局側の要望で「ウルトラQ」は怪獣路線になったが、作っていてスタッフたちが困ったのは、主役3人がいつも怪獣に出くわすこと。 毎度毎度彼らが怪獣に会うのは話に無理がある、というわけだ。 そこで、次はいつも怪獣に会っても不思議でない人達を主人公にしよう、ということで「科学特捜隊」の企画が誕生。
だが、それだけでは何か物足りない。 そこで、アメリカのスーパーマンのようなヒーローを出したらどうかということになった。 しかし大怪獣を相手に等身大のヒーローでは話にならない。 そこで、ヒーローも巨大にしようということで、かつて類を見ない新ヒーローが誕生することになった。
円谷プロでは「WOO」の企画を再検討。 謎の巨大宇宙生物が人間たちを助ける「科学特捜隊ベムラー」という企画ができあがった。 このベムラーというのはデザインまでできていて、これがなんと日活の「大巨獣ガッパ」にそっくり。 でも別にデザインを盗まれたわけではないそうな。
しかし怪獣が主役ではまずかろうと、タイトルを「レッドマン」に変更。 これもデザインができてるんだけど、なかなかウルトラマンに近くなっている。 最終的にはタイトルは「ウルトラマン」に決定。 けどベムラーの名前も捨てるには惜しいと、第1話で登場する怪獣の名前に使うことに決定。
非常に有名かつ斬新な、3分間しか戦えないという設定のアイデアは、元々予算から生じたものだそうだ。 特撮部分が長くなると金がかかるので、それくらいにしてくれ、ということらしい。 しかしカラータイマーのおかげで戦いに緊張感が生まれており、非常にいい効果を残している。
あのスペシウム光線の独特の構えも、結構適当に考え出されたものらしい。 銃を構えるようなイメージで、実際には何もないから手をクロスさせたということだそうだ。 もっともそういったリラックスした雰囲気で作られたからこそ、この名作が生まれたのだろう。
これまた有名な話だが、ウルトラマンの中に入っているのは「ウルトラセブン」のアマギ隊員こと古谷敏。 「ウルトラQ」でも着ぐるみの中や素顔で何度か出ていたのだが、そのスタイルの良さを買われての抜擢。 しかしアクション専門の人じゃないので、火薬を使うと恐がって及び腰になってしまった。 それであのウルトラマンのしっかり腰を落とした前傾姿勢が出来上がったという次第。
なおウルトラマンの顔は3タイプある。(こういうとダダみたい) 第1話〜第13話までのAタイプ。第14話〜第29話のBタイプ。第30話〜第39話のCタイプである。 Aタイプは表面がゴワゴワしていてなんかブサイクだが、これには理由がある。 「ウルトラ兄弟出撃指令」で述べた通り、地球に来た当初はウルトラマンは罪の意識にさいなまれていてストレスがたまっていた。 更に慣れない地球の環境のせいもあって、顔に吹き出物が沢山できたのだ。 しかし時が経てば次第に罪の意識も薄れ、地球にも慣れてきたおかげで、元の男前に戻ったというわけだ。…ってホンマかいな。
えー、制作側の都合を言うと、Aタイプはラテックス製で口を動かせるように仕掛けをしておいたのだが、うまくいかないしシワができるのでFRP樹脂のBタイプに変更したというわけ。 そして終盤では、更に雰囲気を変えたCタイプを使うようにした、と。
さて内容面についてだが、怪獣が暴れてウルトラマンにやられて終わり、などという単純なものにはなっていない。 フォーマットは確かにそうなのだが、東宝特撮で鍛え上げられ「ウルトラQ」でテレビ作品のノウハウを手に入れたスタッフがただそれだけのものを作るわけが無い。
単なるヤラレ役にとどまらず、それ自体が魅力あるキャラクターとして成立する個性溢れる怪獣たち。 1回限りの登場なのにソフビ人形などが発売されてしまうのだから、よく考えたら驚きだ。
そして、その怪獣の出現によって進められるストーリーは様々なテーマを有している。 時には人類のあり方に疑問を投じ、またある時には科学特捜隊やウルトラマンの存在意義すら揺るがす。 何かと問題作/異色作になった佐々木守・実相寺昭雄コンビの作品を始めとして、深い話が数多い。 この深さもまた、本作品を名作と言わしめる要因なのだ。
とにかく、日本特撮の巨大変身ヒーローの原点にして全ての源。 これを見ずに日本特撮は語れない。
武器は、まずスペシウム光線。スペシウムは火星に存在し、バルタン星人が苦手としている物質である。 また、スペシウムをリング状にして放つウルトラスラッシュ(八つ裂き光輪)も強力。 その他、水を放つウルトラ水流、アタック光線など。 更には、自らの寿命を縮めることになるがウルトラテレポーテーションという大技も繰り出す。
主戦力はビートル機。ビートルとはVTOLのこと。映画「妖星ゴラス」にも登場している。 大型のジェットビートルと小型の三角ビートルの2種類が存在する。
その他、地上では専用車(武装無し)で移動し、水中では特殊潜航艇を使用する。 また、第29話では試作品ながら地底戦車ベルシダーが登場した。
携帯用攻撃武器としては、基本装備として小型光線銃のスーパーガン。これは先端にアタッチメントを付けることでペンシル爆弾や風船爆弾なども使用可能。 また、更に強力な武器として原子エネルギー光線銃のスパイダーショット。非常に重いのでアラシ隊員しか使いこなせない。 その他、第16話でバルタン星人に対抗すべく開発された、スペシウム光線と同じ威力を持つマルス133など。
隊員達は普段は青いブレザーを着ているが、出撃時にはその服を脱ぎ捨てる。 すると下から出動用のオレンジ色の隊員服が現れる。 なお、フジ隊員はブレザー姿の時はスカートなのだが、隊員服は他の隊員と全く同じズボンスタイルである。 彼女だけは普段は下に隊員服を着込んでいないと思われる。
なお設定上は、科特隊のたった5人しかいない面々はムラマツ班と呼ばれる1チームに過ぎない。 他にも××班と呼ばれる20ものチームがあるのだ。 …だそうだ。どんな大事件でもムラマツ班しか動いていなかったように思うのだが。
なお、科特隊メンバーの年齢は資料によって異なっている。 まあ大体ということで。
あらすじ付きなら以下を。
その内容は、半ばコントを交えながら、怪獣出現・科学特捜隊出撃・ウルトラマン登場といった基本シーケンスを紹介。 科学特捜隊の面々の紹介やウルトラマンの謎についての話などをしつつ、更に最後には御大円谷英二までも登場。 ファンとしてはやはり一度は見ておきたい作品である。
放映 | 昭和41年7月10日 | ||
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出演 | モンスター博士 | … | 田中明夫 |
番人たち | … | 伊藤素道とリリオリズムエアーズ | |
泥棒たち | … | ナンセンストリオ(江口明・岸野猛・前田隣) | |
科学特捜隊&ホシノ少年 | … | 上記参照 | |
円谷英二 | … | 本人 | |
脚本 | 金城哲夫 | ||
演出 | 実相寺昭雄 |