ガメラ対大魔獣ジャイガー

1970年3月21日公開
カラー,ワイド
本編83分

解説

「対バイラス」ではいまひとつ押しに欠け、「対ギロン」では完全に希薄になった、ガメラ映画らしい怪しさ。 この不満は、この作品で一気に解消することになる。(どーゆー視点で映画を見てるんだ、こら)

例によって日本人&外国人の子供コンビが登場。それに前作では日本人の子の妹が登場していたが、今回は外国人の子の妹が登場し、話に華を添える(?)。 今回は大阪の万博が舞台。太陽の塔も出てくるぞ。 そして、冒頭では万博やら古代文明やらの解説を聞くことができる。 良い子のみんな、これでまた賢くなったね。

今回は「対ギャオス」以来久しぶりに、自衛隊がジャイガー対策に励むというスタイルになっている。 となるとお約束、なぜか対策本部に入り込んでいる子供たちが怪獣対策を仕切るというガメラの名パターンが復活する。 やっぱりガメラはこうでなくっちゃ。 ただ、子供たちの年齢が高めになっているので、「対ギャオス」ほどのインパクトはない。 しかしそれでもナイスなことには変わりはない。

前作に続き大村崑が登場。 怪獣が暴れるのを見に行くという子供たちを、ガメラが来たから大丈夫だと言って行かせてしまうナイスな父さんを演じている。

そして怪獣対策を練る博士たちもナイス。 熱帯の人が北国が苦手なのと同様に、高周波を発するジャイガーは低周波に弱いという素晴らしい理屈を披露してくれる。 これこれ、これがガメラに出てくる人達なんだよ。

最後の戦いに至る過程もナイス。 人間たちはジャイガーの弱点が低周波だと知り、低周波を放つスピーカーでジャイガーを取り囲み倒そうとする。 一方で保険として半死のガメラを復活させておこうとして高圧電流が使用され、そのせいで停電を起こしてしまう。 そのために低周波が途絶えてジャイガーが暴れ出す。 つまり、ガメラを起こそうなどという余計なことを考えなければジャイガーは人間の手で倒せていたのだ。 いやー、是が非でもガメラに戦ってもらおうという話の展開、素晴らしいねえ。

ガメラ自身も相変わらずナイス。 ジャイガー封じの石像を人間が持ち去るのを邪魔しようとする鋭い先見の明があるところを見せるかと思えば、そんなことを忘れて火山の噴火に惹かれて行ってしまう間抜けさも見せる。 賢いのか馬鹿なのか分からん。

更に、極超音波で分子構造を破壊するジャイガーのマグネチューム光線。人間がそれを浴びれば即白骨化してしまうほどの恐ろしい光線だ。 それを浴びたガメラを見て、博士は「超音波で耳の鼓膜が破れる」と間抜けなことを言う。 そしてガメラは、電信柱を耳に刺して光線を防ぐ。ギルの笛の音を防ぐキカイダーか、おのれは!

いやあ、全体としてガメラらしさ全開の素晴らしい作品だ。 「対ギャオス」あたりが気に入っている人はぜひ見て欲しい。

なお、冒頭で万博や古代文明の解説をしてくれ、その後は子供たちに振り回されるだけの沢田圭介を演じた、炎三四郎という凄い名前の人。 この人は実は、よく見れば分かるけど「仮面ライダーX」のXライダー・神啓介こと速水亮。 さすがのXライダーもガメラ映画の中では子供には勝てないということなのね。

登場怪獣

ジャイガー

身長80m、体重200t。

古代ムー大陸において「悪魔の笛」と呼ばれる巨大な石像によって封じ込められていた怪獣。 角から針状の唾液固形ミサイルを放ち、極超音波によってあらゆる物体の分子構造を破壊するマグネチューム光線を放つ。

低周波に弱い。また、尻尾から別の生物に卵を植え付けて寄生させ、そこから孵化した幼虫はその生物の栄養を吸収して大きくなる。 しかしあんなデカい幼虫、怪獣相手じゃなければ寄生させようもないと思うが、ムー大陸には怪獣が沢山いたのだろうか? そもそも、どう見ても爬虫類なのに「幼虫」とはなぜ?

ストーリー

万博のためにウェスター島の「悪魔の笛」と呼ばれる巨大な石像が日本に運ばれてくることになった。 だが現地の人は、石像を動かすとたたりがあると言って恐れる。

ウェスター島では石像を運び出す準備を進めていたが、そこにガメラが飛んでくる。
「オー、オソロシイ カイジュー」
棒読み台詞で言うトミーの母エレン。 ガメラは石像の輸送を邪魔しようとし、発掘隊はガメラを狙撃する。 その時、近くの火山が噴火を始め、ガメラは石像そっちのけで火山に向かう

無事に石像は運び出され、スタッフは撤収する。しかししばらくすると、石像のあった所の地下から大怪獣が姿を現す。 そして、火山からガメラが戻って来て怪獣と戦い始める。 一時はガメラ優勢だったが、大怪獣は鋭い針を飛ばしてガメラの手足を貫き、ガメラをひっくり返して海に消える。

石像を運んできた船では奇怪な病人が多数発生していた。 それでもなんとか石像を運び出すが、そこへ大怪獣が襲来。 怪獣は、ウェスター島の伝説に伝わるムー大陸の怪獣ジャイガーだと判明する。 ジャイガーは石像を追っているらしい。

一方ウェスター島では、ガメラがなんとか針を抜くことに成功し、日本に向かって飛び立つ。 大阪で暴れまわるジャイガー。そこへガメラが到着する。 ガメラを見に行く弘たち。危ないと言う姉に父親は言う。
大丈夫大丈夫。子供たちの言っていたガメラが来たんだから」

ジャイガーと戦うガメラだが、尻尾の針を突き立てられてから様子がおかしくなり、海に突っ伏す。 ガメラは皮膚が白くなってしまい、動かなくなる。

ジャイガーを監視する自衛隊。いつの間にかそこに入り込んでいた弘とトミーは、石像の毒がジャイガーの弱点だと指摘する。 しかしやがて動き出したジャイガーは、万博会場近くに隠された石像を探し出して海に投げ捨ててしまう。 これで石像を調べるという手段が無くなった。しかし弘とトミーは最後の手段があると言う。 ガメラを生き返らせようと言うのだ。

子供たちの意見を受け入れてガメラのレントゲンを撮る自衛隊。そしてガメラにはジャイガーの卵が産み付けられているのではないかという結論に達する。 そこで、皆に黙って弘とトミーは万博に展示する予定だった小型潜水艇とトランシーバーを持ち出し、ガメラの体内へと向かう。 そしてでっかいのどちんこの側を通りぬけ、やがて異物のある肺へと達する。 二人は潜水艇を降りて調べるが、ジャイガーの幼虫が現れて襲ってくる。 思わずトランシーバーを投げつける弘。そこでトランシーバーの雑音を聞いた幼虫はなぜか死んでしまう。

博士は、ジャイガーのマグネチューム光線は極超音波であり、雑音は低周波であり、あべこべで両極端であることを指摘する。 つまり、熱帯地方の人が北の国に行くと弱く、逆に寒さに強いはずのエスキモー達が南方に行くと参ってしまうのと同じ原理で、ジャイガーは低周波に弱いのだと言う。 そこで「悪魔の笛」の謎が解けた。毒が含まれていたのではなく、笛のような構造になっている石像に風が通ると低周波が発生し、ジャイガーを封じ込めていたのだ。

自衛隊はジャイガーの周りをスピーカーで囲み、低周波で仕留める作戦を展開する。 一方で弘とトミーはガメラを復活させるため再びガメラの体内に入り、心臓に高圧電流を流す。 ガメラを復活させるには、大阪市が一日に消費するだけの電力が必要だという。
「だからしばらくの間大阪市内には送電がストップされるかもしれん」
「えらいこっちゃなー」
そしてガメラを復活させるために停電になってしまう。 そのためスピーカーへの送電がストップし、ジャイガーが復活する。

だが復活したガメラが万博会場に向かう。ジャイガーとの最後の対決が始まる。 超振動で全てを破壊するマグネチューム光線を浴びるガメラ。
「いかん。このままではジャイガーの極超音波で、ガメラは耳の鼓膜をやられてしまう
とのんきな事をいう博士。そこでガメラは電信柱を耳に突き刺してマグネチューム光線を防ぐ

ジャイガーを高空から落とすガメラ。そしてガメラは海に潜る。 だがジャイガーはすぐに動き出し、万博会場を襲おうとする。 そこへガメラが戻ってくる。ガメラは「悪魔の笛」を持っていた。そのまま空を飛び回り、笛の音を響き渡らせる。 ガメラを襲おうとするジャイガー。そこへガメラは「悪魔の笛」をジャイガーの耳に突き刺し、ジャイガーは息絶える。 ガメラはジャイガーをそのままウェスター島へ運んでいくのだった。

『これで万国博も開催できる。 だが、私たちは今回の事件でひとつの教訓を得た。 それは、子供たちの持っている素朴な直感汚れなき魂を、大人になっても失ってはならない、ということである』

スタッフ

製作...永田秀雄
企画...仲野和正
脚本...高橋二三
監督...湯浅憲明
音楽...菊池俊輔

キャスト

北山弘...高桑努
トミー...ケリー・バリス
スーザン...キャサリン・マーフィ
沢田圭介...炎三四郎
北山みわ子...八代順子
北山良作...大村崑
ウイリアム...フランツ・グレーベル
エレン...マーリズ・ヘリー
鈴木博士...夏木章
松井博士...北城寿太郎

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