【 幕間狂言 】



 立ち上る湯気。
できたてのおかゆは、キミの手作り。
愛情がいっぱいこもってるから、きっと身体だけじゃなく、
心も暖めてくれるんだろうね。
 銀色のスプーンに半分くらいすくって、
それでも白い粒達はやけどするぐらいの熱を持ってる。
だからキミは、そのピンク色の柔らかなくちびるを近づけて、
「ふ〜、ふ〜」って、してくれた。
 ああ、もう、その様子を見ているだけで、なんだか熱が上がりそうだよ。
「はい、あ〜ん」
 甘い声でキミが言う。
ああ、そんな優しい声を出さないで。頬が紅潮してしまう。
 熱のせいだと、キミは思ってくれるだろうか?
「どうしたの? 早く、あ〜ん……して?」
「……でも」
「ふたりっきりなんだし、照れることないよ」
「……なんで」
「ん?」
「なんでオドレが、んなことしてんねん、トンガリ!!
 グ、ガハ、ゴホ、ゴホゴホゴホ!!!」


 突然叫んだウルフウッドは、風邪の為にせき込んだ。熱のためか、怒りのためか、顔が異常に赤くなっている。
「しょうがないっしょ!? 保険屋さん達、仕事に行っちゃったんだからさ」
「だからって、気色悪いことすな! なんか勘違いしたナレーションが頭ん中でかかってるし、ワイの熱が上がってしもうたら、どないしてくれんね……あ、あかん」
 クラッとめまいを起こし、ウルフウッドの起こしかけた身体が、再びベッドに沈んだ。
「もう、病人のくせに怒鳴ったりするからだよ」
 ヴァッシュが呆れ顔でいう。その上、勝手におかゆを頬張っていたりして。
「オンドレ、なに食うてんねん」
「なにって、野菜粥。ミリィは料理が上手だね」
「それは、あの娘がワイのために作ってくれたんやど!? 勝手食うな、ボケ」
「だって、キミ、あ〜ん・・・ってしてくんないんだもん。冷めたらもったいないだろ?」
 ヘラヘラと笑いながら、ヴァッシュはおいしいおかゆをもう一口。
「そんな恥ずかしいことできるか!……って、だからお前が食うな。はよ、こっちよこさんかい」
「もう、て・れ・や・さ・ん……だね」
「トンガリぃ……。ワイの風邪が治ったら、絶対いてこましたる!」


 愛情いっぱいの温かなおかゆ。
 ああ、何ものにも勝るご馳走だね。



教訓:病人をからかってはいけません。


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