変身前のライダーを探れ!

色々な協力者がいるとは言え、基本的にはたった一人で悪の組織と戦う仮面ライダー。 ああ、君たちのおかげで僕らは幸せに毎日を暮らすことができるのだ、ありがとう。

ところが、無敵の改造人間である彼らも普段は人間として生活している。 彼らが自分の正体を明かしてくれない限り、僕らは彼らと道ですれ違っても気付くことなく、お礼を言うこともできないのだ。 ひょっとしたら、食堂で僕の隣でトンカツ定食を食べているのがライダーかもしれない。 彼らも普段は僕らと同じように、ご飯を食べて寝ているのだなあ、なんか不思議な感じがする。

ん?ちょっと待てよ。 隣のおっさんはトンカツ定食を食べた後、当たり前だが金を払って出て行くよな。 ライダーもトンカツ定食を食べたら金を払うよなあ。 その金、どこから出てきたんだろ?

そもそも、給料の良さそうな怪獣やっつけ隊に所属しているウルトラシリーズの主人公と異なり、ライダーたちは孤独なヒーローだ。 仕事で悪の組織と戦っているわけじゃないので、戦いで金を稼ぐことはできない。 彼らは普段は別の手段で金を稼がないと生活していけないはずなのだ。

おお、これは調べる必要がありそうだ。 では、彼らの表稼業(必殺シリーズかよ)について調べてみよう。

いや、その前に一人の人物について言及しておきたい。 あの立花藤兵衛のおやっさんである。 彼はスナックを経営していたと思ったらレーシングクラブを始め、更に少年ライダー隊などという一文の得にもなりそうにないことを始めている。 それからも、カムフラージュのためにスポーツ用品店を始めたり喫茶店を始めたり、とコロコロ商売変えをしている。 元手がいくらかかるんだ? 挙げ句の果てに、ジープに乗って放浪生活だ。ずいぶんと優雅な身分ではないか。

彼は実は大金持ちで、ライダーたちを養っていたのだろうか? そう言えば、何百万円もかかりそうなライダーたちのバイクを作ってタダでライダーに進呈したりしている。 おお、なんて気前がいいんだ。 そうか、実はおやっさんは大金持ちの御曹司もしくはレースの賞金王で金を唸るほど持っていて、ライダーに生活費を渡していたに違いない。 よしよし、めでたく結論が出た。はい、終わり。

…おいおい。それで終わっては話が面白くないではないか。 それに、たとえおやっさんが大金持ちだったとしても、彼と関わりのないライダーもいるんだぞ。 ということで、やはりそれぞれのライダーについて検討してみよう。

ライダーよ明日を生きろ!

まず仮面ライダー1号、本郷猛。 彼は城南大学の学生だ。あれ?ひょっとしたら助手とかで、職員かもしれない。 しかし、大学にまともに通っていた様子はないので学生だろう。 たまに大学に行っても、対ショッカーのための私的な研究をしていたし、不良学生だな。 彼は実家からの仕送りで暮らしていたのだろうか?

いや、実は仕送りなんぞ全く不要であることが分かる。 なんつっても本郷猛はIQ600の大天才だよ? あっちゃこっちゃから奨学金を貰っていたことは想像に難くない。 彼ほどの頭脳なら、ほとんど大学に行かなくても論文のひとつやふたつは簡単に書けただろうし、ならば研究成果はバッチリだ。 奨学金が途絶えることはあるまい。 恐らくは、並みのサラリーマンなんかより自由になる金は多かったに違いない。 うーむ、実は裕福だったのか、本郷猛。

では、彼の相棒のライダー2号、一文字隼人はどうか? 彼はカメラマンだ。おっ、いきなりカタギの職業だ! だが、カメラマンとしての腕はあまり大したことはないようだ。

それに、プロレスの写真を撮っていたくらいであまり仕事をしていた様子はないし、貯金があるような顔にも見えない。(ぉぃぉぃ) 一体どうやって稼いでいるのだろう。ひょっとして本郷の貯金かおやっさんの金を使わせてもらっていたのだろうか? 社会人のくせに、人の金で食わせてもらうとは情けない話だ。

次はライダーV3、風見志郎だ。 彼も大学生。しかも別に天才ではないから奨学金もあまりあてにはできまい。 おまけにいきなり父と母と妹を失って天涯孤独の身になっている。扶養してくれる保護者がいないのだ。

おっ? 不謹慎な考え方だけど、ひょっとして家族の生命保険で食っているのか? いや、そうとも考えにくい。彼の家族はハサミジャガーの手で殺されている。 他殺であることは明らかだが、犯人は志郎が自ら殺してしまったし、そもそも秘密結社の一員だから正体が知られるわけもなし、ということで事件は迷宮入りになっているはずだ。 こんな状態ですぐに保険金が下りるとは考えにくい。志郎が容疑者としてマークされているという可能性もある。 ということは、やはり大富豪である立花のおやっさんに食わせてもらっていたということか。

じゃあライダーマン、結城丈二はどうだ? 彼にはデストロンの科学者という立派な職業が…ってそのデストロンを裏切ったんだってば。 しかし、悪の秘密結社に所属していたということは、そのやり口を知り尽くしているはずだ。 つまり活動資金の獲得法など、悪のノウハウがたまっているということだよね。 ということは非合法スレスレの怪しい手段で生活費を稼いでいたのではなかろうか。 元が悪の組織の人間、しかも科学者で頭が切れるだけに、何をやっていても不思議はない。

さあ、次は怪しい男だ。Xライダー、神啓介。 彼は沖縄の水産大学に通っていたが、東京に帰って来てそのまま沖縄には戻らなかった。 つまり大学の講義にも試験にも出ていないということだから、奨学金があったとしても即ストップだろう。

更に彼は唯一の肉親である父をGODの攻撃で失っている。 おまけに父親の死体がどうなったかは不明で、これでは保険金も下りまい。 しかも啓介は最初、立花のおやっさんと無関係に一人で行動していた!

おやっさんと出会ってからはおやっさんに食わせてもらっていたとも考えられるんだけど、最初の頃はどうしてたんだ? 父親の貯金を使っていたという考えもあるが、その父親は神ステーションなる大施設を海底に建設している。 こんなもの作るのには途方も無い金がかかるはずだ。おまけに科学の粋を集めたXライダーの改造手術まで行なっているのだ。金がいくらあっても足りはしない。 しがない大学教授にそんなに財産があったとも思えないし、神ステーション&Xライダーに全財産をつぎ込んでしまったと考えた方が自然ではないか? 大体、神啓介が親父の貯金通帳と印鑑を持ち歩いていた様子はない。

じゃあ神啓介はどうやって日々の糧を得ていたのか? 深海用改造人間だから、ひょっとして海に潜って魚でも捕っていたのか? うーむ、謎だ。

次に最もワイルドで金と無縁な男、アマゾン。 ところが、意外にも彼の生活に関しては何も心配することはない。 彼はアマゾンのジャングルで一人で生きていけるほどタフな男だ。 都会の軟弱なネズミや小鳥など、彼なら目をつぶっていても捕まえられただろう。 そう、あの頃はまだ都会でも自然が残っていたし、小動物や野草を食べて生きていたに違いない。 あんまり想像したくないけどねぇ。

そして極めつけの怪しい男、ストロンガー、城茂。 彼はタックルこと岬ユリ子と共に荷物も持たずに日本中を放浪している。 しかも野宿でもしているかと思いきや、豪勢なホテルに泊まったりもしている。 二人ともずっとバイクに乗っていてガス欠になったこともないし、服も毎回のように違っていた。 どこからそんな金がわいて出るんだ?

別にクレジットカードやキャッシュカードを持ち歩いている様子もなかった。 そもそもそんなもの持っていても、戦いの中で紛失するのがオチだ。 それに、彼らも立花のおやっさんと行動を共にするのはずいぶん経ってからだし、スポンサー不在のまま放浪していたことになる。 ユリ子が何かいかがわしい商売にでも手を染めていたのだろうか? 実はこっそり二人で美人局でもやってたのかもしんない。 正義のためなら何やっても良心は痛まないだろうしなあ。恐るべし、ストロンガー&タックル!

次にスカイライダー、筑波洋。 大学生だけど、彼には最初からスポンサーがいるんだよね。 彼を改造した志度博士は健在だし、博士は自分がいなくなってからも後を谷源次郎にまかせていた。 なーんだ、心配することないじゃないか。

で、もっと心配いらないのがスーパー1、沖一也。 なんせ彼は元々国際宇宙開発局の職員だし、改造されたのも宇宙開発のためだ。 そもそも孤独なヒーローなんかじゃないんだよね。 怪獣やっつけ隊に勤めているのと大差ない。

ところが、ZXの村雨良は怪しい。 ライダーマン同様、彼は悪の組織バダンからの脱走者だ。 でも戦闘要員だし、特に頭がいいというわけでもなさそうだ。 果たしてどうやって金を稼いでいたのか?

ところが、彼はテレビシリーズの主人公として長期間に渡って主役をやってたわけじゃない。 おそらくテレビに映っていないところで、肉体労働でもやってたのではないだろうか。 バダンとの戦いもたいして長くないし、バダンと戦っている間くらいはなんとでもなりそうな感じだ。

さて、BLACKこと南光太郎はどうだ? 彼は元々大学生だったが、ゴルゴムと戦うために大学をやめている。 それだけでなく、親友・信彦の妹の杏子にも高校をやめさせている。 そんな彼らの収入源らしいものはただひとつ、喫茶「キャピトラ」だ。

この店は客がほとんど入っていなかったように見えるのだが、まあ立花のおやっさんの喫茶「COL」だって客がいなくてもやっていけたようだから問題ないのだろう。 ただ注意しておくべきなのは、実際店をやりくりしていたのは杏子(&克美)だということだ。 光太郎は何もしていないんだよね。 こいつは未成年の娘に客の相手をさせておいて(な、なんかアブない言い方だなあ)、自分は親友を救うのだと言いつつ何もせずフラフラしていたとんでもない野郎なのだ!

しかしさすがに反省したのか、ゴルゴム滅亡後はなんとヘリのパイロットになっている。 あれ?いつの間に免許を取ったんだ?おそらくは杏子が稼いだ金で教習所に通ったんだろうけど。 それで住処はと言えば社長の家に住み込みだ。おお、ここまで堅実な暮らしをしているライダーはスーパー1くらいなものだ。偉いぞ光太郎。 けど、杏子が渡米して金を稼いでくれなくなったからやむを得ず自分が働くようになった、と言えなくもない。

そして社長夫妻が死んで会社がつぶれた後の最終回、彼は世話になった社長の子供たちを見捨てて一人逃げ出す…あ、いや、旅に出る。 ん、まあとにかく、やればできるんだからこれからも地道に働きなよ、光太郎。

で、残るシン・ZO・Jは一回ポッキリの登場。 悪との戦いが一回だけなので、生活がどうのこうのという話はできない。

終わりなき戦いの旅路

ところで、かなり怪しいのが、自分の主役が終わった後のライダー。 主役の座を降りたライダーは必ず旅に出る。 それが海外だったりするから怪しい。どこからそんな金が出てくるんだ?

例えば、本郷猛は日本の守りを一文字隼人に任せて突如ヨーロッパへ発つ。 そして今度は日本に帰って来た猛に代わって、隼人は南米へ旅立つ。 更にこの二人はカメバズーカの爆発と共に行方不明になる…ってこれは関係ないか。 まあここら辺は本郷の貯金を使って…っていくら貯金があるんだよ、本郷猛!

「ストロンガー」では、歴代ライダーが世界各国から戻ってくる。 例えば風見志郎なんかはエジプトからスーツケース一個だけ持って飛行機で戻ってくる。 日帰り出張じゃあるまいし、もっと荷物を持ってても良さそうなものだが。 そしていきなり普通のバイクに乗ってる。そのバイクどうしたんだ? エジプトから持ってきたのか?空輸代いくらかかるんだ?ガソリン代は? あ、よく考えたら普通のバイクだけじゃなく、最後の戦いでは愛車ハリケーンにも乗っているではないか!

ここでは全ライダーが自分の愛車に乗って登場する。 まさか自分の愛車をおやっさんに預けて日本を離れていたのか? いや、ライダー達は自分の愛車に乗ってこそ本領を発揮する。 愛車と共に日本を離れ、各国から愛車と共に日本に戻って来たと考えるのが妥当だろう。 どうやって輸送したんだ?ちゃんと輸送代を払ったのか? まあXライダーのクルーザーは水中でも走れるから、自ら乗って日本に上陸したとも考えられるけど、他のライダーは?

V3のハリケーンなんかは原子力エンジン搭載だ。こんなもん合法的に運べるのか!? ああ、もうわけが分からん!

…と、ここで、混乱した頭を冷やすのに良いヒントがある。 新作「仮面ライダー」以降に登場する過去のライダーたちは、ほとんど人間スタイルに戻らない。 なぜなんだろう。変身したままだとエネルギーの消耗が激しいだろうに。

これは、いわば「癖」だと考えられる。彼らはずっと変身したままでいるのに慣れてしまっているのだ。 これが彼らの移動の謎を解く鍵ではなかろうか。

「ストロンガー」の頃までは悪の組織が世界中を跋扈していたし、ライダーたちも常に戦い続けていた。 無報酬で戦う彼らも金が底を尽いてくると、背に腹は替えられぬとばかりに報酬をもらうこともあったのではなかろうか。 そうこうしてなんとかやりくりできていたライダー達も、世界に平和が訪れてからは商売あがったり。 全員がおやっさんに頼るわけにもいかず、肉体労働かなんかして食うや食わずのわびしい生活を続ける。 いつ悪の組織が現れるかも分からないから、サラリーマンやってるわけにもいかないし。 そもそも彼らは皆怪しい経歴の持ち主だから、雇ってくれる会社などあるまい。

そしてネオショッカーを始めとして再び悪の組織が待望の(?)暗躍を開始し始め、ライダーたちは再び動き出す。 パトロールのためなんとか金を工面して世界各国に散っていたライダーたちは、いよいよ日本に集結する! と、思ったが日本に戻るための資金がない!

そこでどうしたか? 恐らく彼らは、変身したまま貨物船かなんかに乗り込んで密航したのだ!

あなたが貨物船の船長だとしよう。そしてふと船倉で本郷猛を見つけたらどうする? 本郷猛がライダーだということは一般には知られていない。あなたは彼を密航者として処理するだろう。

だが、船倉で見つけたのが仮面ライダーだったらどうする? もしあなたがライダーの活躍を知っていれば、快く密航を見逃してあげるだろう。

しかしもしライダーを知らなければ? 見慣れていないとあの顔は非常に不気味だ。暗い船倉であんなのがいきなり現れたら、いかに海の男と言えども腰を抜かすだろう。 そしてあわてふためいて逃げ出し、港に着くまで二度と船倉には近付くまいと思うに違いない。

ほら、変身していればどう転んでもタダで移動できるではないか。 こうやって彼らは巧みに日本へ帰って来たのである。 変身したままでいるのに慣れているのはこういうわけ。

そして、この手はどこに移動する時にも使える。 恐らく「仮面ライダー」の頃から、金に不自由している時はこうやって移動していたに違いない。 風見志郎が飛行機で優雅に帰ってきたのは、エジプトで荒稼ぎをしてたまたま羽振りが良かったからだと言えるだろう。

いやはや、ライダーたちは我々の見ていないところで良心の呵責と戦いながら苦しい生活を続けているのだなあ。 今度ライダーに助けてもらったら、せめてガソリン代くらい渡してあげると喜ぶかもしれない。

ライダーよ、たくましく生きよ!


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