ストーリー自体は非常に単純。
力を持つ悪者の弾圧に苦しめられる善人たちがいて、その中の一人が死に際に、
「この世には晴らせぬ怨みをお金で晴らしてくれる仕事人という人が…」
などと言い残し…って違うってば。
いや、しかし、はっきり言って典型的な勧善懲悪時代劇のフォーマットそのまんま。 仕事人や桃太郎侍や暴れん坊将軍の代わりに大魔神が出て来ると思いなせえ。 最後にはその圧倒的な力で悪党を倒してくれる。これは3部作全てに共通する。
しかしその圧倒的な力ってえのが、本当にただの力。 ただ歩いているだけで、それであらゆるものを蹴散らしてしまう。 どんな小細工も大魔神の歩みを妨げることはできない。ピンチらしいピンチも全く無し。
こういった、あまりにもストレートすぎる力強さとお約束の展開は非常に心地よい。 やっぱ勧善懲悪時代劇ってのはこうでなくっちゃ。
大魔神は普段はハニワみたいな顔をした武神像の姿で、いざ甦る時には腕を上げ、顔の前を横切らせる。 すると憤怒の形相に変わり、悪を滅ぼすべく歩き始めるのだ。 これはあまりにも有名な変身シーンで、知ってる人は誰でも一度はマネしたことがあると思う。 私も、テレビなんかでモノマネを何度か見たことある。
とにかく、大魔神という名前を聞いただけで、この映画を全く知らない人でもそれがどんなものかなんとなく想像はできてしまうだろう。 そういうストレートなネーミング、ストレートなキャラクター、ストレートなストーリー。 この映画の名作たる所以はそんなところにあるのではないだろうか。
彼らは魔神を封じた武神像の近くに隠れ住み、そして十年の月日が流れた。 領地では左馬之助が領民を苦しめ、暴虐の限りを尽くしていた。 それを知った忠文は左馬之助を討とうとするが小源太は押し留め、まずは様子を探りに自分が里に下りる。 が、小源太は正体を見破られ捕らえられてしまう。
そのことを知った忠文はひそかに山を下り、小源太を助けようとする。 が、忠文は軍十郎の罠にかかり、自らも捕らえられてしまう。
小源太の叔母である巫女の信夫は神の祟りがあると言って左馬之助を諌めようとするが、逆に無礼討ちにされる。 そして左馬之助は軍十郎に命じて山の武神像を打ち壊そうとする。 その様子を見に来た小笹は軍十郎に捕まってしまい、その目の前で像が壊されようとする。 が、像の額に杭が打ち込まれた時、像の額から血が流れ、神風が吹き荒れ雷鳴が轟いた。 そして軍十郎達は地割れに呑まれて全滅する。
ふと小笹が気付くと辺りは何事も無かったかのように穏やかになっていた。 が、時は既に、忠文と小源太が磔にされる朝になろうとしていた。 そこで小笹は二人をお助け下さいと必死に武神像に祈り、ついには自らの身を捧げようとする。 と、その時、武神像が歩き始めた。穏やかな顔が憤怒の形相に変わる。
磔の場では、忠文を助けようとした花房の残党も皆殺しにされ、ついに忠文と小源太に槍が突き立てられようとする。 だがその時、突如暗雲がたち込め風が吹き、一条の光が舞い下りてきた。 その光は魔神となった。
魔神は兵を蹴散らし、左馬之助を追う。 砦の壁も魔神を阻むことはできず、鉄の鎖でからめとっても岩をぶつけてもその歩みは止まらない。 周りを炎で囲んでも、魔神の神通力はその炎を腕の一振りで消し去ってしまう。
そしてついに左馬之助は魔神に捕らえられる。 魔神は左馬之助を磔台に押し付け、額に打ち込まれていた杭を抜いて左馬之助の心の臓に打ち込んだ。
だが、魔神の怒りはまだおさまらない。領民たちが逃げ惑う中、里へと下りようとする。 忠文が止めようとするがそれもかなわず、次いで子供の竹坊が止めようとする。 が、魔神は竹坊を踏み潰して先に進もうとする。 小笹は思わずその身を投げ出して竹坊を守る。 と、魔神の動きが止まった。
小笹は決死の思いで魔神に怒りを鎮めるように頼む。 そして小笹の清い涙が魔神の足に落ちた時、魔神は再び光と化して山に戻る。 後に残された武神像は崩れさり、土くれとなるのだった。
製作 | ... | 永田雅一 |
企画 | ... | 奥田久司 |
脚本 | ... | 吉田哲郎 |
音楽 | ... | 伊福部昭 |
監督 | ... | 安田公義 |
特撮監督 | ... | 黒田義之 |
花房小笹 | ... | 高田美和 |
花房忠文 | ... | 青山良彦 |
猿丸小源太 | ... | 藤巻潤 |
大舘左馬之助 | ... | 五味龍太郎 |
花房忠清 | ... | 島田竜三 |
犬上軍十郎 | ... | 遠藤辰雄 |
梶浦有助 | ... | 杉山昌三九 |
元木半蔵 | ... | 橋本力 |
中馬逸平 | ... | 伊達三郎 |
信夫 | ... | 月宮於登女 |
花房悠乃 | ... | 香山恵子 |
吾作 | ... | 尾上栄五郎 |
茂助 | ... | 木村玄 |
竹坊 | ... | 出口静宏 |
小郡主水 | ... | 伴勇太郎 |
原田孫十郎 | ... | 黒木英男 |