キングコング対ゴジラ

1962年8月11日公開
カラー、東宝スコープ
1時間38分

解説

東宝創立30周年記念映画。長年の沈黙を破ってゴジラ再登場となった。 ゴジラ映画初のカラー・シネスコサイズ(東宝スコープ)。 更に相手はアメリカの怪獣王・キングコング。 何から何まで豪華になったこの作品、ゴジラ映画史上最高の観客動員数1120万人を記録した。

ファンの間で「キンゴジ」と呼ばれるゴジラの造型は実に見事。 でも個人的には、次の「モスゴジ」の方が好み。 キンゴジって横から見ると凄くかっこいいんだけど、正面から見るとなんか間抜けな気がするもんで。

造型はともかく、肝心の内容の方はどうか? 「ゴジラの逆襲」でのアンギラスが所詮ヤラレ役だったのとは違い、キングコングはゴジラとタメを張っている。 何しろ前作と違い、タイトルからして2匹の対決をアピールしており、2匹の対決がメインとなっているのだ。 2匹の二度に渡る対決は、コングが格闘専門なこともあって大格闘戦となっており、なかなかの見物。

あえて気になるところと言えば、ゴジラの態度。 例えばコングが胸を叩いて闘志をアピールすると、ゴジラも身を震わせてそれに応えるといった感じ。 なんか怪獣というより動物といった感じがする。「怪獣」という言葉が持つ、得体の知れない不気味さが薄れたような感じなのだ。 対戦相手として西の怪獣王を迎えてスタッフが張り切っていたのか何なのか。 まあ細かいことで、別に気にするほどのことでもない。

ところでこの話の結末、公認記録(?)では引き分けということになっているようだ。 ゴジラが負けたようにしか見えないのだが…。

ドラマの方はと言うと、ムチャの連続。 スポンサーに尻を叩かれて巨大なる魔神を探しにいったテレビ局のスタッフがキングコングを発見。 で、キングコングを日本に連れて来ようというムチャを言い出し、連れてくる途中でコングは暴れて日本上陸。 で、その責任は全く問われることなく話は進み、彼らは防衛隊の制止を振り切ってキングコングとゴジラの対決を撮影しに行くというムチャをやる。 で、妹がコングにさらわれたのを機に、いつの間にか防衛隊のヘリに乗り込んで最終決戦も撮影するというムチャをやる。

しかし勢いで最後まで見せられてしまい、話が強引といった感じはしない。 むしろ、パシフィック製薬の多湖宣伝部長の「宣伝の鬼」といった感じのキャラクターに圧倒され笑わされ、なんか説得力があるような気がしてしまうのだ。 なお関係ないが、パシフィック製薬のライバル会社の名はセントラル製薬である。両社の対決は日本シリーズだな、こりゃ。

ちなみに出演者について。 平田昭彦など東宝特撮おなじみのメンツは言うに及ばず、後に「007は二度死ぬ」でボンドガールとなる浜美枝と若林映子が二人して出演しているのもさておき。 疎開しようとする母親に連れられて、
「ママー、ゴジラ見に行こうよ」
と言っている子供がいるが、この子は「仮面の忍者赤影」の青影こと金子吉延である。 ボケーッと見ていると気がつかないかもしれない。注意すべし。

さて最後に。 これは、もはや核がどうこうという設定はカケラも感じられない娯楽作品である。 しかしそれが別にゴジラにとって悪いことではない。時代がそうさせたのであろう。 しかも30年以上たった今となっては、そんなことどうでもいい。お気楽に見るがよろし。

登場怪獣

キングコング (KING KONG)

身長45m、体重2万5百t。5千tじゃないぞ。

ただ大きいだけのゴリラ…ではない、多分。 ファロ島の守り神としてあがめられていた。 日本に来て100万ボルトの電流を受けたことで帯電体質となり、ゴジラの放射能火炎をはね返せるようになった。

美女が好き。こうでなければキングコングではない。

大ダコ

ただ大きいだけ(50m)のタコ。…うーむ、どっかで同じようなこと書いたような気がする。

海外ウケが良かったので、後の作品にも何度か登場している。

ストーリー

パシフィック製薬提供の世界脅威シリーズの視聴率がジリ貧となっていた。 パシフィック製薬の多湖宣伝部長に怒鳴られたTTVテレビの桜井と古江はテコ入れのため、「巨大なる魔神」を求めてソロモン群島へと向かうことになる。

一方その頃、原子力潜水艦シーホーク号が北極海で消息を絶った。 そして現地に飛んだ調査団は、氷山の中から現れる黒い影を見た。
"It's Godzilla!"
ゴジラが復活したのだ。そしてゴジラは徐々に南下する。

日本中の話題がゴジラでもちきりとなっていた頃、ようやく桜井たちは目的地のファロ島に到達する。 なんとか取材許可はもらえたが、その晩大ダコが島を襲う。なすすべもなくやられる島民たち。 だがそこへ、島の奥からキングコングが現れ、大ダコを撃退する。そしてキングコングは島民が作った赤い汁を飲んで眠ってしまう。 そこで桜井は、いかだを作ってキングコングを日本に運ぶことにする。 この件は大々的に報道され、多湖部長は大喜び。

やがて、ゴジラが松島湾に上陸する。 婚約者の藤田の乗る船がゴジラに沈められたと知ったふみ子は現地に向かう途中でゴジラに遭遇、だが途中で船を降りていた藤田がそれを知ってふみ子を追い、彼女を助ける。 ゴジラは那須へと向かう。

一方、輸送中のキングコングが眠りから覚めて暴れ始める。桜井はいかだに仕掛けた火薬を爆発させるが、キングコングは無傷で日本に上陸する。 そしてキングコングは動物的本能から那須へと向かい、ゴジラと対決する。 が、ゴジラの放射能火炎の前に全く手が出ず、キングコングは退散する。 ゴジラはなおも進撃する。

東京方面に向かったキングコングは、防衛隊が張り巡らせた高圧線に触れて帯電体質となる。 そして藤田とはぐれたふみ子の乗る電車がキングコングに襲われ、ふみ子はキングコングにさらわれてしまう。 キングコングは国会議事堂に陣取るが、桜井の発案で赤い汁から作った麻酔薬を使い、桜井がファロ島の儀式をまねてドラムを叩くとキングコングは眠ってしまった。 無事にふみ子は助け出された。そしてキングコングは藤田の開発した特殊繊維の糸で釣り下げて運ばれる。再びゴジラと対決させようというのだ。

富士に運ばれたキングコング。迎え撃つゴジラ。 最初は旗色が悪かったキングコングは気絶し、周りを火の海にされて危うく丸焼けになりそうになるが、落雷を浴びて元気を取り戻す。 そして今度は互角の戦いが始まった。

やがて2匹の大格闘の場は熱海城にまで到達する。熱海城を瓦礫と化し、2匹は海にと落ちていく。 その時地震が発生した。しばらくして、南へ向かって泳ぐ影が見つかった。キングコングが島へ帰ろうとしていたのだ。 はたして、ゴジラは死んだのだろうか…。

スタッフ

製作...田中友幸
脚本...関沢新一
音楽...伊福部昭
特技監督...円谷英二
監督...本多猪四郎

キャスト

桜井修...高島忠夫
藤田一雄...佐原健二
古江金三郎...藤木悠
多湖部長...有島一郎
東部方面隊総監...田崎潤
重沢博士...平田昭彦
桜井ふみ子...浜美枝
たみ江...若林映子

東宝映画メインページに戻る
特撮メインページに戻る