まずシリーズの順番だが、これはやはり「ウルトラQ」が最初だと考えられる。 怪獣が現れても怪獣やっつけ隊は現れないし、誰もウルトラマンの助けを待ったりしない。 これはウルトラマンがまだ来ていない時代と見ていいだろう。 それに第20話「海底原人ラゴン」に登場したラゴンが「ウルトラマン」第4話「大爆発5秒前」に登場する。 ここで科学特捜隊はラゴンの存在や、音楽が好きだということまで知っているので、「ウルトラQ」は「ウルトラマン」より前の話と考えられる。
では次にどの作品が来るかだが、これは各作品がいつの話かを考えて順番を探ってみよう。
まず「ウルトラマン」。これは第23話「故郷は地球」において決定的証拠が見られる。
この話では最後にジャミラの墓が出てくるのだが、そこにジャミラの没年が1993と書かれている。
すると「ウルトラマン」は1993年前後の話と見ていいだろう。
(最終回の岩本博士の話からは1970年頃の話と解釈できるが…)
次に「ウルトラセブン」。 作品中では年代はよく分からないのだが、設定によれば地球防衛軍が1987年に設立されたことになっている。 ウルトラ警備隊は地球防衛軍の精鋭によって結成されたチームだが、これもほぼ同時期に結成されたと見ていいだろう。 とすると問題はモロボシダンが現れたのがいつかということだが、ここで第1話での隊員紹介がヒントになりそうだ。 第1話「姿なき挑戦者」でキリヤマ隊長が隊歴16年と紹介されている。 これがウルトラ警備隊のメンバーの中で最長だ。 隊長がウルトラ警備隊の発足と同時に入隊したと考えると、この時点で2003年ということになる。 あら、現在よりまだ未来なのね。
次は「帰ってきたウルトラマン」。 第38話「ウルトラの星光る時」においてウルトラマンとウルトラセブンが現れている。 いや、現れるだけならどっちが先かなんて分からないのだが、なんと彼らはハヤタとモロボシダンの姿になっている。 地球での戦いを経験していない限りハヤタやダンの姿にはなれるはずがないので、この作品は先の2作品より後の話だと分かる。
お次は「ウルトラマンA」。 第10話「決戦!エース対郷秀樹」において前作のレギュラーだった次郎少年が登場している。 旅立った郷秀樹を思い出しているので、明らかに前作の後の話。 しかも育ち盛りの小学生なのに全く成長していない。前作の直後の話と見るべきだろう。
さて、「ウルトラマンタロウ」。 時代はよく分からないが、第33話「ウルトラの国大爆発5秒前!」においてウルトラ兄弟が変身前の人間の姿で登場している。 もちろんウルトラマンAの北斗星司も出ているので、前作より後の話だということは分かる。
最後に「ウルトラマンレオ」。 いや、それ以降のテレビシリーズには旧ウルトラ兄弟は登場せず、とりあえず以降の各シリーズは独立していると見られるため、ここまでとする。 (80にはセブン(?)が出てたけど) で、レオなのだが、直接的な決定打がない。そこで細かく見ていくとする。
まず、ダンが出てくることからセブンよりは後の話だと分かる。 第29話「運命の再会!ダンとアンヌ」ではアンヌらしき女性も登場するし。 そしてセブンは骨折して変身不能に陥ってしまうが、後で変身できるようになったかもしれないのでこれはレオが最後だという決定打にならない。
第34話「ウルトラ兄弟永遠の誓い」では新マン・郷英樹が登場。これで新マンより後の話だと分かる。
しかしもう判断材料がない。 ただ、第38話「決闘!レオ兄弟対ウルトラ兄弟」においてウルトラ兄弟が集結するのだが、そこにタロウが現れない。 これはウルトラの星が地球とぶつかるかどうかという緊急事態。 そんな時にウルトラ兄弟中で最強クラスのタロウがやってこないのは不自然である。 確かにタロウはその最終回で、変身するためのバッジをウルトラの母に返して地球上での旅に出たから、ここで出てこないのは正しいのである。 とは言っても何かの都合で来なかっただけかもしれないので、これだけでタロウの後の話だと決めつけるわけにもいかない。
あっ!詳しく調べたら決定的証拠が見つかった! セブンは「ウルトラマンタロウ」第40話「ウルトラ兄弟を超えてゆけ!」においてタイラントと対戦した時に、なぜか耳がなかった。 おそらくそれ以前にどこかの怨霊怪獣と戦うことがあり、その際に全身に経文を書いて自分の姿が見えないようにして戦いに挑んだのだが、耳に経文を書き忘れたので耳を引きちぎられたんだろう。 哀れなり。 で、「ウルトラマンレオ」第1話「セブンが死ぬ時!東京は沈没する!」にセブンが登場した際もセブンには耳が無かった! それ以前に登場したセブンには常に耳があったことから考えても、少なくともレオはタロウの直後の話と考えて良さそうだ。
これで、作品が放映された順番に時代は進んでいくことが分かった。 では、これらのシリーズに登場する怪獣やっつけ隊はなぜ組織が変更されるのかについて考てみよう。
科学特捜隊の正式名称は科学特別捜査隊。これは国際科学警察機構の一組織だそうだ。 なるほど、そうすると彼らは警察から発展してきたものであり、軍隊から発展した地球防衛軍とは全く別の組織だと考えてもよさそうだ。 とすると次のような流れが考えられないだろうか。
多分1980年代初頭の頃、「ウルトラQ」のエピソードに代表されるような怪獣や宇宙人襲来などの怪現象が多発していた。 事態を重く見た各国政府は、超国際的軍隊である地球防衛軍の設立に向けて動き出す。 ところが、そんなものがそう簡単に設立できるわけもない。しかしぐすぐすしていると怪獣や宇宙人による被害が大きくなる一方。 そこでとりあえず、国際科学警察機構に科学技術をフィードバックし、超科学技術で武装した科学特捜隊を設立させたのである。 そして、1987年に地球防衛軍&ウルトラ警備隊が設立される。しかしまだ日本では体制が整っていない。 そのためそれから数年は科学特捜隊が前線で活躍することになるのである。
これは適当に考えただけのものではなく、ちゃんと裏付けがある。 「ウルトラマン」第2話「侵略者を撃て」において、科学特捜隊とは別に防衛隊なるものが登場している。 どうやら自衛隊と似たようなものらしいのだが、明らかに科学特捜隊とは別系統の組織として描かれている。 これが日本における地球防衛軍だと考えてもおかしくはないだろう。 そして、ウルトラ警備隊もまだ名ばかりで全然装備が整っていなかったとすれば、科学特捜隊だけが活躍するのも無理はない。
どうやらこれで各シリーズの順番の裏付けが取れたようだ。 ではここで、怪獣やっつけ隊はどうして組織が変わるのかについて考えてみよう。
まず科学特捜隊からウルトラ警備隊への変遷だが、これは先の考察でほぼ見えている。 つまり、ウルトラマンが宇宙に帰ってから日本でも地球防衛軍の体制が整ったので、科学特捜隊は不要になったということだ。 地球防衛は警察より軍隊に任せた方がいいに決まっている。 科学特捜隊は解散させられたか、普通の警察機構に吸収させられたかどちらかだろう。
ではウルトラ警備隊はどうなったのか? おそらくはセブンが宇宙に帰ってから何年も怪獣や宇宙人が現れなかったのだろう。 それではウルトラ警備隊はただ予算を食いつぶすだけの組織なので、あっさり解散させられてしまう。 実際次の「帰ってきたウルトラマン」の設定では、長い間怪獣が現れていなかったが地殻変動などでまた現れ始めた、ということになっている。
で、再び怪獣などが現れ始めるわけだが、既に宇宙人に場所が知られているウルトラ警備隊の基地を使うわけにもいかない。 そこで地球防衛軍は新たなる基地を作り上げ、MATを組織したのである。 ところが、泥縄式に組織されたものなので、設立には何かと確執があったことだろう。 特に日本支部ではそれが顕著だったため、日本ではとにかくMATを早く解散させようとしていたと思われる。 そうそう、MATは何かにつけて「解散させる!」と脅かされていたではないか。
防衛軍にとってはラッキーなことに、ついにバット星人の襲撃でMAT基地は壊滅してしまう。これを機にMATはようやく解散。 ところが防衛軍にとってはアンラッキーなことに、間髪を入れず超獣などという強い奴が攻めて来る。なんてこったい。 そのせいで迎撃態勢が整わなかった地球防衛軍自体も壊滅してしまったのだ。おいたわしや。
そこで新たなる攻撃部隊、TACがすぐさま組織される。 そう、TACは全滅した地球防衛軍に代わって地球を防衛するために組織されたのだ。設定通り。 おそらく地球防衛軍はMATに代わる組織を早く作ろうと思ってかねてから準備をしていただろうから、TACの設立は割とスムースにいったのではなかろうか。
しかし、しょせんTACも急いで作られた組織、その基盤は危ういものがある。 なんといっても、パン屋の運転手や看護婦を主戦力として入隊させているくらいだから、その人員の層の薄さは推して知るべし。 それが証拠に、TACのメンバーは戦闘機がちょっと敵の攻撃を受けたくらいですぐ「脱出!」してしまう根性なしばかりだ。 しかも市街地で戦闘機を放棄してしまい、町中で墜落しようがどうしようがお構いなし。無責任この上なし。
こうなってくるとTACの存在そのものが問題となってくるのは目に見えている。 しかも、隊員の南夕子が宇宙人だったという事実。たとえ悪意のない宇宙人だったとしても、TACの人員選定は問題にされたはず。 そして同じく隊員の北斗星司が突如失踪。(北斗はTACには自分の正体を告げずに宇宙に帰ったから失踪扱い…のはずだ) 人員管理もここまでずさんとなると、もう政府も黙ってはおけない。TACを解散させてしまう。 そして国連で検討されていた宇宙科学警備隊設立案を採択して、ZATを組織したのである。 ひょっとしたら国連から圧力がかかっていたのかもしれない。
かくして国連に本部を持つZATが組織され、日本では逆転の発想で都会のど真ん中に基地を設置してしまう。 これで都会に怪獣が出ても即対応できるというもの。 それにいざとなったら基地だけ飛行して逃げることができるのだから、従来のように基地を襲撃される危険は少なくなるというものだ。 ところが、怪獣が襲ってくるのに基地だけ逃げるのでは、付近住民からの非難の声が大きくなるのも道理というもの。 やがて世論に押されて、基地を撤去せざるをえなくなったのだろう。 恐らくその頃はまた怪獣がほとんど出なくなっていたのではないだろうか。
しかし、やっつけ隊を組織しないわけにもいかない。 国際的な政治的しがらみもあるだろうし、実際忘れた頃に怪獣や宇宙人が襲ってくるわけだから。 そこで政府は宇宙パトロールの名目で、基地を苦情の出ない超上空においた組織を作り上げた。その名はMAC。 地上で怪獣が出るかもしれないのにどうして宇宙かというと、元ウルトラ警備隊のモロボシダンの提言があったからだと思われる。 多分地球に来る途中で、地球を襲おうとする宇宙人をたくさん見つけたんだろう。実際宇宙人が数多く攻めてきたし。
ところでもうこの頃になると日本政府の対応もいいかげんであることがよく分かる。 何しろウルトラ警備隊から無断で失踪したような男を隊長にするくらいだから。 しかもMACではコロコロと人員交代があった。 多分、優秀な人員はあっさり別部門などに引き抜かれたんだろう。 そんな具合だから、あっけなく全滅してしまったわけだ。
こうして、国際政治のかけひきを裏に秘めながら、怪獣やっつけ隊は設立・解散を繰り返してきた。 怪獣が現れそうになるとまた怪獣やっつけ隊は設立されるだろう。 しかし、「どうせウルトラマンが助けてくれるさ」などと思って手を抜いているとエラいことになりかねない。 科学特捜隊のイデ隊員はウルトラマンがいれば自分たちは要らないのではないかと真剣に悩んだが、地球の平和は人間の手で掴み取ることに価値があるのだ。 そう、ウルトラマンがいなくても、地球にはゴジラもガメラも仮面ライダーもいるし、なんとかなるに違いない。(ぉぃぉぃ)