だが紅博士は、密かに真紅のスーパーロボット・レッドバロンを完成させていた。 博士はSSIの隊員である弟・健の元に現れ、彼にレッドバロンを託す。 しかしそれはレッドバロンをも奪おうとする鉄面党の企みによるものだった。 だが紅博士はレッドバロンを鉄面党に渡すことを拒否し、健の目の前で爆死させられてしまう。
紅健は悲しみを乗り越え、兄の形見のレッドバロンを駆ってSSIの仲間と共に、鉄面党が繰り出して来るロボットと戦うのだった。
…と言うと、誰でもある作品を思い浮かべるだろう。 本作より半年以上早く放映が開始されたあの大ヒットアニメ、「マジンガーZ」だ。 ともすれば本作は、マジンガー人気に便乗して作られたものと思われがちである。
が、実際のところ本作の企画は「マジンガーZ」が放映されるより前に始められており、ネタをパクったものではない。 それどころか企画の開始時期そのものが同時期だったかもしれない。 誰でも同じようなことは考えるものだ。
しかし結果として放映開始までが長すぎた本作はマジンガーの後追い作品になってしまった。 そのためマジンガーの影響を受けてしまった面もある。 が、本作の魅力は実写版マジンガーなどという言葉では語りきれないものがある。
まずその作品フォーマットだが、なんと1回で2度おいしいものとなっている。 何かと言うと、巨大ロボットの重厚感溢れる迫力ある戦いと、人間達のスピーディーなアクションが必ず毎回両方とも見られるのである。 と言うのは、鉄面党はメカロボという等身大のロボットを放ってSSIの邪魔をしたりするのだが、そのメカロボをSSIの面々が素手でなぎ倒すのだ。 そういう仮面ライダーを思わせるアクションに続いて、レッドバロンが登場すればウルトラマン風の大バトルに早変わり。 言わば両作品のおいしいとこ取り。なかなかニクいではないか。
特にSSIの面々の内、特筆すべきは紅一点の松原真理を演じる牧れい。 SSIの面々は皆そうなのだが、彼女も同じくほとんどスタント無しで激しいアクションをこなしている。 この時期の特撮アクションヒロインというと「キカイダー01」のビジンダー・マリこと志保美悦子が有名だが、彼女と互角以上の動きを魅せてくれるのだ。 もちろん(?)コスチュームも同じくミニスカートで、何のためらいも無くキックも放ってくれる。 ちなみにマリのは黒だけど真理のは白だ。…って何が?(笑)
そして肝心のレッドバロン。 ロボットならではの硬質感を実現するため、スーツの素材にはグラスファイバーを使用。 その製作費用、なんと200万円。 それだけ気合を入れた甲斐があって、非常に質感あふれる美しいものに仕上がっている。 もっともスーツが固いせいでアクションの方はある意味不向きで、レッドバロンの動きがなんだかモタモタしているような気がする。 まあそれがロボットらしい動きをリアルに見せているのだが。
また、ドラマの方は結構ハード。 なんだかトホホなドラマも多い特撮ものの中にあって、なかなか説得力あふれたドラマが展開される。 まあ巨大ロボットを暴れさせるというのは侵略手段としてはそれだけで結構説得力があるものだが、それだけでなく鉄面党の作戦も色々と知恵をしぼったものが多いのだ。 そのため、緊迫した雰囲気の話が多い。
もっとも、続く宇宙鉄面党編になるとなんとなくトホホっぽくなってしまう。 なぜか特撮ものはテコ入れするとトホホになってしまうものなのだ。 しかし全体的には完成度は高い。
物語は第26話までの鉄面党との戦いと、その背後にいた宇宙鉄面党との戦いを描く最終回までの2部構成となっているが、特に各部のラストが結構衝撃的。 まず鉄面党との最後の戦いで、SSIは2名の仲間を失う。 なんとそれが、隊長とチーム内のギャグメーカーという、およそ死とは無縁そうな二人だというんだから凄い。 この二人の最期のシーンは意表を突かれるためなかなか衝撃的で、戦いがハードであることを改めて思い知らせてくれる。
更に最終回。 ラスト近くまで、なんとも御都合主義的な展開で進み強引にめでたしめでたしになるといった雰囲気だったのだが、ラストで雰囲気は一変。 機械化社会への警鐘を残し、物語は重々しく幕を閉じる。 それまでの雰囲気が雰囲気だけに、ラストシーンがずっしりと心に残る。
ちなみに本作の脚本を書いたのは、上原正三、藤川桂介、伊上勝といった大御所がメイン。 ツボを押さえているのはさすがといった感じである。
制作した宣弘社はそれまで「シルバー仮面」に「アイアンキング」と、なんともクセのある作品を送り出してきていた。 (しかし一番有名な作品は誰がどう見ても「月光仮面」である) そして今回は正統派の巨大ロボットものを作り上げたわけだが、やはり単純にめでたいお子様作品にはならなかったのだ。
といった具合に、本作品は史上初の有人ロボットもの特撮作品であるが、それだけのものではない。 確かに画面からはマジンガーの魅力を特撮で、といった意向が見え隠れするものの、東映や円谷などの作品とは異なる独特のテイストを持つ傑作なのである。
操縦席は目の部分にある。 そして操縦席で爆発等が起きても、シールドを張って致命的破壊から守ることができる優れもの。 動力は原子力のため燃料は不要だが、潤滑油として特殊オイルB・R70が必要である。 そして最初に登録された指紋と声紋の持ち主しか動かすことは出来ない。それが紅健だったため、彼専用のロボットとなった。
ん、声紋? そう、レッドバロンは操縦者が声を出さないと動かないのである。 操縦中に技の名前を叫ぶのは伊達ではない。 さすがにこれを作ったのはミラーマンだけあって、ヒーローのロマンを理解してくれてるぜ。 って、だからミラーマンじゃないっての。
レッドバロンは通信用ブレスレットで
「レッドバロン、出動ーっ!」
と命令することで発進し、健の元に飛んでくる。もちろん健の声でないと発進しない。
そして健が乗り込んだ後、まずは
「ファイトレバー、オン!」
で行動を開始する。なんとレバーを1本動かすだけで、敵に向かっていくのである。
このことから、操縦方法はかなりお手軽であることが分かる。
武器は、まず強烈なのがバロンパンチ。 はっきり言ってロケットパンチなのだが、その画面エフェクトが凄い。 画面奥から手前に向かって飛んできて、その際に画面スーパーの「バロンパンチ」という文字を打ち砕くのだ。 これを超えるインパクトのある武器はないぞ。
更に、胸からはバロンミサイル。ノドからはバロンビーム。(な、なぜノドなんだ!?) また、耳からは必殺武器、1億ボルトの高圧電流エレクトリッガーを発射する。
更にレッドバロンは作中で次々と強化されていった。 まずは飛行中でも使えるアームミサイル。 なんと握り拳が手首からパックリと二つに割れて飛び出すミサイルだ。 全ての指が真っ二つになるのだが、指がバラバラになって落ちたりはしない。 こ、この手はどういう構造になってるんだ?
また、宇宙鉄面党との戦いに備えて更なる強化がなされた。 宇宙飛行も可能な真紅の翼、スペースウィングス。(ジェットスクランダーなどと呼ばないように) 両肩に装着し、一撃で敵を撃破する強力ミサイル、ドリルアロー。
そしてそれだけにとどまらず、レッドバロンはもっともっと強化されていった。 レッドバロンは無敵のスーパーロボットなのだ!
また忍者と称されるだけあって、彼らの仕事の内容はよく分からない。 鉄面党が活動を開始してからは鉄面党と戦い続けているが、本来の仕事は何なのか謎である。 が、警部が見ている前で堂々と拳銃を撃ったりしていることから、政府公認の秘密の特務機関であろうことは推察できる。 そして宇宙鉄面党の出現に伴い、ついに彼らは地球防衛隊の傘下に入り、隠れみのの仕事をやめてSSIの活動に専念することになる。
使用する車両は普通のジープとバイクに加え、専用車のアイアンホークがある。 さすがSSIの車で、なんだかタクシーみたいなカラーリングなので街を走っていてもさほど目立たない。 が、れっきとした武装車である。 それ以外にも、バズーカ砲みたいな物騒な武器も使う。
彼らの実力が半端ではないのも道理で、それは彼らの訓練ぶりを見ればよく分かる。 なんと地雷地帯を車やバイクで突破したり、レッドバロンが本気で攻撃してくる中を突破したりするのである。 レッドバロンがマジでエレクトリッガーを撃ってくるんだぞ。威嚇じゃなくてちゃんと狙って撃っているのだ。お、恐ろしい。 こんな調子で訓練してたら、メカロボごとき素手で倒せる超人になるわ、そりゃ。