ウルトラファイト

放映

昭和45年9月28日〜昭和47年3月31日、全195回(本放送分のみ)
TBS系
毎週月〜金曜17時30分〜17時35分

概要

「ウルトラマン」「ウルトラセブン」における怪獣が暴れるシーン、ウルトラマンとウルトラセブンの活躍シーンを2〜3分のダイジェスト版にまとめて放送。 それにTBSのアナウンサー・山田二郎が実況中継を加えており、独特な雰囲気を作り上げた。

しかし、人気が出てロングランとなったために過去の作品のフィルムだけでは足りなくなり、新作を撮影することになる。 その新作とは、人里離れた場所で怪獣やウルトラセブンの着ぐるみがほとんどぶっつけ本番で格闘するというもの。 それに山田二郎が実況中継を加える。

当時はこういったチープなものでも大好評となり、再放送分を含めて1年半に渡る長期番組となった。

解説

「ウルトラセブン」終了と共に第1次怪獣ブームも終わってしまった。そして数年の空白を経て第2次怪獣ブームが到来する。 第2次怪獣ブームの起爆剤となったのは「宇宙猿人ゴリ」「帰ってきたウルトラマン」であるが、ならばその導火線となったのはこの作品と言える。

この作品は元々、円谷プロで支出なしの作品を作ろうということになって、円谷プロのスタッフが自らフィルムの編集を行なった短編番組。 そのフィルムの使い回しっぷりから当時業界筋からはひんしゅくを買ったようだが、視聴者からは歓迎された。 ビデオも無かった当時、再びウルトラマンやウルトラセブンの勇姿を見られるというのはまさに感動ものだっただろう。 しかも、子供たちにとっては非常においしい最後の戦いの部分だけを集中して見られるのだ。

しかし、ビデオだのLDだので何度でも過去作品を堪能できる現在では、そういう良さはなくなってしまう。 また、これらのシリーズのドラマ性を味わえる年齢になった今では、戦いの部分だけ切り出されるのはどうか? そんな視点で冷ややかに見ると、はっきり言えばこの作品はいいかげんで変である。 そもそも「ウルトラマン」「ウルトラセブン」ではドラマがしっかりと作られており、変身してからの戦いにもドラマが絡んでいた。 それを無視して戦いの部分だけ切り出してみれば、変なところはたくさん出てくる。

例えば「ウルトラマン」第20話「恐怖のルート87」。 交通事故で死んだ少年の魂が高原竜ヒドラを生み出し車を襲うというこの話で、ウルトラマンはヒドラに少年の魂を見出して最後にスペシウム光線を撃つことができず、ヒドラは空の彼方へ消えていった。 実に味わい深いラストの名作である。

では、そのダイジェスト版である本作の「ヒドラ竜巻の技」はどうか? この作品では少年の魂なんて設定に触れている時間はないので、単にヒドラがウルトラマンをボコボコにして、ウルトラマンはなすすべもなくヒドラに勝ち逃げされるというミもフタもない話になっている。

もうひとつ挙げれば、「ウルトラセブン」第15話「ウルトラ警備隊西へ(後編)」。 無敵のウルトラセブンすら手も足も出ない強敵キングジョーに対して、ウルトラ警備隊はライトンR30爆弾を使って見事勝利をおさめる。 ゼットンに対する科学特捜隊のように、ウルトラ警備隊の底力を見せてくれる作品だ。

ところが本作ではウルトラセブンの活躍を描くのが目的。 かくしてダイジェスト版「怒れ!狂え!キングジョオ」では、キングジォオ(当時はこう呼ばれていたらしい)は突如自壊作用で爆発する。 セブンは何もせずに勝利するのだ。なんじゃそりゃ。

とまあ、こんな具合に、この作品では本編のドラマを無視して単なるヒーロー格闘ものとして強引にまとめられている。 子供向けにはいいのだろうが、ドラマを愛するファンとしては物足りない、というか馬鹿にされているような気がする。

ところがところが、この作品の真の良さに気付かずに憤慨するのは待った方がいい。 考えてもみるといい。名ドラマを作り上げた本家円谷プロ自身の手でこの強引な話は作られているのだ。 これは、本家が自ら作り出した各作品のパロディーとは考えられないか? 旧作の深い味わいを全て無視して、わざといいかげんな解釈で再構成した結果ではないか?

そう考えてこの作品を見ると単純に大笑いできる。 アボラスの溶解泡やプラチク星人のプラスチック液を冷凍光線呼ばわりするいいかげんなナレーションも、
「円谷プロともあろうものが、自分の作った設定も把握してないのか!」
などと怒る前に
「冷凍光線?そりゃあんさん、ちゃいまんがなー」
と笑ってツッコミを入れられるというものだ。
(注:こんな喋り方をする関西人はテレビの中にしかいない)

ほらほら、そうやって力を抜いて見てごらん。 ウルトラセブンの放つ光線を、エメリウム光線以外は全部ウルトラビーム呼ばわりしているふざけたナレーションも笑えてくるではないか。 そう、山田二郎の、設定や状況をよく分かってないんじゃないかという間抜けなナレーションこそがこの作品の命。 作る方が旧作に対する思い入れを持ってないんだから、見る方もそんなことを期待してはいけないのだ。

そのセンスが更に高まり、完全にイッちゃうのが新撮部分。 これは怪獣やウルトラセブンの着ぐるみを倉庫から引っ張り出してきて、人がいない場所で単に格闘させるというもの。 聞いただけで脱力感に襲われてしまうが、そうするのが正しい接し方。力なんか全部抜かなきゃ。 で、そうして新撮部分を見ているとその独特の感覚に引きずり込まれてしまう。

最初のうちは唐突に最初から最後までウルトラセブンや怪獣たちが格闘するだけで、こういったものはまあ単なる低予算番組に過ぎない。 しかし、それではマンネリになってくるので、だんだんとストーリー(?)が付け加えられるようになってくる。 が、ウルトラ作品として恥じないものを!なんて気合は全く入ってないので、これがなんかその場で適当に考えたような、いーかげんでしょーもないものになっている。 いや、そのストーリー(?)を、数々の名ドラマを生み出したウルトラ怪獣たちが繰り広げているという点では、あまりにもぶっ飛んでいてシュールなのである。

一例を紹介しよう。 後期の作品から、「早すぎた葬送曲」。

ゴーロンとの決闘に赴くセブン。だが背後から突如現れたイカルスがセブンをはがい締めにし、ゴーロンはセブンをボコボコにする。 次はゴーロンがセブンを捕まえ、イカルスはセブンをボコボコにする。さすがのセブンもこれには参った。地面に崩れ落ちる。 おおセブンは死んだか、と手を合わせて念仏を唱えはじめるゴーロン。片や十字を切るイカルス。 だがそれを見咎めたゴーロン、イカルスに念仏を唱えろという。しかしイカルスはクリスチャンだからいやだという。 そうこうするうちに二匹は喧嘩を始める。で、二匹が疲れきった頃、死んだと思われたセブンが突如起き上がり、二匹を一撃でノックアウト! やはり最強はセブンなのだ。

…ね! シュールでしょ! こんな具合に、第1期ウルトラシリーズを支えた名宇宙人、名怪獣がわけの分からん設定で実に低レベルな争いを繰り広げるのだ。 あの名作の主人公、ウルトラセブンもそれに混じって低レベルなどつきあいをしているんだから凄まじい。いや、素晴らしい。

旧作を完全にコケにして、今度はナレーションだけでなく映像までもふざけたものになった新撮部分。(注:ほめてるつもり) 私はもう、このシュールな世界の虜になってしまった。 この真の面白さはウルトラファンにしか味わえないのではないかと思う。 これは円谷プロが我々ディープなファンに贈ってくれた素晴らしい贈り物だ。

さあ、ウルトラの仲間たちよ。 この作品は普通の人にとってはつまらなく味の無い作品だろうが、我々ウルトラの味わいを知る者には絶妙な味をもたらしてくれる。 ウルトラファンなら、本道のウルトラシリーズをメインディッシュとして賞味しつつ、この作品をデザートとしておいしく頂くのがよろしいかと思う。 機会があれば、ぜひご賞味あれ。

登場人物

ここでは新撮作品に登場するキャラクターの紹介をする。 新撮作品はありあわせの着ぐるみを使っているので、同じ怪獣が何度も登場しており、数はそんなに多くない。

彼らは顔を合わせる度に喧嘩をしており、それは全く見境がない。 例えばセブンを倒すべく共闘する味方同士であっても、なぜかセブンを放っといて喧嘩を始めてしまう。 彼らの闘いには理由なんて無いので、素直に笑ってあげよう。

また、新撮作品では宇宙人が××星人と呼ばれていない。例えば、単に「バルタン」と呼ばれているだけである。 怪獣と同レベルのどつきあいをしているだけだから、怪獣と同列に扱おうということかもしれない。 しかし、なぜかガッツだけはよくガッツ星人と呼ばれていた。 同じようにどつきあいをしていただけなんだが。

ナレーター(山田二郎)
毎回面白いナレーションで楽しませてくれる、この作品の命ともいうべき人。 初期の作品では若干実況のテンポが悪かったりするのだが、怪獣格闘の実況なんて初めてだろうから無理もない。
ウルトラセブン
アトラクション用の着ぐるみ。なぜかウルトラマンの声を出す。
自然を愛する無敵のヒーローだが、他人をあざ笑ったり可憐な花を弄んだりする悪い癖もある。 しかし自分が悪い時は素直にあやまる。 時には怪獣同士の対決のレフェリーや仲裁もする。だがいつも結局自分も戦う羽目になる。 円月殺法の使い手であり、宇宙陰陽の構えや二天流も体得している。 更に、三角切りやマキシ斬りなど多彩な技を持つ。だが、飛び道具には弱い。
アギラ
本編で使用された着ぐるみ。色黒になったようだ。首が上を向いていてマヌケ。
ウーが宿命のライバル。 セブンの子分だがひたすら弱い。いつもセブンに助けてもらっている。
ウー
アトラクション用の着ぐるみ。毛がボサボサで顔も見えない。 毒蝮三太夫が「まるで安達ヶ原の鬼婆だ」と言ったとか。
喧嘩屋の異名を取り、怪力の持ち主で狂暴。手数が多いことでは定評がある。 全身毛だらけなので濡れると体が重くなるのが弱点。 実は女で、髪に花を飾った姿はラブリー。イカルスが彼氏。座頭だったこともある。
エレキング
アトラクション用の着ぐるみ。首が長くて、ぬぼーっとしている。
昼寝が大好きで寝起きは機嫌が悪い。喧嘩も好きで逆エビが得意。 約束の時間を守らないルーズな面がある。イカルスが宿命のライバルであり、彼女でもある。 自分の持っていたライフルが暴発して死んだことがある。
イカルス
アトラクション用の着ぐるみ。ヒゲが緑色だ。
喧嘩は飯より好きという暴れん坊でスタミナは充分。身軽な上に、右ストレートには定評がある。仁義を心得ているが、結構卑怯な手も使う。 特訓の末に殺法破れ傘や三段拳法を編み出す。ご存知の通りクリスチャン。人間のゴミをあさることもある。 女になったり男になったりと忙しい。プレゼントは食べ物でないと怒る。 ある時はライフル魔となり、エレキングを射殺した。
バルタン
アトラクション用の着ぐるみ。「帰ってきたウルトラマン」に出てきたジュニアに似ている。目が光る。
分身の術を使い、そのハサミによるリーチを生かしたパンチが得意。 しかし実はハサミを外すと人間の手と同じになっている。 味方と見せかけて攻撃する、油断も隙もない奴。 かなりの実力者だが、セブンの三角切りで手と首を切断されたことがある。
ゴドラ
本編で使用された着ぐるみ。目は光らない。
忍者の異名を取り、テレポートすることができる。ツメを取られると弱い。ボクシングの心得がある。 日々苦しい特訓に励んでおり、忍法宇宙しばりで相手を金縛りにする。
テレスドン
本編で使用された着ぐるみ…らしい。あまりにもブサイクになり、「帰ってきたウルトラマン」ではデットンとして使用。
視力が悪く、重いので動きが鈍い。
ガッツ
本編で使用された着ぐるみ。2体いたはずだが1体ずつしか出てこない。頭が重そうだ。
石頭だがスタミナがなく、すぐ失神する。
ケロニア
アトラクション用の着ぐるみ。頭だけは本編で使用されたもの。あまり出番もなく、なんか目立たない地味な奴。
シーボーズ
本編で使用された着ぐるみ。ああ、実相寺作品の名スターがこんなところで…。
行くところ常に波乱を呼ぶ凄腕の喧嘩屋。 セブンに負けじと宇宙陰陽の構えを披露するが、まるでラジオ体操のようだ。 怪獣界におけるサッカーの名手で、ねばっこいことでも怪獣界ナンバー1と言われている。 しかし仁義を知らない不届き者。
キーラー
本編で使用された着ぐるみ。しかし地味なので全身に黄色いストライプが付けられておしゃれになった。
いたずら者で足は短いがゴーゴーが好き。ゴーロンと久しぶりの再会を果たし、仲良く喧嘩する。 また、三度笠をめぐってセブンと死闘を繰り広げる。 剣の達人でもあり、「怪獣道とは生きることと見つけたり」と悟る。座頭だったこともある。
ゴーロン
アトラクション用の着ぐるみ。体はブースカの改造だという噂がある。
掘り出し物を探す山師で、そのパンチには定評がある。ご存知の通り仏教徒。 スペイン式決闘でセブンに挑む。
ゴモラ
アトラクション用の着ぐるみ。「怪獣死体置場」にただ一度だけ登場。
円谷プロの倉庫で甦り、ウーを圧倒的強さで倒した後、再び眠りにつく。

全話リスト

本作品の放映順序は、実はよく分かっていない。 資料として発表されているものはあるのだが、何かおかしい。 そもそも旧作フィルムの流用では足りなくなったから新作を作ったはずなのに、そのリストでは旧作流用分と新作分が順番バラバラで混在しているのだ。

で、このリストは再放送分のものであるという説が出ている。 そして、本放送分の順序は製作順序の順ではないかという説もある。 だが、製作順に並べても、タイトルバックの音楽が一定しないという疑問点が残る。

はっきり言って私には何がなんだか良く分からないので、両方とも掲載する。 一応本放送分と再放送分ということにしておくが、誰か詳細を知っている人がいたら教えてほしい。

3つに分けたものを用意したのは単に長すぎるからで、深い意味はない。 ちなみに、特に新撮分については、サブタイトルにはあんまり意味はない。

なお、なぜか本放送リストは再放送リストより1話多い。 実は「怪獣死体置場」を急遽撮り足してあるのだ。 その理由は実に簡単。再放送できなくなった話があったから差し替えるため。 ウルトラファンならもう分かったでしょ。 あの話に関わる映像は、この「ウルトラファイト」でも欠番となったのだ。


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