ウルトラ兄弟出撃指令

ご存知の通り、そもそもウルトラ兄弟というのはテレビシリーズの最初の頃は存在していなかった。 彼らが義兄弟の契りを結んだのは、テレビシリーズで言えば「帰ってきたウルトラマン」の前にあたる。

と言うと、え?「ウルトラマンA」の時じゃないの?と思う人もいるだろう。 テレビシリーズでは一見そう見えるのだが、良く考えるとそうではない。

ウルトラ兄弟という言葉が初めて登場したのは、なんと「帰ってきたウルトラマン」の最終回。 こともあろうに敵のバット星人の口から語られている。 するとこの時点で、ウルトラ兄弟なるものはそこらの宇宙人でも知っているような有名なものとして認知されていなければならない。 しかし少なくとも「ウルトラセブン」の時点ではまだウルトラ兄弟なんてものは存在していなかったし、ジャックが地球にいる間に勝手にウルトラ兄弟なるものの仲間にされたとも考えにくい。 とすると、セブンが地球を去ってからジャックが地球に来るまでの間にウルトラ兄弟が結成されたと見るのが自然だ。

では、ウルトラ兄弟はどうして結成されたのか? なぜジャックが最初に地球に来ることが決まったのか? タロウがエースより先に地球を守らなかったのはなぜなのだろう? そもそも、どうして彼らは地球を守ってくれるのか?

実は、その裏にはウルトラ兄弟の長兄と呼ばれるゾフィの大いなる構想と策略があったのだ。
その構想とは?
策略とは?
だがそれを語るためには、まず全ての原点とも言えるウルトラマンの地球来訪について語らねばならない。

ウルトラマンよ故郷に帰れ

全ては「ウルトラマン」第1話から始まった。 ここで、ウルトラマンが華々しく登場するわけだ。 …と言いたいところだが、実はその登場はウルトラシリーズ史上最大の情けなさを誇っていたりする。

まず、ウルトラマンが地球にやって来た理由というのが情けない。 宇宙の平和を乱す悪魔のような怪獣であるベムラーを宇宙の墓場に運ぶ途中、逃げられてそれを追って地球に来たのだ。 別に地球に用事があったわけではない。

更に、ハヤタ隊員と一体化した理由も凄い。 ベムラーを追っていたウルトラマンはハヤタ隊員のビートル機と激突し、ハヤタ隊員を死なせてしまったからなのだ。

これらのことはあまりにもよく知られた設定であるだけに誰も何も言わないが、改めて考えると凄すぎる。 要するに、凶悪犯を護送していた刑事が犯人に脱走されたので車で追っていたら一般人をひき殺してしまった、というようなものなのだ。 なんてやつだ、ウルトラマン!

で、このウルトラマンは幸い責任感が強かったので、ハヤタを救う唯一の手段、自分の命をハヤタに与えて自分も地球に残るという決断を下す。 偉いねえ、もう二度と故郷に戻れないかもしれないのに。

…と、ちょっと待てよ。ここでウルトラマンの立場になって考えてみよう。 ウルトラマンはベムラー護送の任務を帯びていた。その任務からして、ウルトラマンがM78星雲の宇宙警備隊隊員であることは間違いあるまい。 そんな規律の厳しそうな組織に属していながら、宇宙の辺境に勝手な判断で駐留するとは何事だ。 しかも、ウルトラマンはベムラーを殺している。任務は護送だったはずだ。確かに目的地は墓場だったけど…。

このウルトラマンの不審な行動、その目的は明らかだ。 考えてもみよう。宇宙警備隊のエリート隊員である自分が、こともあろうに犯人を逃がし一般人を殺してしまったのである。 真面目でエリート街道を歩んできた彼にとって、それは悪夢のような出来事だったはずだ。 こんなことが宇宙警備隊に知られたら、傷ひとつない経歴の持ち主だった自分はどうなる? 私のようなエリートでない者から見れば、経歴に傷はつくけどしょうがないなと思う程度なのだが、彼にとっては自分の人生が崩壊する重大な問題だ。 エリートというものはもろく、崩れやすいものなのだ。

となると取るべき行動はひとつだ。幸いここは宇宙の辺境、誰もこの事件を知るものはいない。 ハヤタを救うという大義名分の元、実際ハヤタの命を救ってやりたいと思っていたし、ハヤタと一体化して地球に残ってしまえば完全に雲隠れできる。 そう、彼は現実逃避して職務を放棄し、蒸発してしまったのだ。 そして、唯一の証人であるベムラーはどさくさにまぎれて殺してしまう。 実際、ベムラーは最後に戦意を喪失して逃げようとしていた。 ウルトラマンはそんな相手を容赦なく殺したのである。これで証拠はなくなった。

だが、そんな彼の行動をいち早くキャッチしている者がいた。宇宙警備隊でも有名な切れ者、ゾフィである。 彼はウルトラマンの失踪を知って探りを入れ、なんと地球という辺境の星で怪獣退治に明け暮れていることを知る。 実は彼はかねてからある構想を持っており、その実現のためにウルトラマンを利用できると考えた。 そこでゾフィはウルトラマンをとりあえず放置する。ではその彼の構想とは何か? それを語るためには、ゾフィの登場について語る必要がある。

ウルトラマン地球に死す

ゾフィの初登場は「ウルトラマン」最終回、ゼットンに敗れたウルトラマンを迎えに来たのが最初である。 この時、ゾフィはウルトラマンに対して
「私はM78星雲宇宙警備隊員、ゾフィ」
と名乗っている。このセリフから分かる通り、ウルトラマンとゾフィは初対面なのだ。 そして、ゾフィはこの時点では単なる隊員に過ぎない。 前述のようにウルトラマンが宇宙警備隊隊員だとすれば、立場は同格ということになる。 だがゾフィはどうも態度がデカい。第一声からして、
「ウルトラマン、目を開け」
である。立場同格、しかも初対面の相手に対する言葉使いじゃないぞ。 だがウルトラマンはそんなゾフィに腹をたてることもなく普通に会話をしている。 よくできた性格なのか、死にかけてて怒る気力もないのか。 それとも他に理由があるのか?

ゾフィは、光の国公認世界記録の87万度の光線を放てるという。これがM87光線だ。M78星雲と間違えないように注意しよう。 余談だが、ジャミラは100万度の焔を吐くことができる。なんだ、地球人の方が凄いじゃないか。 …と、それはさておき、こんな世界記録保持者ならおそらくウルトラマンも名前くらいは知っているだろう。 戦闘能力は間違いなくトップレベル。こんな奴が相手では、多少デカい態度に出られても怒るわけにもいかない。後が恐いではないか。

そしてもうひとつ、ウルトラマンの立場の弱さがある。 前述の通りウルトラマンは宇宙警備隊の任務を放棄して地球にとどまっていた男だ。 いつバレるかとビクビクしていたら、よりによって世界記録保持者のタカピー男、ゾフィが来たではないか。 これでは偉そうな態度に出られても文句のひとつも言えない。

と、ここでゾフィがただのタカピー男ではないということに注目したい。 先ほど、ゾフィを宇宙警備隊でも有名な切れ者と書いた。有名だということは分かるが、切れ者というのは何故? 実はこのゾフィ初登場を見るだけでそれが分かってしまう。

まず、ゾフィはウルトラマンがゼットンにやられるとすぐに地球に現れている。 ゾフィがテレポートした様子はないから、あらかじめ地球の近くにいたに違いない。 なぜか? 先ほど書いた通り、ウルトラマンの失踪を知ったゾフィは地球でウルトラマンを発見したが放置しておいた。 そう考えないとウルトラマンを都合よく迎えに来られた理由がない。

そして、地球をモニターしていたゾフィはゼットンを引き連れ地球を襲いに来た宇宙船団を発見する。 それを見たゾフィは、ウルトラマンではこいつらには勝てないと即座に判断し、急遽地球に向かったのである。 おお、宇宙人に対する豊富な知識、的確な戦力分析、迅速な決断力。さすがだ。

かくして地球にやって来たゾフィだが、悲しいかな、ウルトラマンは既にやられた後だった。 しかしゾフィはそんなこともあろうかと命を持っていったのだ。 しかも、ウルトラマンが駄々をこねるのを見越してハヤタの分とふたつ持っていったという。 なんとウルトラマンは地球ではハヤタと一体化しているという情報までしっかりつかんでいるではないか。 更に、彼が「ウルトラマン」と呼ばれていることもしっかり知っている。 おお、優れた情報収集力、行動が速いのに冷静沈着、用意周到。すごいぞ。

見よ!ゾフィの大構想

しかしどうして逃げ出した仲間一人のためにここまで準備を進めていたんだろう? 実はそれが彼の構想につながる。 おそらく彼はかねてから、地球のような未開の惑星を襲う宇宙人や怪獣を倒すための組織を作りたいと思っていたに違いない。 そしてウルトラマンの一件を機に、彼は地球を舞台にその組織を思うがままに動かそうと考える。 そう、地球が他の星と外交関係がないために地球の法律では裁けない宇宙人どもを裁く、闇の処刑人軍団である。 おお、必殺シリーズみたい! しかし必殺シリーズよりたちが悪いのは、彼らは自分の勝手な判断で宇宙人や怪獣を殺戮する点だ。何様のつもりなんだろう。 確かに全ての場合について、地球側と利害は一致していたけど。

ここで、どうしてそれがゾフィの構想なのか、という疑問が出てくるかもしれない。 では考えてもみればいい。なぜウルトラ兄弟たちは次から次へとこんな辺境の星へとやってくるのか。 宇宙警備隊の受け持ち区域は少なくとも銀河系全域に渡るはず。こんな星一個のために主戦力を次々と送り込む理由が分からない。 それがゾフィの差し金とは考えられないだろうか?

なんとゾフィはいつの間にか宇宙警備隊隊長に就任している。どんな功績があったのか? 彼は同時期にウルトラ兄弟の長兄としての立場にも就いていることから、ウルトラ兄弟結成に関連していると考えるのが妥当だろう。 とすれば、ウルトラマンの一件で彼はウルトラ兄弟を結成し、それまでの功績も評価されて、ウルトラ兄弟をまとめるためにも隊長職に昇格になったと考えるのが自然ではなかろうか。 ならば、彼の意見なくして地球防衛の任務に就くことなど考えにくい。 彼はウルトラマンの地球での行動に関して綿密な調査を行なっていた。 ウルトラマンの地球での行動に大いに関心を持っていたことがミエミエなのだ。 こういう怪獣/宇宙人退治の仕事をしてみたいと思っていたに違いない。

しかし、実のところウルトラマンの一件だけではこうも早く自分の望みはかなえられなかっただろう。 彼が宇宙警備隊隊長・ウルトラ兄弟の長兄になるのを早める、地球でのもうひとつの事件を語らねばなるまい。

セブンが来る時!ゾフィの望みがかなう!

ウルトラマンが地球を去ってからしばらくして、恒点観測員340号が軌道図作成のために地球を訪れた。 …と、これでは何のことやら分からない。しかし、どうやら地図を作ったりするような仕事らしいことは分かる。 仮にもウルトラマンは宇宙警備隊隊員だったのに、彼はどうやら宇宙の地図を作る役所関係の仕事に従事しているようだ。なんだ、役人なのか。 その彼が、こともあろうにウルトラマンと同様に仕事を放棄して独断で地球防衛の任務に就く。 地球人は彼をウルトラセブンと呼んだ。

セブンはクール星人の地球侵略の野望を知って地球にとどまったという。 だったらその事件を解決したら本来の軌道図作成の任務に戻るべきなのに、彼は最後までそんな仕事をやろうとはしなかった。 なんだ、要するにサボりたかっただけじゃないのぉ?

まあ彼にとってみれば無理もないのかもしれない。 彼は仕事の都合上、宇宙の各地へ出張することが多いだろうし、そうなると至るところの宇宙人の情報を手に入れることになろう。 正義感に燃える彼は、色々なところで地球侵略に関する裏の噂を聞きつけて憤慨していたのかもしれない。

そして彼は戦闘に関してもかなりの実力の持ち主だ。 お役所仕事で宇宙の果てへ出張しまくるだけで人生を終わるのはいやだと思っていたに違いない。 どうして自分は宇宙警備隊に入らなかったのか。公費で宇宙中を旅できるからって、こんな仕事は面白くないやい。

更に、ひょっとしたら彼は最初はすぐに元の仕事に戻るつもりだったのかもしれないが、こともあろうにウルトラ警備隊に入ることになってしまった。 宇宙人や怪獣とドンパチできる、自分があこがれていた仕事ではないか。 うう、血が騒ぐ。地球での生活にも興味あったし。 それにアンヌも好みのタイプだぜ、へっへー。 …と、ふとした疑問だが、地球人に変わると地球人流の美的感覚になるのだろうか? 地球人の私はウルトラの母を美人とは思わないのだが、セブンの目から見てもアンヌは美人なのだろうか? まあここでは関係ないのでどうでもいいけど。

で、とどめに彼は驚愕の事実を知る。自分が「ウルトラセブン」と名付けられた背景には、「ウルトラマン」と呼ばれたもう一人の超人がいたということを。 よくよく話を聞いてみると、その正体はどうやらここいらで謎の失踪を遂げた宇宙警備隊隊員らしい。 さすがに宇宙に顔が広い340号、そんな話もいち早く耳に入れている。 そうなると罪の意識も軽くなる。前例があるんだから自分も地球防衛の任務についても別に構わないのではないか? 今回の軌道図作成なんか、どうせ余った税金を使い切るための余計な出張なんだし。 かくして彼は勝手に地球防衛を始めてしまう。

だが、鍛えぬかれた宇宙警備隊隊員と木っ端役人とでは大きな違いがある。 急激な生活環境の変化と連続する戦いからくるストレスには勝てず、彼は過労で倒れてしまう。 その時に初めて「セブン上司」なる者が彼に地球防衛をやめるように忠告する。 ほらほらおかしいよ。340号の居場所が分かってるんだったらもっと早くに帰還命令を出すはずじゃない? それをしない理由は明らか、ゾフィが役所に圧力をかけたのだ。 宇宙警備隊でその名も高いタカピーな金メダリストが相手では、役所も黙って従うほかあるまい。 そして恐らく職務怠慢により340号は解雇とされる処理がさっさと進められたに違いない。 すると「セブン上司」の言葉は、上司としての言葉ではなく、かつての上司としての個人的なねぎらいの言葉だったのか。

ゾフィにしてみれば、ウルトラマンを迎えに行った時は宇宙警備隊隊員としての建前から地球不干渉主義の立場を取ったけど、本音は違ったに違いない。 そうでもなきゃ、その後地球に何度も現れて怪獣と戦ったりしないって。 で、そこへ渡りに船。再び地球防衛の既成事実が生まれたのだ。 こうなると宇宙警備隊の司令官であるウルトラの父も真剣に地球防衛について考えるに違いない。してやったり。

ゾフィはさすがに今回は立場が違うからセブンに直接コンタクトを取るわけにはいかなかったけど、帰ってきた彼にすぐに会ったに違いないのだ。 なにしろゾフィの策略でセブンはプーになっている。そこで肩をたたいて、
「やあ君、いい体してるね。宇宙警備隊に入らないか?」
などと言っている姿が目に浮かぶようだ。 かくして下準備は出来た。細工はりゅうりゅう。

おそらく各星の自主性を重んじるのが宇宙警備隊の基本ポリシーなんだろうけど、ここでゾフィはプッシュする。 地球はまだ幼い、我々の手で守らなければならないのだ。地球防衛に主眼を置いたチームを編成しましょう。 この時点で、ゾフィはウルトラマンやウルトラセブンを始めとする数人の主力メンバーを集めていた。 後にウルトラ兄弟と呼ばれる面々である。

ここでゾフィがまたしても抜け目のないところを見せる。 よりによってウルトラの父と母の実子、タロウを自分の仲間に引き込んでいたのだ。 若造のタロウはゾフィの口車に乗って、地球防衛の希望に燃えていたことだろう。 こうなるとウルトラの父もそう正面きって反対は出来ないに違いない。 確かにやろうとしていることは余計なおせっかいで多少過激だが、特に頑固に反対する理由もない。 かくしてウルトラ兄弟が結成され、ゾフィは隊長職に昇格する。

ウルトラ兄弟最初の日!

こうしてゾフィは自らの夢を達成した。 正義の名の下に、悪どい宇宙人や怪獣をぶち殺すのだ。 ストレス解消にもいいぞう。 だが、本来のあてが外れて、彼自身はなかなか地球へ行くことはできなかった。 なぜなら、彼はウルトラ兄弟のリーダーになると同時に宇宙警備隊隊長になったからだ。 管理職は忙しい。その雑務の多さが半端ではないことは、あなたがサラリーマンならよく知っているだろう。

ここにウルトラの父のしたたかさを見ることができる。 ウルトラの父はゾフィのもくろみなんぞ先刻ご承知。 うまく仕掛けたな。よし、お前のやりたいことはやらせてやろう、ただしお前自身にはさせてやらないぞ。

確か、ゾフィが世界記録を出す前の記録保持者はウルトラの父だったと思う。 とすれば、二人の間には結構な確執があったのではなかろうか。 いや、ひょっとしてウルトラの父は、切れ者であるゾフィにかつての自分を見たのかもしれない。 対立することでゾフィを鍛えてやろうということかもしれない。

なるほど、そう来ますか、ウルトラの父。やられましたね。 そう言って苦笑いするゾフィが目に浮かんでくる。 かくしてゾフィには、退屈な会議に出席したり、しょーもない書類に承認印をつきまくる日々が訪れる。

だが、地球ではそろそろ怪獣たちが暴れはじめる兆候が見られていた。 さあ、今こそ出撃の時だ。 ゾフィ自身は忙しくて行けないとはいえ、ウルトラ兄弟結成以来初めての派遣である。 ここでうまくやらないと自分の査定にも影響する。 派遣隊員は慎重に選ばなければならない。 そこでゾフィが選んだのは、ジャックであった。

安全を期するなら実績のあるマンやセブンを派遣したいところだが、二人とも病み上がりである。 それに、せっかく新たにウルトラ兄弟を結成したのだからフレッシュマンを送り込みたいところだ。 だが、万が一にも地球人に敵と間違われないようにしなければ、地球人に攻撃されたなどとあっては目もあてられない。 そこで、ウルトラマンにそっくりなジャックを選んだのである。 おそらくゾフィは、
「地球人はお前をウルトラマンと呼ぶだろうけど、我慢してくれ」
とでも言い含めて行かせたに違いない。 実際彼はウルトラマンと呼ばれてしまった。地球人に宇宙人の細かい区別などできるものか。 まあ彼も恐らく初めて地球防衛を行なったウルトラマンを尊敬していただろうし、同一視されることはいやではなかったかもしれない。

そうして、初めて地球防衛のためにM78星雲人が来訪する。 そう、地球防衛のためにやってきたウルトラ兄弟は彼が最初なのである。 ちなみに彼がウルトラマンと呼ばれてしまったことで、ひょっとしてゾフィは自分たちをウルトラ兄弟と呼ぼうと思い付いたのかもしれない。 そして、残るメンバーのエースとタロウに「ウルトラマン」の名を冠するようにしたのかもしれない。 そこでセブンが
「俺だけ、ウルトラ"マン"セブンじゃないんだよなー」
とボソッとつぶやく様が思い浮かぶ。 まあセブンが仲間はずれになろうとも、細かいことだ、気にしない気にしない。

さて、ジャックは地球に来てみたものの、改めて地球での活動限界を思い知る。 やはり地球人の体を乗っ取る…じゃなくて借りなければ地球にとどまることはできない。 セブンのように地球人の姿になるだけでは、自分も過労で倒れてしまいそうだ。 と、そこへちょうど良く死人が現れる。なかなか勇気のある立派な青年だ。自分と気が合いそうではないか。

かくして郷英樹と合体したウルトラマンが誕生する。 だが、ジャックは最後になんと郷と合体したまま故郷に帰ってきてしまう。 次郎少年は郷を必要としていたのに。

これはなぜか? ウルトラマンの時と異なり、ジャックは郷を自ら殺したのではなく、郷の死はまあ自然死だ。 だから命を郷に与えるわけにはいかない規則のようなものがあるのではなかろうか。 あるいは、M78星雲がバット星人の攻撃を受けていたため、ゾフィも命を持って地球に向かうどころではなかったとか。 おそらくゾフィは嬉々としてバット星人をブチ殺しまくっていたに違いない。 あー、ストレスも吹き飛ぶぞぉ。

エースが来た!タロウはどこだ!

あっと言う間にバット星人との戦争も集結してしまった。ゾフィを敵に回すとは愚かなことよ。 そこで、ゾフィは新たに地球防衛要員を派遣することにした。 まだ地球に行ったことがないのはエースとタロウ。 そこでゾフィはエースを選ぶ。エースの実力は心もとないものではあったけれど。

タロウとしては不満たらたらだっただろうが、ゾフィは言葉巧みにだまして納得させたに違いない。 何しろタロウは元々ウルトラ兄弟結成のダシとして引き込んだ男だ。 確かに強いんだけど、まだまだ若造で結構わがままだし、ウルトラの母の方も過保護ときている。 これなら、多少実力に不安があっても素直なエースを送り込んだ方がいい。

こうしてエースが地球に来る。 ウルトラマンに見えないかもしれないエースを地球人に信頼させるため、わざわざゾフィたちが付き添って来たりして。 そして、今度は新たな試みがなされた。 死人でない地球人と一体化しようというのだ。しかも二人も使って。 この試みは、郷英樹の一件で賛否両論が巻き起こった結果だと思われる。 だから、いつでも分離できるように生きている地球人と合体してみたのだろう。

その試みは成功したかのように見えたが、思わぬアクシデントが起きた。 変身するための片割れが、実は宇宙人であり宇宙に帰ると言い出したのだ。 そこでやむを得ず、ひとりで変身できるように変身システムを変更する。 しかし地球人ひとりでは、M78星雲人の能力を受けきれるだけの器がなかったようだ。 だんだん彼はエースの意志の影響を受け、エースの意識と一体化してしまう。

地球人に正体がばれた時、彼は変身する前から、規則に従って宇宙に去ることを自らの意志で決めてしまう。 ここまで意識が融合してしまうともうどうしようもない。 幸いこの男には身寄りもないしということで、エースはこの男の心と体を乗っ取ったまま宇宙に帰ってしまう。 かくして地球人、北斗星司は謎の失踪を遂げる。彼は地球人の魂を持っていたのに。 やはり、どうせ分離できなくなるなら死人と合体した方が良さそうだ。

ウルトラの母とドラ息子が来た!

おそらくゾフィはエースにずっと地球にいてほしかったに違いない。 そのため兄弟が総力を挙げて、弱いエースをバックアップしていたではないか。 その理由はもちろん、タロウを地球に行かせたくなかったためだ。 しかしもう、タロウを地球に行かせないための理由がなくなった。 この頃、駄々をこねるタロウを見たウルトラの母が、ゾフィに口うるさくタロウを地球に行かせるように言っていたに違いない。 ちょうどZATの隊員がひとり死んだことだし、もはやタロウを行かせる以外に道はない。

こうしてタロウはZAT隊員の体を乗っ取って地球防衛の任務に就くことになったが、やはりウルトラの母は過保護だった。 一緒に地球に行ってタロウの側にベッタリ。ゾフィもやっとられんわと思ったことだろう。 しかもウルトラの母の発言力は強い。ウルトラの母に
「まあ、私のタロウがやられてしまったわ。ゾフィ、タロウを助けてきてちょうだい」
などと言われては、エースを何度も助けたツケが回っていて未承認の書類が山とたまっていても行かないわけにはいかない。 やってらんねーなーと思いつつ地球に向かい、なんと自分もバードンとかいう鳥にやられてしまう。 この情けなさはなんとしたことか。おそらくゾフィはこの頃、エースのサポートとデスクワークに疲れきっていたに違いない。 M78星雲にいながら、彼は過労で倒れる寸前だったのだ。にわか管理職はつらいよ。

そうこうしている内になんとタロウが、地球に残るけどもう地球は守らないとわがままを言い出す。 そしてウルトラの母は勝手にそれを承認し、タロウを地球に残して別れる。 タロウも大人になったのね、もうあの子に私は必要ないのかしら? しかしゾフィに承諾も得ず、いきなり勝手にそんなことを決められてはたまったものではない。 地球はまだまだ狙われているのだ。

かくして急遽、後任が選ばれる。 そこで、親族に責任を取ってもらおうということでタロウのいとこのセブンが抜擢される。 まだ体調が完全じゃないし、地球に長くとどまればまた過労で倒れるかもしんないのに。 そして案の定、彼は地球でボコボコにされる。 幸い獅子座L77星から来た男が地球を守ることになったものの、こんなことならせめて元気なジャックが行った方が良かったのでは…。 おわびにジャックはセブンに新しいカプセル怪獣を届けようとするが、自分もボコボコにされる。 もはや無敵のウルトラ兄弟伝説は幕を閉じたのだ。 地球を襲う怪獣たちをボコボコにしてやろうというウルトラ兄弟計画は、世の中そんなに甘くないという教訓を得て頓挫することになる。

その頃開かれたであろう、ウルトラ兄弟を地球から完全に撤退させることを決定する会議で、ゾフィは居眠りしていたかもしれない。 自分の夢を実現しようとして疲れ果てたゾフィ。 夢は夢のままで置いておいた方がいい場合がある。 居眠りしていたゾフィは、新しい夢を見ていただろうか?

P.S.
バット星人はゾフィ・初代ウルトラマン・ウルトラセブンを裏切り者のウルトラ兄弟と呼んでいた。 な、何かこの3人がバット星人を裏切るような真似をしたのか?

そもそもバット星人に信頼されていなければ裏切りようもないはずだが、信頼されていたのか? 地球にいたジャックはともかく、エースとタロウも入っていないのが気になる。 ジャックが地球にいる間にゾフィが、未熟なエースとわがままなタロウを外して3人だけでバット星人にひどいことをしたということか。

何だろうなあ、気になるなあ。
ひょっとしてそれがバット星人との大戦争の原因では?
うーむ、気になるなあ。


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