部や固定用の支柱なんかが平たくないだろうと思われますが、プラスチックですしある程度加工は可能でしょう。
 問題は回路ですね。データシートによれば、この液晶の信号には以下のものが必要らしいです。

1 TST
GND 2
3 R0 赤LSB
垂直同期 Vsync 4
5 R1
水平同期 Hsync 6
7 R2 赤MSB
GND 8
9 GND
ドットクロック CK 10
11 TST
GND 12
13 G0 緑LSB
TST 14
15 GND
TST 16
17 G1
TST 18
19 G2 緑MSB
GND 20
21 GND
+5V VCC 22
23 TST
+5V VCC 24
25 B0 青LSB
TST 26
27 GND
データ有効 ENAB 28
29 B1
GND 30
31 B2 青MSB

 このうち三原色は問題ないですね。MZ-2000は8色ですから、赤の出力は全ての赤の入力につなぐとかすればいいわけです。本体のモニタと入れ替えるわけですからグリーン表示もさせたいところですが、これはRGBの信号のORをとったものを緑入力に入れるという手よりは、グラフィックとキャラクタのプライオリティなどの都合からグリーンCRTに接続されていた映像信号を緑入力に入れる方がより本物の動きになるでしょう。もちろん、RGBも切り替えて使用できるようにしてカラー表示も楽しめるようにすべきです。
 垂直同期と水平同期は、波形としては元の信号を入力してもかまわないようです。ただ縦の解像度が違うので結局はそれに見合った信号を作る必要はあるでしょう。ちなみに、この同期信号の正負の組み合わせにより480(VGA)/400(DCGA)/350(EGA)モードが切り替えられるとあります。もちろん、今回の流用には400ラインモードで動作するようにするのがいいでしょう。
 ちょっと厄介なのがドットクロックです。MZ-2000ではディスプレイコントローラLSIの動作クロックとして16MHzを使用しており、また計算してみてもMZ-1D01のカタログを見てもこれをドットクロックとしても使用していることは明らかです。このクロックはメインボードのキーボードに近い場所あたりにあるグラフィックRAMボードコネクタに出てきていることはわかっていますが、液晶制御回路を置くであろう場所(モニタの裏)からは少し遠く、あまり引き回したくありません。とするとドットクロックを自分で用意することになるのですが…。
 それに200ライン→400ラインの変換も必要です。倍にするためには同じラインを2回表示すればいいわけで、そのためにラインメモリを使って一度記憶させた1ラインを倍の速度で2回なぞることになるわけですけど、200ライン側のドットクロックが16MHzだと400ライン側は32MHz、しかしデータシートには28MHz強程度しか入力できないとあります。となれば、400ライン側は28MHzということにして、200ライン側を14MHz相当と仮定してタイミングを作る必要が出てきそうです(もちろん200ライン側の真のドットクロックは16MHzです)。
 さらには、インバータ基板が使えるかどうかのチェックも必要です。単に電圧を与えるだけでなくて、何か制御線もあるようです。

 さてさて、どうなることやら…。


結局、普通に修理しました

 液晶パネルを取り付けるための加工を逡巡しているうちに、状況が変わりました。
 まず、ヤフオクにてDigicのライトペンI/Fボードの入手に成功しました。ライトペンはCRTの走査線を光センサで読み取ることで動作します。とすると、これを動かせるようにするなら液晶化はやめたほうがよさそうということになります。
 さらに、MZ本の執筆のために譲り受けたMZ-2000とCRT基板を交換してみたんですが、なんとそれでは治らなかったのです。この症状というのはつまりブラウン管が痛んでいるということなんですね…。

 そこで元気なCRTとの交換を決意。CRTの取り外し・取り付けは難しくありませんけど、横っ腹につながるチューブの付け外しや基板のアース線のハンダ付けがちょっと面倒ですかね。

 というわけで交換作業終了後の姿。MZ-80BMZ-2000コンパチボードもありますが、やっぱり本物が一番いいですね。

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