暗闇仕留人
放映
昭和49年6月29日〜12月28日、全27回
朝日放送・TBS系
毎週土曜22時〜23時
概要
黒船来航によって不安が満ちる世の中、悪党がまたのさばるようになっていた。
そんな中で主水は偶然、糸井貢と大吉という凄腕の殺し屋と出会う。
そして半次・おきんと再会したのをきっかけに、主水は貢と大吉を仲間にして再び殺しの世界に身を投じる決意を固めるのだった。
解説
中村主水再登場。とは言ってもまだ中村主水シリーズが確定したわけではなく、単に仕置人で人気のあった主水を再登場させただけではないかと思われる。
なにしろ舞台は幕末、黒船来航で不安渦巻く時代。シリーズを続けるには後がない。
おまけに最終回で、主水は殺しに生きがいを見いだすことはできないと悟ってしまう。
しかし主水は強引に後のシリーズにもレギュラー化し、開き直った(?)スタッフによって時代を無視した活躍を見せることになるのだ。
で、今作はと言うと、「必殺」の名がつかない唯一の主水シリーズであり、そのせいかLDなどにもなっていない不遇の作品。
とは言っても内容がお粗末かと言うと決してそうではなく、むしろ全シリーズ中でトップレベルに位置する名作だと思う。
それは何よりも名キャラクター、糸井貢の存在があるからである。
彼は後の必殺シリーズにも多大な影響を与えた人物なのだ。
糸井貢は蘭学を学んだインテリであり、殺しにも意義を求めてしまう。
自分たちが殺しをすることで世の中がよくなったか?
人の一側面だけを捉えて悪党だからといって殺してしまっていいのか?
自分たちが殺した者にも家族がいるはずだ、殺してしまえば残された家族は悲しむ、それでいいのか?
単なるプロの殺し屋であれば、殺しはビジネスである。何も意義について悩む必要はない。
だが貢は悩んだ。プロに徹しきれないために。
そしてそれは同時に、殺しに自分の存在意義を見出していた主水をも脅かすものとなる。
結局、貢は死んだ。
悪党を殺すことは良いことなのか?
この問いに答を出すことができずに。
考えてはならないことを考えてしまったために。
そして貢の死によって主水もまた悟る。
これまで自分を極悪党と言いつつ、殺しを続けてきた主水。
だがその心の奥底では、悪党を殺すことに意味があると思い続けてきたのである。
だからこそ、かつては正義に燃えていた男が殺しに身を投じることができたのだ。
しかしその思いが幻想に過ぎないことを思い知らされてしまった。
貢の死、それは自分の未来を暗示しているものである。
自分がこのままの思いで殺しを続けていけば、いつか貢のように悩む時が来る。
そしてその悩みに答を出すことができないことも主水は知っている。
だから貢が死んだ時、主水は殺しをやめる決意を固めたのだ。
自分の夢が終わったことを知ったが故に。
登場人物
- 中村主水(藤田まこと)
- 半次やおきんとの再会をきっかけに、再び殺しに夢を見ようとする。
わざわざ貢と大吉をスカウトして殺しを再開するが、貢の死によって自分の夢が幻想に過ぎないことを思い知らされ、殺しをやめる決意をする。
- 糸井貢(石坂浩二)
- 高野長英をかくまった罪で追われる蘭学者。
彼の妻、あやはりつの妹であり、すなわち貢は主水の義弟。
だがその最愛の妻あやは第17話で仕上屋との抗争に巻き込まれ死亡する。
最初は芝居小屋で三味線をひいていたが、妻の死後は居場所も定まらず何で金を稼いでいるか不明。(笑)
インテリであるが故に殺しの意義について悩み、最後にはその矛盾に気付いたために命を落としてしまう。
得物は刃仕込の三味線のバチ。これで相手の喉を切り裂く。
第18話から針を仕込んだ矢立てで急所を突くように変わる。
- 大吉(近藤洋介)
- 石屋を営んでいる。実は村雨の大吉として知られる殺し屋。
妙心尼の情夫であり、いわば大吉も主水の義弟。
殺し技は心臓つぶし。素手で心臓を握りつぶしてしまう。
なんと心臓マッサージで死人を生き返らせるなんてこともやってのける。
最終回で妙心尼を置いて旅に出る。
- 半次(津坂匡章)
- 例によって下調べ係。
第14話で義母の仇を自らの手で討つなどいいところを見せるが、劇中何の説明もなく登場しなくなり、そのまま最終回を迎える。
おーい半公、どこ行っちゃったのぉ?
- おきん(野川由美子)
- 例によって下調べ係。最終回で旅に出る。
- 糸井あや(木村夏江)
- 病弱な貢の妻。りつの妹。第17話で仕上屋に殺される。
- 妙心尼(三島ゆり子)
- りつの妹、たえ。大吉の愛人。
仏に仕える身となっているが、毎回「なりませぬ」と言いつつ大吉を求める。
「新必殺仕置人」第14話にもゲスト出演し、相変わらず「なりませぬ」と言いつつ男を求めていた。
- 中村せん(菅井きん)
-
- 中村りつ(白木万里)
-
全話リスト
第1話と最終話のみあらすじを記載。
必殺のメインページに戻る