仮面天使ロゼッタ

放映

平成10年7月4日〜平成10年9月26日、全13回
テレビ東京
毎週土曜26時25分〜26時55分

概要

平凡な女子高生の神あすかは、万年係長の父と少しお茶目な母を持つ3人家族。どこにでもありそうな幸せな家庭。 だがあすかはある日、父が美女にストーカーまがいの行動をしていることを知ってその様子を探る。

しかしその女は化け物に変貌し、あすかに襲いかかる。 その女は古代より人類の敵として存在していたデュアトスと呼ばれる魔物だったのだ。 そこに立ちふさがる父、健一郎。 彼こそは、デュアトスを滅ぼす宿命を帯びた一族の末裔である神仮面ファラオンなのだ!

しかしあすかの前では変身できない健一郎は苦戦し、倒れる。 だがその時、健一郎の実の娘であるあすかもまた血の宿命に目覚めた。 そしてあすかは仮面天使ロゼッタに変身をとげ、デュアトスを葬り去る。

平凡な日常生活に突如割り込んできた宿命。 最初はとまどいを見せていたあすかだが、やがて戦う決意を固めて父と共にデュアトスに立ち向かっていくのだった。

解説

「お父さんは神仮面ファラオン、そして私は仮面天使ロゼッタなんだ」
深夜枠に登場した、円谷映像が送る前代未聞の親娘ヒーロー。 スーパーバイザーとしてあのかつての東映特撮の名プロデューサー、平山亨を迎えて作り出された本格ヒーローもの。 ちなみにファンならご存知、「仮面天使」とは平山亨の大ヒット作「仮面ライダー」のタイトル案のひとつである。 かくして生まれた本作品は、アイドルファンやヒーローファンのハートをくすぐる怪作…いや快作だったのだ。 なお、なぜか映像はビスタサイズである。

主演には現役グラビアアイドルの吉井怜を起用。 そしてもう一人の主人公と言える父親役には、「快傑ライオン丸」や「風雲ライオン丸」でヒーロー界を風靡した潮哲也を配置。 更に準レギュラーは、潮哲也の上司役として「仮面ライダー」のライダー2号こと佐々木剛。 しかも彼がスケジュールの都合で出演できないとなると、代わりに「ウルトラセブン」のアンヌ隊員ことひし美ゆり子が登板。 なんともニクいキャスティングだ。

キャスティングと言えば、毎回のゲスト(大抵はデュアトスの人間体)も見逃せない。 あいだもも、大森うたえもん、加納竜などといった、一癖も二癖もあるような役者が続出。 何かとキャスティング面での話題には事欠かない。

が、こういうアクション主体の作品でアイドルを主役に据えるというのは多大な危険を伴う。 えてして、アイドルこそがメインであり、アクションはトホホで無い方がまし、という作品になりがちだからだ。 しかし、特にヒーローファンに訴えかける要素を持つこの作品では、そんな仕上がりは絶対に許されない。

で、実際のところはどうなのかと言うと、やっぱりかなりトホホだ。 アクションはそんなに気にならない、いやそれどころか第12話で変身せずにデュアトスを次から次へとなぎ倒すアクションなんかはなかなか決まっていて見ごたえがある。 …が。

問題はセリフ。 いや、吉井怜本人も気にしていて努力してはいるようなのだが、なんか舌足らずな高い声のせいで、キメ台詞が全然決まらないのだ。 学芸会のセリフを聞いているようで、張りつめていたテンションが瞬時に消滅してしまう。ありゃまあ。

だが、ここで脱落するかどうかでロゼッタにハマれるかどうかが決まる。 あの声にさえ耐え抜けば、今まで見たことのないヒーローワールドが展開されていくのを発見できるのだ。

主演がアイドルであるということだけでウケを狙いにいくのではなく、あくまで正統派ヒーロー(ヒロインとは呼ばないのが礼儀だ)として描き続けた本作。 女子高生変身ヒーローという、なんかありそうでなさそうなこのヒーロー像はなかなか新鮮だ。 さすがに最初は悩んでいたけど、ロゼッタとしての自分を受け入れてしまった後は別にヒーローだからって孤独に悩むこともなく、いつも通り友達とつるんで楽しい毎日。 いやあ、今風というかなんというか。女子高生がヒーローするってこんな感じか、と思わず納得。

更に父親もヒーローしてるということで、戦いを通じて親と子の絆や対立なんかも描かれたりする。 そして父親の戦いは大人ならではの重みに満ちており、ファラオンが活躍すると話の雰囲気が変わってしまう。 これもひとつの魅力。 ファラオン主役編となる第4話や第8話なんかは中年男の渋さと人生経験の重みを感じさせる。 特に第8話なんかはロゼッタが全く出てこなかったりする。おやじの独壇場なのだ。 おやじ、かっこいいぜ!

話の雰囲気は、基本的にコメディー調。 これは必然的とも言える展開で、なぜならば親も娘もヒーローであるというこの作品。 そこから生まれるものはヒーローの孤独な戦いなんてものではなく、むしろより強くなった親子の絆。 そしてそこから描かれる、のほほんとした家庭の模様は作品全体のカラーに影響を与える。 コメディーになってしまうのは、ある意味当然なのだ。

だからこそ、ラストでの展開がシリアスになるのも必然。 ヒーロー親子であるが故に可能性は常にあるはずだった、家庭の幸せの崩壊。 その現実を目の当たりにしたあすかの最後の戦い。 もはやここまで来てしまえば吉井怜のセリフも気になることなく、非常にテンションの高い最終回となっている。 親子ヒーローならではの展開。ラストシーンは結構感動ものだよ。

ちなみに設定が全く異なっていた企画当初は、あすかの名字は「神」ではなく「風見」だった。 特撮ファンならピンとくると思うけど、これは父親役としてあの宮内洋をイメージしていたからなのだ。 もしこれが実現していれば、宮内洋が
「あすかーっ!」
と叫ぶファン感涙のシーンが実現したはず。(意味が分からない人は「快傑ズバット」参照のこと) しかし完成作品における神健一郎のイメージと宮内洋のイメージは全然合わないので、出演しなくて良かったと言える。 普段は三枚目だが、内に熱い力を秘めた渋いオヤジ役、潮哲也にぴったり合っているではないか。

かくして好評を博した本作は、1年後にオリジナルビデオとなって帰ってきた。 それが「漆黒のフレイア」だ。 謎の転校生・真宮鏡子役に吉川茉絵を迎え、純白のロゼッタと対をなす漆黒の仮面天使フレイアが登場する長編である。 これはテレビ版の続編ではなく、テレビ版エピソードの途中に挿入されるような位置づけ。 そしてこれはテレビ版のビデオ発売に合わせたプロモーション的な側面もあり、話自体はスタンダードにロゼッタしている。 一度ロゼッタに接してみたいという向きには丁度いい。 ちなみにキャスティング面では、中田商事の社長役にライオン丸のライバル・タイガージョー(二代目)こと福島資剛(今は芸能界は辞めていてペンションの経営者!)が出演。 やっぱり話題には事欠かない。

なお余談だが、99年に放映されていたマックシェイクのCMをご存知だろうか? 吉井怜がメロンシェイクに感動するというものなのだが、その演技が不気味なことこの上ない。 だが本作を知る人達は、その演技がまぎれもなく神あすか役で鍛え上げられたものだということを知っている。 本作で体張ってギャグやってる内に、変な演技が板に付いてしまったのだ。 そういう彼女の女優としての成長ぶり(?)を見たいファンも本作は必見だ! …見たらファンやめたくなるかもしれんけど。

ロゼッタとは?

4000年前、超科学によって他生物と合成されて生み出された新人類、魔人デュアトス。 それは人間に化け人間を食らう、人間の天敵となった。

その惨状を見た神々は、ホルス神の一族に「ハザードフォーム」する力を与えた。 デュアトスと戦い、それを滅ぼす戦士の力を。 そしてホルスの一族は一度はデュアトスを滅ぼしたかに見えた。 だがデュアトスは生きていた。少数の生き残りが、人の中に、闇の中にまぎれて。

一方、ホルスの一族も現代まで絶えていなかった。 神家はその家系なのだ。 神家に代々伝わるお守り「アンクロス」にはホルスの戦士ロゼッタの力が秘められており、神家の女子が「ハザードフォーム」することによってロゼッタになることができる。

また、同じく神家に伝わる「アンクロス・アイ」には戦士ファラオンの力が秘められていて、その力は神家の男子に受け継がれる。 変身すれば、実際の年齢とは無関係に全盛期の肉体を得ることができる。 だが神健一郎の場合、その負担に体が耐えられなくなってきているため長時間は変身していられない。

ロゼッタとファラオンの背中に装着されているのがガサールシェーント。円形の攻防一体の剣だ。 しかしその力を制御しきれなくなった健一郎はそれを現在は使わない。

ロゼッタの技は、ガサールシェーントをブーメランのように放ち敵を断つ「ロゼッタ・シェーント」。 また、ガサールシェーントをS字型に変形させて敵を一刀両断する「ロゼッタ・サーフィット」。 ガサールシェーントをリボン状に変化させる「ロゼッタ・クイーン」。 相手を幻惑する「エンドレス・イリュージョン」。高空から放つ「エンジェル・キック」など。

一方ファラオンは、羽根状の手裏剣「ゴッドウィン」を多用。 必殺技は右手に気を集中して放つ「ファラオン・ゴッド・パンチ」。 それ以外も、打撃技が中心である。

登場人物

神あすか(吉井怜)
16歳、青雲女子高校の2年生。父からもらったお守りのアンクロスを使ってロゼッタに変身する。かけ声は「ハザード・フォーム!」。 父を救うために血の宿命に目覚め、仮面天使ロゼッタとなった。
平凡な生活から突如戦いの中に巻き込まれ、最初は戦いを拒否していたが、第3話の最後にて自分の大切な人を守るために戦う道を選ぶ。 が、女子高生やってるついでにヒーローもやってるといった雰囲気で、全然悲壮感はない。 しかし期末テストを目の前にしてデュアトスと出会う(第5話)など、なかなか両立は大変そうである。
いつも親友の夏美やみどりとつるんでいる。活発な夏美やみどりと比べると、おとなしくてボーッとしているタイプ。 左利きで、特技はフルート。こういうのは設定ではなく吉井怜本人の特徴/特技。
神健一郎(潮哲也)
あすかの父で45歳。作中で46歳の誕生日を迎える。 忍法獅子変化で…じゃなくて、アンクロス・アイを使って神仮面ファラオンに変身する。かけ声はあすかと同じく「ハザード・フォーム!」。
普段は社で扱う怪しい品を売り込むべく毎日得意先を駆けずり回る、中田商事営業三課に務める係長。 しかしいつも冴えないのはファラオンとして活躍する使命があるためで、本当は切れ者…らしい。
普段は優しい真面目なマイホームパパ。会社でも出世はしないが人望は厚い。そしてちょっと中年太り。
神敦子(樋口しげり)
あすかの母親。38歳。夫と娘の血の宿命のことは何も知らない。 いささか子供っぽいと言えるほど明るい性格で、あすかとの関係は親子と言うより友達といった雰囲気だ。 20年前、健一郎と文字どおり劇的な出会いを経て結婚した。そのエピソードは第11話で語られる。
工藤夏美(藤原晶子)
あすかの親友。初登場時は父親の不倫騒ぎが原因で非常にすさんでおり、あすかを敵視するほどであったが、第2話の事件を機に本来の調子に戻った。 本来は非常に明るいノリのいい性格で、何も考えてないと見えるほど。 第5話でみどりと共にベッドの上で踊っている様子は、第2話からは想像もできない。 なぜか真夏の暑い日でも長袖の制服を着ている。
実はすさんでいた頃、場末のスナックで働いていた…って、それはその頃発売の「ウルトラセブン 地球より永遠に」の話で、なんと名前も同じナツミなんだよなー、びっくり。
藤崎みどり(本多彩子)
あすかの親友。中学時代の先輩で現在は美大生の島村良に想いを寄せている。 第1話によれば自称チケットハンターで、自分に取れないチケットは無いと豪語している。 なんと実戦派の格闘マニアで、第6話では見事なヌンチャクさばきを見せる。
大文字部長(佐々木剛)
健一郎の上司。冴えない健一郎にほとほと困っているが、実は昔から神家とつきあいがある。まだ独身。 その正体は仮面ライダー2号…なわけなくて、ダダ星から来たサイバロイド・グランゼルである。(それも違う!)
安野部長(ひし美ゆり子)
総務部長。ウルトラ警備隊から転職したのかどうかは定かでない。最終回では大文字部長と夢の共演(?)を果たす。

全話リスト

タイトル登場デュアトス
第1話「仮面の天使」吸血蝙蝠魔女ブラバット
第2話「血の宿命」蠍魔人サンダレス
第3話「心の覚醒」女王蟻魔女ギサリアン
第4話「人間畑の悪夢」蝶魔女アギナーサ
第5話「決戦の期末テスト」蟋蟀魔人ギリグラス
第6話「戦慄の未亡人下宿」蟷螂魔女マダムマンティス
第7話「迷子の死体」蛙魔女フローゲル
第8話「仮の宿」大百足魔人ハンドレッグ
第9話「森の叫び」鬼百合魔女エコレーヌ
第10話「バラ色の人生」夢魔人ミスターバルーン
第11話「赤い夕陽の港町」青虎魔人ガルゼット
第12話「宿命の対決」青虎魔人ガルゼット(魔神仮面デュアヌビス)
毒蛇魔女コブラッド
再生マダムマンティス、サンダレス、ギリグラス、ギサリアン
第13話「最期の日」青虎魔人ガルゼット(魔神仮面デュアヌビス)

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