冥王計画ゼオライマー

昭和63年〜平成2年、OVA全4巻
各30分

概要

鉄甲龍…ハウ・ドラゴンの異名を持つ謎の秘密結社。 彼らは最強の八卦ロボを用いて世界を制覇しようとしていた。 だが15年前、一人の男のせいで彼らは地に潜むことを余儀なくされた。 しかし今…、彼らが動き出す時が来たのだ。

平凡な少年、秋津マサトは突如謎の男達に監禁され、自分がロボットのパイロットであることを告げられる。 そう、15年前に鉄甲龍から奪い出された、八卦ロボの中でも最強を誇る、天のゼオライマー。 彼こそはそのパイロットとして宿命づけられた者なのだ。謎の美少女・美久と共に、彼は否応なしに鉄甲龍の八卦ロボと戦うこととなる。

しかしその恐怖の戦いのさなか、彼の顔が不敵に歪む。 何が起きたのか、臆病なはずの彼は嬉々として八卦ロボを血祭りに上げていくのだ。

果たしてマサトに何が起きたのか、鉄甲龍との戦いはどうなっていくのか。 やがて事態は、思いがけない方向に向かって突き進んでいく…。

解説

監督・平野俊弘、キャラクターデザイン・菊池通隆、脚本・会川昇といった面々が放ったスーパーロボットアニメ。 原作はちみもりを。「レモンピープル」での連載だが、本作ではえっちな設定をカットすることでロボットアニメとしての明確な方向性を持った作品に仕上がった。

また音楽は川村栄二。実にかっこいい音楽…なのだが、あのぉ。一部の曲で、同時期の「仮面ライダーBLACK RX」を思わせるものがあるんですけどぉ。 特撮とアニメの違いはあるとは言え、同時期に同じくヒーローっぽい作品を手がけると曲も似てしまうのだろうか。それともわざと? ううむ。

ところで平野監督のロボットアニメというと同時期の「破邪大星ダンガイオー」なんかを思いつくが、それとはちょっと毛色が変わったものになっている。

まずはダンガイオーなんかと似たようなところをとらえてみると、やっぱりかっこいい! 特に本作では、とにかくロボットの巨大感をこれでもかこれでもかと見せまくる演出が冴える。 第2話なんか特に顕著なのだが、市街地の中でのロボット同士の戦い。逃げ惑う人々、その視点からアオリでロボットをとらえて建物とのコントラストで巨大さを魅せたりする。 その他もろもろ、とにかくかっこよく見せようという気合に満ちている。 かっこいいロボットバトルを見たいという人にはお薦めだ。

そしてドラマの方はどうか。 気の弱い主人公のマサトの前に立ちはだかる鉄甲龍の八卦ロボのパイロット達は、まさしくこういう熱血ロボットバトルにふさわしく、悪の美学に彩られた信念に生きる無敵の強者たち。 心身ともに鍛えぬかれた彼らと戦う気弱なマサトは、逆に彼らとの戦いから戦うことの意義を掴み取っていく。 …なーんて展開になりそうなものだが、実際は全然違う。そこらのロボットものとは異なる、かなり異色な内容になっているのだ。

八卦ロボのパイロット達は、揃いも揃って何か心に傷を持つ連中ばかり。 それ故に苦悩し、そのせいで戦いに負けてしまうこともある。 対するマサト、なぜかゼオライマーに乗ると性格が豹変して残忍になり、何のためらいもなく八卦ロボを倒していく。 …って、ちょっと待て。主人公と敵が完全に逆だぞ、おい。なんだそりゃ。

実はそれには理由がある。ストーリーが進行していくと、そういった事情の全ての謎が明らかになるのだが、これがまたなんとも非常に壮絶な展開を見せる。

戦うロボットアニメには、別にロボットアニメに限らんけど、敵にも味方にもそれぞれの正義がある。 ガンダムのようないわゆるリアルロボットを持ち出さなくても、昔の勧善懲悪のスーパーロボットものでも同じことだ。 どんな悪の親玉でも、彼らなりの正義があった。他人のことなど考えない自分勝手なものであっても彼らなりの理想があって、その実現を目指して戦いを繰り広げていたのだ。 それこそが、悪という名の正義だったのだ。

が、この作品には正義がない。悪という名の正義すらない。 ストーリーが進むと分かるのだが、マサトにも鉄甲龍にも、全く正義はなかったのだ。 彼らは皆ひとつの運命にもてあそばれただけの哀れな存在。 正義だと思っていたもの、自分達の理想だと思っていたもの、それら全てが自分のものではなく、ある意志が見せた幻。

この作品のラスト、なんだか途中で打ち切りを食らったかのような唐突さとあっけなさを感じさせるが、実のところは唐突でもあっけなくもない。 それまでの自分達の行動にどこにも正義がなかったから、彼らは最後に自分達の運命に対して精一杯の抵抗を示し、それで自分達の正義を貫いたのだ。 あれが彼らの取るべき最良の手段だった。だから、マサトも幽羅帝も最後は穏やかな顔だったのだ。

とか理由を付けつつ、やっぱりラストに不満がある人もいるだろう。 他にも、わずか4話で7体ものロボットを倒すのはあわただしいとか、更にそれだけの数のパイロットのドラマを描くにはいくらなんでも詰め込み過ぎとか、なんだか主人公マサトの描写が薄っぺらいとか、荒削りな部分はいくらでもある。 しかしまあ、行儀良くまとめるよりはクセがあってもそのままパワーで押し切るのがOVAらしいと言えばそうだし、かっこいいから何でもいいじゃん!…というわけにはいかない?やっぱ。

登場人物

ナレーションは政宗一成。
秋津マサト(関俊彦)
最強の八卦ロボ、天のゼオライマーのパイロット。平凡に育った少年だったが、実は日本政府の管理下で監視されながら育ってきた。 それはゼオライマーのパイロットとなるべく造られた試験管ベビーだからである。ただしなぜかゼオライマーに乗ると、途端に残忍な性格に変わってしまう。 彼の出生、彼の性格豹変、それら全ての謎が、15年前に鉄甲龍からゼオライマーを奪い日本政府に逃げてきた、木原マサキへとつながっていく。
氷室美久(本多智恵子)
ゼオライマーのサブパイロット。清楚な少女ではあるが、凄まじい蹴りを脇腹に受けても微動だにしない、異常な強さも持ち合わせている。 そんな彼女の体の秘密、そしてゼオライマーだけが二人のパイロットを必要とする理由、それらもまた、木原マサキだけが知っている。
沖功(田中秀幸)
富士の樹海の地下にある秘密基地、ラストガーディアンの司令。ゼオライマーはここに隠されており、彼がマサトを連れて来させた張本人。 そして…木原マサキを殺した張本人でもある。
幽羅帝(荘真由美)
鉄甲龍の若き女皇帝。元々は八卦衆の一員で、天のゼオライマーのパイロットになるはずだった。 木原マサキがゼオライマーを奪い逃走したことで、彼女にとっても全てが狂ってしまった。 耐爬とは相思相愛の間柄ではあるが、皇帝としての立場と自分の想いとの板ばさみになって苦悩する。
耐爬(鈴置洋孝)
八卦ロボ、風のランスターのパイロット。幽羅帝の想いに報いるためには自らが八卦衆最強の男であらねばならぬとしてゼオライマーに戦いを挑む。 第1話でゼオライマーのメイオウ攻撃の前に消え去る。
シ・アエン(佐久間レイ)
八卦ロボ、火のブライストのパイロット。タウとは双子の姉妹で、妹が自分に敵意を抱いていることに心を痛める。 第2話でゼオライマーのメイオウ攻撃の前に消え去る。
シ・タウ(佐々木優子)
八卦ロボ、水のガロウィンのパイロット。姉と同じ顔を持ち、姉の引き立て役となっていることにコンプレックスを持ち、独走する傾向がある。 第2話でゼオライマーのメイオウ攻撃の前に消え去る。
葎(速水奨)
八卦ロボ、月のローズセラヴィーのパイロット。彼はいつも仮面をかぶっているが、その下には女の顔があり、それが彼のコンプレックスとなっている。 第3話でゼオライマーのメイオウ攻撃の前に消え去る。
ロクフェル(勝生真沙子)
八卦ロボ、地のディノディロスのパイロット。利用されているだけと知りながら、塞臥への愛に生きる。 第4話でゼオライマーのメイオウ攻撃の前に消え去る。
祇鎗(玄田哲章)
八卦ロボ、山のバーストンのパイロット。ロクフェルへの愛を密かに胸に抱いている。 第4話でゼオライマーのメイオウ攻撃の前に消え去る。
塞臥(塩沢兼人)
八卦ロボ、雷のオムザックのパイロット。内に野心を秘めた、八卦衆の中でも異端の男。 第4話でゼオライマーのメイオウ攻撃の前に消え去る。
ルラーン(辻村真人)
鉄甲龍の科学者。八卦ロボを造り出し、かつて木原マサキと共に世界制覇の野望に燃えていたが、マサキの裏切りと共に全ては水の泡と消えた。

登場ロボット

天のゼオライマー
最強の八卦ロボ。無限のエネルギーを供給する次元連結システムがその強さの秘密。必殺技は全ての原子を分解するメイオウ攻撃。
風のランスター
突風ボーンフーン、かまいたちブレイウェイン、竜巻で敵の動きを封じるデッドロンフーンなどの武器を持つ。
火のブライスト
ナパーム弾のフレアランチャー、ガロウィンとの連携技マグラッシュ、またガロウィンとの強力な合体技トゥインフレアなどの武器を持つ。
水のガロウィン
ブライストとの連携が前提となっており、敵の動きを封じるガロウィンブリザードなどの補助的な武装しか持っていない。
月のローズセラヴィー
指のビームで敵を斬るルナフラッシュ、強力な砲撃Jカイザーなどの武器を持つ。その分エネルギー消費は激しいが、小型衛星を通じてエネルギーをチャージする能力も持つ。
地のディノディロス
マグマ層を活性化させる能力を持つ。対ロボット戦用ではなく、破壊工作用のロボット。
山のバーストン
全身ミサイルの塊で、核ミサイルまで持っている。
雷のオムザック
最後に完成した八卦ロボ。メイオウ攻撃に匹敵するとされる、原子破砕砲プロトンサンダーを放つ。

ストーリー

詳細はいずれまた。
プロジェクトI 決別
プロジェクトII 疑惑
プロジェクトIII  覚醒
プロジェクトIV 終焉

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